何が記者を殺すのか 大阪発ドキュメンタリーの現場から (集英社新書)
- 集英社 (2022年4月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087212105
作品紹介・あらすじ
久米宏氏、推薦!
いま地方発のドキュメンタリー番組が熱い。
中でも、沖縄の基地問題、教科書問題、ネット上でのバッシングなどのテーマに正面から取り組み、維新旋風吹き荒れる大阪の地で孤軍奮闘しているテレビドキュメンタリストの存在が注目を集めている。
本書は、毎日放送の制作番組『なぜペンをとるのか』『沖縄 さまよう木霊』『教育と愛国』『バッシング』などの問題作の取材舞台裏を明かし、ヘイトやデマが飛び交う日本社会に警鐘を鳴らしつつ、深刻な危機に陥っている報道の在り方を問う。
企画編集協力はノンフィクションライターの木村元彦。
◆目次◆
第一章 メディア三部作
1 『映像'15 なぜペンをとるのか〜沖縄の新聞記者たち』
2 『映像'17 沖縄 さまよう木霊〜基地反対運動の素顔』
3 『映像'17 教育と愛国〜教科書でいま何が起きているのか』
第二章 記者が殺される
4 『映像'18 バッシング〜その発信源の背後に何が』
終章 『教育と愛国』の映画化に走り出して
巻末付録 『映像'18 バッシング〜その発信源の背後に何が』台本
◆著者略歴◆
斉加尚代(さいか・ひさよ)
1987年に毎日放送入社後、報道記者等を経て2015年から同放送ドキュメンタリー担当ディレクター。担当番組は『なぜペンをとるのか─沖縄の新聞記者たち』『沖縄 さまよう木霊─基地反対運動の素顔』『バッシング─その発信源の背後に何が』など。『教育と愛国─教科書でいま何が起きているのか』ではギャラクシー賞テレビ部門大賞。映画『教育と愛国』で初監督。個人として「放送ウーマン賞2018」を受賞。著書に『教育と愛国―誰が教室を窒息させるのか』(岩波書店)がある。
感想・レビュー・書評
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2022/4/17 『何が記者を殺すのか 大阪発ドキュメンタリーの現場から』集英社 発刊記念 ゲスト 著者 斉加尚代さん 公立中学校教諭 平井美津子さん 企画No.282 - 隆祥館書店
https://bit.ly/3twazzP
何が記者を殺すのか 大阪発ドキュメンタリーの現場から 斉加 尚代(著/文) - 集英社 | 版元ドットコム
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784087212105 -
もう20年も前になるけれど
M放送局でドキュメンタリー番組を作っている
友だちから聞いた話です
「残念だけれど、今の放送局では これは!という番組を
創って、放映されることは、ほんとうにマレなことになってしまっているんだよね。そして、放送されたとしても深夜の時間枠でしか、放映されないんだよね」
そして、
まことに残念なことだけれど
その構造は未だに続いているようだし
いや ますますひどくなっているのかも知れない。
それだけに斉加尚代 さんのような
存在が きちんと この時代に
いらっしゃることに 希望を感じます
本書の「帯」に
ー終わりなき闘い
と 書かれてあるけれども
その「闘い」を後押しするのは
わたしたち 弱者の一人一人なのだなぁ
と 改めて感じています
記憶は弱者にあり
ーマルセ太郎さんが舞台からよく言っておられた言葉です -
テレビというメディアの劣化は著しく、もはや政権のプロパガンダと化しているのではないかという危惧さえ感じているが、実際にテレビの番組作成という仕事に携わっている人の中にも、著者のようにテレビのジャーナリズムとしての役割を常に問い続けている人がいるということを知ることができた。
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これは勉強になった。MBSのドキュメンタリー「映像」シリーズを見てみたいとYouTubeで探したが見つからない。どうやったら見ることができるのだろう。
斉加さんのお話はポッドキャストで聴いたが、この本を読んで彼女の凄さを強く味わった。
とりわけ「映像’18」ではよくやってくれたと思った。ジャーナリストとして、ひとりの人間としての生きざまにうたれ、自分自身を省みる機会となった。
ありがとうございました。
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斉加尚代さん、かっこよすぎる!斉加さんの言葉を抜粋します。
「記者は、生き方のひとつ、です。ただ会社員という姿ではなく、「個」として物事に対峙できるかどうか、良心に基づく「個」の視点を持っているかどうか、それは生き方そのものです。(略)真理は現場にこそあります。いま社会全体が、世界中がまさしく民主主義の危機です。報道の役割がいっそう求められる激動の時代です。テレビ報道がどのような役割を果たしうるかによって、未来に待ち受ける、社会は変わる、私はそう信じています。」 -
本来ならば筆者・斉加尚代が携わるドキュメンタリーを見るべきなのだが、彼女が作品を制作する過程や裏側について語る本文にて提示される問題点について私たちも思索する機会となる。時の政権が教育現場に躊躇なく足を踏み入れるおぞましさは子供の将来や尊厳を軽視するに値する。この情勢に無関心でいると、取り返しがつかない社会へと転換するのは遠い将来ではない。宗教右派の草の根運動はすでに進行している。あの団体は世界平和や家庭秩序にこだわりジェンダーフリーの否定や憲法改正を掲げる。逆行する価値観に抗わず世界から孤立すれば何が起こるか?そう、戦争が現実となる。私はとことん抗議する。綺麗な日本語じゃないけどね。
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毎日放送ドキュメンタリー担当ディレクターの斉加尚代さんの著書。
ジャーナリストとしての使命感を持ち、記者の背後にいる市民や国民を常に意識し、権力をむき出しにせず抑制的に使うことが政治家に求められる基本的資質だと言う信念で、数々の国民的課題を掘り下げ発信している。
沖縄基地問題、教科書検定問題など、大部分の人には直接的に日常生活には絡んでいない問題だと思われるかも知れないが、沖縄の人たちにとっては、僅か0.6%の国土に7割の米軍基地が集中しており、負担を軽減するとしたら、別の場所に移転するか、日本として防衛のありかたを論じなければならない。
教科書問題は、将来を担う子どもの教育の問題であり、戦前にあった、誤った皇国教育、全体思想に繋がる恐れもあり、きちんとおさえておく必要があるでしょう。
それにしても、政治家とそれに迎合する官僚の劣化と、それに呼応するようにネット上に蔓延るヘイトとフェイク。
うんざりさせられるが、正しい判断が出来るように、情報の吟味と認知が必要だと感じた。 -
様々なニュースの妨害、主に国会議員や小説家によるパッシングを描いている。従軍慰安婦の教科書への記載の削除をめぐる経緯なども記載されているので、読んでおくことが必要と思われる。それだけでなく学問をめぐる科研費への攻撃なども大学教員への攻撃の実態を知るにはいい本であろう。
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沖縄のこと、教科書のこと、慰安婦像のこと。
何度も「これはあの時のあの話だ!」と、ニュースや映画『愛国と教育』『主戦場』で見た場面が次々と頭の中でリンクし始める。ここ数年、政権に対して声を上げた人々を“匿名の誰か”が集団で狙い撃ちする場面を散々見たが、見えないところではもっと卑怯な兵糧攻めがなされていたのでは?と想像される。
個人ができることなんてたかが知れているけれど
来月10日は参議院選挙。維新的な政治家を増やさないようひとりひとりが力を合わせたい。 -
図らずも、並行して読んだ山崎新書と、ほぼ方向性を一にする本書。書店で気になり、その後新聞書評でのおススメを受け、入手・読了。動画媒体を(ネットもみないのでこう書く)ほぼ見ないので、地方局にこういう記者がいることに、まず驚き。でも、色んなところにこういった良心は存在するはずなのに、聞こえてくるのは政権寄りの、ザックリいうと歴史修正的な声が大きいのは何故なんだろう。本書で暴かれる、ボットみたいな自動tweet装置の影響は大きいのか?それならば逆に、実際そう考える人間は、意外に多くない?そんな可能性を信じたくもなる。
https://ryuk...
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1521094.html