第一次世界大戦について書かれた本をいくつか読んでいるが、読み物としては、本書より『八月の砲声』の方が面白い。また、書名に｢仏独共同通史｣とあるように、大半が仏独に関する部分に充てられ、第一次世界大戦の全体像をあますところなく描いているとは言い難い。
では、読むに値する本でないのかというと、そんなことはない。まず、原著が2008年に刊行されたことでも分かるように、第一次世界大戦に関する最新の研究を踏まえたものであり、さらに、上下合わせて本文が約400ページであるが、政治史、経済史、軍事史、外交史、社会史、文化史と広範な視点から論じられているだけでも、十分に価値はある。
そして、1813年以来、第一次世界大戦と第二次世界大戦を含め数度にわたって戦争をしてきた“宿敵”とも言えるフランスとドイツ（プロイセン）の研究者が共同執筆していることこそが、史実の客観性に向けた大きな特徴となっている。
個人的に特に興味深かったのは、仏独に重点があるためその両国の政治家・軍人だけでなく、国民などのメンタリティや戦争中の国内における雰囲気や、戦争ではありがちなことだが、それぞれの政府が、戦況などについて国民に情報を隠し続けたことついて論じた部分である。
第一次世界大戦に対する理解が深まったのは当然だが、それと同時に強く感じたのは、1930〜1945年辺りの東アジアの歴史が、日・中・韓の研究者によって、共同執筆される状況が現状では近々には有り得ないという悲しさである。
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