原書の出版は2015年ですが、著者が日本語版の序文を書いており、その中に、後藤健二さんのことも触れられています。
(日本語版のあとがきでパリのテロについても書かれており、執筆後の情勢のフォローアップがされています)
2016年1月、後藤さんが虐殺されたあと、イスラム国関係の著作が日本でも何冊か出て、おおよその状況は知ることができたものの、シリア紛争、そしてイスラム国の成り立ちについて、実情はよく分かりませんでした。
この著作を通して、シリア、ヨルダン、イラクに実際に暮らすひとたちから見たイスラム国樹立の事情、またそれに対するアメリカ政府と諜報機関の内部の様子を知り、現地でどのようなことが起きていたのかをやっと理解できたように感じています。
後藤さんと交換を要求されたリシュウィ容疑者とは何者であり、ヨルダン国民にとって、どのような意味をもっていたのか、それは当時の私たちには表面しか分かりませんでした。
ヨルダン側が、リシュウィの代わりにイスラム国からの解放をもとめたカサスペ将校の処刑が、ヨルダンだけでなく、アラブ各国にどのように大きな憤慨をもって受け止められたのか、日本での報道はほとんどなかったように覚えています。ヨルダン政府よりの著者のバイアスがかかっているにせよ、その反響がどのような規模であったのか、それが結局は今年7月のイスラム国の崩壊につなっがた大きな要因でなかったかと推測しました。
やはり、内部事情を知る人から直に情報をとることがどれだけ大事かを思い知りました。それは中東専門の学者ではなく、ジャーナリストの仕事です。それこそが後藤健二さんが目指していたのでないかと痛感する書物です。
ただし、16年1月当時の日本政府の対応に関しての記述には疑問が残ります。
わかりやすく訳してくださり、適時注解をつけてくれた著者には感謝しています。
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ブラック・フラッグス(上):「イスラム国」台頭の軌跡 単行本 – 2017/7/26
ジョビー・ウォリック
(著),
伊藤 真
(翻訳)
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ピュリツァー賞受賞作!
「イラクのアル= カーイダ」の創設者ザルカウィの生い立ちから「イスラム国」の指導者バグダディによるカリフ制宣言まで、 疑似国家の変遷と拡大の背景を迫真の筆致で描く。中東取材20年のベテラン・ジャーナリストによる傑作ノンフィクション! ピュリツァー賞(一般ノンフィクション部門)受賞作。「日本語版への序文」を収載。
「連続ホテル爆破事件当時、ザルカウィは「イラクのアル= カーイダ」と呼ばれるきわめて凶暴なテロリスト・ネットワークのトップだった。だがヨルダン側は、ザルカウィがまだ「ごろつきのアフマド」と呼ばれていたころからよく知っていた。大酒飲みで喧嘩っ早いと評判の、高校中退の落ちこぼれ。そんな彼が1980年代末、共産主義者たちと戦うと言ってアフガニスタンへ向かい、戦場で鍛え抜かれた狂信的な信仰者としてヨルダンに戻ってきたときも、ムハーバラートは注視していた。初めてテロ活動に手を染めた結果、ヨルダンのもっとも闇の深い監獄の一つに姿を消した。そして今度は、戦場で鍛え抜かれた狂信的な信仰者であるだけでなく、卓越したリーダーとなってふたたび姿を現した。」(「プロローグ」より)
2013年、ISILの指導者バグダディがカリフを自称し、イスラム国(IS)の「国家」樹立を宣言。このISの前身である「イラクのアルカイダ」は2004年、ヨルダン生まれの悪名高いイスラーム主義者ザルカウィによって設立された。
本書は、ザルカウィとその後継者を中心に、ISが生まれた背景から現在に至るまでを詳細に描いたノンフィクションである。街のチンピラがアルカイダとつながって国際的なテロ組織を主導するようになった背景には何があったのか。イラクのフセイン政権打倒に走った米国失策の誘因とは――。200人を超える関係者らの生々しい証言と精緻な裏づけにより構成され、丁寧な人物描写と複雑にからみ合った相関関係から、組織の構造や事件・事象の全体像を鮮やかに浮かび上がらせる。
中東取材20年のジャーナリストが独自の人脈を駆使し、スパイ小説さながらの手に汗握る筆致でISの変遷と拡大の背景を描き切った、調査報道の白眉。
「イラクのアル= カーイダ」の創設者ザルカウィの生い立ちから「イスラム国」の指導者バグダディによるカリフ制宣言まで、 疑似国家の変遷と拡大の背景を迫真の筆致で描く。中東取材20年のベテラン・ジャーナリストによる傑作ノンフィクション! ピュリツァー賞(一般ノンフィクション部門)受賞作。「日本語版への序文」を収載。
「連続ホテル爆破事件当時、ザルカウィは「イラクのアル= カーイダ」と呼ばれるきわめて凶暴なテロリスト・ネットワークのトップだった。だがヨルダン側は、ザルカウィがまだ「ごろつきのアフマド」と呼ばれていたころからよく知っていた。大酒飲みで喧嘩っ早いと評判の、高校中退の落ちこぼれ。そんな彼が1980年代末、共産主義者たちと戦うと言ってアフガニスタンへ向かい、戦場で鍛え抜かれた狂信的な信仰者としてヨルダンに戻ってきたときも、ムハーバラートは注視していた。初めてテロ活動に手を染めた結果、ヨルダンのもっとも闇の深い監獄の一つに姿を消した。そして今度は、戦場で鍛え抜かれた狂信的な信仰者であるだけでなく、卓越したリーダーとなってふたたび姿を現した。」(「プロローグ」より)
2013年、ISILの指導者バグダディがカリフを自称し、イスラム国(IS)の「国家」樹立を宣言。このISの前身である「イラクのアルカイダ」は2004年、ヨルダン生まれの悪名高いイスラーム主義者ザルカウィによって設立された。
本書は、ザルカウィとその後継者を中心に、ISが生まれた背景から現在に至るまでを詳細に描いたノンフィクションである。街のチンピラがアルカイダとつながって国際的なテロ組織を主導するようになった背景には何があったのか。イラクのフセイン政権打倒に走った米国失策の誘因とは――。200人を超える関係者らの生々しい証言と精緻な裏づけにより構成され、丁寧な人物描写と複雑にからみ合った相関関係から、組織の構造や事件・事象の全体像を鮮やかに浮かび上がらせる。
中東取材20年のジャーナリストが独自の人脈を駆使し、スパイ小説さながらの手に汗握る筆致でISの変遷と拡大の背景を描き切った、調査報道の白眉。
- 本の長さ260ページ
- 言語日本語
- 出版社白水社
- 発売日2017/7/26
- ISBN-104560095612
- ISBN-13978-4560095614
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商品の説明
著者について
ジョビー・ウォリック Joby Warrick
1960年、米国ノースカロライナ州に生まれる。テンプル大学卒業。『ニューズ・アンド・オブザーヴァー』の記者として96年、環境問題に関する報道でピュリツァー賞(公益報道部門)を共同受賞。96年以来、『ワシントン・ポスト』で中東問題を中心に、安全保障・外交・テロ・環境などの分野を専門とするジャーナリストとして活躍している。2016 年、本書Black Flagsでふたたびピュリツァー賞(一般ノンフィクション部門)を受賞。邦訳書に『三重スパイ─ CIAを震撼させたアルカイダの「モグラ」』(太田出版)がある。
訳者: 伊藤 真(いとう・まこと)
ノンフィクションを中心に翻訳に従事。訳書にビル・ブライソン『アメリカを変えた夏1927年』(白水社)、ケネス・タナカ『アメリカ流マインドを変える仏教入門』(春秋社)、C・R・ジェンキンス『告白』(角川文庫)、P・グロース『ブラディ・ ダーウィンもうひとつのパール・ハーバー』(大隅書店)、ダライ・ラマ『ダライ・ラマ科学への旅』(サンガ新書)、R・ゲスト『アフリカ苦悩する大陸』、ワン・ジョン『中国の歴史認識はどう作られたのか』(以上、東洋経済新報社)ほか。
1960年、米国ノースカロライナ州に生まれる。テンプル大学卒業。『ニューズ・アンド・オブザーヴァー』の記者として96年、環境問題に関する報道でピュリツァー賞(公益報道部門)を共同受賞。96年以来、『ワシントン・ポスト』で中東問題を中心に、安全保障・外交・テロ・環境などの分野を専門とするジャーナリストとして活躍している。2016 年、本書Black Flagsでふたたびピュリツァー賞(一般ノンフィクション部門)を受賞。邦訳書に『三重スパイ─ CIAを震撼させたアルカイダの「モグラ」』(太田出版)がある。
訳者: 伊藤 真(いとう・まこと)
ノンフィクションを中心に翻訳に従事。訳書にビル・ブライソン『アメリカを変えた夏1927年』(白水社)、ケネス・タナカ『アメリカ流マインドを変える仏教入門』(春秋社)、C・R・ジェンキンス『告白』(角川文庫)、P・グロース『ブラディ・ ダーウィンもうひとつのパール・ハーバー』(大隅書店)、ダライ・ラマ『ダライ・ラマ科学への旅』(サンガ新書)、R・ゲスト『アフリカ苦悩する大陸』、ワン・ジョン『中国の歴史認識はどう作られたのか』(以上、東洋経済新報社)ほか。
登録情報
- 出版社 : 白水社 (2017/7/26)
- 発売日 : 2017/7/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 260ページ
- ISBN-10 : 4560095612
- ISBN-13 : 978-4560095614
- Amazon 売れ筋ランキング: - 632,398位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 4,652位外交・国際関係 (本)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2017年9月10日に日本でレビュー済み
まだ上巻しか読んでいない。
上下巻で3部に別れており、上巻は第一部「ザルカウィの台頭」と「イラク」(全9章)のうち5章である。
第一部のタイトル通り、思想的に卓越しているわけでもなく、有力な支援者を持っていなかったザルカウィ(本名はアフマド・ファディル・アル=ハライレー)がどのようにして台頭していったのかがよく分かる。
まず、いつの時代でも見られるが、ある種の勇ましさは人を惹きつける。ザルカウィの場合も、彼の極端な残虐性が、非イスラム社会との関係で強い不満を持っていた人々に魅力的に見えたのだろう。
もう一つは、アメリカのミス。CIAがもたらす情報を冷静かつ客観的に判断できず、常に自分たちの都合のいいシナリオに情報を合わせようとし続けたブッシュ政権の面々が犯したミスが作り出した“空白”。イラク侵攻後のビジョンが明らかに欠如していたことが原因と言えよう(『 掠奪されたメソポタミア 』で、同じようなことを文化的な面について指摘している)。
ザルカウィらの残虐性を庇う気はないが、著者が厳しく指摘しているように、アメリカ政府の失政も酷いものだ(アルカイダやイラクのフセイン元大統領もある意味では同じところに根がある)。
こういったことも含め、様々な事象を一つの直線になるように整理して描いた著者のおかげで、頭の中がかなりすっきりと整理された。下巻が楽しみだ。
上下巻で3部に別れており、上巻は第一部「ザルカウィの台頭」と「イラク」(全9章)のうち5章である。
第一部のタイトル通り、思想的に卓越しているわけでもなく、有力な支援者を持っていなかったザルカウィ(本名はアフマド・ファディル・アル=ハライレー)がどのようにして台頭していったのかがよく分かる。
まず、いつの時代でも見られるが、ある種の勇ましさは人を惹きつける。ザルカウィの場合も、彼の極端な残虐性が、非イスラム社会との関係で強い不満を持っていた人々に魅力的に見えたのだろう。
もう一つは、アメリカのミス。CIAがもたらす情報を冷静かつ客観的に判断できず、常に自分たちの都合のいいシナリオに情報を合わせようとし続けたブッシュ政権の面々が犯したミスが作り出した“空白”。イラク侵攻後のビジョンが明らかに欠如していたことが原因と言えよう(『 掠奪されたメソポタミア 』で、同じようなことを文化的な面について指摘している)。
ザルカウィらの残虐性を庇う気はないが、著者が厳しく指摘しているように、アメリカ政府の失政も酷いものだ(アルカイダやイラクのフセイン元大統領もある意味では同じところに根がある)。
こういったことも含め、様々な事象を一つの直線になるように整理して描いた著者のおかげで、頭の中がかなりすっきりと整理された。下巻が楽しみだ。
2017年11月19日に日本でレビュー済み
2017年現在、イスラム国は追い詰められて今や見る影もありませんが、一時期はシリア領土及びイラク領土の多くを支配下に置き、このままいくと両国はイスラム国に支配されるのでは?と懸念されていました
本書はなぜイスラム国がこれほどまでに拡大できたのかをザルカヴィという人物に焦点を当てて描いたものです
ザルカヴィはビンラディンと違って大金持ちの息子というわけではない平凡な家庭に生まれた人間にすぎなかった
若い頃は犯罪を繰り返し刑務所に度々収監される札付きのワルであったザルカヴィであったが刑務所内で信仰に目覚め、それ以降は過激なジハーディストとして、アフガニスタンでソ連軍と戦う戦士となる
こうしてアフガニスタンの戦場で戦士としての経験を積んだザルカヴィでしたが、彼が大きく飛躍するきっかけとなったのはイラク戦争でした
アメリカのイラク戦争でフセイン政権は倒れましたが、それまで要職に就いていたスンニ派の人々は追い出され、シーア派の人々にとって変わられます
ザルカヴィはこの状態に不満をもったスンニ派の人々につけこみ、組織を立ち上げ拡大していくとに成功します
これが後のイスラム国の原型となりました
つまり、皮肉にもアメリカがフセインを倒したおかげでザルカヴィは稀代のテロ国家の首謀者への道筋を開くことができたことが本書でよくわかります
本書はなぜイスラム国がこれほどまでに拡大できたのかをザルカヴィという人物に焦点を当てて描いたものです
ザルカヴィはビンラディンと違って大金持ちの息子というわけではない平凡な家庭に生まれた人間にすぎなかった
若い頃は犯罪を繰り返し刑務所に度々収監される札付きのワルであったザルカヴィであったが刑務所内で信仰に目覚め、それ以降は過激なジハーディストとして、アフガニスタンでソ連軍と戦う戦士となる
こうしてアフガニスタンの戦場で戦士としての経験を積んだザルカヴィでしたが、彼が大きく飛躍するきっかけとなったのはイラク戦争でした
アメリカのイラク戦争でフセイン政権は倒れましたが、それまで要職に就いていたスンニ派の人々は追い出され、シーア派の人々にとって変わられます
ザルカヴィはこの状態に不満をもったスンニ派の人々につけこみ、組織を立ち上げ拡大していくとに成功します
これが後のイスラム国の原型となりました
つまり、皮肉にもアメリカがフセインを倒したおかげでザルカヴィは稀代のテロ国家の首謀者への道筋を開くことができたことが本書でよくわかります
2017年11月2日に日本でレビュー済み
著者は、米国でも権威あるジャーナリズム賞を受賞したジャーナリストである。本書は、ビンラディンの子分であるザルカウィ氏の軌跡とイスラム国の勃興について資料の詳細な読み込みで読みやすい文章で書かれた秀作である。上下巻とも、すぐに読める。