非常におもしろかった。
原著のタイトルは『Enlightenment Now』、(今こそ啓蒙主義)。
本書は18世紀に起こった啓蒙思想を現代に蘇らせようとする試みである。
理性によって人間を導く事を是とする啓蒙思想は世界を大きく良い方向へ変えたが、現在人々はあまりにも当然にある恩恵に浴しすぎてその有難みを忘れている。
どんなに優れた思想でも、世代を経るごとによって古めかしくなり、陳腐化していき、恩恵は忘れられ、誤りも見つかる。
かつての啓蒙思想は所々神学や形而上的な概念と融合していたが、著者はその部分を取り去り、
「古くからの真実を人々の心にとどめておきたいなら、 世代ごとにその言語と概念で語り直さなければならない」という ハイエクの言葉に従い現代ならではのやりかたで語りなおそうと試みる。
現代ならではのやりかたとはすなわち科学であり、データである。
本書は古くなった啓蒙思想から迷妄を取り除き、科学と融合、進歩させ、新たに科学と理性で道徳・ヒューマニズムを語ろうという本だ。
『21世紀の啓蒙』という邦訳タイトルはなかなかふさわしいと思う。
個々の事例については個人的には思うところがある部分もあるが、啓蒙を推し進め、理性、科学、ヒューマニズムといった本書を貫く中核の考えには同意しかない。
本書はピンカー前作、
『暴力の人類史』
の姉妹編だ。
読むにあたっては、数々の啓蒙主義の古典や、前著『暴力の人類史』を読んでいる必要は無く、前提知識も必要としない(あればなお理解が深まるが)。
前作ではデータを集め、有史以来人間の善性が悪性に打ち勝ち、あらゆる暴力が減少してきたことをデータを元に証明して見せたが、
統計的データには反論がなかったものの、ネガティブな意見は減らず、相変わらず世界は悪くなっていて危機に瀕しているという意見が幅を利かせている。
そのため、悲観論者や終末論者の意見を反駁すべく、前作での議論を推し進め、暴力が減少しただけでなく、社会や生活や経済状況など、あらゆる面で人類が善くなってきている事を論じ、
なおかつ啓蒙主義の立場をとり、データを元に、思い込みや直感に基づく認知バイアスを排して、正しくファクトを理解し、理性をもってして人類の進歩を進める事が重要だと述べる。
本書の内容を大まかにわけると
第一部が啓蒙思想のアップデート。
統計や認知科学など現代の科学を動員して新たなる啓蒙思想を構築する。
いかに人間の認知バイアスが悲観主義に陥り、世界は暗黒へ向かっていて、古き良き時代への望郷の念を描きやすく、進歩を忘れがちな事を示し、それを克服するために理性と科学を用いて思考することが説かれる。
進歩とは逆に、自然状態のままでは無秩序に向かおうとする傾向に熱力学第二法則からエントロピーという概念を持ってきて当てはめたのはなかなかおもしろい。
第二部は前作『暴力の人類史』の続きで実証と前作へ寄せられた反論への回答と、実際に世界は良くなっている事の説明。
データの提示が多いため読書が中だるみしてきたら後回しにして一気に下巻の16章に飛んでもいいかもしれない。
第三部は第一部と二部の続き、ヒューマニズムの擁護。
啓蒙思想の擁護と左派右派共に政治イデオロギーに立脚する部族主義から相手を罵る不毛さなどを取り上げている。
最終二章は科学軽視の人文思想と宗教批判。ファシズムなどの根源になったニーチェやそのロマン主義的ヒロイズムも批判しているがカントを嘲弄したニーチェがここで批判されるのは当然かもしれない。
記述はかなり中立的だと思う(批判される側からしたらそうではないだろうが)。
統計データも出しっぱなしにしないで反論も含めちゃんと解釈も含め提示してくれるし、読んでいるうちに起こる疑問点も片っ端からカバーされる丁寧さがある。
宗教や、部族主義、ナショナリズム、ポピュリズムが台頭してきた右派政治やトランプ政権なんかが批判されることは予測していたが、
前作同様この手の本にありがちな著者の属する集団やリベラルな考えに対して大甘になることもなく、左派に対しても痛烈に批判を加えている。
反啓蒙主義やデマゴギーが無知蒙昧な民衆から出てきたのではなく、ロマン主義を含む知識階級から出てきたことも指摘し、
机上の空論を振り回す知識階級やインテリ層、ソーシャル・ジャスティス・ウォリアー(社会正義の戦士・正義マン)
マルクス主義運動、特定のマイノリティにおもねるアイデンティティ政治、
超越存在としての生態系に人間を従属させようという過激な環境活動、反ワクチン運動
自由な思想と真理の探究を進めなければないはずなのに、政治的に極左化して極めて偏狭になっている大学などなど、左派政治の問題点もしっかりと取り上げている。
左派、右派共に、知識人やメディアまで、世俗化したイデオロギーを元に同じ考えの信者仲間と共に、悪魔化させた政敵と聖戦を繰り広げる不毛なイデオロギー対立を目にすることが多くなってきたこのご時世、
科学的なファクトに基づき議論を進め、認知的不協和を乗り越え、批判的思考(クリティカルシンキング)で考え、脱バイアス(デバイアシング)し、問題を非政治化して現実的な行動につなげていこうという意見は大切だ。
個人的には本書の中でもこれから特に重要なポイントはこの「政治的部族主義からの脱却」ではないだろうかと思った。
こういった左派右派の対立に疑問を感じている人はおもしろいし得るものも多いだろう。
ピンカーの主張は最もだが、最近の世相を見るとやはり本書を読んだ後でも左派右派問わずポピュリズムや反啓蒙主義に我々は打ち勝つことができるのかと不安になるが、一人一人問題は起こるが解決可能だという事を信じていくしかないのだろう。
この本が気に入った人なら前作の『暴力の人類史』と
本書にかなり影響の見られ、多数引用のある、デイヴィッド・ドイッチュの
『無限の始まり』
も面白いのでお勧めできる。
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文庫 21世紀の啓蒙 上: 理性、科学、ヒューマニズム、進歩 (草思社文庫 ビ 2-1) 文庫 – 2023/2/3
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理性、科学、ヒューマニズム、進歩――
啓蒙主義の理念は成功を収め、人類に繁栄をもたらした。
世界中から貧困も飢餓も戦争も暴力も減り、人々は健康長寿になり、
知能も向上し、安全な社会に生きている。
にもかかわらず右派も左派も悲観主義に陥り、進歩を否定し、科学の軽視が横行し、
理性的意見より党派性を帯びた主張が声高に叫ばれている。
ポピュリズムと二極化、反知性主義の時代の今こそ、
啓蒙主義の理念は現代の言葉で語り直される必要がある。
現代ならではの説得力をもつ新しい言葉「データ」「エビデンス」によって――。
知の巨人ピンカーが驚くべき明晰さで綴る希望の書。
啓蒙主義の理念は成功を収め、人類に繁栄をもたらした。
世界中から貧困も飢餓も戦争も暴力も減り、人々は健康長寿になり、
知能も向上し、安全な社会に生きている。
にもかかわらず右派も左派も悲観主義に陥り、進歩を否定し、科学の軽視が横行し、
理性的意見より党派性を帯びた主張が声高に叫ばれている。
ポピュリズムと二極化、反知性主義の時代の今こそ、
啓蒙主義の理念は現代の言葉で語り直される必要がある。
現代ならではの説得力をもつ新しい言葉「データ」「エビデンス」によって――。
知の巨人ピンカーが驚くべき明晰さで綴る希望の書。
- 本の長さ550ページ
- 言語日本語
- 出版社草思社
- 発売日2023/2/3
- 寸法10.7 x 2.4 x 15.3 cm
- ISBN-104794226306
- ISBN-13978-4794226303
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商品の説明
著者について
スティーブン・ピンカー(Steven Pinker)
ハーバード大学心理学教授。スタンフォード大学とマサチューセッツ工科大学でも教鞭をとっている。認知科学者、実験心理学者として視覚認知、心理言語学、人間関係について研究している。進化心理学の第一人者。主著に『言語を生みだす本能』、『心の仕組み』、『人間の本性を考える』、『思考する言語』(以上NHKブックス)、『暴力の人類史』(青土社)、『人はどこまで合理的か』(草思社)などがある。その研究と教育の業績、ならびに著書により、数々の受賞歴がある。米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」、フォーリンポリシー誌の「知識人トップ100人」、ヒューマニスト・オブ・ザ・イヤーにも選ばれた。米国科学アカデミー会員。
橘 明美(たちばな・あけみ)
英語・フランス語翻訳家。お茶の水女子大学卒。訳書にスティーブン・ピンカ―『人はどこまで合理的か』(草思社)、デヴィッド・スタックラー&サンジェイ・バス『経済政策で人は死ぬか?』(草思社、共訳)、ジェイミー・A・デイヴィス『人体はこうしてつくられる』(紀伊國屋書店)ほか。
坂田 雪子(さかた・ゆきこ)
英語・フランス語翻訳家。神戸市外国語大学卒。訳書にドミトリ・チェルノフ+ディディエ・ソネット『大惨事と情報隠蔽』(草思社、共訳)、ロバート・I・サットン『スタンフォードの教授が教える 職場のアホと戦わない技術』(SBクリエイティブ)、クリストフ・アンドレ『はじめてのマインドフルネス』(紀伊國屋書店)ほか。
ハーバード大学心理学教授。スタンフォード大学とマサチューセッツ工科大学でも教鞭をとっている。認知科学者、実験心理学者として視覚認知、心理言語学、人間関係について研究している。進化心理学の第一人者。主著に『言語を生みだす本能』、『心の仕組み』、『人間の本性を考える』、『思考する言語』(以上NHKブックス)、『暴力の人類史』(青土社)、『人はどこまで合理的か』(草思社)などがある。その研究と教育の業績、ならびに著書により、数々の受賞歴がある。米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」、フォーリンポリシー誌の「知識人トップ100人」、ヒューマニスト・オブ・ザ・イヤーにも選ばれた。米国科学アカデミー会員。
橘 明美(たちばな・あけみ)
英語・フランス語翻訳家。お茶の水女子大学卒。訳書にスティーブン・ピンカ―『人はどこまで合理的か』(草思社)、デヴィッド・スタックラー&サンジェイ・バス『経済政策で人は死ぬか?』(草思社、共訳)、ジェイミー・A・デイヴィス『人体はこうしてつくられる』(紀伊國屋書店)ほか。
坂田 雪子(さかた・ゆきこ)
英語・フランス語翻訳家。神戸市外国語大学卒。訳書にドミトリ・チェルノフ+ディディエ・ソネット『大惨事と情報隠蔽』(草思社、共訳)、ロバート・I・サットン『スタンフォードの教授が教える 職場のアホと戦わない技術』(SBクリエイティブ)、クリストフ・アンドレ『はじめてのマインドフルネス』(紀伊國屋書店)ほか。
登録情報
- 出版社 : 草思社; 単行本版 (2023/2/3)
- 発売日 : 2023/2/3
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 550ページ
- ISBN-10 : 4794226306
- ISBN-13 : 978-4794226303
- 寸法 : 10.7 x 2.4 x 15.3 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 47,198位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 26位草思社文庫
- - 37位その他の西洋思想関連書籍
- - 68位世界史一般の本
- カスタマーレビュー:
著者について
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イメージ付きのレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2020年2月6日に日本でレビュー済み
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VUCAの時代などと言われ、ポピュリズムの台頭や社会の二極化が進む中で、ともすれば不安を煽る悲観論が蔓延しがちな今日だからこそ、信仰よりも理性を、国家や民族よりも全人類のためのヒューマニズムを重視し、科学による進歩を肯定的に捉える「啓蒙主義の理念」の必要性が高まっており、これまでの人類の進歩を裏付ける実証データを併せて示すことで、悲観よりも希望を持つべきと訴える啓発書。
人類は、何もしなければエントロピーの法則に従って無秩序へと向かう自然に抗い、エネルギーをより効率的・効果的に確保することに成功した生物であり、そのために脳の進化に伴う認知革命や農業革命、産業革命等によって各種の情報を活用してきた。その過程で人類は啓蒙主義の理念により、呪術的世界観を克服したにも関わらず、近年、反科学主義や衰退主義が台頭している風潮に対し、著者は世界の平均寿命や健康状態、さらには平和や安全にいたる多くの指標において、科学がいかに人類を繁栄に導いたのかを膨大なデータを用いて明らかにするとともに、今後も啓蒙主義の理念が、困難な課題も解決し未来の希望を引き寄せるための石杖になると主張する。
人間が陥りがちな各種の認知バイアスに囚われず、ファクトに基づいて観察すれば世界は良くなっていることがわかるという観点では、ハンス・ロスリングの「ファクトフルネス」と同様の趣旨であり、また宗教や民族主義に陥ることなく、人類共通的な倫理観や合理的手法による真実の追求の必要性を説くユヴァル・ノア・ハラリの思想にも通底している部分がある。情報過多の時代に本当に重要なことは何かを見通すための一つの物差しとして、時間をかけてでも読む価値のある名著。
人類は、何もしなければエントロピーの法則に従って無秩序へと向かう自然に抗い、エネルギーをより効率的・効果的に確保することに成功した生物であり、そのために脳の進化に伴う認知革命や農業革命、産業革命等によって各種の情報を活用してきた。その過程で人類は啓蒙主義の理念により、呪術的世界観を克服したにも関わらず、近年、反科学主義や衰退主義が台頭している風潮に対し、著者は世界の平均寿命や健康状態、さらには平和や安全にいたる多くの指標において、科学がいかに人類を繁栄に導いたのかを膨大なデータを用いて明らかにするとともに、今後も啓蒙主義の理念が、困難な課題も解決し未来の希望を引き寄せるための石杖になると主張する。
人間が陥りがちな各種の認知バイアスに囚われず、ファクトに基づいて観察すれば世界は良くなっていることがわかるという観点では、ハンス・ロスリングの「ファクトフルネス」と同様の趣旨であり、また宗教や民族主義に陥ることなく、人類共通的な倫理観や合理的手法による真実の追求の必要性を説くユヴァル・ノア・ハラリの思想にも通底している部分がある。情報過多の時代に本当に重要なことは何かを見通すための一つの物差しとして、時間をかけてでも読む価値のある名著。
2021年7月3日に日本でレビュー済み
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著者は差別容認的だという理由でアメリカの言語学会で糾弾されているらしいが、啓蒙の支持者で、世界はよくなってきたし、これからもさらによくなるという見解の持ち主なので、私は本書を読んで差別的とは思わなかった。本書は「今日の啓蒙」というのが原題である。重要なのはすべてのトピックについて数量的なエヴィデンスに基づいて、良い方向に進んできたという認識を引き出していることである。我々はニュースを通じて世界はますます危険な方向に向かっているのではないかという印象を持ちがちだが、本書では、戦争もテロも、経済も政治も、教育、文化、差別や格差、貧困、エネルギーや環境も、歴史的に改善に向かってきたという包括的な分析に出会う。数量的裏付けを示している点が重要である。ペシミズムやユートピアを弄ぶのではなく、著者と共に人間の知性に期待したいと思う。
2020年3月17日に日本でレビュー済み
この方も、ビンカーも、ユヴァル・ノア・ハラリも少し、新自由主義礼賛の姿勢が強すぎると感じる。
自由貿易推進で外国人の賃金が上がったとほめそやすが、自国の工場労働者は減給・失業→貧困となっている事例をあげながら、それについては深く言わない。
EUの移民排除を求める国民等は、より直接の、新自由主義や現在の世界のエリートの自己満足の犠牲者とおもえる。
日本でも去年春賃金上がるだろうと予想があったが、技能実習生大量雇用でやはりつぶされた。
国民の生命と財産等を守り、国益をあげる政治を行うのが国家の役割で、自国民を犠牲にして外国人を豊かにするのはその責任ではないとおもうが。
得しているのは輸出関係の大企業等で、中小企業や個人は新自由主義によって貧しくなってきているが、日本の指導層は問題としていないようだね。
まだしも三橋の方がましだし、中野剛志はまともなこと書いていたな。上記3人よりは。
自由貿易推進で外国人の賃金が上がったとほめそやすが、自国の工場労働者は減給・失業→貧困となっている事例をあげながら、それについては深く言わない。
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日本でも去年春賃金上がるだろうと予想があったが、技能実習生大量雇用でやはりつぶされた。
国民の生命と財産等を守り、国益をあげる政治を行うのが国家の役割で、自国民を犠牲にして外国人を豊かにするのはその責任ではないとおもうが。
得しているのは輸出関係の大企業等で、中小企業や個人は新自由主義によって貧しくなってきているが、日本の指導層は問題としていないようだね。
まだしも三橋の方がましだし、中野剛志はまともなこと書いていたな。上記3人よりは。
2021年1月17日に日本でレビュー済み
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コロナ禍の中で必読の啓蒙書!
2020年7月2日に日本でレビュー済み
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上下巻の対策ですが、人間に対し希望が湧いてきます。
2020年1月12日に日本でレビュー済み
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マスメディアや教育により得られた情報は、なかなか意識から離れることはなく、考え方の固定化につながってしまうかもしれない。人間、一人一人が、自らの頭で考え、判断を下すという生き方が、21世紀では求められているのだろうか、と考えた。
2022年12月27日に日本でレビュー済み
私たちは理性と共感の力によって世界をよりよくできるし、そして実際に世界はよくなっている。そう希望を持たせてくれる本である。筆者は主張を裏付けるたに本書の大半のページを割いており、そのこと自体が、理性と科学を持ってことを判断すべきという筆者の一貫した主張を体現している。
テクノロジー、心理学、哲学、歴史など縦横無尽に語られ、分量の多さもあり読むのに骨の折れる書である。しかし、それはこの本で書かれている内容の正しさを、読者が自身の理性を持って判断するための材料を充分に提供しようとする筆者の熱意の表れではないか。
合理性で世の中の問題が全て解決するわけでないが、個人と個人の集まりである集団が理性を持って合理的に判断をしようと努力することで世界は長期的にはよい方向に向かう。逆に、世界をよりよくする方法はそれしかない。現実と折り合いをつけながら前向きに人類の可能性を信じる態度を大切にしたい。
テクノロジー、心理学、哲学、歴史など縦横無尽に語られ、分量の多さもあり読むのに骨の折れる書である。しかし、それはこの本で書かれている内容の正しさを、読者が自身の理性を持って判断するための材料を充分に提供しようとする筆者の熱意の表れではないか。
合理性で世の中の問題が全て解決するわけでないが、個人と個人の集まりである集団が理性を持って合理的に判断をしようと努力することで世界は長期的にはよい方向に向かう。逆に、世界をよりよくする方法はそれしかない。現実と折り合いをつけながら前向きに人類の可能性を信じる態度を大切にしたい。