この時代、社会主義革命を夢見た人々がいることをいま批難はできない。
それほど彼らは貧しかった。
主人公たち家族はさらに過激なスパルタクス団を支持していくのだけれど、そこには主義や思想、さらに打算なんてものはまずなかった。
人間が平等であることは幻想だが、それに一歩でも近づきたいと思うのがこれほど苦しいのかと考えさせられる一冊。
シリーズ続編もぜひ読みたい。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
ベルリン1919 単行本 – 2006/2/1
- 本の長さ663ページ
- 言語日本語
- 出版社理論社
- 発売日2006/2/1
- ISBN-104652077718
- ISBN-13978-4652077719
この商品を見た後にお客様が購入した商品
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
商品の説明
著者からのコメント
訳者あとがき抜粋
本書はクラウス・コルドンの「転換期三部作」第一作にあたります。原題は
「赤い水兵あるいはある忘れられた冬」Die rote Matrosen oder ein
vergessener Winterです。邦題からわかるとおり、一九一八年から一九一九年に
かけての冬のベルリンが舞台になります。
第一次世界大戦の末期である一九一八年十一月、敗色の濃かったドイツ帝国
で、水兵が戦争を終わらすために蜂起し、それがきっかけでドイツ革命が起こ
り、帝政が倒れることになります。しかし革命は成功と同時に歯車が狂いはじ
め、ベルリン市街戦へと発展します。そうしためまぐるしい時代のうねりに翻
弄される人々の姿が、ベルリンの貧民街に住むゲープハルト一家を通して克明に
描かれます。
重要なのはこれが「忘れられた冬」だということです。わたしたち日本人に
とっては遠いドイツのこれまた遠い過去の出来事かもしれませんが、ドイツ人に
とっても、この革命は忘れられた過去なのです。第二次世界大戦後の冷戦下、ド
イツは東西に分断されますが、自由主義陣営の旧西ドイツでは語られないことで
忘れられ、共産主義陣営の旧東ドイツでは誇張され、ゆがめて語られたことでそ
の本質が見失われました。作者コルドンが「転換期三部作」の第一作にこの時
代を選んだのは、このとき歯車が狂ったことが、やがてナチの台頭を許し、世界
を二度目の世界大戦へと引きずり込み、二〇世紀後半のドイツ分断の悲劇を生ん
だと考えているからに他ならならないでしょう。一九四三年、ベルリンに生まれ
旧東ドイツで成長したコルドンにとって、彼の半生を決定づけた事件でもあるの
です。
(中略)
一九七三年、旧西ドイツの国籍をえたコルドンはおよそ十年後の一九八四年に
本書を世に問いました。当時は、東西両ドイツが互いに政治的に歩み寄りなが
ら、そろって中距離核ミサイルの配備を計画するという矛盾に満ちた時期で、ド
イツ各地で平和運動のうねりが起こっていました。コルドンが本書を第一作とす
る「転換期三部作」で戦争と平和を問おうとしたこととも無縁ではないでしょ
う。
ドイツでは一九八九年にドイツ分断の象徴であるベルリンの壁が崩壊し、翌
年、統一ドイツが誕生します。「転換期三部作」の第二作、本書の「ハンスぼう
や」ことハンスが主人公となり、ナチが政権をとる過程を描いた『ベルリン
1933』はそうした劇的な変化をとげた年に出版され、三年後の一九九三年、作
者五十歳のときに、本書の主人公ヘレの娘エンネの目を通して第二次世界大戦が
終わる一九四五年のベルリンを描いた第三作『ベルリン1945』(原題は『はじめ
ての春』)が完成します。
歴史的にはナチ時代の方が日本の読者になじみがあるということで第二作『ベ
ルリン1933』を先に翻訳しましたが、ようやく第一作をみなさんに紹介できるこ
とになりました。思えば、本書をはじめて原書で読み、ぜひとも日本に紹介した
いと思ったのが一九八五年のこと。それから二十年の月日が経ってしまいまし
た。これは二十年越しの執念の翻訳です。八十年以上前にベルリンで平和と自由
のために立ち上がった人々の声にぜひ耳を傾けてください。第三作『ベルリン
1945』は、あまり時間をかけずに翻訳するつもりです。ルディ、マリー、ヘレ、
マルタ、ハンス、ゲープハルト一家にはまだまだたくさんの試練が待ち受けてい
ます。
本書はクラウス・コルドンの「転換期三部作」第一作にあたります。原題は
「赤い水兵あるいはある忘れられた冬」Die rote Matrosen oder ein
vergessener Winterです。邦題からわかるとおり、一九一八年から一九一九年に
かけての冬のベルリンが舞台になります。
第一次世界大戦の末期である一九一八年十一月、敗色の濃かったドイツ帝国
で、水兵が戦争を終わらすために蜂起し、それがきっかけでドイツ革命が起こ
り、帝政が倒れることになります。しかし革命は成功と同時に歯車が狂いはじ
め、ベルリン市街戦へと発展します。そうしためまぐるしい時代のうねりに翻
弄される人々の姿が、ベルリンの貧民街に住むゲープハルト一家を通して克明に
描かれます。
重要なのはこれが「忘れられた冬」だということです。わたしたち日本人に
とっては遠いドイツのこれまた遠い過去の出来事かもしれませんが、ドイツ人に
とっても、この革命は忘れられた過去なのです。第二次世界大戦後の冷戦下、ド
イツは東西に分断されますが、自由主義陣営の旧西ドイツでは語られないことで
忘れられ、共産主義陣営の旧東ドイツでは誇張され、ゆがめて語られたことでそ
の本質が見失われました。作者コルドンが「転換期三部作」の第一作にこの時
代を選んだのは、このとき歯車が狂ったことが、やがてナチの台頭を許し、世界
を二度目の世界大戦へと引きずり込み、二〇世紀後半のドイツ分断の悲劇を生ん
だと考えているからに他ならならないでしょう。一九四三年、ベルリンに生まれ
旧東ドイツで成長したコルドンにとって、彼の半生を決定づけた事件でもあるの
です。
(中略)
一九七三年、旧西ドイツの国籍をえたコルドンはおよそ十年後の一九八四年に
本書を世に問いました。当時は、東西両ドイツが互いに政治的に歩み寄りなが
ら、そろって中距離核ミサイルの配備を計画するという矛盾に満ちた時期で、ド
イツ各地で平和運動のうねりが起こっていました。コルドンが本書を第一作とす
る「転換期三部作」で戦争と平和を問おうとしたこととも無縁ではないでしょ
う。
ドイツでは一九八九年にドイツ分断の象徴であるベルリンの壁が崩壊し、翌
年、統一ドイツが誕生します。「転換期三部作」の第二作、本書の「ハンスぼう
や」ことハンスが主人公となり、ナチが政権をとる過程を描いた『ベルリン
1933』はそうした劇的な変化をとげた年に出版され、三年後の一九九三年、作
者五十歳のときに、本書の主人公ヘレの娘エンネの目を通して第二次世界大戦が
終わる一九四五年のベルリンを描いた第三作『ベルリン1945』(原題は『はじめ
ての春』)が完成します。
歴史的にはナチ時代の方が日本の読者になじみがあるということで第二作『ベ
ルリン1933』を先に翻訳しましたが、ようやく第一作をみなさんに紹介できるこ
とになりました。思えば、本書をはじめて原書で読み、ぜひとも日本に紹介した
いと思ったのが一九八五年のこと。それから二十年の月日が経ってしまいまし
た。これは二十年越しの執念の翻訳です。八十年以上前にベルリンで平和と自由
のために立ち上がった人々の声にぜひ耳を傾けてください。第三作『ベルリン
1945』は、あまり時間をかけずに翻訳するつもりです。ルディ、マリー、ヘレ、
マルタ、ハンス、ゲープハルト一家にはまだまだたくさんの試練が待ち受けてい
ます。
抜粋
これは戦争が終わり、革命がついえるまでの物語だ。1918年の凍てつ
く11月にはじまり、1919年の寒い冬の半ばに幕を降ろす。
舞台ベルリン、ドイツ帝国の首都だったベルリンとその郊外には、20世紀のは
じめ、二百万人をこす人々が暮らしていた。ベルリン市はいくつもの市街に分か
れ、豊かな者と貧しい者が住み分けていた。ベルリンの中でもとくに貧しいのが
ヴェディンク地区だ。そしてそのヴェディンク地区の中でも一番貧しいのがアッ
カー通りだ。そこはこの百年来、うらぶれたアパートでのみじめな暮らしにもめ
げず、懸命に人生を生き抜こうとする人々のいることで知られていた。
この物語の主人公は、そのアッカー通り37番地に暮らしていた。もちろん架空
の人物だ。だが、たしかにそこに生きていた。
く11月にはじまり、1919年の寒い冬の半ばに幕を降ろす。
舞台ベルリン、ドイツ帝国の首都だったベルリンとその郊外には、20世紀のは
じめ、二百万人をこす人々が暮らしていた。ベルリン市はいくつもの市街に分か
れ、豊かな者と貧しい者が住み分けていた。ベルリンの中でもとくに貧しいのが
ヴェディンク地区だ。そしてそのヴェディンク地区の中でも一番貧しいのがアッ
カー通りだ。そこはこの百年来、うらぶれたアパートでのみじめな暮らしにもめ
げず、懸命に人生を生き抜こうとする人々のいることで知られていた。
この物語の主人公は、そのアッカー通り37番地に暮らしていた。もちろん架空
の人物だ。だが、たしかにそこに生きていた。
登録情報
- 出版社 : 理論社 (2006/2/1)
- 発売日 : 2006/2/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 663ページ
- ISBN-10 : 4652077718
- ISBN-13 : 978-4652077719
- Amazon 売れ筋ランキング: - 939,954位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
星5つ中4.8つ
5つのうち4.8つ
9グローバルレーティング
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2018年6月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
1919年に起きてワイマール共和国が誕生したドイツ第2革命は、なかなか細かいことが分からなかった。その内幕と事実を人々の動きを中心にえがいている。
2007年8月8日に日本でレビュー済み
舞台はベルリン。1918年に起こったドイツ革命のまっただ中を
生きたゲープハルト一家を中心に、貧富の格差が激しい当時の
ドイツ社会と様々な人間模様を描いた物語。
何よりも筋立てが面白く、マイナーなドイツ革命を題材に
しながら読者を飽きさせない展開になっている。
主人公の一家をはじめ、革命を起こした人たちが次々と困難な状況に
陥ってゆくのだが、ハラハラしながら読んでいるうちに、
いつのまにか自分も革命派の一員であるかのような気分になっていた。
ナチス時代を扱った作品は多くあるが、ドイツ革命をテーマにした
ヤングアダルト向けの小説は珍しく、このような本を読みやすい
日本語で味わうことができるなんて嬉しい限りである。
生きたゲープハルト一家を中心に、貧富の格差が激しい当時の
ドイツ社会と様々な人間模様を描いた物語。
何よりも筋立てが面白く、マイナーなドイツ革命を題材に
しながら読者を飽きさせない展開になっている。
主人公の一家をはじめ、革命を起こした人たちが次々と困難な状況に
陥ってゆくのだが、ハラハラしながら読んでいるうちに、
いつのまにか自分も革命派の一員であるかのような気分になっていた。
ナチス時代を扱った作品は多くあるが、ドイツ革命をテーマにした
ヤングアダルト向けの小説は珍しく、このような本を読みやすい
日本語で味わうことができるなんて嬉しい限りである。
2007年11月9日に日本でレビュー済み
文献でさえ多くは見かけないドイツの一時代を描いているので、読みきれるかな、と最初は不安でした。でも読み始めると、ワクワクする子供のように続きを読むのが待ちきれなく、一気に読み終えてしまいました。まるで冒険小説のようにどきどきするストーリー展開です。
同時にこの時代のことを、自分が今まであまりにも知らなかったことにも驚いています。
いろいろな意味で、この本に出合えたことを幸運と思える一冊です。
同時にこの時代のことを、自分が今まであまりにも知らなかったことにも驚いています。
いろいろな意味で、この本に出合えたことを幸運と思える一冊です。
2013年2月25日に日本でレビュー済み
ほぼ4cmの厚さを持ち運ぶのには骨が折れたが、子供視点で平易な文章もあり、先が気になってどんどん読み進めてしまった。
文章は平易でも内容は重い。
「平和と秩序」求めるものは同じなのに、革命を起こした側がいつのまにか犯罪者扱いになっていくさま、学がなくていいように言いくるめられてしまう展開に慄然とする。
「世の中には三種類の人間がいるんだ、面白ければそれでいい連中、何が起こっているか理解しない連中、一番多いのはなにが起こっているのかちゃんとわかっているのに、我が身大事で口をつぐむ連中だ」
現代の日本は、はたして?
文章は平易でも内容は重い。
「平和と秩序」求めるものは同じなのに、革命を起こした側がいつのまにか犯罪者扱いになっていくさま、学がなくていいように言いくるめられてしまう展開に慄然とする。
「世の中には三種類の人間がいるんだ、面白ければそれでいい連中、何が起こっているか理解しない連中、一番多いのはなにが起こっているのかちゃんとわかっているのに、我が身大事で口をつぐむ連中だ」
現代の日本は、はたして?
2008年7月8日に日本でレビュー済み
タイトルが表すように、第一次大戦終結前後に発生した、ベルリンの赤色革命を舞台に、傷痍軍人の息子、ヘレ少年の眼差しで繰り広げられる群像劇。
ミリタリー本等で、鎮圧する側の義勇軍等が語られているぐらいで、革命シンパ、あるいは支持層からのストーリーというのが珍しく斬新だ。
自分達の街で起こった革命が、ヘレと彼の周囲の人達をどんどん揺さぶっていく。両親その他の大人達は革命に奔走し、教師達も左右に分裂。級友達もそれぞれの親の立場を伴ってヘレとの関係に影を落としていく。
そしていつの間にか、彼の年上の友人、あるいは兄貴分のような存在になる革命派の水兵達。
ヘレの弟や女友達のように、病気になる程のひもじい耐乏生活。
それらが大部な内容に見合うだけの克明さで活写されていく。
歴史の荒波の中で生き抜き、尊厳を守らんとする市井の人達の姿が、一条の光となって読む者の胸を打つ。 更にベルリン市内を縦横に駆けるヘレの姿が、物語に健気な躍動感をもたらしているのがいい。このあたりがヤングアダルト小説らしい旨味とはいえ、決して侮ってはいけない。あらゆる年代の方にお勧めできる優れた歴史小説だ。
ミリタリー本等で、鎮圧する側の義勇軍等が語られているぐらいで、革命シンパ、あるいは支持層からのストーリーというのが珍しく斬新だ。
自分達の街で起こった革命が、ヘレと彼の周囲の人達をどんどん揺さぶっていく。両親その他の大人達は革命に奔走し、教師達も左右に分裂。級友達もそれぞれの親の立場を伴ってヘレとの関係に影を落としていく。
そしていつの間にか、彼の年上の友人、あるいは兄貴分のような存在になる革命派の水兵達。
ヘレの弟や女友達のように、病気になる程のひもじい耐乏生活。
それらが大部な内容に見合うだけの克明さで活写されていく。
歴史の荒波の中で生き抜き、尊厳を守らんとする市井の人達の姿が、一条の光となって読む者の胸を打つ。 更にベルリン市内を縦横に駆けるヘレの姿が、物語に健気な躍動感をもたらしているのがいい。このあたりがヤングアダルト小説らしい旨味とはいえ、決して侮ってはいけない。あらゆる年代の方にお勧めできる優れた歴史小説だ。
2023年5月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ドイツ革命に限りませんが、99%の歴史書は思想家ベースで話が進んで
一般大衆はそれをどう解釈して、どう暮らしていたのか?という生活の
匂いは一切伝わってきません。
このシリーズはそれを叶えてくれます。
第一次世界大戦から始まり、ドイツ革命、ワイマール共和国、ナチス、
第二次世界大戦、終戦までをVol.3で。
版によっては上下巻ですから6冊になるかもしれません。
一般大衆はそれをどう解釈して、どう暮らしていたのか?という生活の
匂いは一切伝わってきません。
このシリーズはそれを叶えてくれます。
第一次世界大戦から始まり、ドイツ革命、ワイマール共和国、ナチス、
第二次世界大戦、終戦までをVol.3で。
版によっては上下巻ですから6冊になるかもしれません。