世界で最初に飢えるのは日本 食の安全保障をどう守るか (講談社+α新書)

著者 :
  • 講談社
3.82
  • (20)
  • (25)
  • (16)
  • (5)
  • (2)
本棚登録 : 382
感想 : 36
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065301739

作品紹介・あらすじ

いまそこに迫る世界食糧危機、そして最初に飢えるのは日本、国民の6割が餓死するという衝撃の予測……アメリカも中国も助けてくれない。
国産農業を再興し、安全な国民生活を維持するための具体的施策とは?

「大惨事が迫っている」国際機関の警告/コロナで止まった「種・エサ・ヒナ」/ウクライナ戦争で破壊された「シードバンク」/一日三食「イモ」の時代がやってくる/国力低下の日本を直撃「中国の爆買い」/「原油価格高騰」で農家がつぶれる/世界の食を牛耳る「多国籍企業」/食料は武器であり、標的は日本/「食料自給率一〇〇パーセント」は可能だ/「食料はお金で買える」時代は終わった/「成長ホルモン牛肉」の処分地にされる日本/ポテトチップスに使われる「遺伝子組み換えジャガイモ」/農政軽視が招いた「人災としての危機」/「日本の農業は過保護」というウソ/有機農業で中国にも遅れをとる/明るい兆しが見えた「みどりの食料システム戦略」/「有機農業&自然農法」さらなる普及を

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 今後「食糧危機」は「人災」で起こることは間違いない、また日本の総合的な穀物自給率10%未満は餓死を招くことも間違いないだろう。特に日本政府の米国穀物の規制緩和要求から禁止薬物・禁止成長剤混入物でも優先輸入させており、日本の自給率を更に低め農業を壊滅状態にさせている。現実、他国で輸入禁止の発がん物質が混入米国穀物(牛肉・豚肉・鶏卵・小麦・大豆・ポテト・レモン等)に対して産業省、財務省は目を瞑り、国民の健康を無視し始めた。例として発がん物質である禁止薬物・成長剤・除草剤は「ラクトパミン」「エストロゲン」「グリホサート」などであり米国産日本向けの肉類、穀物類、肥料に含まれている。(米国産国内向けと日本向け発がん物質等危険薬物濃度比では日本向けは米国内向けの6倍から150倍の濃度にも達している)まさにあらゆる面での米国頼りに政治家の「今だけ、金だけ、自分だけ」主義が横行しているのが恐ろしい。はっきり言って米国穀物メジャー企業に対して、危険、禁止薬物使用の即時輸入停止と輸入基準の健康安全品質管理見直しが最も重要だ。出来ない場合、今後日本は発がん物質等で患者が増え、それこそ米国の医薬に完全に頼る形になる。

  • コロナ禍やロシア・ウクライナ戦争など近年の世界情勢からより浮き彫りになった日本の食料危機問題。もともと食料自給率の低さがずっと続いてきたことは周知の事実だが、その実情や何が問題なのかについて、知らないことが多いと改めて気付かされた。

    比較的記憶に新しいのは牛乳の増産と廃棄に関するニュースで、増産を命じながら余ったら資金援助もせずに廃棄せよというのが日本の政治。このこと一つとっても日本の農業に対する政府の態度と政策の愚かさが際立つ。
    他の先進国では様々な手段で自国の農業を守っているのに対し、日本では真逆のことをしている現状がある。それでも日本の農業は補助金漬けで守られているという一部の主張が大きな顔をして独り歩きしている。

    野菜の種や家畜の飼料が輸入頼りであること、農薬のチェックが甘く、他国では規制されるような危険なものも知らずのうちに使われていることも新たに知った。
    政府はいざとなれば三食イモ生活を推奨する作戦を考えているというが、飽食の時代を経験してきた国民がそんな戦時下のような食生活に絶えられるとも思えない。その前にできることがもっとたくさんあるだろうと思う。

    日本の食糧危機は人災によるものということをつくづく考えさせられる。今の政治を根本から変えないことには、衝撃的なタイトルの通り、世界で最初に飢えるのは日本ということになってしまうだろう。

    一消費者としてできることは何だろう。
    ちょうど今朝のテレビでスーパー「まるおか」が出てきたけれど、いいものだけを厳選して届けるという信念をもった小売が増えるといいなと思う。買うときにいいものを選ぶことも小さな行動かもしれないが、大事なことだ。
    消費者も身近な「食」に対して関心を持って考える姿勢が求められる。
    ひとまずお米をもっと食べようかな。

  • 面白かった。
    タイトル付けが上手いね。気になって手に取ってしまう。

    日本の食料自給率が低いというのは、もはや周知の事実だと思う。
    しかも、本書によれば、その自給率はカロリーベースではない。生きるのに必要な食料は、本当はもっと足りない。
    さらに、その算出でさえ、楽観的な見方を含むらしい。

    食料といえば、穀物や食肉などを思い浮かべるけれど、必要なのはそれらだけではない。植物を育てるにはカリウムが必要。そのカリウムに関しては、日本はほぼ全てを輸入に頼っている。というのは知らなかった。

    よく言われるのは、日本の農業政策は過保護だということ。農業が過剰に守られている、という意味。そして海外の農業は自由放任というイメージがある。
    しかし現実は真逆。
    海外はしっかりと農政をしている。自国の農業を守るため、助成金や貿易交渉をしっかりやる。
    そして日本はと言えば、放任。というか放置。という現実があるらしい。

    諸悪の根源は、財務省。というより、省庁間のバランスかな。
    昔は農林水産省がもっと発言力を持っていた。
    それが、安倍政権の頃から壊れていった。安倍政権が人事権を行使して、省庁間のバランスが壊れてしまった。これはとても有名な話。だけど、農政にまで影響していたとは…。
    さらに日米の農産品の貿易について。日本は過剰生産を引き受ける立場にある。官僚の間では、自国の農業の方を大切にしよう、と言える雰囲気ですらないらしい。
    問題は根深い。

    さらに、我々一般市民の意識の問題もある。
    台湾で食肉に関するデモが起こっていた、なんて知らなかった。
    輸入品の安全性を気にする日本人って本当に少ないよね。けれど、人間に悪影響を及ぼすホルモンは確実に使われている。そんな食品を日本は受け入れまくっている。とてもショッキングな事実。

    最後に食料自給率の向上に関して。
    金額ベースの目標は誤ることがある。金額ベースならば、高価なフルーツを量産すればいい。けれど、それだけでは生きて行くことはできない。カロリーベースでの目標値が重要。というのは学びがった。

    面白かった。大変勉強になる一冊。

  • 3.89/218
    『いまそこに迫る世界食糧危機、そして最初に飢えるのは日本、国民の6割が餓死するという衝撃の予測……アメリカも中国も助けてくれない。
    国産農業を再興し、安全な国民生活を維持するための具体的施策とは?』
    (「講談社BOOK倶楽部」サイトより▽)
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000369740

    冒頭
    『 まえがき
    「国際物流停止による世界の餓死者が日本に集中する」という衝撃的な研究成果を朝日新聞が報じた。米国ラトガース大学の研究者らが、局地的な核戦争が勃発した場合、直接的な被爆による死者は二七〇〇万人だが、「核の冬」による食料生産の減少と物流停止による二年後の餓死者は、食料自給率の低い日本に集中し、世界全体で二・五五億人の餓死者のうち、約三割の七二〇〇万人が日本の餓死者(日本の人口の六割)と推定した。』

    『世界で最初に飢えるのは日本―食の安全保障をどう守るか』
    著者:鈴木 宣弘
    出版社 ‏: ‎講談社
    発売日 ‏: ‎2022/11/18
    新書 ‏: ‎192ページ


    目次
    序章 「クワトロ・ショック」が日本を襲う
    「飢餓」が現実になる日
    「大惨事が迫っている」国際機関の警告
    コロナで止まった「種・エサ・ヒナ」
    ウクライナ戦争で破壊された「シードバンク」
    など

    第一章 世界を襲う「食の一〇大リスク」
    穀倉地帯を直撃した「ウクライナ戦争」
    国力低下の日本を直撃「中国の爆買い」
    人手不足を悪化させた「コロナショック」
    もはや当たり前になった「異常気象」
    「原油価格高騰」で農家がつぶれる
    など

    第二章 最初に飢えるのは日本
    日本の食料自給率はなぜ下がったのか
    コメ中心の食を壊滅させた「洋食推進運動」
    食料は武器であり、標的は日本
    「食料自給率一〇〇パーセント」は可能か
    など

    第三章 日本人が知らない「危険な輸入食品」
    台湾で「アメリカ産豚肉の輸入反対デモ」が起きたワケ
    「成長ホルモン牛肉」の処分地にされる日本
    「輸入小麦は危険」の理由
    「日米レモン戦争」とポストハーベスト農薬の真実
    ポテトチップスに使われる「遺伝子組み換えジャガイモ」 
    など

    第四章 食料危機は「人災」で起こる
    世界中で「土」が失われている
    化学肥料農業を脅かす「リン枯渇問題」と「窒素問題」
    農薬が効かない「耐性雑草」の恐ろしさ
    世界に広がる「デッドゾーン」
    など

    第五章 農業再興戦略
    「日本の農業は過保護」というウソ
    日本農業の「三つの虚構」
    農業の大規模化はムリ
    有機農業で中国にも遅れをとる
    など

  •  2022年2月に始まったウクライナ戦争で、燃料費や物価が高騰し、食品も例外なく値上げが続き、国民を苦しめている。にも関わらず、政府は防衛費(軍事費)予算を増額し、敵基地攻撃能力を高めるなど安保3文書を閣議決定するなど、専守防衛をかなぐり捨てて,貧国強兵に驀進(ばくしん)している。本書の著者は、国防安全保障より日本国内の食料・農業を守ることこそが防衛の要であり、それこそ安全保障と説諭する。世界と比較して日本の農業の実態と食の実態を多面的に検証し、批判的意見にも適切に反証する。食糧危機が起きたとき「オスプレイやF35戦闘機で餓えはしのげません」と喝破(かっぱ)する。政府の食糧危機対策も運動場やゴルフ場にサツマイモを植えて、餓えをしのぐ提案がされているが、まるでアジア・太平洋戦争時の対策であり、日本の食料危機への警鐘をならす作品として、多くの人に読んでもらいたい。

  • とりあえず、私はこの手の話に共感するタイプの人間だなということがわかった。
    理由を言語化するとこまではいってない。


    途中ひろゆきの意見へ物申すところがある。
    ひろゆきの意図が本書だとよくわからなかったので、調べて自分なりにまとめてみる。

    ひろゆきの意見
    カロリーベースの食料自給率をあげたとて、そもそものエネルギー自給率が低いのだから、有事の際に燃料が止められてしまってはトラクターを動かす燃料も作れたとして配送する燃料もなく、結局食料は作れない&配れないでしょ
    それなら、生産額ベースの自給率を見てみると、欧米各国と同じくらいのだし、今のままでいい。安く作れるものだけ国内でつくり、国内で作ると高くつくものは輸入すれば良い。

    なんとなくひろゆきの言いたいことが分かる気がする。
    だけども、実際に食料がなくなったらまじで飢えるというのは事実ぽい
    そんな有事になったら、燃料がなくてもどうやってでも食料を作るだろうし、這ってでも生産地に行く気がするので、少なくとも、種や肥料やヒナが入ってこなくてもなんとかして食料が作れる状態にはしておいた方がいいのでは?と思う。
    そして有事が起こる確率も気になるところではある。確率はめっちゃ低いけど、起きたらマジでやばいことだけど、この話は保険みたいに責任移転できないから、その場合は政府の仕事なのか?それが=食料安全保障ってことなのかなー?って理解した。

    あとあと、この本読んでて思ったのはこないだ読んだ「食べものから学ぶ世界史」で知ったフードレジームがめっちゃ出てくる!本気でアメリカって自国ファーストなんだなぁと。著者は「私」とか「自由主義」と表現してるもの。まさにそうだよな、アメリカ人って公の意識があるんだかないんだか本当に謎。ダブルスタンダードってよく聞くけどそういうことなのかなぁ。

  • 題名は刺激的であり農政の専門家なので少し偏った考えもあったが、概ね納得した。
    中国に敵対するアメリカに盲従して防衛費を簡単にGNP比1%から2%に上げて対中国の最前線に立とうとしているが、確かに食料安全保障は全く考えられていない。
    国力が下がって食料の買い負ける事が多くなっていると聞く。食料自給率が低く買い負けが続くとどうなるんだろう。
    早めに手を打たないとアジアの下位国になるのが目に見えている。

  • 「今だけ、カネだけ、自分だけ」の食の安全保障をめぐる農政への批判の書

  • 日本の食料自給率が低いことは知られているが、具体的に種やヒナ、(鶏の)エサなどはほぼ輸入に頼っていることはあまり知られていないかもしれない。
    私自身も「日本では野菜の種の九割を輸入に頼っている」(p20)と知って驚いた。
    これは非常に由々しきことである。
    食を制する者は世界を制すると言われるが、まさにアメリカは「食料は武器より安い武器」(p27)だと位置付け、独自の食料政略の下、自国の食糧を安く輸出し、世界の食糧事情をコントロールしようとしている。(そしてすでに日本はコントロールされている)
    本書を読むと、食料の輸出や輸入に関わる今までの政策はアメリカの要望を聞くためのものであったのだとわかる。それにより、日本の食糧自給率の低下、食の安全基準の低下などが起きている。
    食は命の根幹である。
    経済より優先されるべきものである。
    著者が言うように政治家は「今だけ、カネだけ、自分だけ」の目先の自己利益を追求しているだけのように思える。
    政治に頼るだけでなく、国民自ら食の安全を守らなければならないだろう。
    そのためには、より安全な食品を、少し高くとも買うことのできる人は買うべきである。
    また、本書に出てくる「スーパーまるおか」のような食を真面目に考える小売店が増えることを期待したい。
    高村光太郎が「食うものだけは自給したい。個人でも、国家でも、これなくして真の独立はない」(p32)と言ったそうだが、まさにそうだと思う。
    戦時下における食糧不足の心配以前に、平時から真の独立を目指して輸入に頼らない食の自給を目指さなければいけない。

  • 今世紀に入った頃から、日本って兵糧攻めされたら一発で滅ぶよなとなんとなく思っていました。ロシアのウクライナ侵攻で、食糧を輸入に頼っているとまずいというのが顕在化しましたが、そうした、自給自足してないといかにやばいかというのを、データに基づいて検証した、素晴らしい本だと思いました。(しかも土や土地にまで言及あり)

    自分はデスクワークをする貧乏な未婚中年男性ですが、体力があれば農業やりたかったです・・・。
    そもそも、あの、戦時中に、都会の人が食糧がなくて、衣類と交換してもらいに田舎の農家に行くも相手にされない、という話がありますが、まさにそんなことになるんじゃないかと。最終的に命をつなぐのは食べるものに他なりません。本当に何もなくなったら、いちばん権力があるのは食糧生産者ですし、それは人として生きる以上、文句なくそれでいいんじゃないかと思います。

    昨今のフードロスなどもなんなんだろうと思います。ここ10年ぐらい農家さんや漁師さんも、高級品を作って海外に輸出することで稼いでいた方も多いようで、それ自体は悪いことではありませんが、ここへ来ての輸出が滞って助けてくれというのも何か変な感じ。たしかに、購買力がなくなってしまった日本国内という経済問題は解決されるべきものですが、こういうときに庶民がそっぽを向いてしまうというのは、庶民に「何をいまさら」と呆れられていることのあらわれな気がします。やっぱり、そこは今は儲からなくても、安くして庶民へ回したほうが、世のため人のためになるような気が・・・。

    庶民のために食糧を地道に作る農家さんや漁師さんが、いちばん儲かる世の中になって欲しいと、常々思います。

全36件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1958年三重県生まれ。1982年東京大学農学部卒業。農林水産省、九州大学教
授を経て、2006年より東京大学教授。1998~2010年(夏季)米国コーネル大
学客員教授。2006~2014年学術会議連携会員。一般財団法人「食料安全保障
推進財団」理事長。『食の戦争』(文藝春秋 2013年)、『亡国の漁業権開放~協
同組合と資源・地域・国境の崩壊』(筑波書房 2017年)、『農業消滅』(平凡社
新書 2021年)、『協同組合と農業経済~共生システムの経済理論』(東京大学
出版会 2022年 食農資源経済学会賞受賞)、『世界で最初に飢えるのは日本』
(講談社 2022年)、『マンガでわかる 日本の食の危機』(方丈社 2023年)他、

「2023年 『もうひとつの「食料危機」を回避する選択』 で使われていた紹介文から引用しています。」

鈴木宣弘の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×