評者も少し広い意味では“同時代”を生きてきて東大「紛争」当時には“渦中”ではないがその周辺にいたことはある。著者は時代の先駆者として学生運動の“輝けるリーダー”の一人であった。しかしその純粋な志を政治的に利用したのが<党>であった史実が赤裸々に詳細に語られる。
特に本書で初めて明らかになった事実をいくつか挙げる。東大「紛争」終結にむけた岩崎武夫文学部長らとの秘密交渉P144、査問を受けずにすんだ特異な経緯P162、現在では<党>がその存在すら認めなくなったという「新日和見主義」の背後にあった「事件の首謀者、黒幕」と断定された広谷俊二中央委員の野望と工作P176、さらに党中央本部に乗り込んだ「ある著名なマルクス主義経済学者の女房」p94も加えておこうか。
著者が起業した花伝社の出版物は評者の書棚にも何冊かある(加藤哲郎、渡辺治、中西新太郎、木下武男らの著作)。それは著者の若き頃からの理想を原点に“平和と民主主義”の端を高く掲げていると思われる。その意味ではこれからも長く存続してもらいたい。それにしても東大時代の同級生にいかに多くの“体制人”もまたいて、しかも彼らが著者の事業にあれこれ手を差し伸べることがあったのを知ると何とも凄い魅力ある人物であると感嘆する。逆に<党>は貴重な人材を失ったのであろう(「新日和見主義」として駆逐された数多くの<若き友>もまた)。
なお著者が東大「紛争」ではなく「闘争」と表現しているのは故川上徹への弔辞P188だけでなく「暴力の問題」についての記述でも存在するP138ことを付記する。
最後だが読了して急に脳裏に浮かんだ詩を挙げる。
どこかに美しい人と人との力はないか/ 同じ時代をともに生きる/ したしさとおかしさとそうして怒りが/ 鋭い力となってたちあらわれる
茨木のり子「六月」より
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未完の時代:1960年代の記録 単行本 – 2020/4/6
平田 勝
(著)
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そして、志だけが残った――
「未完の時代」を生きた同時代人と、この道を歩む人たちへ
全学連委員長として目の当たりにした学生運動の高揚と終焉。
50年の沈黙を破って明かす
東大紛争裏面史と新日和見主義事件の真相。
◆目次◆
第1章 上京と安保――1960年
第2章 東大駒場――1961年―1964年
第3章 東大本郷――1965年―1968年
第4章 東大紛争――1968年―1969年
第5章 新日和見主義事件――1969年―1972年
「未完の時代」を生きた同時代人と、この道を歩む人たちへ
全学連委員長として目の当たりにした学生運動の高揚と終焉。
50年の沈黙を破って明かす
東大紛争裏面史と新日和見主義事件の真相。
◆目次◆
第1章 上京と安保――1960年
第2章 東大駒場――1961年―1964年
第3章 東大本郷――1965年―1968年
第4章 東大紛争――1968年―1969年
第5章 新日和見主義事件――1969年―1972年
- 本の長さ208ページ
- 言語日本語
- 出版社花伝社
- 発売日2020/4/6
- 寸法13.8 x 2.3 x 19.6 cm
- ISBN-104763409220
- ISBN-13978-4763409225
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商品の説明
出版社からのコメント
●書評・記事掲載情報●
「図書新聞」(2020年9月12日3463号)
「朝日新聞」(2020年5月2日)
「月刊レコンキスタ」(2020年5月1日)
「J-CAST BOOKウォッチ」(2020年4月19日)
「図書新聞」(2020年9月12日3463号)
「朝日新聞」(2020年5月2日)
「月刊レコンキスタ」(2020年5月1日)
「J-CAST BOOKウォッチ」(2020年4月19日)
著者について
1941年 岐阜県に生まれる。
1961年4月 東京大学教養学部入学。
駒場寮委員長、全寮連委員長、東大学生自治会中央委員会議長、第一回日中青年交流会で学生団体団長、全学連委員長などを務め、東大紛争における文学部の解決のために水面下で交渉にあたるなど、8年間にわたって1960年代の学生運動に従事。
1969年6月 東京大学文学部卒業。
出版社勤務を経て、1985年に花伝社を創立し代表取締役、現在に至る。
1961年4月 東京大学教養学部入学。
駒場寮委員長、全寮連委員長、東大学生自治会中央委員会議長、第一回日中青年交流会で学生団体団長、全学連委員長などを務め、東大紛争における文学部の解決のために水面下で交渉にあたるなど、8年間にわたって1960年代の学生運動に従事。
1969年6月 東京大学文学部卒業。
出版社勤務を経て、1985年に花伝社を創立し代表取締役、現在に至る。
登録情報
- 出版社 : 花伝社 (2020/4/6)
- 発売日 : 2020/4/6
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 208ページ
- ISBN-10 : 4763409220
- ISBN-13 : 978-4763409225
- 寸法 : 13.8 x 2.3 x 19.6 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 63,743位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 37位昭和・平成
- - 8,413位社会・政治 (本)
- - 15,755位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2020年5月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2021年1月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私は東大紛争後の1970年代に大学に入ったので、東大紛争は「昔話」でしかなかった。
しかし、この本ではその経緯や舞台裏がよくわかる。
大学入学以降の著者の回想と当時の学生運動の動きが時系列で書かれている。初めて公表される事実が多々あり、資料として貴重である。
その中に著者の悩みや葛藤も描かれている。大学紛争と縁のない者(私もそうだが)には、なぜ当時の学生たちがあのような行動をしたのか理解しにくいが、そのためには60年安保から続く「歴史」を理解する必要があるのだろう。
多くの学生が大学紛争に翻弄され、死者、自殺者、ドロップアウトする者がいた。その中で懸命に生きる著者の姿がある。著者の生き方には純粋さと誠実さがある。著者の同級生や大学教授たちが、政治的立場に関係なく著者を支援したのもうなづける。
組織と個人の関係を考えさせられた。学生運動と共産党という特殊な組織がこの本の舞台だが、どんな組織であっても、程度の差はあるが、必ずこの問題が生じる。
個人が組織に埋没し、組織に忠実に行動することがもたらす問題は、戦時中の日本の公私の団体、ナチス、オウム、役所や会社などで生じる忖度などとも関連する。丸山真男の組織と個人に関する考察。
著者は共産党という組織に翻弄されるが、著者は、その後、出版社を設立して、共産党を離れ、「自立」する。自由にモノを考えるためには、経済的な自立が必要である。
もともと人間は生物として多様であり、思想も資質も多様である。しかし、あらゆる組織は一定の枠の中で行動し、個々人の勝手なな行動を許さない。それを許していては組織が成り立たない。しかし、人間の思考の多様性を制限するのは無理である。
行動の一枚岩はあっても思考の一枚岩はありえない。それを要求すれば、オーエルの「1984年」の世界になる。人間が多様な存在である限り、人間の思考や資質も多様である。組織からスケベを排除すれば、組織は成り立たない(たぶん)。個人が組織の枠にとらわれずに考えることをやめてしまえば、組織の発展はない。
人間の多様な思考はハンナ・アーレントのいう「私的領域」で行われる。「私的領域」が民主主義を支える。政治活動であっても「私的領域」がある。
60年代の学生運動は著者が述べる「壮大なゼロ」だったのか。しかし、その時代の運動は確実に学生に大きな影響を与えている。60年代の学生=その後の社会人が日本の発展を支えた時代があった。それは、後から振り返ればかなり「進歩的」な時代だった。
誰でも、歴史の流れの中で社会の一員として一生を終えるが、歴史の動きに関わる人は限られる。多くの人は歴史の動きに関わることなく社会の中に埋没して平凡な人生を歩み、やがて歴史から消える。しかし、著者は60年代の学生運動という歴史の一コマと積極的に関わり、その中で格闘した。その点で、著者の経験は「生涯の宝物」と言ってよいのではないか。
歴史の流れと個人の生き方の関係を考える時、人間の一生の意味を考えさせられる。人が生きるとはどういうことなのだろうか。
しかし、この本ではその経緯や舞台裏がよくわかる。
大学入学以降の著者の回想と当時の学生運動の動きが時系列で書かれている。初めて公表される事実が多々あり、資料として貴重である。
その中に著者の悩みや葛藤も描かれている。大学紛争と縁のない者(私もそうだが)には、なぜ当時の学生たちがあのような行動をしたのか理解しにくいが、そのためには60年安保から続く「歴史」を理解する必要があるのだろう。
多くの学生が大学紛争に翻弄され、死者、自殺者、ドロップアウトする者がいた。その中で懸命に生きる著者の姿がある。著者の生き方には純粋さと誠実さがある。著者の同級生や大学教授たちが、政治的立場に関係なく著者を支援したのもうなづける。
組織と個人の関係を考えさせられた。学生運動と共産党という特殊な組織がこの本の舞台だが、どんな組織であっても、程度の差はあるが、必ずこの問題が生じる。
個人が組織に埋没し、組織に忠実に行動することがもたらす問題は、戦時中の日本の公私の団体、ナチス、オウム、役所や会社などで生じる忖度などとも関連する。丸山真男の組織と個人に関する考察。
著者は共産党という組織に翻弄されるが、著者は、その後、出版社を設立して、共産党を離れ、「自立」する。自由にモノを考えるためには、経済的な自立が必要である。
もともと人間は生物として多様であり、思想も資質も多様である。しかし、あらゆる組織は一定の枠の中で行動し、個々人の勝手なな行動を許さない。それを許していては組織が成り立たない。しかし、人間の思考の多様性を制限するのは無理である。
行動の一枚岩はあっても思考の一枚岩はありえない。それを要求すれば、オーエルの「1984年」の世界になる。人間が多様な存在である限り、人間の思考や資質も多様である。組織からスケベを排除すれば、組織は成り立たない(たぶん)。個人が組織の枠にとらわれずに考えることをやめてしまえば、組織の発展はない。
人間の多様な思考はハンナ・アーレントのいう「私的領域」で行われる。「私的領域」が民主主義を支える。政治活動であっても「私的領域」がある。
60年代の学生運動は著者が述べる「壮大なゼロ」だったのか。しかし、その時代の運動は確実に学生に大きな影響を与えている。60年代の学生=その後の社会人が日本の発展を支えた時代があった。それは、後から振り返ればかなり「進歩的」な時代だった。
誰でも、歴史の流れの中で社会の一員として一生を終えるが、歴史の動きに関わる人は限られる。多くの人は歴史の動きに関わることなく社会の中に埋没して平凡な人生を歩み、やがて歴史から消える。しかし、著者は60年代の学生運動という歴史の一コマと積極的に関わり、その中で格闘した。その点で、著者の経験は「生涯の宝物」と言ってよいのではないか。
歴史の流れと個人の生き方の関係を考える時、人間の一生の意味を考えさせられる。人が生きるとはどういうことなのだろうか。
2020年8月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「「学生の歌声に、若き友よ、手をのべよ。輝く太陽、青空を、再び戦火で乱すな。我らの友情は、原爆あるもたたれず。闘志は火と燃え、平和のために、戦わん。団結かたく、我が行く手を守れ。」 東大音感合唱団の訳詞になるこの歌を、学生たちとスクラムを組んで何度歌ったであろうか。学生運動への思いはこの歌にすべて込められている。」(本書100頁)と著者は語る。
私も、同じ思いだ。著者の卒業とほぼ入れ替わりで学生生活を送った私は、著者の事は知らない。ただ、何か分からないが、突き動かされるものがあった時代を、本書を読んで、あらためて思い返しただけだ。
「若気の至り」などではない。その後の生き方は様々であるにせよ、その「思い」を糧として何かを成し遂げて来た「仲間」がいると言うことだ。
本書で取り上げられている、当時の学生運動の諸事件・諸事情については、人それぞれの体験や感じ方もあるだろうから、私としては敢えて触れない。著者の考えや姿勢についても、全面的に賛同はしない。
もはや『国際学連の歌』は、高齢者の歌声サークルか、学生運動仲間の同窓会でしか歌われる事はないだろう。
『インターナショナル』や『赤旗の歌』が、不正や抑圧と戦う世界の人々の間で、歌い継がれているのとは対照的だ。
本書を読んで、得る所があったかと言われると答えようもない。若い人が共感する本かと言えば、違うだろう。人には、振り返る時間があっても良い。言えるのはそれだけだ。
私も、同じ思いだ。著者の卒業とほぼ入れ替わりで学生生活を送った私は、著者の事は知らない。ただ、何か分からないが、突き動かされるものがあった時代を、本書を読んで、あらためて思い返しただけだ。
「若気の至り」などではない。その後の生き方は様々であるにせよ、その「思い」を糧として何かを成し遂げて来た「仲間」がいると言うことだ。
本書で取り上げられている、当時の学生運動の諸事件・諸事情については、人それぞれの体験や感じ方もあるだろうから、私としては敢えて触れない。著者の考えや姿勢についても、全面的に賛同はしない。
もはや『国際学連の歌』は、高齢者の歌声サークルか、学生運動仲間の同窓会でしか歌われる事はないだろう。
『インターナショナル』や『赤旗の歌』が、不正や抑圧と戦う世界の人々の間で、歌い継がれているのとは対照的だ。
本書を読んで、得る所があったかと言われると答えようもない。若い人が共感する本かと言えば、違うだろう。人には、振り返る時間があっても良い。言えるのはそれだけだ。
2020年8月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
要するに1960年末から70年代初頭にかけて、俺は社会変革に燃えてたたかったのだという自己陶酔にすぎない。「新日和見主義」についても別に目新しいことはない。むしろ著者は、あれから50年近くの間、何の進歩もなく、ただ共産党を呪うことだけで生きてきた人間のようで、悲しい。こんな本を書いて自己満足に浸っているなら、いま、2020年代の青年運動の発展の芽がどこにあるのか研究し、若者たちともに模索しあってほしいと思う。
2020年5月28日に日本でレビュー済み
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60年代の学生運動や共産党の学生党員の活動の様子が詳しく描かれ、興味深かった。共産党は50年問題で打撃を受け、学生分野で衰退し、60年安保時も他党派の方が優勢だったのだが、著者が61年に東大に入ってからは、綱領が確定し、党員や民青が急増し、全寮連、全学連の再建、68年の東大闘争等を経て、学生分野で最高峰を築く。しかし、72年の新日和見分派事件で、歯止めがかかり、その後、衰退していくわけだ。
著者は、東大入学後に入党し、駒場寮の寮委員を皮切りに、全寮連委員長、本郷の中央委員会議長、(川上徹氏の後の)全学連委員長を経験し、8年生の時に半ば専従として東大闘争の文学部の党の指導や教授や学生との工作に当たり、収束に尽力する。著者の謙虚で好ましい人柄のせいか、出会った学生や教官とのエピソードも暖かいものが多く、貴重な歴史の証言と言える。
ただ、この世代の人に多いのだが、学生運動に「過度の」思い入れを持っているように感じた。共産党関係では、東大闘争は勝利の記憶であり、「維新の志士」のような高揚した気分を持ったことがわかるが、冷静に見て、実績や自分たちの役割への過大評価ではなかろうか。強権的な圧政下などをのぞいて、学生運動が社会運動や革命運動を担えるはずはなく、その点で(やり方は酷いが)新日和見の潮流に歯止めをかけた宮本顕治の方が正しい。高揚感から逃れられない若者たちは、ある意味、社会不適合になってしまい(学業放棄の一方、下積みや地道な職を嫌う傾向)、厳しい人生となったと思う。
新日和見主義の騒動が無かったら学生運動や民青はもっと発展していたと書いているが、そうではなかろう。その後のソ連・東欧崩壊、北朝鮮と中国の醜悪で残酷な現実を見れば、「共産党の綱領路線(安保廃棄・米軍撤退・反自衛隊・反独占資本)、世界観(資本主義から社会主義への移行期、非同盟・社会主義陣営が未来を拓く)、資本主義観(矛盾が激化・貧困の増大・反動化)」そのものに、根本的な間違い(勘違い)があったことは明白で、既に歴史が証明している(人権・弱者擁護のカウンター勢力としての役割・実績は認めるが)。新日和見問題があっても無くても、党や学生運動の衰退は必然だった。それこそが真の「歴史の法則」だったのだ(この点では、宮本顕治も間違い)。
著者は、今もまだ「共闘の時代」に期待しているようであるが、どこに間違いがあったのか、現実の歴史を見る冷厳な視点、反省も必要ではなかろうか。もちろん、後付けの理屈であり、ちょっと酷なような気もするが。
著者は、東大入学後に入党し、駒場寮の寮委員を皮切りに、全寮連委員長、本郷の中央委員会議長、(川上徹氏の後の)全学連委員長を経験し、8年生の時に半ば専従として東大闘争の文学部の党の指導や教授や学生との工作に当たり、収束に尽力する。著者の謙虚で好ましい人柄のせいか、出会った学生や教官とのエピソードも暖かいものが多く、貴重な歴史の証言と言える。
ただ、この世代の人に多いのだが、学生運動に「過度の」思い入れを持っているように感じた。共産党関係では、東大闘争は勝利の記憶であり、「維新の志士」のような高揚した気分を持ったことがわかるが、冷静に見て、実績や自分たちの役割への過大評価ではなかろうか。強権的な圧政下などをのぞいて、学生運動が社会運動や革命運動を担えるはずはなく、その点で(やり方は酷いが)新日和見の潮流に歯止めをかけた宮本顕治の方が正しい。高揚感から逃れられない若者たちは、ある意味、社会不適合になってしまい(学業放棄の一方、下積みや地道な職を嫌う傾向)、厳しい人生となったと思う。
新日和見主義の騒動が無かったら学生運動や民青はもっと発展していたと書いているが、そうではなかろう。その後のソ連・東欧崩壊、北朝鮮と中国の醜悪で残酷な現実を見れば、「共産党の綱領路線(安保廃棄・米軍撤退・反自衛隊・反独占資本)、世界観(資本主義から社会主義への移行期、非同盟・社会主義陣営が未来を拓く)、資本主義観(矛盾が激化・貧困の増大・反動化)」そのものに、根本的な間違い(勘違い)があったことは明白で、既に歴史が証明している(人権・弱者擁護のカウンター勢力としての役割・実績は認めるが)。新日和見問題があっても無くても、党や学生運動の衰退は必然だった。それこそが真の「歴史の法則」だったのだ(この点では、宮本顕治も間違い)。
著者は、今もまだ「共闘の時代」に期待しているようであるが、どこに間違いがあったのか、現実の歴史を見る冷厳な視点、反省も必要ではなかろうか。もちろん、後付けの理屈であり、ちょっと酷なような気もするが。
2021年1月29日に日本でレビュー済み
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『新日和見主義』とは何だったのかと、よく聞かれるが、私もわからないし、多分誰にも分からない。著者の言う通り当時、宮本顕治氏が党内引き締めのために持ち出したレッテルだったというのが一番近いと思う。そのためにスターリンばりの査問を行い多くの党員を有罪にしたて自己批判させた。何が新日和見主義なのかわからないまま、党に対し不満を持つこと自体がやばいという雰囲気が充満した。それこそが宮本氏の狙いだったかもしれない。
60年代の学生運動を担った著者は自分の経験したことを記録し、残そうとしている。なかった事にされてたまるかという意地であろう。その分、時空は限られる。伊藤律問題やソ連問題など、また全共闘などより広い視点から見ることが必要な問題だが、本書はあえて、それを禁欲し、事実の記録に徹しようとしているのだろう。
60年代の学生運動を担った著者は自分の経験したことを記録し、残そうとしている。なかった事にされてたまるかという意地であろう。その分、時空は限られる。伊藤律問題やソ連問題など、また全共闘などより広い視点から見ることが必要な問題だが、本書はあえて、それを禁欲し、事実の記録に徹しようとしているのだろう。
2020年7月26日に日本でレビュー済み
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初めてしんひよの事が、解った。でも、六全協の手打が、旧所感派の、不満を生んでいた事の分析がない。みやけんのビジネスマンとしての能力の高さも理解できた。
2020年4月20日に日本でレビュー済み
著者の誠実な生きざまがにじみ出る伝記的作品。豊かで真面目な人間性を感じた。あくまで客観的冷静に自分が参加してきた運動を反省も込めて、描き、日本の民衆運動に魅力的な問題提起をしている。異なった意見を持つ者同士がお互いに「リスペクト」しあってこそ、日本の民主運動は前に進めると訴えている。