戦時下のグラフ雑誌を実際手に取ったことはありませんが、戦前・戦中の様々な資料や雑誌を以前読んだ経験もあり、普段あまり知られていないようなこの研究テーマに興味を覚えて読了しました。
筆者の井上祐子氏は、日本近・現代メディア史を専攻している研究者です。書かれた論文一覧を見ますと、戦前・戦中の報道やグラフィックス、漫画といったものに関心があり、本書もその延長線上でまとめられた論考を1冊にしたものです。
「アサヒグラフ」や「FRONT」、「アサヒグラフ海外版」、「太陽」「SAKURA」「NIPPON」といったグラフ写真誌を丹念に調査した研究成果が結実しています。これらの雑誌は、網版印刷やグラビア印刷の普及と共に人気を誇りました。10頁に書かれているように「写真自体の表現を工夫してフォト・ストーリーの形式と組み合わせることによって、グラフ雑誌は観念やメッセージを表現し伝達するメディアとなり、世界が第二次世界大戦へ向かうなかで有効な宣伝手段として利用されはじめる。」と指摘しています。
それを通して、副題にあるように十五年戦争下の「日本」イメージの解明に努めた論考の集大成だと思いました。第1章「『報道写真』とグラフ雑誌の黎明」から第7章「『東亜の盟主』のグラフィックス」、終章までを貫く問題意識の発端はここにあると思いました。
専門書ではありますが、当然多くの貴重な写真が転載されており、写真を眺めているだけで往時のイメージがつかめるようになっています。文献資料中心の政治史や国際関係史とは違う視点を持ったアプローチですので、興味を覚える人もあると思います。
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戦時グラフ雑誌の宣伝戦: 十五年戦争下の「日本」イメージ (越境する近代 7) 単行本 – 2009/2/5
井上 祐子
(著)
総力戦体制下の日本で、グラフ雑誌はその記録性・報道性とプロパガンダの狭間で何を表現したのか。「FRONT」「NIPPON」「アサヒグラフ海外版」「太陽」「SAKURA」などを素材に、聖戦や大東亜共栄圏構想を視覚化しようとした宣伝戦の実相を照らし出す。
- 本の長さ326ページ
- 言語日本語
- 出版社青弓社
- 発売日2009/2/5
- ISBN-104787220330
- ISBN-13978-4787220332
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商品の説明
著者について
1963年、大阪府生まれ。立命館大学国際関係研究科博士前期課程修了。京都外国語大学非常勤講師。専攻は日本近・現代メディア史。論文に「報道技術研究会の「技術」と作品」(「メディア史研究」第7号)、「太平洋戦争下の報道技術者」(「立命館大学人文科学研究所紀要」第75号)、「「国家宣伝技術者」の誕生」(「年報日本現代史」第7号)、「戦時下の漫画」(「立命館大学人文科学研究所紀要」第81号)、「“東亜の盟主”のグラフィックス」(「立命館大学人文科学研究所紀要」第86号)など。
登録情報
- 出版社 : 青弓社 (2009/2/5)
- 発売日 : 2009/2/5
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 326ページ
- ISBN-10 : 4787220330
- ISBN-13 : 978-4787220332
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,134,097位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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