本書を読んで、日本の公立美術館が50年前と同じであることに戦慄。
展示はすれど、保存と修復はせず。
という体質は、50年間、まったく変化していないようです。
先進国の美術館とは、50年まえから雲泥の差がありました。
しかし、差は縮まらず、そのままの50年。 困ったものです。
雲泥の差は、行政や予算の問題ではなく、認識と哲学の問題。
日本国内でがんばっても、どうにもならないらしく、
著者は海外からの改革を構想しているようです。
何とか、上手くいってほしいものです。
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モネ、ゴッホ、ピカソも治療した絵のお医者さん 修復家・岩井希久子の仕事 単行本 – 2013/5/17
岩井希久子
(著)
NHKプロフェッショナルにも登場し、35年間日本の絵画修復の第一線で活躍する岩井希久子さん。
モネ《睡蓮》(地中美術館)、ゴッホ《ひまわり》(損保ジャパン)、ピカソ(DIC川村記念美術館)や
ロスコ、ニューマンなどの現代アートやディズニーのセル画まで。
修復を手がける中で起こった数々のドラマや、修復家だけが知っている絵の秘密などが語られています。
名画の8割は過去の悪しき修復によってオリジナルの輝きが失われている現実や、大胆な発想で絵が消滅す
る危機を救った秘話、女性として仕事を続けてきた涙を誘うエピソードなど、
読み物としても面白く、また絵の新しい見方がわかる一冊。
本編のほかに、俳優・宮本信子さん、金沢21世紀美術館館長・秋元雄史さんとの対談ほか、修復技法がわ
かるコラム、身近にある絵の保存方法なども掲載しています。
モネ《睡蓮》(地中美術館)、ゴッホ《ひまわり》(損保ジャパン)、ピカソ(DIC川村記念美術館)や
ロスコ、ニューマンなどの現代アートやディズニーのセル画まで。
修復を手がける中で起こった数々のドラマや、修復家だけが知っている絵の秘密などが語られています。
名画の8割は過去の悪しき修復によってオリジナルの輝きが失われている現実や、大胆な発想で絵が消滅す
る危機を救った秘話、女性として仕事を続けてきた涙を誘うエピソードなど、
読み物としても面白く、また絵の新しい見方がわかる一冊。
本編のほかに、俳優・宮本信子さん、金沢21世紀美術館館長・秋元雄史さんとの対談ほか、修復技法がわ
かるコラム、身近にある絵の保存方法なども掲載しています。
- 本の長さ240ページ
- 言語日本語
- 出版社美術出版社
- 発売日2013/5/17
- 寸法15.5 x 1.9 x 21.7 cm
- ISBN-104568221366
- ISBN-13978-4568221367
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登録情報
- 出版社 : 美術出版社 (2013/5/17)
- 発売日 : 2013/5/17
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 240ページ
- ISBN-10 : 4568221366
- ISBN-13 : 978-4568221367
- 寸法 : 15.5 x 1.9 x 21.7 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 577,172位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,011位西洋画
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年10月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2019年12月15日に日本でレビュー済み
著者の岩井希久子氏(1955ー)は絵画修復家です。
本書は岩井氏の来し方を通して、絵画修復という仕事を説明したものです。
岩井氏は画家の父の元で生まれ、子供時代から絵を書くことが大好きでした。
好きを仕事にするために芸大を受験しますが失敗、父に勧められて「絵画修復」の道を選びました。
「世の中に絵描きは掃いて捨てるほどいるけれど、修復家はいない」
日本では当時も今も絵画の保存にはほとんど無頓着だったので、修復技術は学べそうにありませんでした。
体系的な技術を保持しているイギリスで学ぼうと、渡英を果たします。
「イギリスでは美術館に修復部門があり、そこでインターンとして学ぶことができます。
修復の学校も、生徒は1年間で5人くらいしか取りません。
日本の学校は何十人も生徒がいるようですが、経営のためで、本当に修復家を養成しようとしていないと思います。」
84年に帰国すると、その後はフリーランスとして名画の修復を手がけました。
2010年にはNHK「仕事の流儀」で特集されたことから認知度が広がり、本書の出版にも繋がりました。
本書では岩井氏が行なっている絵画修復の技術、絵画を取り巻く現状などがまとめられていました。
修復という技術は現在進行形で進化していて、現時点で完成されたものはありません。
著者は海外に学び、書を紐解き、科学の恩恵を取り入れながら試行錯誤を繰り返しました。
絵を保存する新技術「低酸素密閉」、薄い紙を修復する技術、古いアニメセル画の修復など革新的な技法を編み出しました。
日本の修復への不理解、アジアで失われていく芸術作品の現状への懸念などについても詳細に語っていました。
「日本の美術館には修復部門はありません。
建物を建て、物を買って飾るだけで、人件費はかけない。
まさにうつわ行政の典型です。」
本書はこのように絵画修復について、門外漢の者にもわかりやすく綴られていました。
絵画への細やかな愛情を感じさせるもので、感じ入りました。
著者の技術を高め、細やかに芸術作品と向き合おうとする姿は職人の崇高さを感じさせるものでした。
「絵は生きています。
誰かが面倒をみないと、それは消滅してしまうのです。
修復家の仕事も美術医として仁の精神を心に刻んで、誠心誠意取り組んでいきたいと思っています。」
日本は伝統的に職人や技術の価値を認めない傾向にあり、そのせいで世界でも珍しいユニークな技術が失われつつあることへの懸念や憂いも身につまされるものでした。
絵画修復という技術を切り口にして深みのあるエピソードが披露されていて、読み応えがありました。
本書は岩井氏の来し方を通して、絵画修復という仕事を説明したものです。
岩井氏は画家の父の元で生まれ、子供時代から絵を書くことが大好きでした。
好きを仕事にするために芸大を受験しますが失敗、父に勧められて「絵画修復」の道を選びました。
「世の中に絵描きは掃いて捨てるほどいるけれど、修復家はいない」
日本では当時も今も絵画の保存にはほとんど無頓着だったので、修復技術は学べそうにありませんでした。
体系的な技術を保持しているイギリスで学ぼうと、渡英を果たします。
「イギリスでは美術館に修復部門があり、そこでインターンとして学ぶことができます。
修復の学校も、生徒は1年間で5人くらいしか取りません。
日本の学校は何十人も生徒がいるようですが、経営のためで、本当に修復家を養成しようとしていないと思います。」
84年に帰国すると、その後はフリーランスとして名画の修復を手がけました。
2010年にはNHK「仕事の流儀」で特集されたことから認知度が広がり、本書の出版にも繋がりました。
本書では岩井氏が行なっている絵画修復の技術、絵画を取り巻く現状などがまとめられていました。
修復という技術は現在進行形で進化していて、現時点で完成されたものはありません。
著者は海外に学び、書を紐解き、科学の恩恵を取り入れながら試行錯誤を繰り返しました。
絵を保存する新技術「低酸素密閉」、薄い紙を修復する技術、古いアニメセル画の修復など革新的な技法を編み出しました。
日本の修復への不理解、アジアで失われていく芸術作品の現状への懸念などについても詳細に語っていました。
「日本の美術館には修復部門はありません。
建物を建て、物を買って飾るだけで、人件費はかけない。
まさにうつわ行政の典型です。」
本書はこのように絵画修復について、門外漢の者にもわかりやすく綴られていました。
絵画への細やかな愛情を感じさせるもので、感じ入りました。
著者の技術を高め、細やかに芸術作品と向き合おうとする姿は職人の崇高さを感じさせるものでした。
「絵は生きています。
誰かが面倒をみないと、それは消滅してしまうのです。
修復家の仕事も美術医として仁の精神を心に刻んで、誠心誠意取り組んでいきたいと思っています。」
日本は伝統的に職人や技術の価値を認めない傾向にあり、そのせいで世界でも珍しいユニークな技術が失われつつあることへの懸念や憂いも身につまされるものでした。
絵画修復という技術を切り口にして深みのあるエピソードが披露されていて、読み応えがありました。
2018年1月19日に日本でレビュー済み
岩井さんの指摘する日本の美術館の「著名画家の作品を持つこと」にしか頭がいかない欠点。
と言うより、箱モノを作り著名な画家の絵を収蔵し飾れば、為政者・行政関係者の実績として評価され
見物人が殺到するが、暫くすると人の流れが絶え箱モノも顧みられず、作品も置かれているだけ、管理
も不十分な多くの美術館の現状。
日本で美術品の管理・修復に人・モノ・金をかけ、作品を最上のレベルで維持している美術館は数館で
しかないという現状を打破するために、岩井さんが提起しているセンター構想がなんとか実現できない
のか。日本は最近は文化国家ではなく、どうも軍事国家が第一の目標らしいが、防衛費の0.1%で十分に
センターは作り運営されるだろうし、それによってアジアにおける文化・芸術の指導的役割が果たせるのに…。
国民の税金が、使いもせず陳腐化し処分される(不良品でも使わないから分かりもしない)軍用品に流れ、
ある人間の懐を潤し、献金で政治家に還流するのを黙って見ているのではなく、もっと有効に使う道を
一人一人が口に出して言わなければ、と読みながら思う。
と言うより、箱モノを作り著名な画家の絵を収蔵し飾れば、為政者・行政関係者の実績として評価され
見物人が殺到するが、暫くすると人の流れが絶え箱モノも顧みられず、作品も置かれているだけ、管理
も不十分な多くの美術館の現状。
日本で美術品の管理・修復に人・モノ・金をかけ、作品を最上のレベルで維持している美術館は数館で
しかないという現状を打破するために、岩井さんが提起しているセンター構想がなんとか実現できない
のか。日本は最近は文化国家ではなく、どうも軍事国家が第一の目標らしいが、防衛費の0.1%で十分に
センターは作り運営されるだろうし、それによってアジアにおける文化・芸術の指導的役割が果たせるのに…。
国民の税金が、使いもせず陳腐化し処分される(不良品でも使わないから分かりもしない)軍用品に流れ、
ある人間の懐を潤し、献金で政治家に還流するのを黙って見ているのではなく、もっと有効に使う道を
一人一人が口に出して言わなければ、と読みながら思う。
2013年5月21日に日本でレビュー済み
作ることも大切だけど、作ったものを構成に「残す」ことも大切。そのためには、時間の経過・環境の変化が引き起こす絵画へのダメージを都度都度取り除かなければいけない。カタチあるモノいずれ滅びんとは言う。時の経過に従って滅びた方が良いもの(人)もあるが、時の経過に抗って後世に残したいもの(芸術品)もある。後世に残したいものを残すための仕事とはいったいどんなものか。修復家岩井の仕事をもって、それを紹介しよう。
修復の基本は、唾液を使って汚れを取り去ること。綿棒に唾液を含ませ、淵にたまった誇りや汚れを取り除く。意表をつかれつつも、人間の智慧が詰まった「お掃除」の方法は、どこか微笑ましささえ覚えてしまう。
さて、微笑ましいお掃除のスタイルもあれば、勇ましいお掃除のスタイルもある。例えば色褪せた絵画に、鮮やかさを甦らせる。長い年月と空調環境の影響によって、ぼろぼろになった絵画の表面を、少しずつ少しずつ修復していく。焦ってはいけない、一つの焦りが大惨事に繋がる。腰を痛める、肩が上がらなくなるなんてのは日常茶飯事のこと。だが、一心不乱に修復作業に取り組む。手抜きは一切しない。何ヶ月かかろうとも、最高の状態に戻す。絵画を修復したときの達成感が、その労苦を一層してくれるのだろう。プロフェッショナル岩井の仕事に対する誇りと取り組む姿勢、アウトプットは、我々の想像を絶する域に達している。
修復にあたって岩井が大切にしていること、それは「作家の意図をくみ取って修復すること」だ。過去の史実・文献の記録を読み込んで、そこから得られる小さな手がかりを集め、海外の修復に当たる。こうだろうという想定を、限りなく「そうあったはずだ」というイメージに近づけていく。
修復の技法に関しても、思考錯誤の連続だ。いくつもの修復方法の中から、最適な方法を選び出す。ダメージの大きさ、コンディション、未来に渡っての修復の計画etc。様々な「可能性」を考慮した上で、「最適な処置方法」を選択する。緻密な分析力と、豊富な経験無しに、絵画の修復は行えない。付け焼き刃で立ち向かっては、修復どころか「焼き切ってしまう」こと受け合いだ。最高の治療を施すためには、最新のテクニックを取り入れる必要がある。岩井は科学的な技法でもって修復を行うことに余念がない。最新の文献に目を通すことはもちろん、科学的な知見を収集し、提案するためにも積極的に研究所にアプローチする姿勢も忘れない。己が立つべきフィールドを把握しつつ、そこに必要なことであれば積極的に吸収しにいく……プロフェッショナルの仕事、ここにありと言えよう。
岩井のプロフェッショナルに嘆息してばかりもいられない。本書をもって岩井が提言しようとしていることは、「修復家の必要性」「職業的な地位」「教育体系の確立」の三本柱である。海外では修復家は、専門家としての地位が確立されているが、日本ではまだ確立されていないといってよい。合理的な展示、派手な展示のための「宣伝」にばかり予算が当てられ、金銭面の効果を評価しにくい「修復」には、少額の予算しか当てられないのが現状だ。では、どうすれば修復により多くの予算を充ててもらうことができるのだろうか?
岩井の提示する三本柱を築くことは確かに重要だ。だが、それは「修復」に携わる人たちがなし得ることであり、我々一般人が関わることは難しい。残念ながら、我々には何もできないのだろうか?
いや、そんなことはない。絵画を鑑賞する楽しさを広く共有することが、「修復」の必要性を訴える一助になりうる。絵画と対面して得られる「美しさ」「幸福」「驚き」といった感情は、状態の良い絵画無しに感じ取ることは難しいはずだ。多くの人が、「美しさ」「幸福」「驚き」を発信することが絵画の「修復」の一助になるはずだ。そう期待したい。
修復の基本は、唾液を使って汚れを取り去ること。綿棒に唾液を含ませ、淵にたまった誇りや汚れを取り除く。意表をつかれつつも、人間の智慧が詰まった「お掃除」の方法は、どこか微笑ましささえ覚えてしまう。
さて、微笑ましいお掃除のスタイルもあれば、勇ましいお掃除のスタイルもある。例えば色褪せた絵画に、鮮やかさを甦らせる。長い年月と空調環境の影響によって、ぼろぼろになった絵画の表面を、少しずつ少しずつ修復していく。焦ってはいけない、一つの焦りが大惨事に繋がる。腰を痛める、肩が上がらなくなるなんてのは日常茶飯事のこと。だが、一心不乱に修復作業に取り組む。手抜きは一切しない。何ヶ月かかろうとも、最高の状態に戻す。絵画を修復したときの達成感が、その労苦を一層してくれるのだろう。プロフェッショナル岩井の仕事に対する誇りと取り組む姿勢、アウトプットは、我々の想像を絶する域に達している。
修復にあたって岩井が大切にしていること、それは「作家の意図をくみ取って修復すること」だ。過去の史実・文献の記録を読み込んで、そこから得られる小さな手がかりを集め、海外の修復に当たる。こうだろうという想定を、限りなく「そうあったはずだ」というイメージに近づけていく。
修復の技法に関しても、思考錯誤の連続だ。いくつもの修復方法の中から、最適な方法を選び出す。ダメージの大きさ、コンディション、未来に渡っての修復の計画etc。様々な「可能性」を考慮した上で、「最適な処置方法」を選択する。緻密な分析力と、豊富な経験無しに、絵画の修復は行えない。付け焼き刃で立ち向かっては、修復どころか「焼き切ってしまう」こと受け合いだ。最高の治療を施すためには、最新のテクニックを取り入れる必要がある。岩井は科学的な技法でもって修復を行うことに余念がない。最新の文献に目を通すことはもちろん、科学的な知見を収集し、提案するためにも積極的に研究所にアプローチする姿勢も忘れない。己が立つべきフィールドを把握しつつ、そこに必要なことであれば積極的に吸収しにいく……プロフェッショナルの仕事、ここにありと言えよう。
岩井のプロフェッショナルに嘆息してばかりもいられない。本書をもって岩井が提言しようとしていることは、「修復家の必要性」「職業的な地位」「教育体系の確立」の三本柱である。海外では修復家は、専門家としての地位が確立されているが、日本ではまだ確立されていないといってよい。合理的な展示、派手な展示のための「宣伝」にばかり予算が当てられ、金銭面の効果を評価しにくい「修復」には、少額の予算しか当てられないのが現状だ。では、どうすれば修復により多くの予算を充ててもらうことができるのだろうか?
岩井の提示する三本柱を築くことは確かに重要だ。だが、それは「修復」に携わる人たちがなし得ることであり、我々一般人が関わることは難しい。残念ながら、我々には何もできないのだろうか?
いや、そんなことはない。絵画を鑑賞する楽しさを広く共有することが、「修復」の必要性を訴える一助になりうる。絵画と対面して得られる「美しさ」「幸福」「驚き」といった感情は、状態の良い絵画無しに感じ取ることは難しいはずだ。多くの人が、「美しさ」「幸福」「驚き」を発信することが絵画の「修復」の一助になるはずだ。そう期待したい。
2013年6月29日に日本でレビュー済み
ただ美術館に行って、観賞していた作品の影で、このような努力が行われていたとは、大変驚きました。まだこの国では、理解されていない仕事ですが、プロだな!!と思わせる内容でした。
2013年5月22日に日本でレビュー済み
日本における絵画修復の第一人者による絵画修復の解説です。このテーマの書籍はこれまでほとんどなかったのではないでしょうか。写真が多く、デザイン、装丁が丁寧に美しく仕上げられています。
画学生だった岩井希久子さんは画家と結婚しましたが、「夫婦ふたり画家では食べていけない」と修復家になろうと決心します。日本で3年間学んだ彼女はイギリスに赴き、ヨーロッパの修復方法を身につけて帰国し、日本の修復技術を大きく発展させました。彼女が開発した低酸素密閉法は酸化を防止し、安全な状態で絵を維持できる保存法として世界中から注目されています。
絵画修復の方法が写真入りでていねいに解説されています。修復の方法を誤ると絵本来の美しさを損ない、寿命を早めてしまうことになります。世界的な名画を相手に修復に当たるのは大変に緊張するそうです。「作家の魂を未来に残すために、作家の思いによりそい、作家の意図したことを伝え、作品にとって最善の状態を保つ修復をしたい」と岩井さんは語ります。
3.11で放射能汚染の不安がある中で海外の美術館長の「こんなときだからこそ被災地で開催したい」との決意で「フェルメールからのラブレター展」の宮城開催が実現しました。その時に岩井さんはフェルメールの絵の管理を担当します。のちに仮設住宅に住む被災者が観に来てくれたことを知って岩井さんは「こういう仕事に携われて本当によかった」と思うのです。
日本の絵画修復は大幅に遅れているといいます。外国の美術館にはかならず修復部門が付属していて修復家がいるのに日本では修復部門を持つ美術館はごく少数であり、修復にかかわる職人の地位と待遇は十分ではありません。こうした状態の改善を岩井さんは強く訴えています。
本書は絵画修復のガイドブックであると同時に人類の貴重な財産である絵画を守るために生涯をささげた女性の物語です。絵画愛好家にとっての必読書であると私は思います。
画学生だった岩井希久子さんは画家と結婚しましたが、「夫婦ふたり画家では食べていけない」と修復家になろうと決心します。日本で3年間学んだ彼女はイギリスに赴き、ヨーロッパの修復方法を身につけて帰国し、日本の修復技術を大きく発展させました。彼女が開発した低酸素密閉法は酸化を防止し、安全な状態で絵を維持できる保存法として世界中から注目されています。
絵画修復の方法が写真入りでていねいに解説されています。修復の方法を誤ると絵本来の美しさを損ない、寿命を早めてしまうことになります。世界的な名画を相手に修復に当たるのは大変に緊張するそうです。「作家の魂を未来に残すために、作家の思いによりそい、作家の意図したことを伝え、作品にとって最善の状態を保つ修復をしたい」と岩井さんは語ります。
3.11で放射能汚染の不安がある中で海外の美術館長の「こんなときだからこそ被災地で開催したい」との決意で「フェルメールからのラブレター展」の宮城開催が実現しました。その時に岩井さんはフェルメールの絵の管理を担当します。のちに仮設住宅に住む被災者が観に来てくれたことを知って岩井さんは「こういう仕事に携われて本当によかった」と思うのです。
日本の絵画修復は大幅に遅れているといいます。外国の美術館にはかならず修復部門が付属していて修復家がいるのに日本では修復部門を持つ美術館はごく少数であり、修復にかかわる職人の地位と待遇は十分ではありません。こうした状態の改善を岩井さんは強く訴えています。
本書は絵画修復のガイドブックであると同時に人類の貴重な財産である絵画を守るために生涯をささげた女性の物語です。絵画愛好家にとっての必読書であると私は思います。