- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784490210781
作品紹介・あらすじ
ロシアの傭兵部隊であるワグネルについて綴った初めての書。ワグネルは「プーチンのシェフ」と呼ばれる大統領の側近の一人プリゴジンによって創設された民間軍事会社で、クレムリンの意を受け世界各地で軍事工作を行っているとされている。本書はワグネルに身を置き、ウクライナやシリアなどで実戦を潜り抜けてきた元司令官が綴った手記である。傭兵部隊の活動の実態が生々しく描かれているほか、ワグネルはロシアの地政学的野望を満たす手段ともみなされるため、本書は軍事に関心のある人だけでなく、広く国際政治に関わる人にとっても非常に興味深い作品である。
感想・レビュー・書評
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東2法経図・6F開架:392.3A/G11w//K
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傭兵を法的に認めていないロシアにあって、みんな知ってた傭兵会社。
今でこそ、もう、オープンというか、反逆もして、粛清もされてと大変なことになっているのだが、この本が書かれた時点では、その傭兵が存在を明らかにする一冊であった。
十分に価値はあるが、ただ、あまりに綺麗事すぎて、ふざけてんのかという印象が拭いきれない。
素人の自伝なんで、軸もないし深みもない。
他の、ロシア本と合わせて読めばいいのだと思う。 -
●クレムリンによれば、ワグネル傭兵部隊は存在しない。公式見解によれば、ロシアを誹謗中傷する勢力のでっちあげた、空想の産物に過ぎないことになっている。ロシアでは傭兵とは公式に違法とされている。
●組織の2人の人物。創設者のドミトリー・ウトキン中佐。コートネーム・ワグネル。2013年にたい焼きすると、翌年には特殊部隊の退役軍人を集めて緊急軍事介入部隊を編成した。第3帝国とアドルフヒトラーの熱烈な崇拝者。
●もう1人はオリガルヒのエフゲニー・プリゴジン氏である。1998年には、会場レストランのニューアイランドを開業。この船はプーチンの「食堂」となる。
●シリアの独裁者は、ワグネルの助けを求めた最初の国家元首だった。有名な古代遺跡パルミラは、2015年にイスラム国によって攻略され、翌年ワグネルによって奪還された。 -
n=1に過ぎないが、中から見るワグネルがよく伝わって来た。
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石油こそ、この果てしない戦争の主要原因。石油がもたらす大金が大勢の人間を惹き付けた。ちっぽけな山師や羞恥心の無いビジネスマン、民主主義やら国家の主権やら民族自決やらのスローガンの陰に、真の動機を隠した列強各国に至るまで。
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現在のウクライナ侵攻でもロシア側で暗躍している傭兵組織ワグネルの一員として、著者の実体験に基づく作品であり非常に参考となる内容である。文章も小説的で読みやすく、一人の男の物語として共感のようなものも感じられる。
元ロシア空挺部隊の将校である著者が家族のために稼ぐ必要性などもあり、中年となってから傭兵組織であるワグネルに入る。舞台はシリア内戦が主であり、そこでの実戦で、ロシア正規軍が示す本音と建前、シリア政府軍やワグネルの同僚の軍隊としての質の低さなど、葛藤や怒りのようなものを体験していく。
全てが完全な事実なのかは不明であるし、作品の中で表現していない事象などもあるだろうが、傭兵としての実戦の雰囲気はよく伝わってくる。
部下や仲間が統率が取れていない中、悩むリーダーである著者でもある主人公は、環境などは違えど組織の中で管理的な立場を任される現代日本の中年層ないし管理者層にもその姿を投影することができる。
ロシア政府やロシア軍が、建前では傭兵を否定するのに対して、実際の戦場ではひどい装備と扱いの中で傭兵達が戦果を上げる本音と建前の構図も、社会の複雑さを見る上で気づきを与えてくれる。
また、傭兵という、言わば寄せ集めの集団であるが、場面によっては強い仲間意識などを示すことも、集団やチームを考える上で重要な要素があると感じた。 -
元ワグネル「将校」による戦場体験記で、場面は主に2016〜17年のシリア。アサド軍や露正規軍と共に、「ドゥヒ」と呼ぶ反政府武装組織(自由シリア軍、ヌスラ戦線、イスラム国)を相手にする。
決して格好いい戦記でもなく、本書から強く感じるのが、能力も戦意もが低いアサド軍と似たり寄ったりの露正規軍(露空軍は傭兵陣地を爆撃すらして死傷者を出す)、そして傭兵部隊が顧みられないことへの怒りや承認欲求だ。
監訳者小泉も指摘するとおり、著者はワグネルがウクライナ侵略の尖兵となったことに疑問を感じず、またワグネルの民間人に対する拷問や虐殺はさらりと流す。著者は「正義」とは決して言えないが、それ故に荒削りの正直さのようなものは感じる。