池上彰の世界の見方 北欧: 幸せな国々に迫るロシアの影

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093891189

作品紹介・あらすじ

幸福度ランキング上位国を悩ませるものは? 高福祉国家、幸福度ランキングの上位国、高い学力と安い学費、北欧デザイン……。良いイメージで語られることの多い北欧諸国ですが、どの国も悩みを抱えています。ロシアのウクライナ侵攻後、フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟申請したことは記憶に新しいですが、悩みはそれだけではありません。ソ連(現ロシア)から一方的な要求を突き付けられたことをきっかけに、ソ連と二度も戦い敗北したフィンランドは、つねにソ連(およびその後身・ロシア)との関係に苦心してきました。スウェーデンは、高福祉を実現したために国民の労働意欲が低下。経済成長率が低くなる時期を経験しています。ノルウェーは、ノーベル平和賞が発表・授与されるホスト国。中国の平和活動家に平和賞が授与されると、中国から経済制裁を受けて大変困った事態に陥ります。北欧諸国はイギリス、ドイツ、フランスといった国々に比べれば、寒冷の土地にあり、人口も多くありません。それらの国々が、どのような知恵や政策で困難を乗り越えてきたのか。学ぶべきことが多い北欧諸国の素顔を池上彰が徹底解説します!東京都立小石川中等教育学校での白熱授業を書籍化しました! 【編集担当からのおすすめ情報】 北欧というと、遠い国々と思いがちですが、北欧発祥のブランドは身の回りに数多くあります。小売業のイケア(スウェーデン)、H&M(スウェーデン)、玩具のレゴ(デンマーク)、雑貨のマリメッコ(フィンランド)。キャラクターでいえばムーミンも北欧発祥(フィンランド)です。ただ、北欧諸国の歴史や政治状況を知っている方は多くなさそうです。つい最近までフィンランドはNATOに加盟していませんでしたが、ノルウェーやアイスランドは加盟しています。しかし、ノルウェーとアイスランドはEUには非加盟です。こうした各国の方針にはちゃんとした理由があります。北欧各国のそれぞれの特色や違いも、池上彰さんがわかりやすく解説しています。読めば北欧諸国の近現代史はもちろん、ナポレオンやスターリンがどう北欧諸国とかかわったのかもわかります。例えばナポレオン配下の将軍だった人物が、ある国の王となり、現在もその王統が続いていることも解説しています。世界史を学ぶ学生も、学び直しの社会人の方や、世界情勢に強くなりたい方にも最適な一冊です。

感想・レビュー・書評

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  • 北欧の豊かさや女性の社会進出は結局のところ、地政学による部分がかなり大きいのではないか、と考えさせられた。

    日本も豊かな国ではあるけども、国民の
    一人一人の意識の高さを北欧と比べれば、見習うべきところが山ほどあるんじゃないの、と問われる内容でした。

  • 池上さんいつもありがとうございます!今回も大変勉強になりました。

    北欧のイメージが今一つ掴めていなかったが、政治、経済、教育、福祉など知って、なるほどー!北欧スゲーなと膝をうちながら感心した。

    他国との間で起きた戦争の悲惨な歴史的教訓が土台となってると知り、複雑な気持ちになった。

    歴史は韻を踏むというが、早くウクライナの戦争も終わって北欧みたいになってもらいたいなと思った。

  • 池上さんが定期的に刊行されているシリーズの中で
    この「世界の見方」が一番好きです。
    サブタイトル、上手いですよね。

    中高生への授業をもとにしているからわかりやすい、
    ということもあります。
    今回は東京都立小石川中等教育学校。
    中高一貫で、高校受験をする必要がない分
    多様な学びの場があるのだそうです。

    さて私自身は北欧の本あまり読んだことが無かったので
    いろいろなことを初めて知り、
    とても面白かったです。

    〈寒いからこそ、必死になって生きてきた人たち。
    厳しい環境が、人間を育てるのです。
    私たちも負けずに頑張ろうではありませんか〉

    次回はフランス
    「うるわしの国の栄光と苦悩」だそうです。

  •  池上さんの本はかなり読んでいるので、世界の中の北欧という大きな括りの中では、特に目新しい発見はなかった。ただドイツやイギリス、フランスなどといったヨーロッパの大国と比べると、北欧諸国は高負担高福祉国家という以外あまり知らなかったので、北欧の歴史やそれぞれの国家の立ち位置等を具体的に知ることが出来た。

  • 2023年6月に前書きがあるので、ウクライナ侵攻後の授業。フィンランド、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、アイスランド、この北欧5か国の歴史と現況を述べる。読んでいてすーっと入ってくる。耳で聴くというのはこういうことなのか。スウェーデン、フィンランドのNATO加入問題などは、なぜ今まで2国がNATOに入っていなかったのか、その中立政策、トルコの反対の理由などを説明。

    「寒い」ということがキーワード
    厳寒の冬を乗り切るため死に物狂いで生存して命を繋いできた歴史。人口もスウェーデンで1000万人、アイスランドは36万人、それ以外3国が500万人台。全体で3000万人わる。一人一人が貴重な存在。男女の別なく国を維持するという危機意識が育った。

    歴史的経緯
    <ヴァイキングから始まる北欧の歴史>
    ・8世紀末から11世紀にかけスカンジナビア半島やユトランド半島に住んでいた、ゲルマン人の一派(ノルマン人)がヨーロッパ各地に進出。
    ・ヴァイキング船に乗り、北フランス、スペイン、地中海、ロシア、黒海、スコットランド、アイスランド、グリーンランド、北米大陸まで到達。ノルマン人のもともと住んでいた土地にはデンマーク、スウェーデン、ノルウェーの諸王国が建設され、キリスト教を受け入れて、北欧は西ヨーロッパ世界に組み入れられた。

    ・フィンランドはインド・ヨーロッパ語族のゲルマン人ではなくてウラル語族のフィン人。コーカサス系だが長い間スウェーデンやロシアに支配されていたため現在は区別できない。
    ・10世紀頃にデンマーク、スウェーデン、ノルウェーで王国ができても、フィンランドは国としてまとまっていなかった。
    ・12世紀にスウェーデン王がキリスト教化をめざしてフィンランドに侵攻しフィンランドはスウェーデンの領土となる。

    ・13世紀になるとデンマークが北海とバルト海の貿易で栄え最も有力になる。
    ・14世紀には、デンマーク女王マルグレーテが主導してノルウェー、スウェーデン、デンマークの間で「カルマル同盟」を結び、北欧3か国を同君連合の王国とした。グリーンランドも領有。

    ・アイスランドは9世紀にノルウェーのノルマン人(ヴァイキング)の入植が始まり13世紀以降ノルウェーの支配。だがカルマル同盟でデンマークの統治下。第二次世界大戦中の1944に独立。

    ・デンマークは北欧3か国(デンマーク、スウェーデン、ノルウェー)の盟主として13世紀に最も栄えたが、16世紀になるとスウェーデンが反乱を起こし分離独立。
    ・カルマル同盟は解体したが、デンマーク=ノルウェー二重王国となり、デンマークのノルウェー支配は続く。
    ・ノルウェーは以後400年以上もデンマーク支配を受ける。

    ・1618に三十年戦争がドイツで起き、1648年ウエストファリア条約で終結。それを期にデンマークとスウェーデンの地位が逆転し、スウェーデンが大国に。

    ・デンマークはユトランド半島南部の肥沃な土地を失い、小国の酪農国として生きる、「小国主義」に。これは現在まで受け継がれる。

    ・17世紀後半にスウェーデンはバルト帝国といわれる絶頂期を迎えるが、ピョートル大帝のロシアの進出でバルト海をめぐり、「北方戦争」となりロシアに敗北、最盛期終わる。

    ・19世紀まではスウェーデンはそれでも大国だったが、ナポレオンの進出で、ロシアはフランスとの講和条約でスウェーデンに攻め込み、フィンランドをロシアに奪われる。
    ・その後スウェーデンではナポレオンの副官だったカール・ヨハンを王太子に迎え、さらにスウェーデン船がフランスに拿捕される事件が起きるが反フランスのイギリスにはつかず、フランスにも与しない中立の立場をとる。→これがスウェーデンの外交政策の基本となる。

    ・1814年にデンマークはノルウェーをスウェーデンに割譲。これはデンマークがフランスと同盟を結んでいたためだがノルウェーは反発し同年に独立宣言するが、スウェーデン軍に抑えられ降伏。ただし併合ではなくスウェーデン王がノルウェー王を兼ねる同君連合の形。1905年にノルウェーは独立。
    1939
    ・フィンランド~1809年スウェーデンからロシア領土に。1917のロシア革命時に独立宣言しソビエト政権も認める。

    ・1914 第一次世界大戦ではスウェーデン、デンマーク、ノルウェーは中立を保つ。
    ・1939 第二次世界大戦 デンマークとノルウェーはドイツに、フィンランドはソ連に攻められる。

    ・フィンランド、1939からのソ連侵攻(冬戦争、継続戦争)で領土の一部をソ連に取られる。北極海に面していたところもとられてしまった。~今回のウクライナ侵攻に似ている。偽旗作戦による侵攻、意外に善戦したフィンランド。苦戦するソ連をみてドイツはいけるかも、と思いソ連に侵攻した。

    ・スウェーデンは攻められなかったが、中立を保ちたいが攻められている北欧を助けたいというジレンマ。北欧諸国に連帯感。フィンランドに義勇軍、デンマーク、ノルウェーには様々な支援。

    ・第二次世界大戦後 スウェーデンの中立政策:「戦時の中立を目的とする平時における非同盟」
    ノルウェーの中立政策:とにかくソ連を刺激しない、協力しないという「中立」


    東京都立小石川中等教育学校での授業をもとに適宜加筆。

    2023.8.5初版第1刷 図書館

  • このシリーズは欠かさず読んでいます。

    今回はノルウェー、スゥエーデン、フィンランド、デンマーク、アイスランドですね。北欧は普段なかなか接する機会はないですが、北欧の歴史や国ごとの成り立ちがわかって面白いです。

    行く機会がある方は、読んでおくとさらに北欧の旅が楽しめるのではないかと思います。

  •  北欧についての知識をわかりやすく取得できる良書

  • 実際に北欧に行って感じたことと、北欧の歴史や政治について擦り合わせるかのように読みました。日本のことだけでなく世界全体のことを知ることはとても大事だと思った。

  • ロシアとドイツに挟まれながら、寒さも強みに変えて幸せを追求してきた北欧の姿がわかりやすく学べます。

  • 相変わらずわかりやすい。

    個人的に北欧に興味を持っていたので購入。

    各国の特色と歩んできた歴史が現在の体制にどのように反映されているのか。

    教育や政治など北欧から学べることもたくさん。

    同シリーズを制覇したいです。

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著者プロフィール

池上彰(いけがみ・あきら):1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、73年にNHK入局。記者やキャスターを歴任する。2005年にNHKを退職して以降、フリージャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍、YouTubeなど幅広いメディアで活躍中。名城大学教授、東京工業大学特命教授を務め、現在9つの大学で教鞭を執る。著書に『池上彰の憲法入門』『「見えざる手」が経済を動かす』『お金で世界が見えてくる』『池上彰と現代の名著を読む』(以上、筑摩書房)、『世界を変えた10冊の本』『池上彰の「世界そこからですか!?」』(以上、文藝春秋)ほか、多数。

「2023年 『世界を動かした名演説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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