- Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087718201
作品紹介・あらすじ
舞台は明治30年代後半。鄙びた甘酒屋を営む弥蔵のところに馴染み客の利吉がやって来て、坂下の鰻屋に徳富蘇峰が居て本屋を探しているという。
なんでも、甘酒屋のある坂を上った先に、古今東西のあらゆる本が揃うと評判の書舗があるらしい。その名は “書楼弔堂(しょろうとむらいどう)”。
思想の変節を非難された徳富蘇峰、探偵小説を書く以前の岡本綺堂、学生時代の竹久夢二……。そこには、迷える者達が、己の一冊を求め“探書”に訪れる。
「扠(さて)、本日はどのようなご本をご所望でしょう――」
日露戦争の足音が聞こえる激動の時代に、本と人とのを繋がりを見つめなおす。
約6年ぶり、待望のシリーズ第3弾!
【著者プロフィール】
京極夏彦(きょうごく・なつひこ)
日本推理作家協会 第15代代表理事。世界妖怪協会・お化け友の会 代表代行。
1963年北海道小樽市生まれ。94年『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で第49回日本推理作家協会賞長編部門、97年『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、2000年第8回桑沢賞、03年『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で第130回直木賞、11年『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞、16年 遠野文化賞、19年 埼玉文化賞、22年『遠巷説百物語』で第56回吉川英治文学賞を受賞。
感想・レビュー・書評
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あれ?読んだことある?と思ったら、前回期限内に読み切れず1度返却をしていました。
今回の語り部は弥蔵さんという元人斬りが、文明開花に取り残され寿命を待つと言いながらも、弔堂と関わる中で、徐々に心を開いていっています。
その都度の登場人物は歴史に名を残している御仁ばかりで、Wikipediaでついつい調べながら読んでいました。
前作と空いているので定かではないのですが、弔堂と客が長く対話するスタイルはではなく、弥蔵が弔堂に案内する前に色々と話を聞いている感じで、少し弔堂の影が薄い感じでした。
それにしても、しほる君も弔堂も年齢不詳です。
次作はまた期間が空いてしまうと思うと待ち遠しいです。 -
やっぱり吐息の一冊。
このシリーズは毎回吐息で本を閉じている気がする。今回も然り。
あの著名人たちが悩みを抱え迷い、一冊を求めて訪れる。
その弔堂までの道中にある甘酒屋の弥蔵とお得意客の利吉が良い。
ごもっともの中に面白みもある掛け合いが一服の清涼剤のよう。
物語にぐっと明るさが加わった気もした。
相も変わらずのカウンセリング弔堂。
本当にこんな時、きっかけがあったからこそ…なんて妄想できるのも好き。
中でも圧巻なのは苦しみが痛いほど伝わる弥蔵の心炙り。
まさに心の改良。
それを穏やかに強く伝える弔堂の心からの言葉が良い。 -
面白かった!!!弔堂で私の一冊を買いたい!
今回、装丁がビアズリーのヨハネとサロメ、高校時代に傾倒したので個人的にたまりませんな。さらにストーリーにちらと出てくる野鳥に合わせ、挿絵は毛利梅園『梅園禽譜』、非常に素晴らしいチョイスだと思います。
前作と同じく、主役は本、今回のワキは弥蔵(偽名)とおまけの利吉、世界の本の墓場弔堂主/龍典(りょうてん)、丁稚/撓(しほる)で、客として色んなビッグネームが訪れ、その客に”本”を会わせるという豪華な設定。
最初から弥蔵が誰なのかを気にするように誘導されていく。”史乗”から沢辺琢磨の弔堂の説明の時点で、フラグが立ってはいるんだが、各章でちらちらと出身地やらもろもろのキーが明かされ散りばめられていく、超ワクワク展開。別段、奇抜でも新説でもないが、なんといっても、さすが京極節臨場感がたまらない。
今回弔堂を訪れるビッグネームは、徳富蘇峰、岡本綺堂、宮武外骨、柳田國男、竹久夢二、寺田寅彦、斎藤一、佐々木只三郎、以外にも名前だけだが重要パーツを占める人物もたくさんいて、なんというか、有名人を覗くようななんともギルティプレジャー的な喜びも感じたりする。
おもしろかった。 -
書楼弔堂シリーズ3作目。その人が一生であうべき本を紹介する本屋弔堂。とうとうと語る弔堂の言葉は京極堂の憑き物落としにも似て、引き込まれていく。
しかし、今回は店に行く途中の甘酒屋での話の部分も多く、店主の弥蔵が本質に迫るところも多い。弔堂へも本を探すだけでないことも多く話が広がっている。
お客もより一層一筋縄では行かないメンツにしている感もあり楽しめるし、最後の章の弥蔵の思いも、心に染みる。
語り口は小難しい感じなのに、どんどん引き込まれていく。テンポがよいよいうより、語り口にどんどんハマっていくような楽しみがあるのが、よい。 -
2023/09/03読了
#京極夏彦作品
明治初期時代小説。シリーズ第3弾。
古今東西あらゆる書物が揃う「弔堂」。
店主が訪問者と"本当に必要な1冊"を
結ぶストーリー。
登場人物は史上の有名人ばかり。
歴史の陰に弔堂あり?
短編で割と淡々と話が進む。
ディープなイメージで少し敬遠してた
京極夏彦だが、意外と文体が読みやすく
他の作品も挑戦してみようかな。 -
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◆本生かす読み手にささぐ[評]青木千恵(書評家)
<書評>『書楼弔堂 待宵(しょろうとむらいどう まつよい)』京極夏彦 著:東京新聞 TO...◆本生かす読み手にささぐ[評]青木千恵(書評家)
<書評>『書楼弔堂 待宵(しょろうとむらいどう まつよい)』京極夏彦 著:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/2387572023/03/19
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自分にとって人生の指針となるただ一冊の本を売ってくれる書店。だがその本屋は街に馴染みすぎて皆面前で通り過ぎてしまう。
歴史の偉人たちが弔堂で本と出会い…の流れが面白い。竹久夢二の話が私は好き。
私が弔堂を訪れたら一体どんな本を勧められるだろうか。 -
やはり面白い。なんといっても京極夏彦。
6年間待っていたことになるのだな、待つことすら忘れるほどの長さだったようにも思う。しかし、読めばわかる。この質感、緻密な展開、この本を6年間で提供してくれたことに畏怖を覚える。ありがたいことだ。
読み終えて、さらに次を読みたくなる。それは仕方のないことだ。この物語が次々とつながって、本の最後のページが来なければよいと思う。実に面白い。
今回は弔堂店主の語りもよいが、それ以上に弔堂に至るまでの甘酒屋と客の会話にわくわくし、ぞくぞくした。
意外な展開とやはりそうなるかという安心感とが均衡のとれた状態で語りが進んでいく。
ところどころにちりばめられた甘酒屋の生涯に関する伏線、そう来るか、と思いながら、やはりそう来たか、と思わせる甘酒屋。
甘酒屋と若者の関係にあらぬ期待もしたが、会津と東京では偶然が勝ちすぎる。
このシリーズの楽しみの中にあの人やこの人が登場することがある。歴史上のあの人この人、作者の手の中で不思議な人生を繰り広げ、店主の語りで救われていく。
6年後には明治末の世相を味わえるのだろうか。 -
箸休めにサクッと読んだ。
毎回思うけど、読む度に弔堂へ行きたくなる。
人は自分の人生のある部分に後悔し、それについて抱え込むように悩み、苦しむ。
人間の業でもあり当然だと思うけど、今回はより強くそこにスポットを当てているように感じた。
どう向き合って解消し、消化して、また新たな明るい方向へ己の人生の舵を切るか?
辛く苦しい時に読むとより共感性を帯びる優しい一冊。
次の新刊も楽しみです。