東京駅丸の内口にそびえる高層ビルのひとつが地上38階建てのJPタワービル、その5階までは1933年竣工でブルーノ・タウトから「モダニズム建築」として賞賛された東京中央郵便局の外観が保存されている。戦後4年間にわたりその3階から5階の大半を占拠していたのが米占領軍のCCD(民間検閲局)であった。新聞・出版・映画・演劇・放送などの検閲とならび郵便・電信・電話の検閲もまた密かに行われていたのだ。
同じ著者の2013年の出版物「GHQの検閲・諜報・宣伝工作」岩波現代全書に続き補完するのが本書であり、新たに発見されたのがローマ字で記された検閲官の名簿。その解析の試みである。
実名で登場している48名の検閲官のなかには、元衆院議員の楢崎弥之助、元参院議員の久保田真苗、作家の鮎川哲也、妹尾アキ夫、工藤幸雄、原百代、歌人の岡野直士郎(元翼賛会幹部の経歴もある)、学者の甲斐弦、梅崎光生、のちに会社経営者となった児島英一、池田早苗、川田隆など。著者が厳しく追求したのが死ぬまで口外しなかった劇作家の木下順二である(16ページも費やしている)。
当事者の声は複雑である「酸素不足の巨大な水槽の中のユダの群れ」「品性下劣」と否定的なものもあれば「日本人の世論を知るための手段」「言論思想統制の具ではなかった」(ともに神谷の言)、あるいは「占領軍への協力が自国の復興を民主化に貢献するとの真情」と肯定的に捉えていたものもあった。
極めて貴重な資料集成であるが、問題点もないわけではない。駆け足で結論を求めがちで総合的・俯瞰的な解析に至っていないのはページ数の制限のゆえであろうか。初めてこのトピックに接するには前記の「GHQの検閲・諜報・宣伝工作」から始めるのが適切なアプローチであろう。
最後に一言。本書は今日の日本に照らすと妙に生々しい。テレビ番組を細かく監視する官邸、力を増す警察権力・・・「この道はいつか来た道」でないだろうか。
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検閲官~発見されたGHQ名簿 (新潮新書) 新書 – 2021/2/17
山本 武利
(著)
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沈黙は破られた――敗戦後の日本で、手紙、電話等あらゆる言論を監視した日本人エリートらの証言を、徹底的に検証。第一級史料。
- 本の長さ256ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2021/2/17
- 寸法10.8 x 1.2 x 17.3 cm
- ISBN-104106108941
- ISBN-13978-4106108945
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2021/2/17)
- 発売日 : 2021/2/17
- 言語 : 日本語
- 新書 : 256ページ
- ISBN-10 : 4106108941
- ISBN-13 : 978-4106108945
- 寸法 : 10.8 x 1.2 x 17.3 cm
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上位レビュー、対象国: 日本
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2021年2月26日に日本でレビュー済み
2024年2月15日に日本でレビュー済み
著者は、歴史学者。一橋大学名誉教授、早稲田大学名誉教授。NPO法人インテリジェンス研究所理事長。
終戦直後、CCD(民間検閲局)により、郵便、電信、電話ならびに新聞、出版、映画、演劇、放送等も2万人くらいの日本人検閲官を使って、検閲した。辞書の中の例文でさえ、検閲の対象となった。その実態を、文献とインタビューから明らかにしたもの。実態を知るうえで貴重な本。
終戦直後、CCD(民間検閲局)により、郵便、電信、電話ならびに新聞、出版、映画、演劇、放送等も2万人くらいの日本人検閲官を使って、検閲した。辞書の中の例文でさえ、検閲の対象となった。その実態を、文献とインタビューから明らかにしたもの。実態を知るうえで貴重な本。
2021年4月1日に日本でレビュー済み
江藤淳の著作などにより、占領中、GHQが大規模な検閲を多数の日本人を雇って実施していたことはよく知られている事実である。ただそのdetailについては、ほとんどの日本人が知らない。
本書は、新書という形で、そのdetail(原資料は2013年国立国会図書館のCCD資料からのCCD(第1区の検閲官名簿)の一端が紹介されている。そのdetailは、日系2世検閲官や日本人検閲官とのinterviewや数少ないながらも当時の検閲官の手記や回顧録などで捕捉されている。
中身は予想していた通り。価値観の転換と戦後の混乱に伴う生活上の理由で、相当数の当時のインテリがGHQがオファーした条件に抵抗できずに、同胞日本人の親書(郵便・電報)を「盗み見る」という作業にある一定期間従事した姿が淡々とつづられていく。当事者により駆使された様々な正当化の論理は本書で取り上げられているが、かなりの人物が当事の経歴をその後は表に出していないというところに彼らの良心の呵責の深さが見て取れる。
本書のスタイルは、淡々と当事者とのinterviewや手記を紹介していくという形を取っている。格別、非難や批判のトーンはない。kinoshita junjiについての追跡が本書ではなされているが、淡々と当時の状況の推察と戦後の軌跡が補足として付け加えられているだけだ。木下順二がアメリカに一度も行っていないとの事実が明らかにされているが、正式な党員であったかどうかは知らないが、共産党シンパであれば、米国入国のvisaが下りない可能性が高かったわけで、これは驚くほどのことではない。
韓国の政治文化じゃあるまいし、もう70年以上前の出来事に道徳的な判断を与えても何の生産性もない。読み手も当事者もその闇と業の深さにただおののくしかない。一方で、これほどの大規模な検閲を実施した米政府内の思惑やプロセスについては本書では言及されていない。
なお、著者は、インテリジェンス研究所というサイトを運営しているようで、そこでこの検閲官のリストは照合することが可能。
本書は、新書という形で、そのdetail(原資料は2013年国立国会図書館のCCD資料からのCCD(第1区の検閲官名簿)の一端が紹介されている。そのdetailは、日系2世検閲官や日本人検閲官とのinterviewや数少ないながらも当時の検閲官の手記や回顧録などで捕捉されている。
中身は予想していた通り。価値観の転換と戦後の混乱に伴う生活上の理由で、相当数の当時のインテリがGHQがオファーした条件に抵抗できずに、同胞日本人の親書(郵便・電報)を「盗み見る」という作業にある一定期間従事した姿が淡々とつづられていく。当事者により駆使された様々な正当化の論理は本書で取り上げられているが、かなりの人物が当事の経歴をその後は表に出していないというところに彼らの良心の呵責の深さが見て取れる。
本書のスタイルは、淡々と当事者とのinterviewや手記を紹介していくという形を取っている。格別、非難や批判のトーンはない。kinoshita junjiについての追跡が本書ではなされているが、淡々と当時の状況の推察と戦後の軌跡が補足として付け加えられているだけだ。木下順二がアメリカに一度も行っていないとの事実が明らかにされているが、正式な党員であったかどうかは知らないが、共産党シンパであれば、米国入国のvisaが下りない可能性が高かったわけで、これは驚くほどのことではない。
韓国の政治文化じゃあるまいし、もう70年以上前の出来事に道徳的な判断を与えても何の生産性もない。読み手も当事者もその闇と業の深さにただおののくしかない。一方で、これほどの大規模な検閲を実施した米政府内の思惑やプロセスについては本書では言及されていない。
なお、著者は、インテリジェンス研究所というサイトを運営しているようで、そこでこの検閲官のリストは照合することが可能。
2021年5月25日に日本でレビュー済み
科研費まで取得した本格的な研究を平易な表現で新書にまとめあげており、私のようなシロウトにも読みやすい。そして、テーマが戦後間もない頃のGHQの「検閲官」という、これまで殆ど耳にしたことがない立場の人々。資料を丹念に発掘するとともに、聞き取り調査を進め、時代背景や経済事情をきちんと踏まえて分析しており、新書で読むには勿体ない気もする。
10ページほど読めば中身が全部解るような薄っぺらい新書が多い中、久しぶりに良い新書に出会えた。感謝。
10ページほど読めば中身が全部解るような薄っぺらい新書が多い中、久しぶりに良い新書に出会えた。感謝。
2021年4月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
戦後、日本が占領下にあった時、検閲官という職業があった。大卒公務員初任給が300円であった時、月給は700円であった。能力が高ければ9000円以上になる者もいた。何を仕事ととしたのか?
通信検閲、つまり手紙や電報、電話を盗み取ること。戦後四年間で郵便二億通、電報一億三千六百万通開封し、電話は八十万回盗聴した。
本書は、主に郵便検閲に携わった人々からの聞き取りを基にしている。
私は三つの感想を持った。
①同胞を裏切る後ろめたさを感じる人、占領政策を穏やかなものにする世論調査になるのではと考える人、給料貰って英語力をつけることができる、ラッキー。検閲官の思いは各人各様だった。
彼らの中には新憲法で禁じられている検閲をしている、と不安を感じる人もいたが、旧憲法下に育った人だし、戦時下の厳しい情報統制を国のためだからと受け入れた。新憲法下に大人になった私たちでも彼らのように不安になったり恥じたりするか疑問なんだから、まぁなんとかやり過ごした。
②このような検査官がいる一方、有末精三のように参謀本部第二部長の立場を利用して、軍事機密を売り、仲間を売り、マッカーサーの腹心ウィロビーに取り入り、戦犯リストからちゃっかりスルーする者もいた。昭和天皇が、有末はなぜ戦犯容疑で逮捕されないのか? と問うた人物である。筆者は、有末を売国奴と呼ぶ。検閲官の方がマシだ、というわけか?
③検閲で蒐集された膨大な資料は、今、アメリカのメリーランド大学図書館にある。これは本来、日本の物だ。それを返してもらっていない。筆者は言う、敗戦国の資産を戦勝国が戦利品として無断に持ち去る行為であり、その資料は拉致された資料に他ならない。返還要求しないのは、なぜか。
拉致被害者奪還を金看板に首相にまでなった政治家がいるが、その約束は今もって果たしていない。そういえば、拉致被害者よりも前に拉致された資料を、返還要求したこともなかったね。
有末精三のような人物が今も、政治の裏舞台に跋扈しているのかもしれない。
それを検閲官のような私たちが傍観しているのか?
検閲官は、昔でなく今の問題だ。
通信検閲、つまり手紙や電報、電話を盗み取ること。戦後四年間で郵便二億通、電報一億三千六百万通開封し、電話は八十万回盗聴した。
本書は、主に郵便検閲に携わった人々からの聞き取りを基にしている。
私は三つの感想を持った。
①同胞を裏切る後ろめたさを感じる人、占領政策を穏やかなものにする世論調査になるのではと考える人、給料貰って英語力をつけることができる、ラッキー。検閲官の思いは各人各様だった。
彼らの中には新憲法で禁じられている検閲をしている、と不安を感じる人もいたが、旧憲法下に育った人だし、戦時下の厳しい情報統制を国のためだからと受け入れた。新憲法下に大人になった私たちでも彼らのように不安になったり恥じたりするか疑問なんだから、まぁなんとかやり過ごした。
②このような検査官がいる一方、有末精三のように参謀本部第二部長の立場を利用して、軍事機密を売り、仲間を売り、マッカーサーの腹心ウィロビーに取り入り、戦犯リストからちゃっかりスルーする者もいた。昭和天皇が、有末はなぜ戦犯容疑で逮捕されないのか? と問うた人物である。筆者は、有末を売国奴と呼ぶ。検閲官の方がマシだ、というわけか?
③検閲で蒐集された膨大な資料は、今、アメリカのメリーランド大学図書館にある。これは本来、日本の物だ。それを返してもらっていない。筆者は言う、敗戦国の資産を戦勝国が戦利品として無断に持ち去る行為であり、その資料は拉致された資料に他ならない。返還要求しないのは、なぜか。
拉致被害者奪還を金看板に首相にまでなった政治家がいるが、その約束は今もって果たしていない。そういえば、拉致被害者よりも前に拉致された資料を、返還要求したこともなかったね。
有末精三のような人物が今も、政治の裏舞台に跋扈しているのかもしれない。
それを検閲官のような私たちが傍観しているのか?
検閲官は、昔でなく今の問題だ。
2021年6月13日に日本でレビュー済み
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まとまりのない本だった。大した話も出ていない。
2021年5月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
検閲の事実は閉ざされた言語空間を読んで知ってはいましたが、ここまで現実的な真相を知る図ベもなく漫然ととらえていました。現代社会の日本人としての歪みは、ひとつには公職追放という生業を奪われたことから生じた、生きることへの打算が大きく関与していることに間違はないと確信しました。
2021年6月19日に日本でレビュー済み
本書は敗戦後の日本において、占領国アメリカにより行われた検閲についてまとめられたものである。
そのような歴史的事実があったことは、うっすらと知っていたが、新書というスタイルで一般向けに出版されたので興味を持ち読んでみた。
膨大な資料が作成・保管されているということに、まず驚いた。
戦前・戦時中に行われた、日本帝国による自国民に対する検閲との対比で、本書のテーマである「戦後に、占領国アメリカによって行われた検閲」が比較されていると、さらに分かりやすかったと思う。
また当時の出版物などが多数押収され、アメリカ国内に保管されているとのことである。著者が最後に記されているように、それらの貴重な資料が日本国に返還されることを願う。
そのような歴史的事実があったことは、うっすらと知っていたが、新書というスタイルで一般向けに出版されたので興味を持ち読んでみた。
膨大な資料が作成・保管されているということに、まず驚いた。
戦前・戦時中に行われた、日本帝国による自国民に対する検閲との対比で、本書のテーマである「戦後に、占領国アメリカによって行われた検閲」が比較されていると、さらに分かりやすかったと思う。
また当時の出版物などが多数押収され、アメリカ国内に保管されているとのことである。著者が最後に記されているように、それらの貴重な資料が日本国に返還されることを願う。