「「民主主義」とは、台湾に住む全ての人にとって普遍の「共通言語」なのだ」。
いやぁ、台湾にはまだ共同体がある。 市民社会がちゃんと存在している。
それがこの本を読んでいて一番驚いたことでした。
「もし民進党が誠意を持って、私たちの価値観や理想を守り抜くのであれば、全世界が手を取りあってあなたを支持する。でももし、誠意を見せず、次の選挙のことばかり考えるようになったら、民衆はあなたの側には立たないでしょう」。
「民衆」や「知識を備えた反逆者」、こう言った言葉を使いながら日本の政治も語られる時代が来る事を祈るばかり。
この本に書かれている事を読めば読むほど、日本には民主主義は無いのではないかという疑念が深まるばかり。日本を振り返って見たときに(歴史も情勢も違うが)どう見えるかというのもこの本を読んでいて考えるきっかけになるのでは。
ヒマワリ学生運動やその他の活動にしても、市民社会が機能していることで、政治が夢や生活の目標を実現する「カッコイイもの」として捉えられる。そうであるが故に(デモも発展するし)出来事が政治的になり得て、それが政策へと繋がり、人々にまた還元されていく。その循環の中でこそ、愛すべき土地、国となっていくのでは。(憲法に「愛国心」という言葉を強制的に入れようとしているどこかの国とは大違い)
この土台がまだ崩壊していないとは思っていなかったので、読んでいてビックリしました。そして嬉しかったです。(日本には無い。いつか行こうとしたかもしれないが今のところ行けない道。)
2012年に国民党の馬英九に総統選挙に敗れ、党首を引責辞任してから4年後の2016年1月、台湾総統選挙において勝利し、5月に初の女性総統となった蔡英文。
台湾の人々に直に会って市民と向き合い、対話を重ねていくその姿は、政治家の鏡のよう。そしてすごい根性。
地域の文化や教育から経済・産業・外交まで、わかりやすく具体的にその土地土地に密着して行動されてきた軌跡が書かれてありました。各章ごとにエピソードが散りばめられ、物語調になっている上に詳しい日時が明確で台湾に行った事がなくても何となくイメージしやすいです。現状をしっかり把握し、政治はそこに生きる人たちのためのものだという意識を持って台湾の未来を創っていこうとするその心構えがすごく輝いていました。
「台湾に行きたいワン♫」って言いながら旅行に行く前に読んでいくと、目の前に広がるビジュアル以上の深みと面白さを与えてくれます。
台湾初心者の私も(白水社なのに!)スラスラ読めました。
ここ最近の台湾の動きや、情勢をざっくり読み込むにも打ってつけ!
蔡英文にとってはそこに生きる人々との初発見・再出発の台湾を、
私にとっては初接触の台湾として楽しく読めました。
「台湾は小さい。しかし、そのパワーは計り知れない」。
May the force be with you.
ぜひご一読あれ。
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蔡英文 新時代の台湾へ 単行本 – 2016/5/21
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購入オプションとあわせ買い
台湾初の女性総統が、一度は総統選に敗北しながらも、市民との対話を通し模索し続けた、新たなリーダーシップの形と未来の台湾の姿。
《台湾初の女性総統がめざすものとは》
台湾が大きく変わろうとしている。今年1月の総統選挙で、初の女性総統が誕生した。本書は、台湾で選挙前に刊行され、爆発的なヒットを続ける蔡英文氏の著書の日本語版である。5月20日の総統就任式にあわせて緊急出版する。
蔡氏は、前回の総統選に敗北した後、党主席を辞任して民間に戻り、台湾各地を巡りながら市民と対話を続けた。人々が政治に求めているものを模索し、政治と社会を包括的に刷新する方策を考え続けてきたのだ。一方で、台湾の政局は経済の悪化から動揺を見せ始め、社会は混乱し、中台関係は暗礁に乗り上げた——。そうした中で市民社会の力が大きくなり、2014 年3月にヒマワリ学生運動が起こった。その夜、蔡氏は立法院の議場に駆けつけ、学生たちを警官から守るために座り込みを行なった。本書では当時を生々しく振り返ると同時に、政府の問題点を鋭く指摘し、政党政治の役割を根本から見直す必要性を説く。激動の3年間を見つめてきた台湾の新たなリーダーが、台湾の現状をどのように捉え、未来をどう描いて、圧倒的な支持を得るに至ったのかが明らかになる。
福島第一原発事故後、注目を集めてきた台湾の第四原発建設の是非や、中国との経済問題、中台関係については現状維持を基本的立場とする真意、TPPを含めた貿易政策、日本の同盟国アメリカとの友好関係構築のプロセスまで詳しく述べられ、新総統の考えが一冊でよくわかる。
政治とは縁のない家庭に生まれ育ち、学者から政治家に転身した異色の経歴をもつ著者の冷静な分析と、場面ごとの率直な思いが吐露されていることも本書の大きな魅力となっている。
著者から日本の読者へのメッセージも収録!
目次:
日本語版序文 「自らの存在」を最高の答えに
序章 私たちは皆「英派」である
第一章 思考する小英
第二章 行動する小英
第三章 社会と小英
第四章 政治と小英
第五章 経済と小英
第六章 外交する小英
第七章 今ここにある希望
あとがき 「私たち自身」の存在が最高の答えとなる
監訳者あとがき
原題:英派 點亮台灣的這一哩路
《台湾初の女性総統がめざすものとは》
台湾が大きく変わろうとしている。今年1月の総統選挙で、初の女性総統が誕生した。本書は、台湾で選挙前に刊行され、爆発的なヒットを続ける蔡英文氏の著書の日本語版である。5月20日の総統就任式にあわせて緊急出版する。
蔡氏は、前回の総統選に敗北した後、党主席を辞任して民間に戻り、台湾各地を巡りながら市民と対話を続けた。人々が政治に求めているものを模索し、政治と社会を包括的に刷新する方策を考え続けてきたのだ。一方で、台湾の政局は経済の悪化から動揺を見せ始め、社会は混乱し、中台関係は暗礁に乗り上げた——。そうした中で市民社会の力が大きくなり、2014 年3月にヒマワリ学生運動が起こった。その夜、蔡氏は立法院の議場に駆けつけ、学生たちを警官から守るために座り込みを行なった。本書では当時を生々しく振り返ると同時に、政府の問題点を鋭く指摘し、政党政治の役割を根本から見直す必要性を説く。激動の3年間を見つめてきた台湾の新たなリーダーが、台湾の現状をどのように捉え、未来をどう描いて、圧倒的な支持を得るに至ったのかが明らかになる。
福島第一原発事故後、注目を集めてきた台湾の第四原発建設の是非や、中国との経済問題、中台関係については現状維持を基本的立場とする真意、TPPを含めた貿易政策、日本の同盟国アメリカとの友好関係構築のプロセスまで詳しく述べられ、新総統の考えが一冊でよくわかる。
政治とは縁のない家庭に生まれ育ち、学者から政治家に転身した異色の経歴をもつ著者の冷静な分析と、場面ごとの率直な思いが吐露されていることも本書の大きな魅力となっている。
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日本語版序文 「自らの存在」を最高の答えに
序章 私たちは皆「英派」である
第一章 思考する小英
第二章 行動する小英
第三章 社会と小英
第四章 政治と小英
第五章 経済と小英
第六章 外交する小英
第七章 今ここにある希望
あとがき 「私たち自身」の存在が最高の答えとなる
監訳者あとがき
原題:英派 點亮台灣的這一哩路
- 本の長さ282ページ
- 言語日本語
- 出版社白水社
- 発売日2016/5/21
- 寸法13.3 x 2.6 x 19.5 cm
- ISBN-104560092486
- ISBN-13978-4560092484
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商品の説明
著者について
蔡英文(ツァイ インウェン)
1956年台北生まれ。台湾原住民パイワン族の血を引き、屏東の客家にもルーツをもつ自動車修理業を営む父と、河洛人の母の間に生まれ、台北県(現新北市)で育つ。国立台湾大学法学部卒、コーネル大学ロースクール法学修士、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで法学博士を取得。帰国後、国立政治大学及び東呉大学で教職に就く。台湾のWTO加入交渉時に経済部(日本の経済産業省に相当)で首席法律顧問を務めたことから、政府内の様々な要職を歴任。民進党が政権を獲得した2000年に中台関係の政策に携わる行政院大陸委員会の主任委員になり、04年に立法委員選挙で初当選、06年1月から翌年5月まで行政院副院長を務める。民進党が08年の総統選挙で敗れた後、第12代党主席に就任、民進党の立て直しを図る。10年台湾統一地方選挙の新北市長選挙で惜敗、12年台湾総統戦に初挑戦したが現職の馬英九に敗れ、党主席を引責辞任する。下野した後は、「小英教育基金会」を立ち上げ、台湾各地を回って人々と対話し交流を続け、未来の台湾に必要なことを模索した。14年再度党主席に就任したのち、16年1月の総統選挙で国民党の朱立倫に大差をつけて勝利し、初当選。16年5月に台湾で初めて女性として総統に就任。 著書『洋蔥炒蛋到小英便當――蔡英文的人生滋味』(2016年夏、白水社より邦訳刊行予定)。
1956年台北生まれ。台湾原住民パイワン族の血を引き、屏東の客家にもルーツをもつ自動車修理業を営む父と、河洛人の母の間に生まれ、台北県(現新北市)で育つ。国立台湾大学法学部卒、コーネル大学ロースクール法学修士、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで法学博士を取得。帰国後、国立政治大学及び東呉大学で教職に就く。台湾のWTO加入交渉時に経済部(日本の経済産業省に相当)で首席法律顧問を務めたことから、政府内の様々な要職を歴任。民進党が政権を獲得した2000年に中台関係の政策に携わる行政院大陸委員会の主任委員になり、04年に立法委員選挙で初当選、06年1月から翌年5月まで行政院副院長を務める。民進党が08年の総統選挙で敗れた後、第12代党主席に就任、民進党の立て直しを図る。10年台湾統一地方選挙の新北市長選挙で惜敗、12年台湾総統戦に初挑戦したが現職の馬英九に敗れ、党主席を引責辞任する。下野した後は、「小英教育基金会」を立ち上げ、台湾各地を回って人々と対話し交流を続け、未来の台湾に必要なことを模索した。14年再度党主席に就任したのち、16年1月の総統選挙で国民党の朱立倫に大差をつけて勝利し、初当選。16年5月に台湾で初めて女性として総統に就任。 著書『洋蔥炒蛋到小英便當――蔡英文的人生滋味』(2016年夏、白水社より邦訳刊行予定)。
登録情報
- 出版社 : 白水社 (2016/5/21)
- 発売日 : 2016/5/21
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 282ページ
- ISBN-10 : 4560092486
- ISBN-13 : 978-4560092484
- 寸法 : 13.3 x 2.6 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 461,235位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 3,371位外交・国際関係 (本)
- - 80,591位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2016年9月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2,000円以上もする高い本だが、これだけのカネを出す価値はある。
「自民党政権に代わる新たな政権への交代につながるヒントはもはや日本国内にはない。日本に国情がよく似た海外の先行例を探るしかない」というのが、この本の購入の動機だった。少なくともアジアでは、平和的政権交代が最も上手く機能している台湾政治の中に、自民党政権に代わる新たな政権へのヒントがないかと考えたのである。
そうした私の疑問への答えは、本書にある程度提示されているように思えた。蔡英文が優れているのは、政治家として「自分の理想、成し遂げたいこと」と「国民、周囲が自分に期待していること」との間のバランスが良く取れている点にある。日本の政治家は、このどちらかに極端に偏っている人がほとんどである(具体例を挙げると、憲法改正という「やりたいこと」への思いが強すぎて、人の言うことにまったく耳を傾けない安倍首相のような人物と、「周囲が自分に期待していること」への思いだけが強すぎて、有権者の息子の就職の世話をするなどの単なる「御用聞き」に堕している人物の両極端しかいない)。「理想を掲げつつ、現実と格闘しながら進む」という、本来の意味での政治家は、日本に皆無と言っていい。
蔡英文が、2012年総統選に敗北してから、台湾各地を回り、人々と交流する様子が本書には描かれている。こうした人々との交流を通じ、人々が自分に何を求めているかを熟知しているからこそ、蔡英文は逆境でもぶれずに選挙戦を戦うことができたのだろう。
日頃は選挙区にも顔を出さず、それぞれの持ち場で歯を食いしばって働く庶民の中に入っていくこともなく、選挙が近づいてくると政党を壊しては新党を作り、「私に清き1票をください」と連呼するだけの日本の野党なんて、戦う前から蔡英文に負けている。日本の野党関係者は、蔡英文の爪の垢でも煎じて飲むべきだろう。
もうひとつ、感じたのは日本の行政が硬直化していてまったくダメな点だ。本書で印象に残ったのが、外壁にひびが入ったままの校舎で授業を受け続けている子どもたちを前に、地元住民がボランティアで外壁を修理したエピソードである。台湾ではこうしたことが、成熟した市民社会の下で普通に行われているようだ。
だが、これが日本なら、まず成功しないだろう。日本の市民が、見るに見かねて同じことをしようとすれば、「市(区町村)の財産である校舎を市民がなぜ、何の権限で勝手に修理しているのか」と役所から邪魔が入るだろう。もし市民が、子どもたちのために善意での修理を強行したとしても、下手をすると「権限のないものによる勝手な修理は認めない」として、役所がわざわざ血税を投じ修理前の状態に戻す工事を行う、などという事態が冗談ではなく本当に起こりかねない。
本書を読んで、悔しいけれど、日本はもう完全に台湾に負けていると思った。市民意識、政治、行政あらゆる意味で。「同じ島国で、面積が狭く、エネルギー・資源もなく、片や国民党、片や自民党による長期1党支配の歴史を持つ日本と台湾は、似たもの同士」だと、本書を読むまでは思っていた。だが、定期的に政権交代ができるようになった台湾に対し、日本は一時期の例外を除いて60年近く1党支配が続いている。産業構造の転換にも失敗し、建設業など非効率な産業への公共投資ばかりが続き、たいした成果も上げていない。シャープも鴻海に買収された。このまま行けば、日本はいずれ台湾の背中も見えなくなり、中国・北朝鮮とともに「東アジア最後の1党支配国家群」に分類される日が来るーーそんな近未来が、本書を読んではっきり見えた。
日本に果たして、蔡英文のような政治家がいるだろうか。「自分の理想、成し遂げたいこと」と「国民、周囲が自分に期待していること」との間のバランスが良く取れ、違う政治的意見を持つ人々とも交流を厭わず、「理想を掲げつつも現実と格闘しながら進む」タイプの政治家。蔡英文に比肩する政治家は、いないように思える。
蔡英文より、1回り、2回りスケールが小さくても良いなら、辛うじて、嘉田由紀子・前滋賀県知事が私の持つ蔡英文のイメージに最も近い日本の政治家だと思う。乱開発を抑制し、無駄な公共事業の象徴だった新幹線栗東新駅建設を中止し、利益誘導しか頭になかった県議会自民党を分裂させ、「対話でつなごう滋賀の会」(対話の会)という地域政党を作ることで県議会に足がかりも得た。こうした新しい政治家が、日本に、それも地方でなく中央政界に、ひとりでも出てくれることを願う。
「自民党政権に代わる新たな政権への交代につながるヒントはもはや日本国内にはない。日本に国情がよく似た海外の先行例を探るしかない」というのが、この本の購入の動機だった。少なくともアジアでは、平和的政権交代が最も上手く機能している台湾政治の中に、自民党政権に代わる新たな政権へのヒントがないかと考えたのである。
そうした私の疑問への答えは、本書にある程度提示されているように思えた。蔡英文が優れているのは、政治家として「自分の理想、成し遂げたいこと」と「国民、周囲が自分に期待していること」との間のバランスが良く取れている点にある。日本の政治家は、このどちらかに極端に偏っている人がほとんどである(具体例を挙げると、憲法改正という「やりたいこと」への思いが強すぎて、人の言うことにまったく耳を傾けない安倍首相のような人物と、「周囲が自分に期待していること」への思いだけが強すぎて、有権者の息子の就職の世話をするなどの単なる「御用聞き」に堕している人物の両極端しかいない)。「理想を掲げつつ、現実と格闘しながら進む」という、本来の意味での政治家は、日本に皆無と言っていい。
蔡英文が、2012年総統選に敗北してから、台湾各地を回り、人々と交流する様子が本書には描かれている。こうした人々との交流を通じ、人々が自分に何を求めているかを熟知しているからこそ、蔡英文は逆境でもぶれずに選挙戦を戦うことができたのだろう。
日頃は選挙区にも顔を出さず、それぞれの持ち場で歯を食いしばって働く庶民の中に入っていくこともなく、選挙が近づいてくると政党を壊しては新党を作り、「私に清き1票をください」と連呼するだけの日本の野党なんて、戦う前から蔡英文に負けている。日本の野党関係者は、蔡英文の爪の垢でも煎じて飲むべきだろう。
もうひとつ、感じたのは日本の行政が硬直化していてまったくダメな点だ。本書で印象に残ったのが、外壁にひびが入ったままの校舎で授業を受け続けている子どもたちを前に、地元住民がボランティアで外壁を修理したエピソードである。台湾ではこうしたことが、成熟した市民社会の下で普通に行われているようだ。
だが、これが日本なら、まず成功しないだろう。日本の市民が、見るに見かねて同じことをしようとすれば、「市(区町村)の財産である校舎を市民がなぜ、何の権限で勝手に修理しているのか」と役所から邪魔が入るだろう。もし市民が、子どもたちのために善意での修理を強行したとしても、下手をすると「権限のないものによる勝手な修理は認めない」として、役所がわざわざ血税を投じ修理前の状態に戻す工事を行う、などという事態が冗談ではなく本当に起こりかねない。
本書を読んで、悔しいけれど、日本はもう完全に台湾に負けていると思った。市民意識、政治、行政あらゆる意味で。「同じ島国で、面積が狭く、エネルギー・資源もなく、片や国民党、片や自民党による長期1党支配の歴史を持つ日本と台湾は、似たもの同士」だと、本書を読むまでは思っていた。だが、定期的に政権交代ができるようになった台湾に対し、日本は一時期の例外を除いて60年近く1党支配が続いている。産業構造の転換にも失敗し、建設業など非効率な産業への公共投資ばかりが続き、たいした成果も上げていない。シャープも鴻海に買収された。このまま行けば、日本はいずれ台湾の背中も見えなくなり、中国・北朝鮮とともに「東アジア最後の1党支配国家群」に分類される日が来るーーそんな近未来が、本書を読んではっきり見えた。
日本に果たして、蔡英文のような政治家がいるだろうか。「自分の理想、成し遂げたいこと」と「国民、周囲が自分に期待していること」との間のバランスが良く取れ、違う政治的意見を持つ人々とも交流を厭わず、「理想を掲げつつも現実と格闘しながら進む」タイプの政治家。蔡英文に比肩する政治家は、いないように思える。
蔡英文より、1回り、2回りスケールが小さくても良いなら、辛うじて、嘉田由紀子・前滋賀県知事が私の持つ蔡英文のイメージに最も近い日本の政治家だと思う。乱開発を抑制し、無駄な公共事業の象徴だった新幹線栗東新駅建設を中止し、利益誘導しか頭になかった県議会自民党を分裂させ、「対話でつなごう滋賀の会」(対話の会)という地域政党を作ることで県議会に足がかりも得た。こうした新しい政治家が、日本に、それも地方でなく中央政界に、ひとりでも出てくれることを願う。
2016年8月3日に日本でレビュー済み
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蔡總統の台彎に懸ける思いが強烈に感じられる良著。台彎を知るための行脚が楽しかった。
何の実績も意気込みも無かった、
馬英九のような偽者ではない。
大きくて分厚いから読むのに苦労するかと思ったが、意外とすんなり読めた。
政治家としては数字で読み解くのではなく、
実践が大切と思ったらしく、
廃校寸前の校舎の建て直しに参加して、
ペンキを塗る作業を数日間手伝ったらしい。
黄文雄氏の本を読むと、
台彎には政治屋と公務員が異常に多いらしいが、
だからこそ蔡總統がどのような改革を進めるか楽しみだ。
だが本書は日台関係については触れていない。
日台関係の今後を勉強するには退屈だと思う。
この本を読んで10月に台彎に再び行くことに決めた。
上記のとおり日本との今後の記載が全く無く、
とにかく米国との信頼関係を築きたい、
という強烈な熱意が感じられたからだ。
本書は2012年の選挙で底辺に落ちた蔡總統が、
見事に当選するまでのノンフィクションであるが蔡總統は黄文雄氏曰く政治家というより、
まるで学者のようだと知人に言われたらしい。
確かに膨大な知識と財政について、
蔡總統は物凄く勉強されていて、
本当に学者のような人物だ。
その蔡總統が率いる新台彎を感じてみたい。
いま思えば本書の存在をもっと早く知って、
もっと早く読むべきだと思った。
蔡總統の台彎に懸ける情熱は、
これから日本を選ぼうが米国を選ぼうが熱い。
しかし日本人や金美齢氏が期待するほど、
日台関係が黄金時代を迎えるか否かは、
現時点では個人的に疑問が無くもない。
でも政治とは何か外交とは何かを知るには、
非常にいい本だった。
日台関係について知りたい方には勧めない。
米台のことばかりだから退屈だと思うだろう。
何の実績も意気込みも無かった、
馬英九のような偽者ではない。
大きくて分厚いから読むのに苦労するかと思ったが、意外とすんなり読めた。
政治家としては数字で読み解くのではなく、
実践が大切と思ったらしく、
廃校寸前の校舎の建て直しに参加して、
ペンキを塗る作業を数日間手伝ったらしい。
黄文雄氏の本を読むと、
台彎には政治屋と公務員が異常に多いらしいが、
だからこそ蔡總統がどのような改革を進めるか楽しみだ。
だが本書は日台関係については触れていない。
日台関係の今後を勉強するには退屈だと思う。
この本を読んで10月に台彎に再び行くことに決めた。
上記のとおり日本との今後の記載が全く無く、
とにかく米国との信頼関係を築きたい、
という強烈な熱意が感じられたからだ。
本書は2012年の選挙で底辺に落ちた蔡總統が、
見事に当選するまでのノンフィクションであるが蔡總統は黄文雄氏曰く政治家というより、
まるで学者のようだと知人に言われたらしい。
確かに膨大な知識と財政について、
蔡總統は物凄く勉強されていて、
本当に学者のような人物だ。
その蔡總統が率いる新台彎を感じてみたい。
いま思えば本書の存在をもっと早く知って、
もっと早く読むべきだと思った。
蔡總統の台彎に懸ける情熱は、
これから日本を選ぼうが米国を選ぼうが熱い。
しかし日本人や金美齢氏が期待するほど、
日台関係が黄金時代を迎えるか否かは、
現時点では個人的に疑問が無くもない。
でも政治とは何か外交とは何かを知るには、
非常にいい本だった。
日台関係について知りたい方には勧めない。
米台のことばかりだから退屈だと思うだろう。
2020年5月19日に日本でレビュー済み
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台湾の民主化に本気で真剣に向き合える本です。台湾加油🇹🇼!
2016年6月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2012年の総統選挙で敗北した後、敗北の理由を熟考し、どう市民と向き合って行ったかが非常に良く描かれています。
特に訪米の際、ハードスケジュールであるにも関わらず、「中西部にも台湾人はいるのだ」と、シカゴとヒューストン訪問も強行するくだりは、「次は絶対に勝つのだ」という強い意思を感じました。
政治的なマニュフェストというより、物語風に書かれていて、政治に興味のない人でも非常に読みやすいです。現地の人々の生活も臨場感をもって知ることが出来ます。
本の中で、支持者たちの生活や仕事場、部下たちの人間性などが生き生きと描かれていて、国民に対する強い愛着を感じました。日本で暮らしていると、ただ政治家の家系に生まれただけの2世、3世、4世政治家が国政を牛耳り、まるで私たち国民を「税金を搾取するためだけのロボット」のように思っている、としか感じられません。国民を思い、本1冊書く政治家がいったいこの日本に何人いるでしょうか。「パートで月給25万円」と、まったく世間の相場からかけ離れた事を、国会で言い出す首相を持つ日本人としては、国民に愛着を持ち、生活に興味を持つ政治家を、総統として選べる台湾の人々を非常に羨ましく感じました。
愛国心というのは国旗を掲げるとか、国歌を斉唱するという事からは決して生まれません。リーダーたちが国民を大切に思い、国民と向き合い、幸せに暮らして行ける世の中を作る。そのような環境の中で愛国心は自然に育まれるのだと思います。
台湾に興味のある人、台湾でビジネスを行っている人、アジア政治に興味のある人、そして日本の政治家にもぜひ読んでいただきたいと思う1冊です。
特に訪米の際、ハードスケジュールであるにも関わらず、「中西部にも台湾人はいるのだ」と、シカゴとヒューストン訪問も強行するくだりは、「次は絶対に勝つのだ」という強い意思を感じました。
政治的なマニュフェストというより、物語風に書かれていて、政治に興味のない人でも非常に読みやすいです。現地の人々の生活も臨場感をもって知ることが出来ます。
本の中で、支持者たちの生活や仕事場、部下たちの人間性などが生き生きと描かれていて、国民に対する強い愛着を感じました。日本で暮らしていると、ただ政治家の家系に生まれただけの2世、3世、4世政治家が国政を牛耳り、まるで私たち国民を「税金を搾取するためだけのロボット」のように思っている、としか感じられません。国民を思い、本1冊書く政治家がいったいこの日本に何人いるでしょうか。「パートで月給25万円」と、まったく世間の相場からかけ離れた事を、国会で言い出す首相を持つ日本人としては、国民に愛着を持ち、生活に興味を持つ政治家を、総統として選べる台湾の人々を非常に羨ましく感じました。
愛国心というのは国旗を掲げるとか、国歌を斉唱するという事からは決して生まれません。リーダーたちが国民を大切に思い、国民と向き合い、幸せに暮らして行ける世の中を作る。そのような環境の中で愛国心は自然に育まれるのだと思います。
台湾に興味のある人、台湾でビジネスを行っている人、アジア政治に興味のある人、そして日本の政治家にもぜひ読んでいただきたいと思う1冊です。
2016年7月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
新しく台湾総統に就任された蔡英文総統の総統就任迄の物語が凝縮されています。
一度総統選挙で落選し台湾全土を回りながら国民との会話を通じて、台湾が抱える問題点…改善を要する点等々を事細かに観察されていたことなどが理解出来ました。
国民目線の蔡英文総統を選出された台湾国民の英断を歓迎します。
これから先日本はもっと台湾と近くなれると確信しています。時間が有れば台湾に遊びに行きたいと思ってます。これからも良きライバルでいましょう。
一度総統選挙で落選し台湾全土を回りながら国民との会話を通じて、台湾が抱える問題点…改善を要する点等々を事細かに観察されていたことなどが理解出来ました。
国民目線の蔡英文総統を選出された台湾国民の英断を歓迎します。
これから先日本はもっと台湾と近くなれると確信しています。時間が有れば台湾に遊びに行きたいと思ってます。これからも良きライバルでいましょう。