本書の「解説」が論じるように香港の「勇武派」はちょうど半世紀前の日本新左翼のスタイルと酷似しているが、そうであればあるほど、そうなった一人一人の証言は重要な検討の対象となる。実際、半世紀前の日本と同じく、「暴力は民衆の離反を招く」「権力のリアクションを考えろ」との非暴力主義者との激しい論争が香港でも起きていて、彼ら「勇武派」は激しく論争している。そして、もちろん、ここで登場する10名の「勇武派」は非暴力主義こそが運動を駄目にしたとの主張をここでも繰り返しているが、客観的に見れば、非暴力主義の方が正しかったというべきであろう。彼ら「勇武派」が非暴力派の抑制なしに暴走をしたなら、本当に銃撃戦をやり、爆弾テロを行なったこととなる。これは本書が証明していることとなったが、それで本当に中国政府に勝てると思わない限り、この結論は変わらない。これは、本書を出版した著者の意図はどうあれ、である。
が、このように考えつつ読んでいて、ふと考えてしまうのは、ここで登場している10名は皆が「兵卒」であって、真の意味の「指揮官」とは言えないということである。たとえば、この8番目の証言者は「上層は下部に秘密で銃を集めていた」と証言しているが、そうした裏の「指揮官」らは前線に登場していないので逮捕されず、よって彼らが本当に考えていたことは明らかとされていない。それとの対比で言うと、本書に登場の10名の証言者は誰もが眼前の警察に怒り狂ってある時急に「目覚めた」末端活動家にすぎない。これは、アメリカなど海外から相当規模で流れ込んだとされる資金の流れが本書でまったく見えないことにも表れている。たとえば、ジョシュア・ウォンやアグネス・チョウの銀行口座には数千万円から1億円相当の資金が貯められていたが、「勇武派」にはそれがなかったのかどうか、銃を集めるだけの資金がどこから来たのか、など、私として最も関心のあるテーマに迫れていないのが残念である。
また、ここまで言えば、彼らの暴力の対象として述べられていたのがほぼ警察(とマフィア)に限られていたのも気にかかる。私自身、この運動期間に3度香港を訪問し、特に11月に思ったのは中国系の銀行支店や商店が悉く破壊されていたことである。本書を読んでいると彼らは(ごくわずかな例外的言及を除けば)警察と闘ったのだと錯覚するが、現地調査した私には、「中国人と闘った」のだと見える。ので、なぜにそこまで彼らを憎んだのか、私が欲しかったのはそういう心理分析であった。
著者は本書「序文」の最後で「本書にどれほどの偏りがあるかは読者の判断にゆだねたい」と述べている。上記の意味で著者自身が「偏り」を認めているかに見えるこの言葉が非常に気になった次第である。
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香港秘密行動: 「勇武派」10人の証言 単行本 – 2022/6/29
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香港の自由を守るためには、
「暴力」が必要だった――
香港の民主化をめぐる戦いで、警察との激しい衝突で有名になった
「勇武派」の若者10人に直接インタビューした貴重なルポルタージュ。
中国共産党による力の支配が貫徹する契機となった2019年のデモ当時の内幕を
現在は海外で逃亡生活を送っている当事者たちが包み隠さず語る。
権威主義国家の暴走が世界を揺るがしているいま、必読の一冊!
◇「勇武派」とは――
香港の民主化闘争において火炎瓶やレンガ、その他の武器などを用いて警察部隊を攻撃し、さらには施設の破壊、警官襲撃などもおこなった過激派の若者たちの呼称。
《勝てるはずのない「負け戦」になぜ、多くの若者が人生を賭けて参加したのだろうか。多くの代償を払うこの戦いに身を投じて後悔することはなかったのだろうか。負け戦に果敢に参加した若者たちの青春群像がリアルに、等身大に表現されているのは、本書の最大の魅力である。彼らの戦いに賭けたその思い、仲間への気遣いだけでなく、体を張った行動の息づかいや心音すら感じられるようで、読んでいて正直、胸が痛くなった。》
本書「解説」より
「暴力」が必要だった――
香港の民主化をめぐる戦いで、警察との激しい衝突で有名になった
「勇武派」の若者10人に直接インタビューした貴重なルポルタージュ。
中国共産党による力の支配が貫徹する契機となった2019年のデモ当時の内幕を
現在は海外で逃亡生活を送っている当事者たちが包み隠さず語る。
権威主義国家の暴走が世界を揺るがしているいま、必読の一冊!
◇「勇武派」とは――
香港の民主化闘争において火炎瓶やレンガ、その他の武器などを用いて警察部隊を攻撃し、さらには施設の破壊、警官襲撃などもおこなった過激派の若者たちの呼称。
《勝てるはずのない「負け戦」になぜ、多くの若者が人生を賭けて参加したのだろうか。多くの代償を払うこの戦いに身を投じて後悔することはなかったのだろうか。負け戦に果敢に参加した若者たちの青春群像がリアルに、等身大に表現されているのは、本書の最大の魅力である。彼らの戦いに賭けたその思い、仲間への気遣いだけでなく、体を張った行動の息づかいや心音すら感じられるようで、読んでいて正直、胸が痛くなった。》
本書「解説」より
- 本の長さ288ページ
- 言語日本語
- 出版社草思社
- 発売日2022/6/29
- 寸法13.7 x 2.4 x 19.4 cm
- ISBN-104794225857
- ISBN-13978-4794225856
商品の説明
著者について
楊威利修(ヤンウェンリー・シュウ)
英国統治時代の香港に生まれる。中産階級の家庭に育ち、学校卒業後はスラッシャー(仕事や職種を複数持つ人)として生計を立てる。雨傘運動失敗ののち、汎民主派支持や「民主中國建設」の観念から脱却。2019年の「逃亡犯条例」改正反対運動では、抗議闘争者のために友人らと後方支援活動をおこなう。その後香港を離れ、海外に逃亡した勇武派への支援・協力を続けている。
英国統治時代の香港に生まれる。中産階級の家庭に育ち、学校卒業後はスラッシャー(仕事や職種を複数持つ人)として生計を立てる。雨傘運動失敗ののち、汎民主派支持や「民主中國建設」の観念から脱却。2019年の「逃亡犯条例」改正反対運動では、抗議闘争者のために友人らと後方支援活動をおこなう。その後香港を離れ、海外に逃亡した勇武派への支援・協力を続けている。
登録情報
- 出版社 : 草思社 (2022/6/29)
- 発売日 : 2022/6/29
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 288ページ
- ISBN-10 : 4794225857
- ISBN-13 : 978-4794225856
- 寸法 : 13.7 x 2.4 x 19.4 cm
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