内村鑑三の講演録。冒頭から駄洒落で聴衆を沸かしたり、随所で冗談を交えたり、きっと楽しい講演だったのだろう。
生まれたからには、少しでもこの世を良くしたい、そのために何を遺すか。金でも、事業でも、思想でも良いだろう。しかし、それがなくても、勇ましい高尚なる人生を遺せばそれで良いという。つまり、逆境に負けず、正直に生きていくこと、その姿を周囲に見せて、正しい行いをする勇気を見せること、それを人生の目標にするということ。辛くても正しく生きるということに勇気をもらえる。
デンマルク国の話は、敗戦により領土を失いつつも、木を植えて土を肥やし、国を豊かにしたエピソードが語られる。日清日露戦争の当時にこれを言った先見性と勇気に感服する。
頼山陽などの伝統的な東洋の教養とキリスト教など西洋の知識が一つの人格で混ざり合っている。明治期の教養人というのはすごいものだ。
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後世への最大遺物・デンマルク国の話 (岩波文庫) 文庫 – 2011/9/17
内村 鑑三
(著)
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普通の人間にとって実践可能な人生の真の生き方とは何か。明治27年夏期学校における講演「後世への最大遺物」は、人生最大のこの根本問題について熱っぽく語りかける、「何人にも遺し得る最大遺物――それは高尚なる生涯である」と。旧版より注・解説を大幅に拡充し、略年譜を新たに付した。「デンマルク国の話」を併収。改版(解説=鈴木範久)
目次
後世への最大遺物
デンマルク国の話
内村鑑三略年譜
解説(鈴木範久)
注
目次
後世への最大遺物
デンマルク国の話
内村鑑三略年譜
解説(鈴木範久)
注
- ISBN-104003311949
- ISBN-13978-4003311943
- 出版社岩波書店
- 発売日2011/9/17
- 言語日本語
- 寸法0.6 x 11 x 15 cm
- 本の長さ144ページ
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2011/9/17)
- 発売日 : 2011/9/17
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 144ページ
- ISBN-10 : 4003311949
- ISBN-13 : 978-4003311943
- 寸法 : 0.6 x 11 x 15 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 7,052位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1位キリスト教・ユダヤ教の説教集
- - 2位キリスト教史 (本)
- - 8位東洋哲学入門
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2022年1月23日に日本でレビュー済み
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■後世への最大遺物
我々は後世に何を遺せるのか。
金を遺すのは大事だ。金がないなら事業、その力がないならば思想を遺す。思想は、文学や学生を教えることによって伝えることができる。
内村は 「源氏物語」を「われわれを女らしき意気地なしになした。あのような文学はわれわれのなかから根コソギに絶やしたい」とこきおろす。本物の文学とは「この世界で戦争をするときの道具」という。技巧をこらすよりも、自分の心のありのままに書いた文のほうがよいと断じる。
では、本を書くことも学生に教えることもできない人はどうするか?
だれにも遺すことのできる「最大遺物」とは、勇ましい高尚なる生涯という。
高尚なる生涯とは何か。
「失望の世の中にあらずして、希望の世の中であることを信ずること。悲嘆の世の中でなくして歓喜の世の中であるという考えを生涯に実行して、その生涯を世の中への贈り物としてこの世を去るということ」
二宮金次郎の生涯を見ると、「あの人にもああいうことができたならば私にもできないことはない」と思わせられる。われわれが神に頼り、己に頼って宇宙の法則にしたがえば、この世界はわれわれの望むとおりになり得るという感覚が起こってくる。
正義のために立つ者はいつも少数である。そんな少数とともに戦うという精神が大事であり、苦難や壁に打ち勝つことが「われわれの大事業」なのだ。
「それゆえにヤコブのように、われわれの出遭う艱難についてわれわれは感謝すべきではないか」
「国のため」ではない。自分の栄耀栄華のためでもない。高尚な生き方を真正面から論じる内村の精神性の高さと胆力に圧倒される。
■デンマルク国の話
デンマークは1864年にドイツ・オーストリアとの戦争に敗れて南部の2州を奪われ、貧困に沈んだ。
そのとき立ちあがったのが、ひとりの工兵士官だった。彼の祖先はフランスのユグノー党(カルバン派)で、信仰の弾圧によってフランスを追われた。
剣によって失ったものを鋤によって取り返そうと思った彼は、国土の半分を占めるユトランドに注目した。その3分の1以上が不毛の地だった。
長年の環境破壊で砂漠同然になり、寒暖の差が激しく、夏は昼は猛暑で夜には霜が降りた。そんな荒れ地に樅の木を植林していった。ユトランドの山林は1860年の15万7000エーカーが、1907年には47万6000エーカーに増えた。森が増えることで気候が穏やかになり、夏期の霜がなくなった。荒れ地や砂地は肥沃な畑や牧草地になっていった。デンマーク人の一人あたりの富は、英独米をうわまわるようになった。
篤い信仰による勤勉さと忍耐、樅の木などの自然の力への信頼があったから植林事業を推し進め、デンマークの人々は希望を回復することができた。それこそが「神を愛し、人を愛し、土を愛する」三愛精神なのだろう。
「……国家の大危険にして信仰を嘲り、これを無用視するがごときことはありません」と内村は記す。どん底で希望を与えてくれるのは信仰なのだと内村は信じた。
戦後日本の復興は信仰とはあまり関係がなかった。キラキラ輝いていたアメリカ文化や、脱貧困を約束する社会主義への「信仰」が日本人の希望を支えたのだろうか。内村が存命ならば尋ねてみたかった。
経済成長や革命といった希望を失った今の日本こそ、神を愛し、人を愛し、土を愛するという信仰にもとづいた生き方が求められているのかもしれない。
我々は後世に何を遺せるのか。
金を遺すのは大事だ。金がないなら事業、その力がないならば思想を遺す。思想は、文学や学生を教えることによって伝えることができる。
内村は 「源氏物語」を「われわれを女らしき意気地なしになした。あのような文学はわれわれのなかから根コソギに絶やしたい」とこきおろす。本物の文学とは「この世界で戦争をするときの道具」という。技巧をこらすよりも、自分の心のありのままに書いた文のほうがよいと断じる。
では、本を書くことも学生に教えることもできない人はどうするか?
だれにも遺すことのできる「最大遺物」とは、勇ましい高尚なる生涯という。
高尚なる生涯とは何か。
「失望の世の中にあらずして、希望の世の中であることを信ずること。悲嘆の世の中でなくして歓喜の世の中であるという考えを生涯に実行して、その生涯を世の中への贈り物としてこの世を去るということ」
二宮金次郎の生涯を見ると、「あの人にもああいうことができたならば私にもできないことはない」と思わせられる。われわれが神に頼り、己に頼って宇宙の法則にしたがえば、この世界はわれわれの望むとおりになり得るという感覚が起こってくる。
正義のために立つ者はいつも少数である。そんな少数とともに戦うという精神が大事であり、苦難や壁に打ち勝つことが「われわれの大事業」なのだ。
「それゆえにヤコブのように、われわれの出遭う艱難についてわれわれは感謝すべきではないか」
「国のため」ではない。自分の栄耀栄華のためでもない。高尚な生き方を真正面から論じる内村の精神性の高さと胆力に圧倒される。
■デンマルク国の話
デンマークは1864年にドイツ・オーストリアとの戦争に敗れて南部の2州を奪われ、貧困に沈んだ。
そのとき立ちあがったのが、ひとりの工兵士官だった。彼の祖先はフランスのユグノー党(カルバン派)で、信仰の弾圧によってフランスを追われた。
剣によって失ったものを鋤によって取り返そうと思った彼は、国土の半分を占めるユトランドに注目した。その3分の1以上が不毛の地だった。
長年の環境破壊で砂漠同然になり、寒暖の差が激しく、夏は昼は猛暑で夜には霜が降りた。そんな荒れ地に樅の木を植林していった。ユトランドの山林は1860年の15万7000エーカーが、1907年には47万6000エーカーに増えた。森が増えることで気候が穏やかになり、夏期の霜がなくなった。荒れ地や砂地は肥沃な畑や牧草地になっていった。デンマーク人の一人あたりの富は、英独米をうわまわるようになった。
篤い信仰による勤勉さと忍耐、樅の木などの自然の力への信頼があったから植林事業を推し進め、デンマークの人々は希望を回復することができた。それこそが「神を愛し、人を愛し、土を愛する」三愛精神なのだろう。
「……国家の大危険にして信仰を嘲り、これを無用視するがごときことはありません」と内村は記す。どん底で希望を与えてくれるのは信仰なのだと内村は信じた。
戦後日本の復興は信仰とはあまり関係がなかった。キラキラ輝いていたアメリカ文化や、脱貧困を約束する社会主義への「信仰」が日本人の希望を支えたのだろうか。内村が存命ならば尋ねてみたかった。
経済成長や革命といった希望を失った今の日本こそ、神を愛し、人を愛し、土を愛するという信仰にもとづいた生き方が求められているのかもしれない。
2023年2月1日に日本でレビュー済み
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内村鑑三の講演集。彼は非常に講演が巧い。鋭い感性と類い稀なる国際感覚に、ユーモアを交えて聴衆に語りかける。キリスト者というよりも、有能な実務家といった風である。その言葉は聴衆の心に強く響き、熱情を大いに沸き立てたことであろう。私も学生時代に本書を読み、強く感動したのを覚えている。しかし、大人になって読み返してみると、当時の感動はなかった。ひょっとすると、年代によって読む者を選ぶのかもしれない。高校生ぐらいの年代の人にお勧めしたい一冊である。以下、それぞれの講演について感想を。
●『後世への最大遺物』
この世に生を受け、人生を生き抜いた証を後世に遺したい。でも、一体、どうすれば・・・?というお話。莫大な富や大きな事業を遺せる人は、稀である。深遠な思想や発明品を生み出せる天才は、もっと少ない。しかし、後世に遺す価値のあるものは、それだけではない。凡人にも後世に遺し得るものがある。ちっぽけな自分の人生を地道に生きていこうという気持ちにさせてくれ、勇気をもらえるお話である。
●『デンマルク国の話』
小国デンマークが、如何にして短期間のうちに豊かな国となり得たか。現代と比べて得られる情報が格段に少なかったであろう時代において、デンマークについてここまで語り得るとは、その視野の広さには脱帽する。インターネットを駆使する現代の日本人でも、ここまでデンマークに詳しい者は珍しいだろう。ただ、ここに信仰の重要性を織り交ぜてしまうのは、やや牽強付会と言わざるを得ないか。
●『後世への最大遺物』
この世に生を受け、人生を生き抜いた証を後世に遺したい。でも、一体、どうすれば・・・?というお話。莫大な富や大きな事業を遺せる人は、稀である。深遠な思想や発明品を生み出せる天才は、もっと少ない。しかし、後世に遺す価値のあるものは、それだけではない。凡人にも後世に遺し得るものがある。ちっぽけな自分の人生を地道に生きていこうという気持ちにさせてくれ、勇気をもらえるお話である。
●『デンマルク国の話』
小国デンマークが、如何にして短期間のうちに豊かな国となり得たか。現代と比べて得られる情報が格段に少なかったであろう時代において、デンマークについてここまで語り得るとは、その視野の広さには脱帽する。インターネットを駆使する現代の日本人でも、ここまでデンマークに詳しい者は珍しいだろう。ただ、ここに信仰の重要性を織り交ぜてしまうのは、やや牽強付会と言わざるを得ないか。
2016年8月24日に日本でレビュー済み
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本当に興味のある方には、お薦めを致しますが、難しい内容でした。
2022年11月7日に日本でレビュー済み
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後世への最大遺物は、人の生き方を、デンマルクの国の話は、国破れ希望が無くなった社会でも、一人の人が立ち上がれば再建できることを、証明している。
2022年7月16日に日本でレビュー済み
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国土の狭い小国でも、やれる事がある。
2022年3月27日に日本でレビュー済み
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自分が今度転職する会社の社名にも影響を受けてるという内村さんの本書を読みました。なんと書かれたのが1894年というもう1世紀以上前の本ですが、この方の思想がしっかりと伝わったと思います。今まで稲盛和夫さんやドラッガーの本を読んできましたが、その原典とも考えられるメッセージでした。オススメです。
以下個人的ポイントです。
・この世の中を、私が死ぬときは、私の生まれた時より少しでも良くして逝こうではないか。そして、後世への最大遺物の中で、まず第一に大切なものは金である。金を儲けることは己のためではない、国家のために使うのである。
・私が金よりもよい遺物は何であるか考えてみますと、事業です。事業とはすなわち金を使うことです。そして、金も事業も残せなかったときに残すべきは思想です。
・しかし、金、事業、思想よりも残すべき最大遺物とは何か。それは何であるかならば勇ましい高尚なる生涯であると思います。
以下個人的ポイントです。
・この世の中を、私が死ぬときは、私の生まれた時より少しでも良くして逝こうではないか。そして、後世への最大遺物の中で、まず第一に大切なものは金である。金を儲けることは己のためではない、国家のために使うのである。
・私が金よりもよい遺物は何であるか考えてみますと、事業です。事業とはすなわち金を使うことです。そして、金も事業も残せなかったときに残すべきは思想です。
・しかし、金、事業、思想よりも残すべき最大遺物とは何か。それは何であるかならば勇ましい高尚なる生涯であると思います。