AIと棋士の将棋における戦いの「歴史」と言うと、そのような戦いが始まってからあまりに時間が短いので、大げさであるが、とにかく、短くてもその件に関する歴史書と言えよう。
何故短い時間しかないかと言えば、それは、10年くらい前までは、AIのレベルがここまで上がると言うことは、思いもよらなかったからである。それほど、AIの進歩はすさまじく、人間は将棋に関しては完全に追い抜かれたと言える。
しかしながら、「将棋人間」はなかなかその点を認めようとしないようで、どのような現実を突きつけられても、「自分たちはまだ機械には負けていない」と言う観念にいまだに恋綿としてしがみつこうとしているところが興味深かった。将棋人間とはレビューアーがつけた名前であり、将棋のプロ棋士や本書の著者を含む将棋ファンなどの将棋に関連した人々を言う。
本当に驚くほどのしつこさである。本書の最後の部分にも書いてある通り、囲碁の世界では、囲碁のトッププロであるイ・セドル九段が妙な条件を付けることなく、直ちにアルファー碁と対戦し、5番勝負で、1勝4敗と大きく負け越し、即座に、人は囲碁に関し、AIに追い越されたと素直に認めたのとは全く対照的である。なお、ちなみにこのイ九段の1勝は、AIにバグが出て、岡信くなったために起こったことであり、そうでなければ、AIは全勝していたものと思われる。
AIと戦う将棋のプロ棋士を選抜するについても、将棋のプロ棋士の総本山である将棋連盟は、本当のトップはなかなか選抜せず、言うなら,道場やぶりにその道場で最も強い師範を最後まで出さず、一番下っ端からぶつけていき、次々と負かされ、師範代くらいまでも負かされ、もう師範が出ていくしかないところまで追い込まれ、そこで、道場やぶりに、「師範が破れたら、この道場の面目が丸つぶれになるので、どうか、武士の情け、師範との対戦だけはお許しを」と言った主旨のことをして、師範だけは温存し、それによって、「師範が負けていないのだから、まだ、人間は、AIに負けているわけではない」と主張しているようである。
本書を読んで初めて知ったのであるが、AIと対戦するにあたっては、棋士はそのソフトをあらかじめ借りて、様々な対戦をして研究し、そのソフトの持つ欠陥を探し出すこともあるとのこと。ボクシングの選手が、対戦相手をスパーリングパートナーにすることができ、しかも、その相手の欠点を探し出すようになるまで相手が付き合ってくれるということではないか。これではまるで、棋士はAIにおんぶに抱っこで、面倒を見てもらっていると言うことである。
そして、AIはその欠陥を対戦前には修正してはいけないことになっているそうである。どこまで人間の棋士有利な条件になっているのであろうか。勝負と言う意味で言うなら、変な条件を付けず、堂々と戦ってほしいものである。
かなり呆れた態度で、私が将棋ファンだったら、そんな連盟のやり方を批判するのであるが、いわゆる「将棋ファン」たちは、そんな連盟の立場を支持しているようである。
それでもなお、大きく負け越しているのであるから少し冷静に見れば、棋士は完全に愛に抜かれているのである。人間が巻替えすなどと言うことはありえないであろう。差はこれからどんどん広がって行くであろう。
そして、さらに驚くのは棋士が負けると本気で悲しんでいるということである。ブルドーザーと綱引きをして負けたと言って悲しんでいる綱引きの選手がいるだろうか、フォークリフトとバーベル上げの競争して、負けたと言って落ち込んである重量上げの選手がいるだろうかとは思わないのであろうかと不思議でならかかったが、本書の後半で自動車と競争し、負けけた短距離選手の話が収録されていた。「機械と競って負けることは人にとっては恥ではない」ことは知っているようではある。しかし、そうであれば、何故ここまでAIに負けることを嫌がり、実際問題として、既に追い抜かれていることをいかなる手段をとっても、認めようとしない将棋ファンと言う人たちのサイコロジーがわからない。この点に関しては読んでいて少しイライラしてしまった。
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棋士とAIはどう戦ってきたか~人間vs.人工知能の激闘の歴史 (新書y 310) 新書 – 2017/5/2
松本 博文
(著)
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棋士とコンピュータとの戦いは、人類とAIの未来を暗示している!?
2017年4月1日、現役タイトル保持者が、はじめてコンピュータ将棋ソフトに敗れた。
AI(人工知能)が、ついに人間の王者を上回ったのだ。
それは予想だにしない奇跡だったのか、それとも必然だったのか?
コンピュータ将棋の開発が始まってから40年あまり、
当初、「人間に勝てるはずがない」ともいわれたコンピュータ将棋は、
驚異的な進化を遂げて、いま、人間の前に立ちはだかる。
この間、棋士は、そしてソフト開発者は何を考え、何をめざしてきたのか?
そして、人間とAIは、どのような関係へと向かうのか?
将棋界の最前線を十数年取材してきた将棋記者の、懇親のルポルタージュ!
2017年4月1日、現役タイトル保持者が、はじめてコンピュータ将棋ソフトに敗れた。
AI(人工知能)が、ついに人間の王者を上回ったのだ。
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コンピュータ将棋の開発が始まってから40年あまり、
当初、「人間に勝てるはずがない」ともいわれたコンピュータ将棋は、
驚異的な進化を遂げて、いま、人間の前に立ちはだかる。
この間、棋士は、そしてソフト開発者は何を考え、何をめざしてきたのか?
そして、人間とAIは、どのような関係へと向かうのか?
将棋界の最前線を十数年取材してきた将棋記者の、懇親のルポルタージュ!
- 本の長さ255ページ
- 言語日本語
- 出版社洋泉社
- 発売日2017/5/2
- ISBN-104800311713
- ISBN-13978-4800311719
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登録情報
- 出版社 : 洋泉社 (2017/5/2)
- 発売日 : 2017/5/2
- 言語 : 日本語
- 新書 : 255ページ
- ISBN-10 : 4800311713
- ISBN-13 : 978-4800311719
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2018年4月26日に日本でレビュー済み
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2017年7月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
将棋界では既に有名な松本さんの著書なので期待していましたが将棋に詳しくない人にも勧められる良い内容でした。
将棋の内容にはあまり踏み込んでいませんがそこを詳しく知りたい人はニコニコのタイムシフトで直接見れば済む話です。
ざっくりとこれまでの歴史を振り返りながら動画ではわかりにくい部分もフォローしており藤井さんブームで将棋に興味を持った方に是非とも勧めたいです。
将棋会のことを読みやすく、わかりやすく説明しており将棋をこれから見る方もこれを読んでおけば更に楽しめると思います。
逆にこれまで将棋をずっと見てきた層には少々物足りないかもしれません。私は物足りなさも感じてはいますがおさらいとして良かったです。
普及のためにはむしろこういう本が増えた方が良いのかなと思います。
将棋の内容にはあまり踏み込んでいませんがそこを詳しく知りたい人はニコニコのタイムシフトで直接見れば済む話です。
ざっくりとこれまでの歴史を振り返りながら動画ではわかりにくい部分もフォローしており藤井さんブームで将棋に興味を持った方に是非とも勧めたいです。
将棋会のことを読みやすく、わかりやすく説明しており将棋をこれから見る方もこれを読んでおけば更に楽しめると思います。
逆にこれまで将棋をずっと見てきた層には少々物足りないかもしれません。私は物足りなさも感じてはいますがおさらいとして良かったです。
普及のためにはむしろこういう本が増えた方が良いのかなと思います。
2019年1月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
多少古い時点での書籍ですので最新の情報は網羅されていませんが、過去の歴史をうまくまとめられており読みやすかったです。
2017年5月11日に日本でレビュー済み
「コンピュータの指す将棋は弱すぎて話になりませんでした。」
これは、2011年12月(プレマッチ)と2012年1月におこなわれた第1回電王戦で、当時、将棋連盟会長だった米長邦雄さんが対局に負けた後、約35年前のコンピュータとの初対局を振り返って語った言葉です。
この本を読み終わった時、いつか、AI(人工知能)自身が人間の棋士に「人間の指す将棋は弱すぎて話になりませんでした。」と言う未来が来るかもしれないという気がして、楽しみなような、少し怖いような複雑な気分になりました。
本書の特徴として、主に棋士の側の目線で、人間vs人工知能の戦いが書かれています。なので、コンピュータ将棋の開発者側の歴史や解説を期待して購入すると、物足りなく感じるかもしれません。
40年以上をかけて人工知能が将棋の現役タイトル保持者に勝利する。コンピュータ将棋の開発者側に立てば感動的とも言えますが、むしろ、本書では、あの手この手でAIに対抗する棋士の執念や矜持の方が際立っているような印象がありました。
書き方も、基本的な将棋のルールさえ知っていれば、誰でも理解できるように対局のポイントや伏線をわかりやすく解説してあります。なので、将棋に詳しくない方(と言っている自分もあまり詳しくありませんが)にも広くおすすめできる内容だと思います。
これは、2011年12月(プレマッチ)と2012年1月におこなわれた第1回電王戦で、当時、将棋連盟会長だった米長邦雄さんが対局に負けた後、約35年前のコンピュータとの初対局を振り返って語った言葉です。
この本を読み終わった時、いつか、AI(人工知能)自身が人間の棋士に「人間の指す将棋は弱すぎて話になりませんでした。」と言う未来が来るかもしれないという気がして、楽しみなような、少し怖いような複雑な気分になりました。
本書の特徴として、主に棋士の側の目線で、人間vs人工知能の戦いが書かれています。なので、コンピュータ将棋の開発者側の歴史や解説を期待して購入すると、物足りなく感じるかもしれません。
40年以上をかけて人工知能が将棋の現役タイトル保持者に勝利する。コンピュータ将棋の開発者側に立てば感動的とも言えますが、むしろ、本書では、あの手この手でAIに対抗する棋士の執念や矜持の方が際立っているような印象がありました。
書き方も、基本的な将棋のルールさえ知っていれば、誰でも理解できるように対局のポイントや伏線をわかりやすく解説してあります。なので、将棋に詳しくない方(と言っている自分もあまり詳しくありませんが)にも広くおすすめできる内容だと思います。
2017年5月28日に日本でレビュー済み
東大将棋部出身の著書は、
将棋のネット中継を立ち上げる傍ら、
日本将棋連盟とコンピュータ将棋協会との橋渡しをしてきた。
プロ棋士と将棋ソフト開発者との闘いの歴史を、
両者に通じる著書が、その裏側の事情を含めて、
其々が何を考え戦って来たかを明らかにした。
AIの加速度的な進化は、
人間の働きや社会生活まで変えてしまいそうだ。
AI燦々の未来はやって来るのだろうか。
将棋のネット中継を立ち上げる傍ら、
日本将棋連盟とコンピュータ将棋協会との橋渡しをしてきた。
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人間の働きや社会生活まで変えてしまいそうだ。
AI燦々の未来はやって来るのだろうか。
2017年5月20日に日本でレビュー済み
本書でもっとも興味深いのは、コンピュータ・ソフトと棋士が団体戦を行った4回の「電王戦」の経過である。人間同士が将棋で戦う場合には、なるべくフェアな戦いになるようにルールが定まっている。だが、ソフトと人間が戦う場合には、どういうルールが「フェア」なのか? 人間同士なら過去の棋譜があり、練習戦で何度も対局する経験をつんだ上で、公式対局がある。「電王戦」でも、第3回からは、ソフトを事前に対局者に貸出して練習させること、コンピュータ同士の対戦で上位に選ばれた後は、そのソフトを改編してはいけないこと、等が新たなルールに定められた。その結果、第4回「電王戦」では、ソフトの弱点を知った棋士が「奇策」を用いてコンピュータを「はめた」ために、3対2で勝ち越した。「角不成(=敵陣に入った角が馬にならない)」を想定できずにコンピュータが止まってしまったり、「2八角」を打つように誘導されるとその後は勝てないので、わずか21手で投了してしまったのだ。このようにルールをどう定めるかによって、勝敗は変ってくる。棋士もソフト使用OKにして、ノートパソコンを膝に置いて最善手を模索しながら対局してよいというルールにしたら、人間が勝つかもしれない。ソフトは本来は「主体」ではなく「道具」なのだから、このようなルールはありえないとも言えない。本書でもう一つ面白いのは、コンピュータ・ソフト同士の対戦の模様が書かれていることである。戦いが終るたびに、そのソフトの弱点が分かるから、開発者は徹夜でソフトを修正し、改良して、翌日の次の戦いに臨む。そして、コンピュータ将棋戦での優勝の栄誉は、ソフトにではなくソフトの開発者に与えられる。つまり、戦っているのは、結局は人間同士なのだ。とすれば、棋士がコンピュータと対戦しているというのは、見かけがそうなだけであって、本当は、棋士とソフト開発者が対戦しているのではないだろうか? そんなことを考えさせる好著である。そして今日5月20日、佐藤天彦名人がソフトの「ポナンザ」に敗れた。これを最後に「第二期・電王戦」も終了。人間とソフトの「対決」は、今後はもう行われないだろう。その真の理由は、それは本当の「対決」ではないからである。もしそれがゲームにおける真の「対決」であれば、日本の相撲や、古代ギリシアのレスリングのように、ゲームはずっと続くはずだからである。