トリニティ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101391465

作品紹介・あらすじ

仕事、結婚、男、子ども……私はすべて手に入れたい。欲張りだと謗られても――。1960年代、出版社で出会った三人の女。ライターの登紀子は、時代を牽引する雑誌で活躍。イラストレーターの妙子は、才能を見出され若くして売れっ子に。そして編集雑務の鈴子は、結婚を機に専業主婦となる。変わりゆく時代の中で、彼女たちが得たもの、失ったもの、そして未来につなぐものとは。渾身の長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かったです!
    けれども感想が難しいです。
    それぞれの人生を選んだ女性達のお話です。
    どんな人の人生にも影の部分があり、時代が変わっても悩まない事などないのだな…が感想かなと。

    私自身は最近結局は人生で1番大切なのはどれだけの人を愛せてその人たちと楽しい時間が過ごせたかではないかと思っています。

  • 1960年代に出版社の新雑誌の編集部で出会った3人の女性たちのお話。
    まだ女性の大半が結婚・出産を機に退職するのが当たり前だった時代にイラストレーターやフリーライターとして世の中を渡っていこうとする妙子と登紀子に、事務職で入社し編集職に誘われたものの結婚を選んで専業主婦になった鈴子。
    3人の生活、結婚とその後、仕事振りが、昭和から平成の出来事とともに描かれる。
    妙子や登紀子にはモデルがあると知ってググってみたが、大橋歩という人も三宅菊子という人もまったく知らなかった。雑誌は「平凡パンチ」のようだが、私は「平凡パンチ」よりも「週刊プレイボーイ」のほうが好きだったもんなぁ。

    生まれも育ちも性格も価値観も違う3人の、それぞれの生い立ちと出会いに加え、高度成長期の日本の姿や社会のうねり、当時の若者文化の中心にあった出版社での新しい雑誌が生まれる様子などが描かれる前半が面白い。社会の歩みと重ねていくと年表的になるのは否めないと思いつつ、当時の空気は良く出ていると思った。
    時代の先端を駆けていた妙子や登紀子の夫婦生活や子育ての倦怠が描かれる後半は、成功を得た割には幸せや安寧とは程遠い、その人生の末路がいささか哀しく、バブルの頃のざらりとした社会の描写とも相俟って、やるせなさのほうが勝ってしまった。
    ずっと鈴子の孫・奈帆が登紀子に聞き書きをするという設定が活かされてなかったように思ったが、終章、奈帆の取材に妙子の息子・謙が登場し、謙が語る妙子の思い出を読めば、妙子や登紀子の晩年もそれでもやるせないことばかりではなかったことが浮かび上がってきたのは良かった。

    私は主人公の女性たちより少し遅いだけの生まれで、鈴子の男性版の人生(大学を出てサラリーマンになって結婚して家を買って子どもを育てる)をなんの疑いも持たずに歩いてきて、この主人公たちのようにそんなに切実に何かを得るために何かを捨てるということもなかったように思っていたが、振り返ってみれば私なりに捨てたものはあり、何の苦労もなく今の生活を手に入れたわけでもないのだなぁと知らされた。

  • 結婚しても仕事を続けるって今は普通(というよりもそうしないと生活できない)だが、昔は「寿退社」なるものが当たり前だった。本作は、そんな時代にある雑誌の編集部で出会った3人の女性の物語。フリーのライターとイラストレーターと後に専業主婦となる雑用の女性社員という組み合わせがどう絡んでいくのか。この流れがとても自然だった。そして3人が一緒に見に行った新宿騒乱。その臨場感がいい。
    他にも時代時代の出来事が絡んでくるのが妙にリアルだった。窪美澄さんは実際にあった出来事と絡めた物語を描くのが本当に上手だ。
    3人のうち2人がたどる人生の最後はとても幸せとは思えない。でも、だからどうだっていうのか。自分たちがやりたいようにやって生き抜いた人生。それが次の世代を作ったとも言える。それだけでも十分に意味のある人生だったはずだ。
    結婚しても出産しても、仕事を続けて自分のしたいことをしようとする女性は増えていると思う。でもそれって社会が成熟しただけじゃなくて、男の給料だけでは生活できなくなってるという後ろ向きな意味合いもあるのが悲しい。
    そんなやや小難しいことを考えてしまったが、単純に物語として面白い小説だった。窪美澄さんの懐がどんどん深くなっている。これからも読んでいきたい作家だ。

  • まだまだ女性は結婚して専業主婦になるのが当たり前だった昭和の時代に仕事、結婚、男、子どもで悩む女性。

    今は専業主婦にならない方が多い時代になったが、その分、仕事、結婚、男、子どもに悩む女性が増えた。全部を手に入れるのは難しいし、全部持ってます!って言われても嘘っぽいと感じてしまうな。
    幸せになりたいだけなのになぁ。。。

  • これまでの窪美澄さんのテイストと違い、途中で著者名を確かめたほどだった。
    淡々と書かれているのだが、あの時代の熱のようなものが伝わり最初から最後までぐいぐい引き込まれた。

    モデルにしている出版社はすぐにわかったし、人物も調べたらすぐわかった。
    どこまでリアルなのか?
    今回は知らないから物語としてすごく楽しめた。
    が、以前読んだ『さよならニルヴァーナ』では、あの酷い事件がモチーフになっていることは明らかで、美化されてるように感じた…
    ということがあったので、こっちはどうなのかなーと思いました。

  • 後半はおもしろい。後半に行くまでがつらかった

  • 前半は何度も挫けそうになった。

    仕事(お金)、結婚、子ども、
    全てを手に入れても苦悩はあるし、
    専業主婦も孤独だったりするし。


    女性が出産すると、どうしてもキャリアが途切れてしまうことが多くて、世の中難しい〜
    って話。

  • 久々にこんなに引き込まれる本に出会った。

    戦後の激動の日本を生き抜く3人の女性。
    ひょんなことから3人のうちの1人、鈴子の孫が3人の過去を知っていく話。

    戦後の変わっていく日本 有名で事件の名前など知っていたがそれがより詳しく書かれてる場面などもある。その時の日本に自分もタイムスリップしてるかのように読んでいった。

    3人の女性は共に出版社で働く
    イラストレーター ライター 出版社の事務員
    それぞれ異なるが人生の分岐点に3人が一緒にいる場面も多々ある。

    けして明るい話ではないし、どちらかというと切なくなる場面の方が多い。死ぬもの狂いで働いて守りたいものを守った女たちが果たして幸せだったかと問われると分からないところだが、確かに生き抜いた女性たちはカッコいいという言葉では軽すぎるほど強く芯のある女性たち。

    立見と妙子の最後の場面は思わず涙が出ていた。

    最後まで目が離せず、最後も自然と涙がこぼれてとまらなかった。

    素晴らしい本で読めたことに感謝した本でした。

  • 鈴子、登紀子、妙子の一生を綴った壮大な物語だが、共通点は潮汐出版にいたことで、鈴子は事務員、登紀子はフリーライター、妙子は早川朔というペンネームのイラストレーター.鈴子の孫の奈帆が登紀子の話を聞き取る形で話が展開する.戦後の様々な事件が巧みに織り込まれており、その時代の空気を思い出しながら読めた.鈴子が最も一般的な女性の歩みを辿っていたが、妙子の幼年期からの苦労話が最も楽しめた.登紀子はライターの家系でそれなりの資産もあったので、お嬢様風の立ち回りを演じていたが、奈帆への振舞にもその生い立ちの名残が見えたのも、面白かった.妙子の息子 謙と奈帆の出会いがこの物語の発展性を示していると感じた.

  • 途中でやめたので記録のみ。
    先を知りたいと思えるような、あまり好みの作品ではなかった。
    この手のストーリーは前半頑張れば楽しくなるのだろうけど、なかなか手に取る気になれず断念。

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著者プロフィール

1965年東京生まれ。2009年『ミクマリ』で、「女による女のためのR-18文学賞大賞」を受賞。11年、受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、「本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10」第1位、「本屋大賞」第2位に選ばれる。12年『晴天の迷いクジラ』で「山田風太郎賞」を受賞。19年『トリニティ』で「織田作之助賞」、22年『夜に星を放つ』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『アニバーサリー』『よるのふくらみ』『水やりはいつも深夜だけど』『やめるときも、すこやかなるときも』『じっと手を見る』『夜空に浮かぶ欠けた月たち』『私は女になりたい』『ははのれんあい』『朔が満ちる』等がある。

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