シベリアの森のなかで

  • みすず書房
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本棚登録 : 109
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622095958

作品紹介・あらすじ

冒険家でゴンクール賞作家のテッソンが、シベリアの奥地バイカル湖畔の小屋で半年を過ごした。冬の気温はマイナス32度、村からの距離は120km、小屋は標高2000mの山々の裾にあり、窓からは湖岸が見える。隠遁生活に彩りを与えるのは、雪と森と湖、野生動物、ロシア人猟師たちとの出会い、そして読書。孤独と内省のなかで自然のざわめきと向き合い、人生の豊かさを見つめ直す、現代版『森の生活』。メディシス賞(エッセイ)受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 「隠遁は反逆である。小屋を手に入れること、それは監視画面から消えるということだ。隠遁者は姿を消す。彼はもはやインターネット上に記録を残さないし、通話履歴も銀行の取引データも残さない。彼は逆ハッキングを実践し、パワーゲームから降りるのだ。しかも、森に行く必要はまったくない。革命的な禁欲主義は都市環境でも実践できるからだ。消費社会では、都市環境に適応するという選択肢がある。ちょっとした規律があれば十分やっていける。裕福な社会では、まるまると太るのも自由なら、修道士を真似て本のざわめきに囲まれて痩せたままでいるのも自由だ。したがって、禁欲主義者たちは自分のアパルトマンから出ることなく、自らの内なる森に身を寄せているのである」
    俺も俺の「内なる森」を作ってそこに隠遁したい。

  • 二月中旬から七月末までの半年間をシベリアのバイカル湖畔の離れ小屋で過ごした
    フランス人冒険家の男性のエッセイ。

    なんとなく「孤独の中での思索」を想像していましたが、
    週に一度は他人、数十キロ離れた「隣人の小屋」やさらに遠い村や町から訪れた人、
    と会っていたり、衛星回線でメールも使えていたり、後半では二匹の犬を貰って飼ったりと、
    けっこう人付き合いしていました。

    私が「著者はやはり『インテリのフランス人』だな」と思ったのは、
    彼は、日本人がこのような環境に思うような、「自然との一体化」をしようとしません。
    彼にとって自然というものは、「自分」という存在とは明確に区切られたものであり、
    観察し、体験し、それを通じて「自分」を見つめるための道具でしかないように感じました。

  • ふむ

  • フランスとロシアってなんか相性がいいらしい。どういうのかな。酒好きそう。本は持って行くのね。夏に向かう季節なのがよかった。

  • 凍り付いたバイカル湖のほとりに立つ小屋で半年間人里を離れ、隠遁生活をしたフランス人の日記。大体ウォッカ飲んでるか本読んでるか薪を割っている。たまに山に登ったり「隣人」と酒を飲みに6時間くらい雪中行軍したりするが、基本的には一人きりである。あとはあたりをうろつく熊や動物、鳥、途中で登場する2匹の子犬しかいない。過酷な環境なので私がやったらすぐ死にそうだけど、うらやましいなあ。
    「世の中の流れにもはやまったく関与しないこと…略…を隠遁者は受け入れている。…略…彼の考えは誰にも影響を与えないだろう。…略…それに、この考えは最終的には解脱に行き着く。つまり、社会的に死んでいるからこそ、これまでにないほど自分が生きていると感じられるのだ!」
    なんて羨ましいんだろうか。まあ、著者はこの隠遁生活の途中で残してきた彼女に振られて死ぬほど落ち込んだりしているが…。

    著者がやってきた2月は冬の真っただ中であり、バイカル湖は氷のプレートがぶつかり合ってきしみ、轟音を立てる。そこに降り注ぐ光、移り行く光と影の描写がうつくしい。それが春にかけてゆっくりと溶け、割れ目ができて、山から水が降り注ぐようになり、氷が押しやられていく。それを一人きりで眺めていく生活。著者をこの小屋へ連れてきた自然保護区の保護官はさっそく「ここは自殺するには最高の場所だよ」と請け負ってくれて、ロシアン・ジョークも満載だ。
    しかしこの著者は、「本は精神分析よりも助けになる。本にはすべてが書かれていて、人生よりもずっと豊かだ。小屋のなかで書物は孤独と混ざり合い、完璧な抗神経性薬剤カクテルになった」なんて書いておきながら、ひと月も経たないうちに「無理にでも本を読めば、瞑想の森のなかで森が切り開かれた場所を探しながら歩みを進める不安から解放される。次々と本を読んでいると、人は自分がつねづねなんとなくそうじゃないかと思っていたことが表現されているのに出くわして満足する。読書はただ自分がぼんやりと考えていたことが表現されているのを発見するだけのものになるか、あるいは、何百人もの作家のなかで関連する部分を結びつけるだけのものになる」とか言い出すのだ。どちらにも深く同意できるからなお困る。自分も漫然と本を読んでしまっている自覚はあって、これじゃおしゃぶりみたいなものじゃないかと常々思っているからギクッとしてしまった。
    私にも瞑想が必要なのだろうか。もしくはウォッカか?


  • バイカル湖畔の小屋で6ヶ月間ひとりぼっちで生活した日記になります。もっと孤独に苦しむのかと思いましたがそんな感じではなかったです。でも実際にはものすごく寂しい思いをしたんだけど、そうゆう弱音を吐くのではなくもっと書きたいことがあるためだと思います。重要なのは騒がしい都会の生活から離れ、最小のエネルギー消費でインターネットからの情報を遮断して生活する壮大な実験なのでしょう。

    ロビンソン・クルーソーのように生きていくためにしなければならない作業があります。彼が小屋に持ち込んだ本60冊の中にもダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』が入っています。ロビンソン・クルーソーは夕食時にスーツを着ていたという記述があるのですが、全然覚えていないのでまた読んでみたいと思いました。

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著者プロフィール

(Sylvain Tesson)
1972年生まれ。冒険家、作家。これまでにヒマラヤ徒歩旅行、ユーラシア・ステップの騎馬旅行などの旅行記や、エッセイ、中編小説などを発表している。著書『野宿生活Une vie à coucher dehors』(2009年)でゴンクール賞とアカデミー・フランセーズ文学賞を受賞。本書『シベリアの森のなかで』(2011年)でメディシス賞(エッセイ部門)を受賞。『ホメロスと過ごす夏Une été avec Homère』(2015年)、『黒い径の上でSur les chemins noirs』(2016年)をはじめベストセラー多数。2019年に『ユキヒョウLa panthère des neiges』でルノードー賞(小説部門)を受賞。

「2023年 『シベリアの森のなかで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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