中国パンダ外交史 (講談社選書メチエ)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065297278

作品紹介・あらすじ

ちょうど50年前の1972年10月、日中友好の証として、上野動物園に2頭のパンダがやってきた。しかし、中国がパンダの外交的価値に気づいたのは、1930年代にさかのぼる。戦争と革命、経済成長の激動の歴史のなかで、パンダはいかに世界を魅了し、政治利用されてきたか。パンダを主人公にこの100年あまりを読み直す、異色の中国近代外交史。
19世紀の半ば、パンダはあるフランス人宣教師によって「発見」され、世界に紹介された。欧米人探検家が初めてパンダを射止めたのは1929年。日中戦争下の1941年には、蒋介石の妻・宋美齢が懐柔策としてアメリカにパンダを贈る。1949年に成立した中国共産党政権も、この珍獣の価値を見逃さなかった。人民の愛国思想を育むために北京動物園で展示を始めたほか、モスクワや北朝鮮に贈呈され、ロンドンでも大歓迎される。
日本でのパンダブームは、1972年のランラン・カンカンの来日以前に始まっていた。1970年創刊の『anan』ですでにマスコットとなり、1971年10月にはロンドン動物園でパンダと対面した昭和天皇が満面の笑顔をみせるさまが報道された。
中国はその後も、国際政治、地球環境などさまざまな問題と絡ませながら、近代国家の自己像をパンダを通して国際社会にアピールし、近年では、一帯一路構想下でのパンダの送り先や、二度の北京五輪で採用されたパンダのキャラクターなど、その利用はますます巧みになっている。
2011年刊の『パンダ外交』(メディアファクトリー新書)を全面改訂し、新章を加筆。

目次

はじめに
第一章 パンダ、世界に発見される
第二章 パンダ、他国に贈られる
第三章 パンダ、冷戦に巻き込まれる
第四章 パンダ、日本にやってくる
第五章 パンダ、外貨を稼ぐ
第六章 パンダ、大国を代表する
おわりに
主要参考資料
索引

感想・レビュー・書評

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  • 1869年にパンダが世界に「発見」されてから、中華民国、中華人民共和国とパンダが中国の外交にどう利用されてきたかを歴史的に解き明かす。
    中国の「パンダ外交」の歴史というだけでなく、日本との関わりも含め、パンダと人間の関わりの歴史が紐解かれており、興味深く読んだ。

  • 珍獣を外交手段とする中国。その巧妙さが光る。あくまでもレンタル、譲渡ではなく。

    パンダが発見されて、欧米各国で人気が出て、また中国の立場も強くなり、パンダ外交は大成功を収めている。

    バンダを通じて中国の外交を見つめ直した傑作。

  • 中国人の誰も気にかけていなかった熊猫が欧米人により「発見」され「輸出」されたのがきっかけとなって以来、百年を経て外交政治の道具としてパンダ・ブランドを確立した中国のしたたかさ。似たような経緯の浮世絵、さらにはマンガが美術あるいはサブカル止まりになってる日本とは国家としての必死さが違うということでしょう。

  • パンダから外交史を読み解くっていう視点が面白い。表紙でもうまーくパンダを表現!
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  • カワイイと人気のある動物にパンダがいる。




    中国はパンダを外交にうまく利用している。




    パンダを「発見」したのは19世紀半ばだった。




    1869年3月にフランスの宣教師、ダヴィッド神父が動物収集に訪れた際、見つけた。




    その後、パンダに対する欧米の関心が高まっていったが、肝心の中国は関心がなかったようだ。




    それが変わったのは、蔣介石率いる中国国民党政権がパンダの重要性に気づいてからだ。




    1939年1月にシカゴに渡ったパンダ「メイライ」を最後に、自由に外国に持ち出せなくなった。




    日本との戦争で、中国政府はパンダを最大限利用して、米国民の中国寄りにする重要な役割を果たした。




    こういうところはしたたかだなあ。どこかの外務省も見習ったらと思わずにはいられない。




    戦後になると1949年に成立した中華人民共和国がパンダ外交を全面に押し出していく。




    パンダはカワイイが、その背後にいる「くまのプーさん」は何を企んでいるかわからないので怖い。





    本物のパンダでなくてもアバターでもいいと思うが。アバターにすると中国産なのだから著作権侵害あるよなんて、あの報道官がかみついたりして。

  • パンダだけでなくトキの話も、一瞬、出てくる。
    ところで、日本と韓国は両国で絶滅したコウノトリを、中国とロシアの協力を得ながら復活させることを試みている。先に人工繁殖に成功した日本で生まれたコウノトリが、日本と韓国を行き来し橋渡しとなったらしいが、ある局面では相容れなくても別の局面では価値観を共有し協力しあい、決して繋がりを絶えさせないということは、人間関係でも国同士の関係でも言えることではないか。

  •  改訂前の新書は既読なので、書き下ろし新章を中心に読む。大国化が進んだ2010年代以降のパンダ外交を描く。
     2015年の米中首脳夫人パンダ命名セレモニーは、外交失敗の印象を薄める「パンダ・ウォッシング」との指摘。日中関係悪化の中でも日本社会でパンダ人気は続いたが、パンダ誘致に取り組めば日本の政治家は中国に対し萎縮せざるを得なくなる可能性。
     一方の中国側から見ると、パンダを提供する国の増加というパンダ外交の多角化。また北京五輪でのピン・ドゥンドゥンには、外国人に人気があるパンダ自体に加え、科学技術や宇宙、未来といった要素も込められているとする。

  • 題材がが面白い。もちろん中身も面白かった。
    パンダはコピー(=繁殖)すら中国に所有権のあるバクリができない最強のソフトパワーということ。

  • ふむ

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著者プロフィール

東京女子大学現代教養学部准教授

「2022年 『概説 中華圏の戦後史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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