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文庫 ルーズベルトの開戦責任 (草思社文庫 フ 2-1) 文庫 – 2017/4/4

4.4 5つ星のうち4.4 239個の評価

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元共和党重鎮が、戦争反対世論をねじふせ、対日最後通牒を隠してアメリカを大戦に導いたとしてルーズベルトの責任を厳しく追及。太平洋戦史を一変させる重大証言。
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商品の説明

著者について

1888-1991年。ニューヨークのオランダ系WASP(通称ニッカーボッカー)の名門に生まれる。祖父はグラント大統領政権で国務長官をつとめ、父は下院議員に選出された政治家一家。ハーバード大学卒業後、1914年、ニューヨーク州議会議員となる。第1次大戦では黒人部隊を指揮して戦う。帰還後の20年、下院議員に選出(~45年)。共和党の重鎮として、また伝統的な非干渉主義の立場から第2次大戦への参戦に反対するも、対日最後通牒(ハル・ノート)の存在を隠して対日参戦を訴えたルーズベルトに同調する議会演説を行なう。後にこれを深く後悔、戦後は一貫してルーズベルトの、ニューディール政策に代表される議会を軽視した国内政治手法とスターリンに宥和的な外交を批判し、大統領の開戦責任を追及した。

日本近現代史研究家。北米在住。1954年、静岡県下田市出身。77年、東京大学経済学部卒業。30年にわたり米国・カナダでビジネスに従事。米英史料を広く渉猟し、日本開国以来の日米関係を新たな視点でとらえた著作が高く評価される。著書に『日本開国』『日米衝突の根源』『日米衝突の萌芽』(第22回山本七平賞奨励賞受賞)『朝鮮開国と日清戦争』『アメリカの対日政策を読み解く』など。訳書にマクファーレン『日本1852』、マックウィリアムス『日米開戦の人種的側面 アメリカの反省1944』など。

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 草思社; 単行本版 (2017/4/4)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2017/4/4
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 文庫 ‏ : ‎ 432ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4794222661
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4794222664
  • 寸法 ‏ : ‎ 10.6 x 2.2 x 15.3 cm
  • カスタマーレビュー:
    4.4 5つ星のうち4.4 239個の評価

著者について

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ハミルトン・フィッシュ
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カスタマーレビュー

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日米開戦は、窮鼠(日本)が猫(ルーズベルト)に仕掛けられたものだったとは。
4 星
日米開戦は、窮鼠(日本)が猫(ルーズベルト)に仕掛けられたものだったとは。
フランクリン・ルーズベルトと言えば、ニューディール政策。これによって、アメリカを強大な国へと導いた偉大な大統領と教わったし、そのイメージは今までずっと変わらないで来た。それは間違いだというルーズベルト告発の本である。ニューディールは失敗だった。その挽回をすべくルーズベルトが打った手が、アメリカのヨーロッパ戦線への参戦であり、日本を開戦に追い込むことだった。そしてそれは見事成功した。著者は同時代の共和党所属下院議員のハミルトン・フィッシュ。彼は元来、外国での戦争にアメリカが参戦することに反対の非干渉主義者だったが、日本の真珠湾攻撃を機に対日戦争容認派に転じ、ルーズベルトを擁護し対日戦線布告を支持する演説をしたのだった。名演説と言われた。これによりヨーロッパの戦争はアメリカとアジアを巻き込んだ世界大戦になったのである。大戦勝利の直前1944年4月ルーズベルトは脳卒中で死去する。終戦後、ハル・ノートなどにより、彼の対日外交の詳細が判明し、フィッシュは、対日戦の本質が、窮鼠(日本)に猫をかませた(=真珠湾攻撃)のはルーズベルトだったことを知る。戦後の研究でルーズベルト外交の陰惨さが明らかになるにつけ、彼の怒りは日に日に増した。その怒りを公表したのがこの著作である。上梓は1976年。真珠湾から35年、ルーズベルトの死から31年、フィッシュ87歳であった。このタイムラグは、大戦後の国際情勢、すなわち母国アメリカが世界の各地で共産主義と対峙している事実と自国大統領の失敗を糾弾できないというフィッシュの見識の上に立った辛抱だったのだろう。終章では、ドイツ降伏の報を受けたローマ法王ピウス12世のラジオ演説を引用し、続けてこう記す。「我が国憲法は人類最高の英知の結晶である。自由の理念が保証され、自由であることを謳歌出来る国である。宗教や民族で差別を受けない。それがアメリカである。その精神を微塵たりとも毀損してはならない」と。なんと格調高く誇り高いことか。実に読み応えのある本だった。その因の一つは渡辺惣樹の訳にある。上手い。ウィキペディアは彼を《日本の歴史評論家》と分類しているが、一級のアメリカ近現代史家とも言えるだろう。山本七平賞奨励賞を受賞している。本書の原題は『FDR:The Other Side of the Coin』。コインの表側『正史』に対するコインの裏側『外史』の意である。一方この草思社文庫版のタイトルは『ルーズベルトの開戦責任』。ちょっと直截過ぎないか。日本の読者に真実を知らせたいとの思いがそうさせたものだろうが。私なら、正題『ルーズベルトの犯罪』副題『アメリカを戦争に巻き込んだ男』としたいところ。
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上位レビュー、対象国: 日本

2023年8月24日に日本でレビュー済み
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ルーズベルトと大統領の座を争った人物の分析というか批評。第一章は開戦までのルーズベルトの性格、行動からなぜ開戦に至ったかを述べるとても興味深い内容であったが、後半はルーズベルトの人格批判に終始して少しもったいなかった。
1人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2023年5月9日に日本でレビュー済み
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大変参考位なった
2023年8月14日に日本でレビュー済み
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アメリカの民主党政権下のルーズベルト大統領は、意識して日本が戦争を起こすように仕掛けた責任者?
2020年6月28日に日本でレビュー済み
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「America First」である。

筆者は共和党員で、FDRがその自伝で「最大の敵」と称した。

本書を「学校の教科書にすべきである。
いや、お人よしの日本人はそんなことはしないだろうから、せめて私は自分の子供たちの「必読書」とする。

「負けるとわかる戦争をなせしたのか」という日本人の自虐的考えから「我々の先人は正義のために立ち上がった」という事実を子供たちに教えなくてはならない。

また「アメリカが悪かった」という短絡的な結論でなく、「敵を正しく見極めて戦うべき」と我々は反省すべき。
「敵」は常に同じような戦法で民主主義を威嚇する。

以下を考えれば、「敵」の戦術は「今日もまったく変わらない」と感じる。
1) 意見の合わない人間をRacist, Facist, 偏見(者)と糾弾する。
2) 「疑わしきは罰すべき」とレッテルを貼り、「弾劾!」と騒ぐ。
3) 自由に意見を述べる権利を否定し、「少数意見を持つものだけが意見を述べられる」異常な光景とつくる。
4) 自分たちは一見「平和主義者」とみせかけ、いたずらに対立を煽り、そして干渉する。

国靖かれ、そして God Bless America。

私がメモを残した箇所を引用する。

(p24) 英国チャーチル政権の戦時生産委員であったオリバー・リトルトンはロンドンを訪れた米国商工会議所のメンバーに次のように語っている(1944年)。
「日本は挑発され、真珠湾攻撃に追い込まれた。アメリカが戦争に追い込まれたなどどいう主張は歴史の茶番(a travesty in history)である」

(p71) FDR政権とニューディーラーらは使える組織すべてを動員して、戦争ヒステリーを煽るプロパガンダを開始。この動きに対抗するためには全国的な組織が必要だった。アメリカ第1主義委員会(The America First Committee)ができたのは、FDR政権のプロパガンダに対抗するため。

(p75) 世論が非干渉か参戦かを真剣に考え始めると、FDR政権は言葉のマジックを使うようになった。彼らは参戦に反対する者に対して「孤立主義者」というレッテルを貼るようになった。「孤立主義」という言葉持つネガティブなイメージを使い、相対的に干渉主義者や世界国家を目指す連中の価値を高めることが狙い。

(p76) 参戦に反対するものに浴びせられる言葉は「孤立主義者」だけでなはなかった。「何でも反対する頑固者」「ナチス」「ファシスト」「ダチョウ」「マムシ野郎」。

(p77) 私(筆者)はかつで、このことを、NBCのラジオネットワークを使って訴えた。(注力)「参戦に積極的なものもそうでないものも、わが国では、自由にその意見を述べる権利がある。しかし、積極派である15%の少数意見を持つものだけが、それを述べることができるような異常な光景があった」。

(p97) あの悪名高い日本に対する最後通牒は明らかに憲法に違反していた。議会の機能を無視するもの。私(筆者)が議長になっていれば、大統領弾劾決議案を提出していたかもしれない。
FDRは、(中略)さらにドイツ潜水艦は発見し次第攻撃せよと命令した。一連の大統領命令は、議会の同意を得ていない。

(p248) ルーズベルトもスチムソンもハル・ノートを「最後通牒」だと考えていたことは明らか。スチムソン自身の日記にそう書き留めてある。(中略)。我が国はこうして憲法に違反する、議会の承認のない戦争を始めたのである。

(p260) スチムソン長官がFDRと、その後の対日政策を協議したのは、ハル・ノート手交の二日後のこと。この時点でFDRは、最後通牒を受けた日本が直ちに軍事行動を起こすかどうかは分かっていなかった。そのため、FDRは、さらに最後通牒の成果を持たせる文書が必要であるかを確認したかった。(He wanted to know if anything was to be done to make something in the nature of an ultimatum again)。(中略)。ここで注意しなくてならないのは「最後通牒の性格」という言葉が使われていることである。(このことはハル・ノートそのものが最後通牒の性格を持っていたことをFDRが認識していたことを示すものである)

(p265) 日本がもしあの最後通牒にかかわらず、わが国と戦わないことを選択していれば、日本の指導者は国民に射殺されていたに違いない。

(p300) 我が国は日本に原子爆弾を使用してしまった。マッカーサー将軍、ミニッツ提督、あるいは多くの科学者が、使う必要はなかったと述べている。原子爆弾で日本の二つの都市を破壊し、12万人の非戦闘員を焼殺してしまったのである。この行為は先の大戦における最大の間違いであり、最悪の虐殺の一つであった。
14人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2023年2月15日に日本でレビュー済み
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特に問題ありません
2022年11月14日に日本でレビュー済み
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著者のハミルトン・フィッシュ氏(1888-1991)は米国下院議員で共和党の重鎮であった。当時(第二次世界大戦直前)、80%以上の米国民同様、非干渉主義(国外の戦争に巻き込まれない)を強く主張した。それに対して、フランクリン・デラノ・ルーズベルト(FDR)は国民や議会に全く知らせることなく日本を陥れ、議会の承認なしに、1941年11月に最後通牒と取れる「ハルノート」を日本に突き付けた。更に真珠湾攻撃に際しては、少なくとも10数時間も前に日本軍の攻撃の確証を握りながら、現場の司令官(キンメル、ショート)に知らせず、多大の犠牲者を出した。しかも、この責任をその2人の司令官になすり付けた。そして何より、真珠湾攻撃をネタに対日戦だけでなく、念願のヨーロッパ戦への参戦を実現した。これは取り巻きのスチムソン陸軍長官、ノックス海軍長官らも強く主張していた方針である。一方、真珠湾攻撃により、一転して対日戦争に賛成したフィッシュ氏は、後日、歴史の裏側の「真実」を知るに至り、賛成した自分を深く愧じた。そして、「真実」の公表を考えるも、FDRおよびその側近の多くが死去するのを待って、1976年(米国建国200周年)に、やっと公表したのが本著である。フィッシュ氏の見解は、第31代大統領のフーバー氏のそれと完全に一致している。FDRはその死期に差し掛かっていた1945年2月のヤルタ会談で、スターリンに完全にしてやられ、第2次世界大戦勝利の果実を全てスターリンに提供し、その後、東欧や中国が共産主義に席捲される原因を作った。FDRの側近の高官に共産主義のagent(ソ連に通じたスパイ)がおり、FDR自体も共産主義に寛容的であったことが政治の方向性を誤った一因であった。FDRも死の直前にそれに気付いたようだが、既に遅かった。傲慢、利己的で、権力に貪欲なFDRは、読書をせず、哲学に乏しいにも関わらず、国民を惹きつけるカリスマ的な特異な才能を有する「政治屋」であった。米国の建国理念である議会制民主主義を信奉するフィッシュ氏と、大統領の独裁を志向するFDRとの基本的な相違があるものの、私は、嘘、欺瞞に満ちたFDRより、フィッシュ氏やフーバー大統領の人間性、考え方を「正義」と受け取りました。1991年以降のベノナ文書やソ連からの情報が明らかにされる前に、既に「真相」がこのように分かっていたことに衝撃を受けました。我々は一体何を教えられてきたのでしょうか!! 全ての日本人に読んで戴きたい1冊と思います。
10人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2019年2月15日に日本でレビュー済み
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真珠湾攻撃前にすでに日本側の暗号が解読され、米国側に察知されていたことが広く知られているので、その周辺を掘り下げた書籍かと軽い気持ちで本書を読み始めたら、内容は20世紀前半の世界を別の角度から包括的に叙述したものであり、あまりの面白さに一気呵成に読んでしまった。真珠湾攻撃は事前察知どころか、そうなるように米国に巧妙に仕掛けられたもので日本側は見事に挑発に乗った形となり、本書によると当時戦争に乗り気でもなかった一般アメリカ国民さえも一気に戦争に引きずり込んだのがあのルーズベルト(以後FDR表記)であったという。半世紀以上、米国民自身も日本側もFDRに騙されたままこうした真実を知らされなかった。著者はFDRの最強のライバルでもあった共和党の下院議員でもあり、ヨーロッパ戦線及び太平洋戦線での初期の戦争勃発の経緯を有力者の立場から生々しく描いている回想記録でもある(必ずしも本人自身が政権中枢にいたわけではない)。
  第二次大戦は枢軸国側が積極的に仕掛け、開戦の責任は独日伊にあるというのがこれまでの教科書的な見解であるが、本書は逆にルーズベルトの韜晦(とうかい)傾向の好戦気質とチャーチルの好戦性が世界大戦を引き起こし、スターリンがそこに積極的に加わり、最終的に東西冷戦と拡大化していった、第二次大戦は十分に当時回避可能だったと主張する。著者自身も初めのころはFDRに騙されていたと告白している。本書は文庫本といえ400頁もあり、今の若い人が最後まで読む進むには、次のような時代背景を事前に頭に入れておけばよいかもしれませんし、本書でもところどころ著者なりの時代説明が出てきます。 
 
(1)20世紀前半は世界中が社会主義の時代で、世の中はこのまま進めば社会主義が理想国家を世界各地で樹立するかもしれないと思われていた。レーニンの崇拝者も多かったのである。今から見れば世界中の大部分の知識人が社会主義に”かぶれて”おり、何とそれは米国政府中枢部も例外ではなく、FDR周辺の有力スタッフにも多かった。とくに中でもFDRの右腕の財務省のホワイト、国務省高官のヒスは長く最高機密とされてきたヴェノナ文書の公開によりソ連側スパイと公式に確定済み(「第二次大戦アメリカの敗北 アメリカを操ったソビエトスパイ」;同訳者による著書)
(2)しかし、当時のアメリカ人にとってはニューディール政策に共感しただけで社会主義者と言われており(「この政策は間違いなく社会主義的であり」本書49頁)、それはちょうど今日でさえオバマケア賛成論者が一部で社会主義的と言われるのと同じである。従って<米国人にとって社会主義とは何か>の鋭い視点が常になければ、本書の読み手は著者に振り回されたままになる。同時に読み手自身が社会主義・共産主義についてそれなりに知っていないと本書の面白さは半減する。著者は完璧なほど反共産主義者であり、安易に著者に「自分もそうだ」と感情移入してしまうと本書は単に爽快なほど面白かったで終わり、実際に得るものが少なくなる。読書中だけ米国右翼少年のようになって一時気分が高揚しても空しい。共産圏であった中国・ソ連は言うまでもなく、今の仏でさえ社会主義的だと言われるように<20世紀にどのように社会主義が発展・没落したか>についての視点があった方が好ましい。マルクスには理論と実践があり、初期に掲げた多種多様な目標(労働組合の結成、権利等)は今から見ると先進国ではすべて合法的に実現したと言われており、19世紀当時では破壊的な革命性があったが今では当たり前のものとして認識されている。資本主義の本拠地の米国を除き、日本含め今の欧州のすべての先進国は社会主義の数々の成果を吸収し、織り込み済みであり、米国人だけがなぜか今でもそれらへ不器用なほど否定的であり、本書の著者も社会主義への理解がむしろ黒白単純過ぎて社会主義の理論・運動論・組織論等の功罪・陰影について無知な面が多い。米国にも共産党は存在したがそれは非常にマイナーな政党としてであり、欧州諸国・日本では社会主義は政党・主義であるともに独自の社会主義的な文化として前世紀に幅広く長く存在した。社会主義はかつては武力があれば何をやってもよいとする前世紀初頭の帝国主義への良心の砦でもあった。共産主義と社会主義の境界は現実では理屈ほど明確ではなく(旧左翼ではレーニン主義による運動論により、新左翼では観念的な主体性論により活動家達は微細な違いにこだわり、社会主義勢力は共産主義勢力に取り込まれやすい)、選挙においては左翼アジテーター集団に扇動されやすい巨大な浮動層が各国に存在した。
(3)共産主義の影響が強かった分、それへの強い反感もあり、ナチス帝国への嫌悪感もあり、20世紀初頭では2つの全体主義国家、ナチスと共産主義のソ連が互いに戦い、自滅してくれることが各国の良識者の間で広く望まれていたし、当時は独露開戦が十分に現実性があるものと考えられていた。独露が真っ先に開戦すれば、英独仏での戦争は回避されるだろうという”願望”・”憶測”がヨーロッパ各国で当たり前のものとしてあった。歴史の教科書では英国のチェンバレンの弱腰な宥和(ゆうわ)策がネガティヴに記述されるが、実際のところはナチスとの宥和姿勢はそうした”願望”を前提としていたのであり、宥和策はナチスの東進を予測していた。欧州も米国も当時の大衆の殆どは平和を望む非戦論が普通であり、全体主義・共産主義と戦うべきという主戦論がなぜか途中から増大した。今の我々は「えっ、英独仏での戦争は回避可能だった?」と驚くかもしれないが、著者は一貫してその立場にたっており、にもかかわらず世界規模の戦争を率先して遂行しようとしたのは二人の仕掛け人、”隠れ”主戦論者のFDRと”常に”主戦論者のチャーチルのせいだったと主張する。
(4)今のEUからは想像もできないが、19世紀から続く仏独の積年の対立は異様に肥大し、第一次大戦戦勝国のフランスが敗戦国のドイツに押し付けた賠償金・条件はあまりに苛酷なものであり、フランスのドイツへの憎悪心は明らかに大きな誤りを含んでいた。

  著者は当時米国の外交の重責を担っていたこともあり、ナチスへの宥和策の一つとしてポーランドの自由都市グダンスク(港湾都市で独語ではダンツイヒ、ドイツ系住民が多い)の割譲をポーランド政府に説得する任務にいた。ナチスとの宥和に成功すれば、ドイツは西進せず、仏英との戦争が回避され、ロシア・東ヨーロッパへの東進の可能性が高かったと言うのである。航空機はともかく(空軍の重要性はまだ低かった)、他の戦力では仏英独は準備不足ではあったがさほど大差はなく、ヒットラーは仏英との軍事衝突を最初は恐れていた。従ってポーランドを巡り外交努力による仏独英の戦争回避はかなり現実性はあった模様だし、本書でもそれをしばしば繰り返しているが、ポーランドへの対応というのはそう簡単ではなく、ヨーロッパ在住経験がないアメリカ人の発想である(ポーランド人はいざ肝心のときに情熱と自尊心を優先させることが多く、合理的な判断最優先の軍人、政治家にはあまり向かない)。あの国はちょうど独露という2大強国に挟まれており、その点で米中日露に挟まれている朝鮮半島への対応の難しさと同様である。しかもどちらもなぜか大変な外交下手であり、ポーランドは国難時に他力本願により2度方針を誤っており、戦前にはヒットラーと戦うという英国の強硬姿勢を期待し過ぎ、後にはワルシャワ武装蜂起でソビエト援軍を信じ過ぎて悲惨な結果を招いている。著者はダンツイヒ割譲だけで戦争回避できた、少なくともポーランドが親独派になれば戦争回避できた、あわよくば領土拡大さえ可能だったように本書に書いてあるが、果たしてそんな単純なものだったろうかという素朴な疑問は残る。本書は至る所に著者による戦争回避できたという主張があり、第二次大戦を招いた客観的な様々な要因についての考察が本書では皆無なことが本書の価値をかなり下げている。著者がたとえ歴史家でないにしろ、有力な下院議員として影響力をもっていた以上、歴史家としての視点を著者は常に持っているべきではなかったか。すでに各方面の専門家の人々の膨大な研究により、あの大戦の主な原因はある程度列挙可能であり、それらは次のように大方明らかになっており、それなりに今の我々に教訓ももたらしている。

i)第一次大戦敗戦国ドイツへの過酷なベルサイユ体制:仏の異様な憎悪に基づく莫大な賠償額請求・領土割譲はドイツに恨みのみ残し、ヒットラー出現の契機(少なくとも下地)となった。その賠償額は2019年の現在でさえまだ1割ほど残っているという巨額のもの。教訓:2国当事者以外、戦勝国側は敗戦国に包括的な賠償を一方的に押し付けない。
  2022年8月追記:現在バイデン大統領及び西側諸国がウクライナに兵器類を惜しみなく送付しても自国の正規兵を絶対に送らないのは、今続いている戦争をウクライナーロシアだけに限定し、戦後賠償を対ロシア交渉だけに限定したいからである。西側が正式に参戦すれば、中国側も北朝鮮含め数か国が参戦し(日本もすぐ狙われる)、戦後賠償が第二次大戦のように広範・複雑になる。2国間に限定すれば、賠償含め戦後処理があらゆる点で容易であり、ロシア(ひいては中国の影響力)を大きく弱体化させることができる。

ii)世界恐慌によるドイツ経済の惨状:莫大な賠償額について当初自国通貨のマルクで何とか返済していたにもかかわらず、ヤング案によりドイツは途中からUSドルでの返済を強いられた。米国からの投資で繁栄していたドイツの復興は米系投資資金の撤退とともにユダヤ系投機筋の動きもあり、外貨のUSドルが枯渇し、直後に発生した世界恐慌によりドイツは困窮の極みに突き落とされた。賠償金ードイツ大手企業の破産の危機(米国資本の対独投資引き上げ)ー大恐慌は深くリンケージしている。教訓:IMFの誕生、各国の外貨準備高の重視。
  2022年8月追記:この外貨準備高の取り扱いは金融上の専門的かつ高度な知見を含み、一般には理解されていない。20世紀はGDPやGNP、人口、国土面積等で国力が測られたが、21世紀の現在は国家財政における外貨(とくにドル)準備高の規模が重要な指標となっている。小国でもドル決済が長期間できれば大国とみなされるし、見た目大国でもドル決済ができなければ実質破産前の小国である。戦争継続の能力は当事者国の外貨準備高による。ウクライナはそれがないのになぜ戦争が続けられるかは、英米中心に一時的な見込みとして「無制限にウクライナに外貨準備高があると仮定==>西側各国に預けてあるロシアの外貨がそっくりいずれウクライナへいく」と与信されているからである。英米との話がついているせいか、今年6月にゼレンスキーは国際会議でスイスに預けてあるロシアの外貨をすぐ回してくれとまでうっかり発言している。第二次大戦を引き起こした一つの引き金は、敗戦で困窮に陥っていたドイツから外貨(ドル)支払いを強制したことだったということを世界の指導者層は深く理解し、逆に今回のように事前にロシア所有の外貨(日本含め、西側諸国に相当預けられている)の行先を決めておくと戦争もしやすくなる。

iii)ヒットラーのラインラント進駐への黙認:軍事的かつ心理的に最初の仏側の一番重大なミス。航空機で河岸を監視し、仏軍が常時出動態勢をとっていればその後の仏の軍事的な敗北はなかったし、ヒットラーは仏英向けて西進しなかった。ちなみに南沙諸島・尖閣諸島で中国による明確な軍事行動があった場合、それはかつてのヒットラーによるラインラント進駐と同等の重大性を持つとみなされており、十分に米中の軍事衝突の引き金となる。教訓:人工衛星等により国際的な常時監視体制を強め、派手な軍事演習も行いつつ、軍事侵攻を事前に防ぐ。

iv)ポーランドへの各国の不適切な対応及びポーランド自身の失敗:ポーランド回廊とダンツイヒの帰属問題。帝国主義は露骨な武力行使を公然と進めるために弱小国のポーランドが一番影響を受けやすく、欧米各国のポーランドへの対応の巧拙がバタフライ的な効果をもたらした。教訓:ウクライナのような小国への軍事侵攻があった場合、侵攻国ロシアへの経済制裁を行う。
  2022年8月追記:現在、ウクライナを巡り、毎日のように目撃しているロシアへの各種制裁がまさしく第二次世界大戦で得た教訓の実行である。実際にやってみて西側諸国も、つい最近のノーベル賞経済学者の発言でもわかったことだが、ロシアは輸出面では抜け道を探し、世界中で石油等の買い手(インドおよびその転売により潤う貧困国)を結局見つけてしまい、打撃をさほど受けていない一方、西側からの輸入と物資流通・調達の面では予想以上に打撃を受け、ロシアに深刻な経済停滞をもたらしている。とくに21世紀の世界経済では20世紀よりも地球規模の物資運搬・流通と巨大な世界中の倉庫群の役割が混然と重なりあい、互いに近づいてきている(巨大なコンテナ船・タンカー自体がすでに巨大な動く倉庫・備蓄庫)。世界経済の大動脈は太くなった。このことから、万が一の中国・ロシアが周辺国への侵攻した場合、一番効果的な経済制裁としてはまっさきに西側諸国が中露+関連諸国(中露の友好国含む)へできる限り物を売らない(西側からの輸出を控え)、港湾から該当国の貨物船を締め出し、中露に経済発展の原資材・基本装置を一切売らないという方針が必要だとわかる。世界経済が中露に依存しているのではなく、中露の経済が世界経済に依存にしていることを深く自覚し、むしろ英国のように自国経済の混乱を犠牲にしても中露経済を一時的に切り離す(デカップリング)する必要がある。逆に台湾・尖閣諸島周辺を中国側に海上封鎖等により抑えられると半導体含め、世界経済の物資流通が大きく停滞する。
 
  本書を読んで浮かび上がってくる当時の20世紀初頭の世界の最初の潮流は、ヒットラーは本来親英的なので(ダンツイヒ問題で態度を豹変させたが)、英仏独に戦争が起きるよりも、隣国のポーランドが親独派になるように懐柔し(「ポーランドがドイツの側に与していれば、領土拡大が見込まれる可能性すらあった」本書210頁)、共産主義国家のソ連と開戦することを理想としていた。しかし、裏側ではチャーチル・FDRの巧妙な様々な交渉によりポーランドを反独へと煽り始め、仏英米は開戦やむなしの対独強硬路線に転化していったという。このチャーチル・FDRの間には1700回にも及ぶ交信記録があり、まだ公開されておらず、しかも訳注によると(258頁)、チェンバレン内閣の一介の海軍大臣チャーチルと米国大統領FDRの直接交信があり、宥和派の首相の下で対独強硬策を練っていた腹黒い二人の特別の関係が強く疑われる。歴史的な陰謀が確かに想定されてもおかしくない。本書でもう一つ横軸のように時々出現する興味深い真実(?)はFDRが親スターリンであったということであり、この点ではチャーチルと異なっている。FDR周辺に複数のソ連側スパイが高官として明らかに働いていたことがあったとしても(本書46頁その他)、FDRの親スターリンというのはもっと根深いものがあり、どうも当時の初期スターリン像は今の我々が持つ大虐殺のおぞましい像とは真逆のもののようで、当時の知識人達は彼を優れた英雄と錯覚していたようだ。本書によるとFDRは本らしい本は一切読まず、欧州についても切手収集の趣味程度の理解しかしていなかったという驚くべき証言があるので、ニコライ帝政を倒したロシア革命についても共和主義的な側面を針小棒大化していたという幼児性があったかもしれない。
  本書の読後感というのはFDRとチャーチルの陰謀という衝撃的な内容だけでなく、歴史における個人(偉人)の役割を重視という19世紀風の名残りがあまりに前面に出過ぎており、読み手は前々世紀の偉人物語を裏から否定的に読まされるようなもので、実証的かつ客観的な歴史的考察が恐ろしいほど欠如していることである。本書は歴史資料として無限の価値を有する点では多数の人に支持されるだろうし、私もそれを願っているが、材料が良いからといってすぐに料理の内容がよくなるわけではなく、複数の歴史家が今後独自の考察対象として精力的に研究していかない限り、本書の価値が増大することはないかもしれない。意地悪な見方をすれば、20世紀の偉人になれなかった著者が偉人になった二人の指導者達への恨みの書が本書ということになり、これを読んだからといって第二次大戦の戦争の原因について深く知ることにはならない。やっと真実らしきものが暴露されたという驚きと著者への多少の感謝はあるが、本書で深いものに触れたという感激はないのである。むしろ歴史を動かすのは個人なのかという根本的な疑問が出てくるはずで、この点では著者は自己の名誉心が満たされなかったことにより、いろいろな誤りを犯しているように感じる。当時としては矯激(きょうげき)であったが、名誉心を否定し、霊性を重視したトルストイの偉人否定の方が、同じ偉人否定でも精神的にも著者よりも深みを持っている。それに著者の人生観・世界観では、まるで突如として共産主義という悪玉があちこちに出現して破壊活動をし始めたという単純さ・幼稚さ・知識人としての思慮の欠如があり、ハーバード出身というのが到底信じられないほどである。これまでの自分の乏しい経験に基づき、本書を判断するとどうも米国ではYale大学の方が優れて実証的な歴史家・人材を多数生みだすようだし、Yale出身者の人達の著作の方がたとえリベラル寄り、社会主義的な点があると非難されても、批判主義的な自由精神があるのではないかという所感を本書で得た。

2019年3月8日追記:太平洋戦争はFDRの単純な陰謀としても、欧州大陸の戦争の原因はもっと複雑
  
  本書の著者フィッシュは、故意にか宥和策への期待を最終的につぶしてしまった独ソ不可侵条約については一切触れていない。対独宥和策は英仏にとって戦争回避への政治的な解決策であり、それはナチスドイツの東進(ヒットラー自身が”わが闘争”で東進を明言)==>共産主義のソ連との戦争==>両者自滅か最後に生き残り、疲弊した国との戦争という大構図を持っていた。しかし、独ソ不可侵条約が結ばれるや、その衝撃はすさまじく、宥和策に沿った一切の希望・試みなどは殆ど吹き飛んでしまったのである。日本も別の意味で衝撃を受け、その後に日ソ中立条約を結ぶ。この辺の欧州事情については訳者が著した「戦争を始めるのは誰か 歴史修正主義の真実」(文春新書)に非常に興味深く詳述されているが、チェンバレンによるポーランド独立保証の愚策に最重点が置かれ、そこではチャーチルの役割はやや背景程度になっている。チャーチルが好戦的なのはむしろ根っからの軍人だからであり、FDRと並べてしまうと米国人との違いもある上、誤解を誘う要因となりやすい。
  チャーチルは軍人である以上、敵国を2正面作戦に持ち込むという姿勢が常にあったはずだし、それはどの国でも将官の基本であった。戦争直前という段階では、当然、軍部の発言権は絶大であり、チェンバレンの宥和策の推進とともに裏ではドイツ・ソ連をめぐり英軍の種々の2正面作戦の想定訓練が並行して行われていたと考える方が自然である。つまり、チャーチルがことさら好戦的というよりも(政治家としては好戦的であったが)、戦争遂行を任務とする流れの中にいただけであり、彼が世界の状況を常に2正面作戦という視野から見ていたことを著者フィッシュは理解していない。戦略における2正面作戦、2方面作戦、敵勢力への挟撃、俗に挟み撃ち、戦術における十字砲火、退却して急反転しての反撃等などは、戦場における乗数効果・べき数効果をもたらす点で同一のもので、強い普遍性があり、兵站(へいたん)能力が同じ場合、一番壮大な2方面作戦を策定した方が勝ちやすい。例えば、英海軍のチャーチルも、帝国海軍の山本五十六も両方とも世界地図をしばしば眺めていたとしても、片方はユーラシア大陸や欧州をどのようにして挟撃するかを考え、もう片方は米国をつついてみましょうか程度までしか考えていなかった(五十六「初めの半年や一年は、ずいぶん暴れてごらんにいれます」)。日本のエリート将校達(とくに海軍)や海外在住の識者達の間では最初から結構冷静で、日本が物量において米大陸を挟撃するという発想はなかった。当時世界を1周半周航できる最先端の伊四百型潜水艦も米大陸の挟撃に使われなかったし、そうした想定もなかった。チャーチルは19世紀から続く世界の帝国主義時代の末期にいたために当然戦争に勝つことを最優先し、対日姿勢でも、対欧州大陸姿勢でも、大局面における挟撃という視点を常時持っており、チェンバレンの宥和策はチャーチルのいつも邪魔となっており、FDRはそれにいつも同意していたようだ。
  ヒットラーも英米仏とロシアによる挟撃を避ける意味で独ソ不可侵条約を結んだわけで、宥和派の主張は急速に力を失い始め、FDR・チャーチルが主導する挟撃作戦が実現し始める。アメリカによって共産ロシアへのかなり大量の武器援助をもたらされ(武器貸与法の一環)、ヒットラー側が独ソ不可侵条約を途中から破棄し、事実上、英仏とソ連によってナチス帝国を挟撃する形となった。なお、これより前に独ソ不可侵条約に付帯する秘密協定によりポーランドは独ソによって侵攻され、分割されたので東欧という中規模局面では独ソの挟撃作戦を生んだ(このときソ連側により”カチンの森”の悲劇が発生)。このように大・中・小規模局面と戦場及び戦争に巻き込まれる国々・地域では複数勢力の挟撃という現象が無数に変幻自在に発生するので状況分析が複雑・困難になる。さらに開戦前後では潰せるところから潰していくといくという各個撃破という軍事寄りの方針が優先し、政治的な解決策は急速に後退消失する。
  太平洋戦争はわりと単純で明らかにFDRの陰謀によって引き起こされた可能性が高いと私も信じるが、異民族が錯綜する欧州大陸での政治・戦争等は非常に複雑であり、欧州大陸の戦争の張本人がチャーチル個人だ言うのはやや無理があるように感じる。仮に彼の決断が大きな影響を与えたとしても、各国の軍部、軍需産業、政治勢力、民族構成、諜報機関の動きなどと関係者が膨大な数に上るので、歴史的な判断は太平洋戦争よりも一層慎重になるべきではないだろうか。勿論、本書ではこのような考察は一切なく、FDR・チャーチル悪玉論で一貫しており、読み手が軽々しくそれに振り回される必要はない(著者はFDRとは面識があったが、チャーチルとは面識がなかった模様で、二人をすぐに並べる時点ですでに大衆受けを暗に狙ったかもしれない)。

  それにしても、本書が世に出て明らかになったのは、英米政府の公式見解と実際の事実は、民主国家とされる英米においてさえ全然異なるものであり、驚くばかりである。政府が国民を長く欺くのは洋の東西、政体とわずといったところである。妙に気になるのは、FDRのファミリーも19世紀のアヘン戦争で財をなし、日本(薩長、明治政府)も英国経由でアヘン戦争関連の巨額の余剰金を江戸末期頃に回してもらい開国・発展したのにもう少し相互が理解しあう手段はなかったかということである。変なところで、「同じお金で成長発展したのに」と銀行の与信審査担当者のように感傷的な気持ちで共通点を見出してしまう。現在だからこそ、そうした事柄は知られつつあるが、やはり20世紀ではおおやけにならなかったのかもしれない。本書を読んで結局わかったのは20世紀前半はスターリン側の一応完全勝利だったということ、日本は米国に対して敗戦したというより、共産圏のスパイに翻弄された米国と同様、共産圏側に実質日米並んで負けたということである。東西冷戦は西側のむしろ劣勢を示し、共産圏の方が地球上で占める面積の点では大きかった。自由と消費を最大限享受した生活の質の点でーそれが一番重要であるがー西側が勝り、中国が残っているとはいえ20世紀後半はソ連崩壊で資本主義・自由主義諸国側の勝利となったし、医療・社会保障の面では日本・欧州諸国は十分に社会主義の長所を吸収し、国によっては移民までにも枠を広げようとしている。なお、本書を読んで時々疑問に思ったが、当時の日本の諜報能力ではFDRの反日姿勢及び米政権中枢部における共産圏スパイ達の暗躍はまったく見抜けなかったのだろうか。

   社会主義がなぜ20世紀に甚大な影響力をふるったかは理屈ではなく、現実の成果を見ればわかりやすい。富を人為的に再分配するという社会主義の長所は、正しく行われた場合、医療・学校教育・生活保護等の底辺者援助・水道やガス・電気等の社会インフラに現れやすい。実際ソ連は崩壊したとしても、学校制度はきちんと残され、ノーベル賞級の多数の学者を輩出し続けてきたし、旧ソ連では女医の数は今のキューバと並んで多かった。日本でも同様で、とくに医療・学校制度で他国に対して傑出しており、米国人の場合、広い家に住み、多少裕福な生活をしていても、一度人生の途中で大きな病気・負傷をすると多額の医療費で破産しやすいのである。米国では負け組も多数生み出し、そこから犯罪も生まれやすい。日本では治安がよいことに加え、生活保護によって犯罪の発生率がさらに抑えられている。米国では(欧州諸国と比較して)生活保護が殆どあてにできないこともあり、民間のボランティア活動等に頼らざるえない。このように日本の医療・学校という2つの大きな傑出した長所も、百年にわたる社会主義的な活動の賜物であり、与党側も野党側とこの点で協力してきた結果である。逆に百年以上前はどんな状態だったかというと、世界どこでも学校教育は金持ちだけの特権で、医療に至っては病気(とくに結核感染)したら人生転落し、失業しても同様で、まさに弱肉強食を地で行く悲惨な世界であった。さらに日本でも、欧州でも19世紀ばかりか20世紀初頭でも地方の貧困層は飢餓に襲われており、飽食した金持ちだけが自由に闊歩する世界でもあった。今日では底辺層の生活水準が上がり、社会主義はもう魅力がなく、社会主義・共産主義の歴史的な役割がほぼ終了し、一部のマスコミ・出版社だけに左翼寄りの人間が多数残っている。
  こんな状況では、若い世代が社会主義に否定的な本書の真価を理解するに確かに苦労するかもしれないが、老若関係なく、もう一つ本書の理解を阻みやすいのは19世紀から21世紀までの世界の急激な発展・膨張である。科学技術だけが発展したのではない。農業生産、人口等も急激に増えており、地球の人口は1900年から2012年までに16億人から70億人以上となっており、どの国も人口増加が普通だったのである(今とは逆に日本も当時南米等への移民を奨励)。この増え方は、全産業の多くの指数、人口、組織の数においてS字曲線を描く指数関数的な増加であり、増加の程度がまだ緩やかな19世紀は算術的な増え方であった。緩慢な増加ではまだ「最近増えているな」程度しか一般の多数の人々は気がつかないが、それは初期の段階では指数関数的な増加部分の接線(つまり微分係数)程度の傾きしかわからないからであり、総体として19世紀がそうであった。マルクスの剰余価値説もその一つで、20世紀のケインズにいたって曲線のΔデルタ分(増加分)を考察するようになった。有効需要の刺激という考えは曲線のΔデルタ分への着目がなかったら生まれなかった。20世紀の多くの分野の指標でみられる増加はカンブリア紀爆発を思わせるほどであり、同時に爆発的な減少も平行して生じており、例えば1900年の米国の農業従事者人口は40%であったものが2000年には米国の人口の2%ほどまでに劇的に減少している(モンサト社公開資料)。爆発的な増加と爆発的な減少が20世紀以降の特徴であり、同一の根源の裏表である。指数関数的な増加・減少現象の分析はそう簡単ではなく、個人の果たす役割は限定される。FDR・チャーチルがいくら大きな権限をもっていたとしても、手足となる官僚の集団の方も同様に重要性をもち、大組織を実質的に動かすのは裏方の高級官僚であることを我々は忘れがちになる。世論の枠にかなり拘束されるとしても米英・ソ・日独の中で一番効率的な官僚制を敷いたのはソ連・日独であり、中でも一番国際的に暗躍した組織はコミンテルンであった。米国の高級官僚は政治家の任命に基づく(任官制)ので、ほぼ永続的に続く均質な官僚制というのは米国では存在せず、その欠点を三権分立で補う形になり、またソ連のスパイにも入り込まれる余地を与えてしまった。米国と異なり、日独英仏では国家元首の側近そのものが外国との内通者(スパイ)になることは不可能であり、言葉の困難さ(日本語では官僚用語+敬語)に加え、国家中枢部分の意思決定者が家族代々の国籍所有者に強く限定されたり、権力分散が独自であったりする(日本では海軍と陸軍の対立、英国では複雑な爵位と不文法のもとに権限の所在層が隠される)のに対して、米国では権力がトップダウン式で常に明確化され、能力さえあれば移民でもよいという事情もあってFDRのようにソ連スパイの高級官僚に囲まれた異例の大統領となったようである。しかも米国で積極的に外国との接触をしたがるのは新し物好き・変化好きで、理想家肌で偽善になりやすい民主党系の官僚達である。本書の著者フィッシュはこれらの自国の特徴には触れず、米国の政治家にとって官僚は単なる道具に過ぎないためか、官僚制度について国際的な比較をしていない。FDR周辺にソ連スパイ多数というのは必ずしもFDR個人の責任だけではない一方、日独では中級以下の官僚に社会主義分子やソ連スパイが多かったようで、戦後も生涯雇用の官僚の手腕は生かされ、戦後復興に役立った(GHQの諸方針やわが国の憲法そのものも社会主義運動の影響を受けた米国リベラル派の成果物であり、日本の隠れ社会主義者達との親和性は高く、終戦直後、日本人の多くが彼らを米軍を占領軍と呼んだのに対し、日本共産党は解放軍と呼んだほどである)。今からは想像も難しいが、終戦後しばらく日本では社会主義運動が熱気をもって盛り上がっており、公立学校関係者含め、当時の日本の各省の役人(公務員)には社会主義者もしくはその共鳴者が多く、それらの人達は暴力革命ではなく、社会的な弱者・病人の救済に役人の立場から私心なく尽くした人達が多かった(このために数十年して旧共産圏の人達から日本は理想の社会主義国家とまで”誤解(?)”・賞賛されるほどまでなった)。
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2022年10月13日に日本でレビュー済み
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そうだったのか。
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Mitsunori Hosono
5つ星のうち5.0 Respect for peace
2018年12月20日にアメリカ合衆国でレビュー済み
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I understood well why Japan in a small Asian country fought with the United States. It was a wonderful book.