オスとは何で、メスとは何か? 「性スペクトラム」という最前線 (NHK出版新書 683)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140886830

作品紹介・あらすじ

一気読み必至。常識が変わる生物学講義!

生物にはオスとメスという、異なる生殖器官をもった性が別個に存在するのではなく、オスとメスとはじつは連続する表現型である――生物の「性」の本質をそのように捉える驚きの研究が、生物学の最前線で進んでいる。逆の性に擬態して生きる鳥やトンボ、何度も性転換する魚、ホルモンで組織を操るネズミ……。興味深いいくつもの事例と、私たち生物の雌雄が形作られる仕組みとともに明らかになるのは、「生物の性は生涯変わり続けている」「全ての細胞は独自に性を持っている」という驚きの事実だ。第一人者である著者が、生物の体の精密な構造とそれを駆動するメカニズムを平易に解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 生き物の知識が増えてくると、不思議だなあと思うことがいろいろと出てくる。
    オスとメスの多様な在り方もそのうちの一つ。

    ・カクレクマノミは多くがオスでもメスでもない個体で、群れの状態によりオスになったりメスになったりする。
     具体的には、群れの中で1番大きいものがメスで2番目がオス、その他はオスでもメスでもない。
     メスがいなくなるとオスがメスに性転換し、その他の中で一番大きい1匹がオスになる。

    ・オキナワベニハゼはオスになったりメスになったりする。
     メス同士が出会うと大きなメスがオスになり、オス同士が出会うと小さなオスがメスになる。

    ・ウミガメやワニは孵化するまでの温度の違いでオスかメスかが決まる。

    ・昆虫はオスがいなくてもメスだけで子孫を残せるものがたくさんいる。

    オス・メスの識別は、精巣を持つのがオス、卵巣を持つのがメス、という定義らしい。
    だが、そのように2極化するのではなく、両者は連続していてその中でどの位置にいるかと考えるのが「性スペクトラム」。

    本書はこの仮説をもとにして遺伝子と性ホルモンの研究・調査の結果を説明したものだ。
    ときおり男性脳・女性脳という言葉を聞くが、魚での研究でも脳に性差があるという調査結果が得られている(らしい)。

    「性自認」と「性志向」が脳の性を議論するのに重要らしいが、これはヒトで調べるのが信頼性が高そうだと思う。
    魚に性自認がありますか?と聞くことはできないですから。
    自分は「男」「女」「男でも女でもある」「男でも女でもない」が性自認。
    自分の恋愛対象は「男」「女」「男と女の両方」が性志向。

    だが、脳の研究がまだまだ進んでいないので、脳の性の識別などはまだまだ先のこと。
    何をどう調べればいいのかも分かっていないので、膨大な数の調査をヒトで行う必要がある。

    脳を調べられて、「あなたは男でも女でもなく、恋愛対象は男と女の両方ですね」などと診断されることは当分ないでしょう。

    生き物は複雑すぎて不思議なことだらけだ。だから謎を解きたくて興味が湧くのですけれど。

  • 【感想】
    近年ではLGBTへの理解が進み、性の種類が「男/女」の単純二択ではないと認識されつつある。
    では、人間界ではなく動物界での性はどうなのかというと、動物界ではオス/メスが一つに定まっていないのが当たり前である。オスでありながらメスの羽、メスでありながらオスの体長を持つような個体がいるだけではなく、オス⇔メスへの性転換も普通に行われている。様々な光の波長が混ざり合う「光スペクトラム」のように、生物にも「性スペクトラム」と呼べるものがあり、そこでは性がグラデーションになっているのではないか、と提唱するのが本書、『オスとは何で、メスとは何か?』である。

    例えば、エリマキシギという鳥には、羽毛や体型をそっくりメスに擬態しているオスがおり、強そうなオスの目を盗んでメスと交尾することで、自身の子を残す。エリマキシギにとっては「オス100%」という概念はなく、自身の性をメスに傾かせることで、繁殖のチャンスを得ている。また、オキナワベニハゼという魚は、水槽で2匹飼っていると、常に身体が大きい方がオスに「性転換」する。オスに性転換した個体だけを残してより大きな個体を入れると、元からいたオスがメスに性転換して卵を産むとのことだ。
    つまり、生物(特に魚類)は、生涯に渡って性を一つに固定していない。性は途中から変わるものなのだ。

    次に、人間の赤ちゃんを性差という観点から見てみよう。赤ちゃんは性スペクトラム上で見ると中間地点に位置する。性器の有無こそ違うものの、骨格や体躯については男でも女でも大差はない。
    差が出始めるのは思春期になってからだ。思春期になると、精巣と卵巣が活発に働きはじめ、性ホルモンを作るようになり、二次性徴が起こり始める。この段階で性スペクトラム上の位置はより両極に近くなり、「オス100%/メス100%」といえる状態にまで変わる。
    そして年齢を重ねると精巣と卵巣の機能は低下し、産生される性ホルモンの量も減少する。その結果、性ホルモンによって引き出された雌雄の特徴は次第に消失していくことになる。性スペクトラム上の位置は、加齢とともに両極から徐々に中央に近づくことになる。特に女性は閉経があるため、ホルモン量が男性に比べて一気に減少していく。これが、更年期障害と呼ばれるさまざまな症状を引き起こす。

    個体差こそあるものの、人間自身も性的濃度を変えながら生きる生物である、という事実が見えてくるだろう。

    さて、この「性スペクトラム」の概念が、LGBTへの理解をいっそう助ける……、とまでは、残念ながら現時点では言えない。というのも、本書で語られている「性スペクトラム変遷」の全てが、「身体的特徴の変化」に基づいているからだ。一方で、LGBTの悩みの多くは、「身体は男/女のままだが、性自認と性指向が他人と異なる」というものである。つまり、心に関係している。
    そもそも、魚類や鳥類と違って、哺乳類は生まれついたときの性から後天的に性転換することがない。性ホルモンを投与したところで性が変わることはなく、性スペクトラムも中間点から逆側に移動することがない。「身体的特徴の変化を帯びない性転換」については、本書を読む限りでは考えにくいと言える。
    これに加えて、性自認や性指向は脳のカテゴリであり、脳の研究はまだ発展途上である。そのため、動物の例を出して「人間も性が移り変わる生き物だ」と断言するのはまだ時期尚早であるだろう。このあたりについては、更なる研究待ちの状態だ。
    ――――――――――――――――――

    【まとめ】
    1 性スペクトラムという概念
    ある特徴をもって雌雄を区別したとしても、そういった区別にはどうしても当てはまらない中間型の個体や、時にはその特徴が逆転している雌雄が自然界に普通に存在していることを、研究者は以前から知っていた。
    「性スペクトラム」という言葉には、生き物の性を研究してきた研究者が、最近になってたどり着いた考え方が込められている。光スペクトラムで黄色が徐々に橙色に、そして赤色に変化するように、生物の雌雄はオスからメスへと連続する特性を有しているのではないか、という仮説を言い表した言葉である。つまり性スペクトラムとは、オスからメスへと連続する表現型として「性」を捉えるべきではないか、という新たな捉え方のことなのだ。


    2 形態だけでは判別できない生物たち
    ・エリマキシギには、羽毛や体型をそっくりメスに擬態しているオスがおり、強そうなオスの目を盗んでメスと交尾することで、自身の子を残す。
    ・トンボは、メス擬態型のオスとオス擬態型のメスがおり、体色のパターンのみで雌雄を判断することが不可能である。

    もちろん、ヒトにはオス擬態型メスやメス擬態型オスが存在するわけではない。単に外見的な特徴で男女を並べていくと、中間に位置づけられるヒトが存在する、というだけのことだ。両者の間のさまざまなポイントに位置する男女が多数を占めている、というのが実際のところだろう。そうであるならば、男性(オス)と女性(メス)を対極に位置づけたうえで行われてきたこれまでの性の研究は、極端な例を取り上げて議論していたことになり、性の本来の姿を理解するにあたっては適切であったとは言えないのかもしれない。
    性とは固定されているものではなく、生涯にわたって変化し続けるものである。


    3 性スペクトラムは移動する
    個体の性スペクトラム上の立ち位置は、決して一定の位置に留まることがない。
    ・オス化の力
    ・メス化の力
    ・脱オス化の力
    ・脱メス化の力
    の4種類が働いており、そのバランスによってどこに定位するかが決まる。

    ●性を決める4つのステップ
    「受精による性染色体の組み合わせの決定」
    「遺伝子による性決定」
    「性ホルモンによる性差構築」
    「加齢による脱オス化と脱メス化」

    4つの力の実体となる因子は「性ホルモン」と「性染色体」の2つがある。
    精巣と卵巣で性ホルモンが活発に作られるときにはオス化の力とメス化の力が強くなり、精巣と卵巣での性ホルモン産生が低下すると脱オス化と脱メス化が進む。

    例えばヒト。人は胎児のときにはスペクトラム上の中心に位置する。このとき性ホルモンの血中濃度はゼロである。しかし、性的な成熟が始まる思春期になると、性ホルモンが上昇し、ヒトの身体には雌雄の特徴が現れる。したがって、性スペクトラム上の位置は中心付近から両端の方へ移動する。その後、老年期に入ると、性ホルモンの産生量が低下(脱オス/メス化)し、これらの特徴が薄れてきて、再度、中心に近い方へ移動する。

    生物の雌雄の判断の基準は、身体の大きさでも派手さでもない。リーダシップでもない。ある生物種で認められた雌雄の特徴がその他の生物種に当てはまるかと言えば、決してそうではない。
    ところが、ひとつだけ全ての生物が共通に持つ性差がある。それは、オスは精子を作り、メスは卵子を作るということである。

    では、性スペクトラムの位置が「精巣を持っているか、卵巣を持っているか」によって決まるかといえば、それだけでは不十分である。精巣/卵巣の有無を雌雄の定義とするならば、閉経後の女性は卵子を作らないから女性ではないのかとか、ある疾患の治療のために精巣や卵巣を摘出した人は男性/女性ではないのか、という指摘がありうる。精巣と卵巣のみが性スペクトラム上の位置を決めているわけではない。


    4 オス、メスはどのように決まり、どのように進むのか?
    4つのステップのうちの、
    「受精による性染色体の組み合わせの決定」
    「遺伝子による性決定」について。

    6~7週齢の胎児の体内で「性腺原基」が分化を開始する。通常、肺原基からは肺しか生まれず、心臓原基からは心臓しかできないが、性腺原基からは精巣と卵巣の両方が分化する。この性腺原基が分化を開始した頃には、精巣になるのか卵巣になるのか、形態だけでは判別できないが、数日のうちに判別可能になる。そして、この未だ性を持っていない性腺原基を、精巣へと分化させるスイッチが、Y染色体に乗っている「性決定遺伝子」である。性腺原基は染色体の組み合わせがXYであろうがXXであろうが精巣と卵巣のどちらにも分化でき、どちらかに分化中であっても、相互に転換する能力を持っている。

    4つのステップのうちの、
    「性ホルモンによる性差構築」
    「加齢による脱オス化と脱メス化」について。

    生まれたばかりの子どもは、性スペクトラム上ではやっと中央から少しだけオス側とメス側に移動したあたりにいる。
    この位置が大きくオス側とメス側に移動するのは、生後の性成熟期だ。この時期に精巣と卵巣が活発に活動を始めると、男性ホルモンと女性ホルモンの産生が盛んになってくる。これらの「性ホルモン」が身体の隅々にまで性差を誘導することで、性スペクトラム上の位置が大きく移動することになる。

    強い性差が現れるのは思春期以降。思春期になると、それまではまるで眠っているように静かだった精巣と卵巣が活発に働きはじめ、性ホルモンを作るようになる。

    成人女性の女性ホルモン量は一定ではなく、高い時期と低い時期では10倍以上の差がある。また、妊娠時にはさらに女性ホルモンの産生が活発になり、血中濃度は100倍以上に上昇する。女性ホルモンはメス化の力として働くため、女性ホルモン量が高いときの女性の性スペクトラム上の位置は、メス100%に近いところに移動しており、女性ホルモン量が低下すると中央の方へ移動すると考えられる。そして、このような周期性を示す変動を月経周期ごとに繰り返している。

    年齢を重ねると精巣と卵巣の機能は低下し、産生される性ホルモンの量も減少する。その結果、性ホルモンによって引き出された雌雄の特徴は次第に消失していくことになる。性スペクトラム上の位置は、加齢とともに両極から徐々に中央に近づくことになる。特に女性は閉経によって女性ホルモンの上昇がなくなるので、更年期障害と呼ばれるさまざまな症状が現れる。


    5 すべての細胞は独自に性を持つ
    性決定遺伝子の有無で精巣か卵巣を持つ個体ができあがり、その後精巣と卵巣で産生される男性ホルモンと女性ホルモンによって身体全体の性ができあがっていく。したがって、わたしたちの身体を構築しているさまざまな臓器や器官は性を有している。肝臓も、骨格筋も、脳も、ほぼ全ての臓器や器官は、同じ機能を有する細胞を比較してみても、雌雄で異なっている。

    発現に性差を示す遺伝子が細胞の機能に性差を誘導し、最終的にオスとメスの臓器や器官などの機能上の性差となって現れる。これまでに、さまざまな細胞や臓器、器官などを対象に雌雄の遺伝子発現を比較した研究が多数報告されているが、ほぼ全てで性差が見いだされることが分かっている。しかも、遺伝子発現のレベルは数値で表すことができるので、それぞれの細胞や臓器、器官のスペクトラム上の立ち位置を、遺伝子発現を指標に決めることが可能である。
    「内分泌制御」と「遺伝的制御」の2つにより、すべての細胞が性を同調している。


    6 脳の性
    自然界には性転換する魚が多く存在する、卵巣が精巣へ、精巣が卵巣へと作り変えられる。
    例えば精巣から卵巣への転換が起きたときに、脳の性がオスのままだと、メスとしての行動を示すことができない。せっかく卵巣を作り上げたにもかかわらず、脳の性も同時に性転換しなければ、受精卵を残すことができない。魚類の脳は性を固定していないが、それは性転換に際して、脳を作り替えることなく、いつでも性腺の性と一致する行動をとることを可能とする仕組みを維持しているからだと考えられる。

    一方で、哺乳類の脳は、いくら性ホルモンを投与したところで性が変わることはない。哺乳類の脳の性は出生前後に性の基本型が決まる第1ステップと、性成熟以降に性ホルモンに反応して雌雄に特徴的な行動を誘導するという第2ステップによって制御されると考えられている。
    この状態を性スペクトラム上の位置で説明すると、成魚の脳はオスであってもメスであっても刺激を受けなければ雌雄の中間に位置し、男性ホルモンの刺激を受けると、オスであってもメスであってもオス側に移動したり、メス側に移動したりする。つまり、脳の基盤に性差がないので、メス側からオス側へ、またオス側からメス側へと、中間点を超えて移動することが可能となっている。
    一方、哺乳類は出生前後の時期に性ホルモンによる刺激を受けることで、脳の基盤に性差ができあがる。そのため性スペクトラム上の位置は、オスであればもともと中間点よりオス側に、メスであればメス側に位置している。そして、この状態で男性ホルモンと女性ホルモンが作用することで、その位置がさらに両端へと移動する。また、基盤に性差があるため、性ホルモンの刺激で中間点を越えて逆の性の方に移動することはない。

    ヒトの脳が難しいのは、脳の性が「性自認」と「性指向」の2面から論じられることにある。性自認は自分が男性か/女性か、性指向は男性を好むか/女性を好むかという要素であるが、自意識にかかわる部分であるため、客観性の高い研究を行うのが難しい。
    メダカやショウジョウバエでは、性指向を変化させる変異体が発見されている。しかし、ヒトを対象とする実験はまだ進んでいない。

    • Manideさん
      すいびょうさん、こんにちは。

      性転換なんてものがあるんですね、全く知りませんでした。
      それから、擬態というのも面白いですね。子孫を残すため...
      すいびょうさん、こんにちは。

      性転換なんてものがあるんですね、全く知りませんでした。
      それから、擬態というのも面白いですね。子孫を残すためにというのが、また、興味深いです。

      自分が生きるためにという点と、子孫を残すためにという点では、どちらが本能的に優れているんですかね。
      すいびょうさんの感想から感じるのは、自分の命よりも子孫を残すために行動することが本能に感じます。
      すごい!と感じます。

      人間においても同様の本能があると考えると、すごくはなくて、やばいやつです。現時代において、この本能が邪魔しているモノは多々あるなと、感じております。

      昔、高校生の頃、女の子の輪に混じって仲良くしてる男の子がいました。当時はオカマなんて、みんなで言ってましたが、いじめられてる感じはなく、女の子の輪に溶け込んでました。彼が本当はまったくゲイのような気質がなかったとしたら、まさに擬態だなと、数十年経過した今になって考えちゃいました。( ꒪⌓꒪)
      2023/04/30
    • すいびょうさん
      Manideさん、こんにちは。

      >>自分の命よりも子孫を残すために行動することが本能に感じます。
      まさにそれですね。本書では、子孫を...
      Manideさん、こんにちは。

      >>自分の命よりも子孫を残すために行動することが本能に感じます。
      まさにそれですね。本書では、子孫を残すために性転換を繰り返したり、交尾後メスに食べられる魚なども出てきて、動物の本能というのはあらためて凄いのだなと思いました。

      人間は生殖本能こそ他の動物よりも弱いですが、人間も動物の端くれなのだから、生存競争を効率的に行うための道として、女性への擬態もあり得るのかもしれないですね。
      2023/04/30
    • Manideさん
      すいびょうさん、おはようございます。

      コメントありがとうございました。
      今回も勉強になりました♪
      すいびょうさん、おはようございます。

      コメントありがとうございました。
      今回も勉強になりました♪
      2023/05/01
  • 「性は2つの対立する極として捉えるべきではなく」とある割には、オスメスが両端にある1軸のスケールであることに変わりはなく、ゼロイチのデジタルではなくてオスメス両端が100で真ん中0の連続値、というだけで拍子抜けした。
    オス軸メス軸の交差で2変数の4象限じゃないんだ?そういう表現の方が適切な場合もありそう。
    細胞に性がある、という話も、性ホルモン受容体の遺伝子の活性化の効かせ方に性差があるから、だとしても、性差を見えなくするくらいの個体差=遺伝的多様性もあり得るのが遺伝子の発現では?
    一度オス寄りまたはメス寄りにスイッチ入ったなら一つの個体に0を越える細胞はあり得ないってことだろうけど、そのオス100%メス100%の特徴の最大値の位置取りは何によってそうなっているわけ?という疑問。細胞の性がどちら寄りか?は雌雄での遺伝子の発現のしやすさの差→機能差、というのはわかるけど、性別でしか生まれない差なのか?とか。
    性差があるとして、じゃあその性別での分布は?ていう。だいぶ重なってんじゃね?

  • 性は決して二極性のものではなく、オスからメスへとグラデーションのようにスペクトラム状に分布する表現形である。言われてみて考えてみればこれ以上当たり前のことはないように思う。この本を読むと人の「男女」というものが単に作られた制度にしか過ぎないと言うことがよく分かる。いい加減日本の社会制度も作り直す時期に来ている、とそこまで思いが到ってしまう、そんな本であった。

  • 精子を作るのがオス側で、卵を作るのがメス側で、性別は両極端だけではなく、間に100%から0%までスペクトル上に分布している、
    性ホルモンと遺伝子がその位置を決める、
    という話。
    魚の中にはオス側からメス側にジャンプするものもいる。
    人間においては成長過程でスペクトル上を移動するのが一般的である。
    性ホルモン受容体遺伝子に変異が起きて、ホルモン受容体の機能が完全に消失するのが性分化疾患の一例で、性自認の変化につながったりする。
    「男は〜」「女は〜」みたいな大きな主語で語ることに意味はないということはよく分かる。

  • 一気に読んだ。おもしろかった。性スペクトラム。
    以下メモ。

    オスとメスは対局な存在ではない。
    エリマキシギ3種のオス、ブルーギルスニーカーなど。メス擬態化のオス。オス何%?これは生涯変わり続ける。
    環境、化学物質による人工的なメス化が進行。
    魚、一夫多妻制はオス縄張り、小さいオスが100%メス化、たまたま出会ったオス同士でも子孫が残せるようになど。
    チョウチンアンコウ、オスはメスの1/10でメスに吸収。
    ウミガメやワニは産んだ卵の温度で性別が決まる。温度依存的性決定。
    ハダカデバネズミは女王ネズミしか子ども産まない。小さい周りのメスネズミは女王が産んだ子を育てる。女王の糞を食わされてホルモンを上げて。
    おじいちゃんは役に立たないから短命。

  • 2023/01/03 amzon 1,045円

  • 遺伝子とホルモン分泌によってオス・メス化、脱オス・脱メス化がされることで、性がスペクトラム上に決定される。

    この原則によって、性指向、性自認の多様性の蓋然性が示される。

    なるほど人間の直観的な理解というのは往々にしてアテになるが、また往々にしてアテにならない。社会科学だとか、理系の基礎研究だとかの重要性を「直感的」に理解するためには、こういう「目から鱗」を体験するのが1番いいかもしれない。

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著者プロフィール

1957年生まれ。九州大学大学院医学研究院教授。九州大学大学院理学研究科博士課程修了(理学博士)。九州大学大学院医学系研究科助手、自然科学研究機構基礎生物学研究所教授を経て現職。「性スペクトラム」という新学術領域研究の第一人者として研究活動を行いながら、NHKスペシャル「男と女 最新科学が読み解く性」「人体 ミクロの大冒険」などの番組監修に携わる。本書が初の著書。

「2022年 『オスとは何で、メスとは何か?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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