- Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
- / ISBN・EAN: 9784409510988
作品紹介・あらすじ
独ソ戦末期、ソ連兵の暴力をおそれ集団自殺を遂げたドイツの町があった。虐殺、強姦、放火、なぜ戦時暴力は起こりそのような悲劇が起こったのか。そしてその記憶は戦後ソ連の支配下にあった東ドイツでどのように封印されあるいは蘇ったのか。語られなかった戦争の悲劇を丹念に追う。
○目次
日本語版刊行に寄せて
前書き 「暴力の謎」に立ち向かう
序章 悲劇が流れ込んだデミーン
第1章 暴力の経験から語りの形成まで
第2章 戦争をどう終わらせるのか ?
勝利か死か(アウトヴィンチェレ・アウトモリ)
ナチズムのニヒリスト的性質
動員できた最後の兵力
第3章 ソ連からの仕返しを逃れる?
東部での戦争:征服と破壊
ソ連兵による復讐は当然か
ネマースドルフの虐殺という前例
生き延びた末の旅路
第4章 秩序も出口もない空間
町に避難民が溢れるとき
住民と避難民の困難な共存
選択の時
最後の車列で出発するか、それとも置き去りとなるか
第5章 制御不能に陥り荒れ狂う暴力
赤軍に包囲され、外界から孤立した町
純然たる暴力に傾く決定的瞬間
再出発へ
第6章 苦悩の記憶の再生とその政治利用
終章 第二次世界大戦史の中のデミーン
謝辞
解説(川喜田敦子)
訳者あとがき
史料と参考文献
人名索引
事項索引
感想・レビュー・書評
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結局、戦争は状況によって、人を暴力的にさせる。誰にでもおこりうるのだ。
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ドイツの現代史に興味のある私も知らなかった事実。多くの日本人に知ってもらいたい。
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1945年4月30日から5月4日までのドイツ・デミーンで起こった暴力と、その住民たちの自殺について書かれた本。
時期からして言うまでもなく、暴力の主体はソ連兵となるのだが、本書は暴力の原因をソ連兵個人や性質に求めることはなく、暴力が発生する時空間的な構造に条件を求める。
本書自体は、2021年9月にフランスで発行されたそうだが、邦訳されたのは2023年5月であり、ロシアのウクライナ侵攻から1年以上経っている。そうなると、どうしても野蛮なロシア兵の戦争犯罪を想起してしまうが、計らずして本書は蛮行の原因をロシアの性向に求めてしまう誘惑を回避しており、あくまでも暴力が起こる構造分析に集中する。
だからといって当時のソ連、そしてドイツの暴力を免責するわけではない周到さも兼ね備えており、現在のウクライナで起きている現実に対する参考にもなるのだが、本書はあくまでも暴力と集団自決の構造分析であり、それに対する処方箋が下されるわけではない。当然のことながら、それはかんたんなことではありえないので瑕疵にはならないのだが、すこし物足りなさを感じるのも事実だった。 -
東2法経図・6F開架:234.07A/D92d//K