執行草舟氏に導かれて本書を手に取った。
私が一番心を惹かれたのは、「自分で自分の好きな道に熱中するものは、まず妻子というものを斥けてかかったほうが無難であろう。すきなこともやりたい、妻子も食わせねばならぬというのは、それこそ二足のワラジであり、どだいムシの良すぎる注文である。」（11頁）という文であった。
私もかつて志を抱いてある道に邁進したこともあったが、妻子を抱えるようになり、肝心なところで中途半端に欲が出て衣食を求めてしまい、挫折してしまった。
まさに「食えなんだら食うな」の覚悟がなかったために、道を全うすることが出来なかったのである。
無責任な言い方だが、道を求める生き方をせんと欲するならば、妻子のことは天に任せる他ないのだ。
それが嫌なら最初から妻子など持たぬことだ。
今では全く違う道を歩んでいる自分であるが、本書を読み、改めて、覚悟を持って事に当たることの大事さを痛感している。
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」である。
中途半端に保身に走ったり、躊躇するのが一番いけない。
食えなかったら飢え死にの覚悟がないから、駄目になるのだ。
「食えなんだら食うな」とは、私にとって正に至言である。
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