私はどちらかというと雑読なのですが最近、まじめな読書好きの友人から、この本が良いから読め、と薦められました。早速購入したのですが、まだ読んでいません。一・二ページ読んでの印象で星五つしました。内容についてはまだ何も言へないのですが、鈴木仁子さんという訳者のセンスがピッタリ来るという理由です。
ちなみにこれを薦めてくれた友人は45年以上も前に、サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」を読めと薦めてくれた男です。お互いに70歳になってしまいました。
一読完了。懐かしさで涙が出そうになった。久しぶりです。五十数年も前にヘルマン・ヘッセやアンドレ・ジイド、また北杜夫の「楡家の人々」「幽霊」「木精」などの作品を夢中で読んだ頃の、今では薄れてしまった純粋な感動が甦ってきたような気持ちです。
どんな人間(極悪人も含めて)にもそれぞれの経歴(思い出)が有り、それが今生きている自分を作り上げているのだという事をこの作品は淡々と、しかも細密に描いている(鈴木仁子さんの訳がすばらしい)。またそれと並行して掲げられている写真も、思い出を確認するかのように掲げられてい、文章を読むだけでは想像し得ないディテールをを語っている。
これから二読目に入ります。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
移民たち:四つの長い物語(新装版) 単行本 – 2020/5/15
どんな眼からもぬぐい去れない靄がある
異郷に暮らし、過去の記憶に苛まれる4人の男たちの生と死。みずから故郷を去ったにせよ、歴史の暴力によって故郷を奪われたにせよ、移住の地に一見とけ込んで生活しているかに見える移民たちは、30年、40年、あるいは70年の長い期間をおいて、突然のようにみずから破滅の道をたどる……。語り手の〈私〉は、遺されたわずかの品々をよすがに、それら流謫の身となった人々の生涯をたどりなおす。〈私〉もまた、異郷に身をおいて久しい人だ。個人の名前を冠し、手記を引用し、写真を配した各篇はドキュメンタリーといった体裁をなしているが、どこまでが実で、どこまでが虚なのか、判然としない。
本書は、ゼーバルトが生涯に4つだけ書いた散文作品の2作目にあたる。英語版がスーザン・ソンタグの称讃を得て、各国語に翻訳され、ドイツではベルリン文学賞とボブロフスキー・メダル、ノルト文学賞を受賞した。
堀江敏幸氏による巻末の解説「蝶のように舞うぺシミスム」から引用する。「作家の極端なぺシミスムが読者にかけがえのない幸福をもたらすとは、いったいどういうことなのか?ゼーバルトの小説を読むたびに、私はそう自問せざるをえなくなる」。
異郷に暮らし、過去の記憶に苛まれる4人の男たちの生と死。みずから故郷を去ったにせよ、歴史の暴力によって故郷を奪われたにせよ、移住の地に一見とけ込んで生活しているかに見える移民たちは、30年、40年、あるいは70年の長い期間をおいて、突然のようにみずから破滅の道をたどる……。語り手の〈私〉は、遺されたわずかの品々をよすがに、それら流謫の身となった人々の生涯をたどりなおす。〈私〉もまた、異郷に身をおいて久しい人だ。個人の名前を冠し、手記を引用し、写真を配した各篇はドキュメンタリーといった体裁をなしているが、どこまでが実で、どこまでが虚なのか、判然としない。
本書は、ゼーバルトが生涯に4つだけ書いた散文作品の2作目にあたる。英語版がスーザン・ソンタグの称讃を得て、各国語に翻訳され、ドイツではベルリン文学賞とボブロフスキー・メダル、ノルト文学賞を受賞した。
堀江敏幸氏による巻末の解説「蝶のように舞うぺシミスム」から引用する。「作家の極端なぺシミスムが読者にかけがえのない幸福をもたらすとは、いったいどういうことなのか?ゼーバルトの小説を読むたびに、私はそう自問せざるをえなくなる」。
- 本の長さ268ページ
- 言語日本語
- 出版社白水社
- 発売日2020/5/15
- 寸法13.9 x 2.4 x 19.5 cm
- ISBN-104560097585
- ISBN-13978-4560097588
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
1944年、ドイツ・アルゴイ地方ヴェルタッハ生まれ。フライブルク大学、スイスのフリブール大学でドイツ文学を修めた後、マンチェスター大学に講師として赴任。イギリスを定住の地とし、イースト・アングリア大学のヨーロッパ文学の教授となった。散文作品『目眩まし』『移民たち 四つの長い物語』『土星の環 イギリス行脚』を発表し、ベルリン文学賞、J・ブライトバッハ賞など数多くの賞に輝いた。遺作となった散文作品『アウステルリッツ』も、全米批評家協会賞、ハイネ賞、ブレーメン文学賞を受賞し、将来のノーベル文学賞候補と目された。エッセイ・評論作品『空襲と文学』『カンポ・サント』『鄙の宿』も邦訳刊行されている。2001年、住まいのあるイギリス・ノリッジで自動車事故に遭い、他界した。
登録情報
- 出版社 : 白水社 (2020/5/15)
- 発売日 : 2020/5/15
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 268ページ
- ISBN-10 : 4560097585
- ISBN-13 : 978-4560097588
- 寸法 : 13.9 x 2.4 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 206,317位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 198位ドイツ文学 (本)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2020年3月8日に日本でレビュー済み
『アウステルリッツ』と並ぶゼーバルトの代表作であり、初めてこの作家の作品を読む人にも強くお薦めしたい傑作。
副題通り、4つの独立した短編を巧く並べており、4人の移民の生涯を追う物語的な面白さがある。そのため、この作家特有のうねるような描写や度々挿入される写真に戸惑う人にも取っつきやすいと思う。歴史を語るとは何か、という省察だけでなく、1930~40年代の激動の世界を生き抜いた人々の孤独や痛みが伝わってくる。
『ドクター・ヘンリー・セルウィン』
リトアニア移民でイギリスに暮らす医師を「私」が訪れて半生を聞く。短編アンソロジーに入りそうなくらい綺麗にまとまっていて、完成度が高い。特にオチは全体の主題に巧く結び付いている。
『パウル・ベライダー』
鉄道自殺をしたドイツの片田舎の小学校教師の生涯を、知り合いの女性が語る。ナチス時代を生き延びた人々の苦しみが伝わる、最も陰鬱な一編。自殺について語る女性の最後の言葉が印象に残る。
『アンブロース・アーデルヴァルト』
最も異様な一編。伝説的な叔父の破滅的な生涯を親戚の老人達が語る。ホテルボーイになった後、執事として富豪のどら息子に仕えてカジノを渡り歩き、戦争に翻弄されながら世界中を放浪する叔父。彼の手記を交えて、目眩くスピードでほぼ全世界を駆け巡る驚異的な一編で、殆ど幻想文学の域に達している。
とりわけ驚きなのが、日本を巡る挿話だろう。参事官に仕えて短期過ごした京都の「水上の別荘」とやらの写真が、日本人なら誰でも知っている「あのお寺」の写真なのだ。誰も言及しないのが不思議だが、ぬけぬけと引用する度胸に、これが巧妙に作られたフィクションだと改めて気づかせられる。
『マックス・アウラッハ』
「私」がマンチェスターに住む友人のドイツ人画家の半生を本人から聞く。語り手が旅をするエッセイ的な部分が多く、この作家の特徴が一番色濃く出ている一編と言える。
一見独立した4編だが、「蝶」というキーワード、そして何より第二次大戦が4つを結び付けている。時代も場所も大胆に交錯して飛び越える自由な文学空間を産み出すゼーバルトが、伝統的な小説形式に則って創りあげた逸品だ。
副題通り、4つの独立した短編を巧く並べており、4人の移民の生涯を追う物語的な面白さがある。そのため、この作家特有のうねるような描写や度々挿入される写真に戸惑う人にも取っつきやすいと思う。歴史を語るとは何か、という省察だけでなく、1930~40年代の激動の世界を生き抜いた人々の孤独や痛みが伝わってくる。
『ドクター・ヘンリー・セルウィン』
リトアニア移民でイギリスに暮らす医師を「私」が訪れて半生を聞く。短編アンソロジーに入りそうなくらい綺麗にまとまっていて、完成度が高い。特にオチは全体の主題に巧く結び付いている。
『パウル・ベライダー』
鉄道自殺をしたドイツの片田舎の小学校教師の生涯を、知り合いの女性が語る。ナチス時代を生き延びた人々の苦しみが伝わる、最も陰鬱な一編。自殺について語る女性の最後の言葉が印象に残る。
『アンブロース・アーデルヴァルト』
最も異様な一編。伝説的な叔父の破滅的な生涯を親戚の老人達が語る。ホテルボーイになった後、執事として富豪のどら息子に仕えてカジノを渡り歩き、戦争に翻弄されながら世界中を放浪する叔父。彼の手記を交えて、目眩くスピードでほぼ全世界を駆け巡る驚異的な一編で、殆ど幻想文学の域に達している。
とりわけ驚きなのが、日本を巡る挿話だろう。参事官に仕えて短期過ごした京都の「水上の別荘」とやらの写真が、日本人なら誰でも知っている「あのお寺」の写真なのだ。誰も言及しないのが不思議だが、ぬけぬけと引用する度胸に、これが巧妙に作られたフィクションだと改めて気づかせられる。
『マックス・アウラッハ』
「私」がマンチェスターに住む友人のドイツ人画家の半生を本人から聞く。語り手が旅をするエッセイ的な部分が多く、この作家の特徴が一番色濃く出ている一編と言える。
一見独立した4編だが、「蝶」というキーワード、そして何より第二次大戦が4つを結び付けている。時代も場所も大胆に交錯して飛び越える自由な文学空間を産み出すゼーバルトが、伝統的な小説形式に則って創りあげた逸品だ。
2006年5月30日に日本でレビュー済み
痛みと悲しみにみちた、封印すべき記憶、だがそれは、懐かしく好ましい思い出の棲家への、たったひとつの入り口でもある。
最初に本を開いて眺めた数々の写真は、これら四つの物語を読んだあとではまるで違ったものになって胸にせまってくるだろう。この感覚は突然にやって来て、しかも強烈である。たとえばごつごつと聳える山と教会の塔を背景にした、十歳くらいの少年たちの写真。読者自身もまた、彼らと肩を組んで歩いていたかのような錯覚におちいってしまう。共通の悲劇的出自をもった四人の男たちは、こうして鮮やかに蘇るのだ。読者の心の襞にわけいって真実となる。そして「ある種のものごとはときにきわめて長い間をおいて、思いもよらぬかたちで、不意を打って舞い戻る・・・」という語り手の言葉があまりに重く切実にひびいてくる。
ところで堀江敏幸氏の解説は蛇足だった。というより訳者による解説をこそ読みたかったと思う。
最初に本を開いて眺めた数々の写真は、これら四つの物語を読んだあとではまるで違ったものになって胸にせまってくるだろう。この感覚は突然にやって来て、しかも強烈である。たとえばごつごつと聳える山と教会の塔を背景にした、十歳くらいの少年たちの写真。読者自身もまた、彼らと肩を組んで歩いていたかのような錯覚におちいってしまう。共通の悲劇的出自をもった四人の男たちは、こうして鮮やかに蘇るのだ。読者の心の襞にわけいって真実となる。そして「ある種のものごとはときにきわめて長い間をおいて、思いもよらぬかたちで、不意を打って舞い戻る・・・」という語り手の言葉があまりに重く切実にひびいてくる。
ところで堀江敏幸氏の解説は蛇足だった。というより訳者による解説をこそ読みたかったと思う。
2021年7月9日に日本でレビュー済み
四編の移民の話である。それぞれの主人公は、「私」(著者ゼーバルドであろう)が出逢い、その人生に興味を持った市井の人々である。共通しているのは彼らが皆、母国を去り異国で人生の大半を過ごし、終わりを遂げる、終わろうとしているということだ。die Ausgewanderten (移民)、die Migranten ( 亡命者、移住者)、die Flüchtlinge (難民)、それぞれ意味、定義は違う。原題は die Ausgewanderten (移民)。しかし、母国を去る、あるいは去らねばならなかった理由は何かと言えば、その境目は微妙な気がする。迫害を恐れ、状況が悪化する前に自主的に去った者もいる。異国での未来に希望を持って海を渡った者もいただろうが、少なくとも皆、母国での生活が必ずしも幸福ではなかったという事は言えるのではないか。「私」は人生の中である時期すれ違ったこの4人の移民の人生を情熱を持って調べ上げる。どこまでが事実かわからない、フィクションなのかもしれないが、彼らの人生、彼らから受けた印象、彼らから聞いた話を淡々と描写していく。自身、人生の半分以上を異国で過ごし当地で亡くなったゼーバルドである。彼らの挫折と諦念に共感し、また自らの人生を振り返りなぞって、そこからの生き方を探っていたのだろう。母国を去るということ、異国で生きていくということは想像以上に重いテーマだった。
2022年7月24日に日本でレビュー済み
めちゃくちゃ評価が高いのでめちゃくちゃ期待して読みました。結果、これまでに経験したことのない退屈な読書体験でした。世間でつまらないと言われる芥川賞受賞作品で1度も退屈だと感じたことのない私ですが、これは本を投げつけたいほど退屈でした。
まだ、前半2つの20〜40ページの話は興味深く読むことが出来ました。しかし残り2つの100ページほどの話は退屈過ぎで我慢出来ない。人々の心の動きなど無しに人生の軌跡だけを見せられても何も感じられない。
これに感動出来るのは身近に移民が居たり、実際に親兄弟が移民だったりする人だけではないのかな?日本人でこれを「奇跡の物語」などと心から思える人がいることが信じられない。何となくの漠然としたイメージが心に入っては来ますが、これに心を打たれるほど感動は到底出来ません。
まだ、前半2つの20〜40ページの話は興味深く読むことが出来ました。しかし残り2つの100ページほどの話は退屈過ぎで我慢出来ない。人々の心の動きなど無しに人生の軌跡だけを見せられても何も感じられない。
これに感動出来るのは身近に移民が居たり、実際に親兄弟が移民だったりする人だけではないのかな?日本人でこれを「奇跡の物語」などと心から思える人がいることが信じられない。何となくの漠然としたイメージが心に入っては来ますが、これに心を打たれるほど感動は到底出来ません。
2007年8月16日に日本でレビュー済み
故郷を出るということは、家を捨てるということなのかもしれない。
忘れようとする世界に引き戻され、引きちぎられていく時間。
移民たちに、完璧な幸福は訪れなかった。
それは、次へと託されるばかりだったのかもしれない。
忘れようとする世界に引き戻され、引きちぎられていく時間。
移民たちに、完璧な幸福は訪れなかった。
それは、次へと託されるばかりだったのかもしれない。
2005年10月12日に日本でレビュー済み
『アウステルリッツ』で日本でも知られるようになったゼーバルトの新しい邦訳『移民たち 四つの物語』が刊行された。4人の移民たちの苦難にみちた人生が多数の写真とともに語られていく。
なんといってもこの小説の魅力はそれぞれの人生の記憶が見事に語られる様だろう。特異で衝撃的な人生を生きてきた人たちだが、その物語は決してセンセーショナルなやり方ではなく、静かにそして慎みをもってひとつひとつ解きほぐすように語られていく。長い沈黙の後にやっと話し出される記憶、苦しそうな話し方で物語られる記憶。そのような苦々しい記憶を私たちは目の当たりにすることになる。
『アウステルリッツ』からあまり間を置かずにゼーバルトの作品が邦訳されたことは素晴らしいことだ。このような美しい作品を読むことを可能にしてくれた白水社と訳者の鈴木仁子氏にここで感謝したいと思う。
なんといってもこの小説の魅力はそれぞれの人生の記憶が見事に語られる様だろう。特異で衝撃的な人生を生きてきた人たちだが、その物語は決してセンセーショナルなやり方ではなく、静かにそして慎みをもってひとつひとつ解きほぐすように語られていく。長い沈黙の後にやっと話し出される記憶、苦しそうな話し方で物語られる記憶。そのような苦々しい記憶を私たちは目の当たりにすることになる。
『アウステルリッツ』からあまり間を置かずにゼーバルトの作品が邦訳されたことは素晴らしいことだ。このような美しい作品を読むことを可能にしてくれた白水社と訳者の鈴木仁子氏にここで感謝したいと思う。
2020年6月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
WGゼーバルトと言う作家を全く知らず、初めて手にした小説でしたが、この深く残る憂いにも似た感情をどう表現していいのかわかりません。堀江氏の仰る通り「厭世観」がこの作家の小説全体を覆っていて、その中に読者はどっぷりと引きずり込まれていく感じ。絶えず、なにかしらの期待と不安が付きまとう、不思議な感覚。これがこの作家独自の世界なのかもしれない。この作品の根底に流れる悲しみや厭世観そのものより、もっと絶望的に迫りくる悲しみは、この作家がもはやこの世にいないということ。ノーベル賞を期待されていたというのに・・・。それこそ、この作家が書きたかったこの世の無常ではないか、と思ってしまう。もう一度、今度はもっとゆっくり読むつもりです。味わい深い小説でした。