著者の講演に誘われて本書を求めた。英国史の泰斗の君塚直隆氏同様に、英国の大学への留学経験を持つ著者には、欧州の外交史を英国から捉える視点があるように思える。世阿弥の「離見の見」ではないが、欧州の歴史の研究者にはない「鳥の目」が備わっているように思えてならない。
帯に「外交敗戦を避けるために」とある。著者は、外交の要諦を、「均衡」、「協調」、「共同体」の三つの分けて論じている。冒頭の部分の高坂正堯京大教授(当時)と坂本義和東大教授(当時)のバランス・オブ・パワーを巡る捉え方の違いから入ったことが興味深かった。両者は、オーストリアの政治家メッテルニッヒが築いたウイーン体制を研究したようだが、メッテルニッヒに対する評価が対極的であったことが面白かった。全面講和か部分講話かで対立した吉田茂首相と南原繁東大総長の議論を思い出した。
欧州における戦争と平和の問題を、時代毎に、その時代の状況や空気、外交を主導した君主、政治家、官僚、思想家を丹念に渉猟して論じている。「均衡」「協調」「共同体」という三つの基本原理を基底に添えながら、時代による合唱連衡や、個性ある外交の主役の政治力、人間力、思想を丹念に紹介している。欧州外交史の新書としては第一級の出来栄えの書である。
ウクライナ戦争におけるロシアの突然の侵攻は、日本人には不可解な出来事だが、欧州史のエキスパートの著者から見れば、長い人類の歴史の中で、幾度も繰り返されてきた悲惨な経験の一例に過ぎないのであろう。まさに、今のロシアの姿勢は、ホッブス的である。世界中の指導者や人々が、「どうする家康」ではないが、どうすることが、人類にとり賢い判断なのか、幸福をもたらすのはどのような方法なのか、を著者から著者の国際政治と外交の豊かな知識を通して考える機会をもらえた、と言える。
後に大学者となった人々でも、壮年期の一冊の本を後に超えるのは至難の技と言われるが、本書は、現代の国際政治学を牽引する著者の、若き日の昇り竜の時代の労作である。
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国際秩序 - 18世紀ヨーロッパから21世紀アジアへ (中公新書 2190) 新書 – 2012/11/22
細谷 雄一
(著)
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- 本の長さ354ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2012/11/22
- 寸法11 x 1.5 x 17.3 cm
- ISBN-104121021908
- ISBN-13978-4121021908
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- 出版社 : 中央公論新社 (2012/11/22)
- 発売日 : 2012/11/22
- 言語 : 日本語
- 新書 : 354ページ
- ISBN-10 : 4121021908
- ISBN-13 : 978-4121021908
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2023年4月19日に日本でレビュー済み
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2019年12月16日に日本でレビュー済み
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国際秩序の基礎は「均衡」「協調」「共同体」の3つとしている。この3つは現在においても必要と考えられるが、「共同体」については、ややもすると理想を追い求めることにもなるので、議論の余地が大きいように思われます。しかしながら、この3つをベースに歴史や外交を改めてみていくと、非常に理解がしやすくなった。
2018年9月28日に日本でレビュー済み
細谷教授の数百年に及ぶ欧州外交史を彩る人々への深い愛着を感じる好著。対ヒトラー戦を指揮したチャーチルのご先祖様がピット首相のもと対ナポレオン戦を指揮した人だったという因縁や、ピット首相の遺志を引き継いだカースルレイ卿とメッテルニヒが互いに信頼しあっていたというエピソードなど、国際関係理論を語った本でありながら、平和の実現のために奔走した政治家たちの希望と苦悩が一番頭に残りましたね。
一読、勢力均衡と国際協調が揃ったウィーン体制が理想の平和秩序として持ち上げられているように思うのだが、その国際協調の内実は革命を恐れる貴族階級の連帯感でしかないのではありませんかね。貴族階級の抑圧的支配の強化という代償を払った平和ってのは何なのでしょうね。考えこまされます。
細谷教授はウィーン体制以上に安定していたとする冷戦下の核戦争の恐怖を安定に勝るものなしとして全面的に肯定しておられるくらいなのでウィーン体制の抑圧的性格なんてかわいいもんだというところなんでしょうな。
一読、勢力均衡と国際協調が揃ったウィーン体制が理想の平和秩序として持ち上げられているように思うのだが、その国際協調の内実は革命を恐れる貴族階級の連帯感でしかないのではありませんかね。貴族階級の抑圧的支配の強化という代償を払った平和ってのは何なのでしょうね。考えこまされます。
細谷教授はウィーン体制以上に安定していたとする冷戦下の核戦争の恐怖を安定に勝るものなしとして全面的に肯定しておられるくらいなのでウィーン体制の抑圧的性格なんてかわいいもんだというところなんでしょうな。
2023年1月15日に日本でレビュー済み
本書は現在の国際秩序がどのように形成されてきたのかを均衡・協調・共同体の3類型に関する概念をまず解説した上で、具体例について歴史の事象等を紹介しつつ説明している。
日本の小中学校の歴史の授業では安全保障・国際秩序という観点で歴史を振り返らないので国際秩序について体系立てて学べる本書は良書。
私が初めて本書に触れたのは大学時代。今回ウクライナ侵攻を受けて読み直したが改めて国際秩序の形成と発展についてわかりやすく解説しており、何より国際秩序に関する思想や理論がどのように発展してきたのかが事例とともに紹介してあるため、とても面白いと感じた。
混迷を迎える現代において自分たちの羅針盤を失わないためにもぜひ読んで欲しい。
日本の小中学校の歴史の授業では安全保障・国際秩序という観点で歴史を振り返らないので国際秩序について体系立てて学べる本書は良書。
私が初めて本書に触れたのは大学時代。今回ウクライナ侵攻を受けて読み直したが改めて国際秩序の形成と発展についてわかりやすく解説しており、何より国際秩序に関する思想や理論がどのように発展してきたのかが事例とともに紹介してあるため、とても面白いと感じた。
混迷を迎える現代において自分たちの羅針盤を失わないためにもぜひ読んで欲しい。
2013年3月8日に日本でレビュー済み
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国際関係を理解する上での貴重な視点です。近代史の教科書として国民が広く学ぶべき内容だと思う、いかに戦争を回避するかを多くの先人が心を砕いてきたかが良くわかります。一部政治家やマスコミの過激な発言に振り回されることがないようにしたいものです。
2022年3月20日に日本でレビュー済み
近現代の外交史の流れを追うことで、国際秩序のパワーバランスがどのように変化してきたか、平和のためには力の均衡が必要であることが理解できました。
序盤の外交の体系については、少し冗長に感じましたが(導入として必要だったのかもしれませんが)、中盤以降は面白くて一気読みできます。
ロシアのウクライナ侵攻により、国際秩序が変わりつつある今こそ読みたい本。
序盤の外交の体系については、少し冗長に感じましたが(導入として必要だったのかもしれませんが)、中盤以降は面白くて一気読みできます。
ロシアのウクライナ侵攻により、国際秩序が変わりつつある今こそ読みたい本。
2021年5月17日に日本でレビュー済み
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私は英国の大学、大学院で国際関係史を専攻したが、筆者の言うようには本場では教えていない。
筆者は、何か自分の思い込みはじめにありきで、historian にあるまじき議論の展開をしているように思われる。第二次世界大戦の起源でも世界大恐慌の影響についてほとんど触れていないし、欧州統合史も実態面からの要請についても言及していない。キッシンジャーのWorld Order と比較して欲しい。書評者ももっとしっかりしてほしい。レベルが低すぎる。
筆者は、何か自分の思い込みはじめにありきで、historian にあるまじき議論の展開をしているように思われる。第二次世界大戦の起源でも世界大恐慌の影響についてほとんど触れていないし、欧州統合史も実態面からの要請についても言及していない。キッシンジャーのWorld Order と比較して欲しい。書評者ももっとしっかりしてほしい。レベルが低すぎる。
2021年4月26日に日本でレビュー済み
本書は国際秩序に関する思想やその歴史的発展を、「均衡の体系」「協調の体型」「共同体の体系」の3類型に分類に基づいて整理している。第1章では、ホッブズやカントはじめ多数の思想家・学者の議論を引用し、勢力均衡や国際協調の理念が発展してきた歴史を思想の面から概観し、第2章・第3章ではそれぞれウェストファリア体制からビスマルクの時代にかけての近代ヨーロッパの時代と、2度の世界大戦を経た世界戦争の時代において、世界はどのように安定し、どのように平和が崩れるのかを3類型をもとに論じている。その上で第4章では、未来への展望というタイトルで、冷戦期において均衡、協調、共同体が組み合わさり、主要な大国間での全面戦争が起きず、国際秩序が安定していた要因や背景を分析している。
さて、本書は現在の国際秩序がどのように形成されてきたのかを均衡・協調・共同体の3類型を用いて歴史的に論じているが、第4章の最後には現在の日本が置かれた安全保障環境についてすすめの言葉を述べているため、この点について最近のニュースと合わせて考えてみたい。細谷は、「東アジアにおいては、そのような共有(注:価値観や利益の共有)が必ずしも浸透していない。従って、そのような状況において『均衡の体系』を回復して、それを基礎として大国間協調や、『東アジア共同体』の構築が可能となると考えられる」と述べ、まず東アジアにおける「勢力均衡の回復」が必要になると指摘している(331頁)。こうした勢力の均衡こそ、今まさに行われていることではないだろうか。QUADとして注目された日米豪印の協調枠組みや英独仏の太平洋への駆逐艦や空母派遣は急速に軍事的な拡張を続ける中国に対して均衡を取るためであると考えることができる。一方で、中国は4/16に日米首脳会談に合わせて独仏と環境問題に関する首脳会談を実施していることや、4/22に米国主導の環境サミットが行われたことは環境問題という共通の価値・利益を追求している点で、共同体の枠組みの観点から国際秩序の安定を図るものと考えうる。
私が初めて本書に触れたのは高校時代、大学の進路について迷っていた時だった。国際情勢に関心があり、国際政治や外交史を学びたいと思っていたため手に取ったのがこの本だった。国際秩序の形成と発展についてわかりやすく解説しており、何より国際秩序に関する思想や理論がどのように発展してきたのかが事例とともに紹介してあるため、とても面白い。私自身、大学で国際関係を志望する後押しの契機となった本であり、ぜひご一読をおすすめしたい。
さて、本書は現在の国際秩序がどのように形成されてきたのかを均衡・協調・共同体の3類型を用いて歴史的に論じているが、第4章の最後には現在の日本が置かれた安全保障環境についてすすめの言葉を述べているため、この点について最近のニュースと合わせて考えてみたい。細谷は、「東アジアにおいては、そのような共有(注:価値観や利益の共有)が必ずしも浸透していない。従って、そのような状況において『均衡の体系』を回復して、それを基礎として大国間協調や、『東アジア共同体』の構築が可能となると考えられる」と述べ、まず東アジアにおける「勢力均衡の回復」が必要になると指摘している(331頁)。こうした勢力の均衡こそ、今まさに行われていることではないだろうか。QUADとして注目された日米豪印の協調枠組みや英独仏の太平洋への駆逐艦や空母派遣は急速に軍事的な拡張を続ける中国に対して均衡を取るためであると考えることができる。一方で、中国は4/16に日米首脳会談に合わせて独仏と環境問題に関する首脳会談を実施していることや、4/22に米国主導の環境サミットが行われたことは環境問題という共通の価値・利益を追求している点で、共同体の枠組みの観点から国際秩序の安定を図るものと考えうる。
私が初めて本書に触れたのは高校時代、大学の進路について迷っていた時だった。国際情勢に関心があり、国際政治や外交史を学びたいと思っていたため手に取ったのがこの本だった。国際秩序の形成と発展についてわかりやすく解説しており、何より国際秩序に関する思想や理論がどのように発展してきたのかが事例とともに紹介してあるため、とても面白い。私自身、大学で国際関係を志望する後押しの契機となった本であり、ぜひご一読をおすすめしたい。