短い有利な証言だけをもとに「太平洋戦争はアメリカが起こした」と主張する人がいますが、「井の中の蛙」にならないように、他の文献や資料も読みましょう。
これは、日米開戦に立ち会ったローズベルト大統領の本格的な伝記です。
書き方は、たいへん具体的で詳しく、かつ流れを示していて面白い。少なくとも形式面では、断片的な証言による本よりも、信頼性が高そうです。
さっそく、気になる1940~41年のあたりを読むと、大統領はナチスに対して一人戦うイギリスを助けたかったし、その側近がイギリスを視察しても人間的な共感を持ったということです。このあたりは、現在は中国、ロシア、ISの膨張主義に対抗している、ある意味でありがたく、保守政権が(ある程度はリベラル派も)感謝するアメリカと、同じスピリットです。
しかし、当時の国内には共和党などの孤立主義も強く、大統領はまずイギリスに武器を「貸す」とかいろいろ工夫しました。
最終的に日本に厳しい経済制裁を科すことになったのは、日本軍がベトナムにまで軍事侵攻したことが原因、と正統派の解説をしています。石油を完全に禁輸した決定については、ややあいまい。(日本が譲歩する可能性に期待していたか否かは、しっかり読み込んでいません。)それに対して、日本から攻撃を受ける可能性を予想はしたが、ハワイに来るとは思わなかった、という解説でした。「大統領は真珠湾攻撃を暗号で知っていたのに放置した」という説もありますが、著者は、もしそうなら、ハワイに軍艦を1,2隻残しておけば十分で、大量の戦艦を失い戦争に負けるかもしれない失敗を犯すことはしなかったはず、と説得力のある反論をしています。アメリカは戦争中でも一応民主主義だったので、ハワイでの大損害は、議会でも激しく追及され、政治的にも不利になったのですから。
(まずは、お読みになって、どんな文献にもとづいているかも確認し、本を評価してください。)
結局、当時のアメリカの政権が、イギリスとヨーロッパの民主主義を救おうとし、またアジアでの日本の軍事的膨張を止めようとした判断と、戦争に至る複雑な交渉過程を、どう評価するかという問題でしょう。単に、「アメリカは日本が嫌いで、日本と戦争をしたかった」という単純でナショナリズム(自民族優先主義)的な理解では、片付かない歴史の現実なのです。
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フランクリン・ローズヴェルト 上 - 日米開戦への道 単行本 – 2014/8/8
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恐慌と世界大戦を乗り切った大統領の決定版評伝。浮気に悩む妻エレノアとの愛憎やホワイトハウスや米国民の実情を克明に描く。
- 本の長さ567ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2014/8/8
- ISBN-104120046451
- ISBN-13978-4120046452
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2014/8/8)
- 発売日 : 2014/8/8
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 567ページ
- ISBN-10 : 4120046451
- ISBN-13 : 978-4120046452
- Amazon 売れ筋ランキング: - 966,574位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 136,433位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年7月20日に日本でレビュー済み
2014年12月8日に日本でレビュー済み
フランクリン=ルーズベルト (FDR) は米国史上例のない4期を務めた(車椅子の)大統領であったが、彼の成功(偉業)は、妻であるエレノア=ルーズベルト(ER) の限り無い助力がなかったら、到底成し得なかった。(実はセオドール=ルーズベルト大統領の孫娘である)ERは実質的には、FDRの副大統領(副官)だった。実際の副大統領(ハリー=トルーマン)は無力に等しかった。FDRは先ず、自らを襲った「ポリオ」(小児麻痺ウイルス) との闘いを克服せねばならなかった。次に大統領に当選後、世界中に蔓延する経済的「大恐慌」と闘わなければならなかった。そして、次にやってきた最大の敵 (ナチス「ドイツ」や日本帝国主義)と実弾で戦わざるを得なくなった。ドイツが欧州を侵略し始め、日本がハワイの真珠湾を急襲したからだ。次々に起こる「非常時」をまれに見る才覚を発揮しながら、夫妻は見事に乗り切った! この原書の邦訳(上下2巻)が「フランクリン=ルーズベルト」という表題で20年ぶりに出版された。上巻には「日米開戦への道」という副題が付いている。実は夫妻とも(欧州で1938年に開始した)第二次世界大戦への参戦には極めて消極的だった。しかしながら、日本軍が1941年12月8日に真珠湾を攻撃したという知らせを聞いて、米国の参戦がもう避けられぬものになったと感じた。この本では、その苦しい決断に至る夫妻の様々な内面の葛藤(ジレンマ)が克明に描かれている。結果的には、米国の参戦は、欧州での英国の(ドイツに対する)劣勢を挽回し、さらに日本の帝国(陸軍独裁)主義を打ち破り、西欧全体にも日本にも民主主義をもたらした。そういう(「戦後日本の生い立ちを見つめる」という)意味で、この本は極めて貴重であるが、この原書を客観的に読みこなし得る日本人全体の精神的な成長に20年の歳月が必要であったようである。戦後の聡明な「民主党」大統領夫妻(クリントン夫妻もオバマ夫妻)も、ルーズベルト夫妻をハワイトハウスの「鏡」にしてきた。原書が「クリントン時代」に出版され、邦訳が「オバマ時代」に出版されたのは「意味深(しん)」である。
2014年9月9日に日本でレビュー済み
先の日米戦争については、良くも悪くも日本人の視点あるいはアジアの視点から書かれているものをよく目にするが、本書はもちろん米国人(政財界のリーダーたちやマスコミ・世論)の視点で書かれている。歴史の事実を個人として評価しようとするとき、多様な視点からの情報に接するべきだというのが私の持論だ。だから原著は米国人向けに書かれたのであろうが、日本人にとっても思考のバランスを整えるのに最適だと思うし、これまであまりなかったものが出版されたと思う。先ごろ公開された「昭和天皇実録」と併せて読めばいいかもしれないと思う。立場は違うが日米の元首の思いの対比がおもしろそうだ。
本書の特徴は人物の描写や情景の描写が非常にこまやかであるということだ。その人の表情や心の奥の感情まで、その部屋の椅子の形や壁の絵のテーマまで見えてくるような気がする。タイトルに示したように映画を観るような臨場感があるのだ。
個人的には本題ではないかもしれないが、大統領とその夫人のエレノア、個人秘書(愛人?)のミッシー・・・その三人の言動・心理描写に興味を覚えた。・・・無味乾燥の教科書や歴史書を勉強するのとは違う、小説を読むような楽しみが加わる。
本書の特徴は人物の描写や情景の描写が非常にこまやかであるということだ。その人の表情や心の奥の感情まで、その部屋の椅子の形や壁の絵のテーマまで見えてくるような気がする。タイトルに示したように映画を観るような臨場感があるのだ。
個人的には本題ではないかもしれないが、大統領とその夫人のエレノア、個人秘書(愛人?)のミッシー・・・その三人の言動・心理描写に興味を覚えた。・・・無味乾燥の教科書や歴史書を勉強するのとは違う、小説を読むような楽しみが加わる。