前半は、物理学者である多田将が現代の核兵器の爆発原理と構造概要について物理学的に解説したものであり参考になる。大学院原子炉工学課程の学生であれば容易に理解できるはず。後半では、多田將氏の司会で小泉悠氏と村野將氏による核抑止論についての座談をまとめたものである。購入したときは核兵器の構造等物理学的な話を期待していたが、思いもかけず専門家による核抑止論を知ることができて良かった。
昨年のハルキウでのウクライナによる反攻のさいにロシアが核を使用しても不思議ではなかったが、核抑止論はまだ有効だったという話が載っている。しかし、今後も抑止論が有効であり続けることは困難らしい。中国の核弾頭数がアメリカと同様になってきたとき、ロシア、中国、アメリカの三カ国の間で核抑止論を構築することは原理的に困難であると指摘されている。また、核抑止論はお互いの核兵器使用を抑止するものであったが、「核の影」という核による通常戦力使用の抑止という理論があるが、それはウクライナ戦争でも実証されたという。後半の核抑止論だけでも読む価値がある。
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