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苦しい自問自答に寄り添うものがたり
いっぴきの でんでんむしが ありました。あるひ そのでんでんむしは たいへんなことに きがつきました。「わたしは いままで うっかりしていたけれど わたしのせなかの からのなかには かなしみがいっぱい つまっているではないか」このかなしみは どうしたらよいでしょう。でんでんむしは おともだちのでんでんむしのところに やっていきました。（「でんでんむしのかなしみ」冒頭より）🐌このレビューを投稿する前日、平成31年4月10日は、天皇皇后の60回目の御成婚記念日。そこで、美智子皇后が大事にされてきた一冊を、私も紹介してみようと思った次第です。。🐌初めて民間から天皇家へ入られ注目を集めながら、他方ひどく非難された当初、精神的苦痛から一時的に失声症を抱えられた美智子皇后が、こころの拠りどころの一つとされたのが、この「でんでんむしのかなしみ」であったといいます。相談を受けた他のでんでんむしたちが各々、殻の中に“かなしみ”を背負っていることを打ち明けると、はじめのでんでんむしは自分ばかり嘆くのをやめ、悲しみをこらえて生きることを決意する。という内容です。🐌新見南吉の描いたお話が、美智子皇后の抱える物語性に寄り添ったと言えるかと思います。そして、語弊を恐れずに言えば、美智子皇后の感性が特別であったというのではなく、物語はそれ自体、どのような者にでも分け隔てなく、そういった経験を与えてくれるものなのです。「過去の」「今の」そして「先の」自分に寄り添ってくれる物語が、誰にでも必ずあります。 創作されたり、継承されたりしてきた中に、必ずです。🐌美智子皇后は、こころにあったものを解き放たれたでしょうか、それとも、まだ抱えられたままおられるのでしょうか。こころの深い人は、いつも自問自答します。 新見南吉もそうでした。成績アップのためとか何とか、薄っぺらく「読書」が叫ばれて久しいですが、こころの深さを養うのもまた、絵本から始まる読書の旅。当レビューからも、絵本に児童書に興味をもつ人の増えてゆくことを願ってやみません。※イラストレーターは異なりますが、英語版もあります。ご参考まで
