ノンフィクション作家の佐野眞一は自らの生きた「戦後」の研究をライフワークとして、多くの著作を発表しているが、この「カリスマ」はその中でも最も戦後的な人物、中内功という人物の評伝となっている。中内功はダイエーの創業者であり、戦後日本の大量消費、大衆社会の立役者であった。「価格破壊」、「流通革命」という刺激的なスローガンの下に中内が推し進めてきた戦後的消費社会の理想と現実を数多くのインタビュー、資料の検証作業から、詳細に描いている佐野眞一の力量はさすがと言わざるを得ない。この「完本カリスマ」は1998年、日経BP社から単行本として出版されたものに加筆修正を加え、中内ダイエーの誕生から破滅までの全行程を描いたものである。
この「完本」が昨年登場したのは、本当の意味での「戦後」の終わりを象徴しているようで感慨深い、そのことを踏まえながら、この本を読むと「戦後」とは何だったのかということが見えてくるかもしれない。ちなみに、上巻は主に中内ダイエーの誕生から勃興、そして中内の生い立ちが描かれている。特に中内を知る上では、第三章、第四章が参考になるだろう。
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完本カリスマ 上: 中内功とダイエーの「戦後」 (ちくま文庫 さ 14-7) 文庫 – 2009/10/7
佐野 眞一
(著)
- 本の長さ542ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2009/10/7
- ISBN-104480426302
- ISBN-13978-4480426307
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2009/10/7)
- 発売日 : 2009/10/7
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 542ページ
- ISBN-10 : 4480426302
- ISBN-13 : 978-4480426307
- Amazon 売れ筋ランキング: - 12,169位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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1947(昭和22)年東京生れ。
出版社勤務を経てノンフィクション作家に。主著に、民俗学者・宮本常一と渋沢敬三の交流を描いた『旅する巨人』(大宅賞)、エリートOLの夜の顔と外国人労働者の生活、裁判制度を追究した『東電OL殺人事件』、大杉栄虐殺の真相に迫り、その通説を大きく覆した『甘粕正彦 乱心の曠野』『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』など多数。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2010年4月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2015年8月1日に日本でレビュー済み
なぜ、ダイエーは短期間で、日本最大のスーパーにのし上がって行ったのだろうか?
この本は、ノンフィクション作家の佐野眞一さんが、ダイエーと、その創業者である中内功さんの軌跡を描いたものであるが、実際にこの本を読んでみると、中内さんの「超」の付くほどの貪欲さと、強烈なカリスマ性と、凄まじいほどの仕事ぶりが、ダイエーを短期間で日本最大のスーパーに成長させる原動力となっていたことがはっきりと伝わってくる。
なお、上巻では終戦から、ダイエーが日本一のスーパーにのし上がって行った1980年代までの軌跡が描写されているが、1950年代から1980年代までの日本は、経済が凄まじい勢いで成長を続けていた。
その勢いに乗ったダイエーは、1980年代に売上高1兆円超という、驚異的な記録を樹立した。
そこに至るまでの軌跡を、著者の佐野さんは取材から得た豊富な証言と、膨大な参考文献を駆使しながら描写しているため、読者にとっては、非常に読み応えがあると言える。
だから、この本は下巻と共に、戦後の小売業界を席巻した、伝説のスーパー&実業家の軌跡を語り継ぐための資料として、永く読み継がれて欲しいと思う。
この本は、ノンフィクション作家の佐野眞一さんが、ダイエーと、その創業者である中内功さんの軌跡を描いたものであるが、実際にこの本を読んでみると、中内さんの「超」の付くほどの貪欲さと、強烈なカリスマ性と、凄まじいほどの仕事ぶりが、ダイエーを短期間で日本最大のスーパーに成長させる原動力となっていたことがはっきりと伝わってくる。
なお、上巻では終戦から、ダイエーが日本一のスーパーにのし上がって行った1980年代までの軌跡が描写されているが、1950年代から1980年代までの日本は、経済が凄まじい勢いで成長を続けていた。
その勢いに乗ったダイエーは、1980年代に売上高1兆円超という、驚異的な記録を樹立した。
そこに至るまでの軌跡を、著者の佐野さんは取材から得た豊富な証言と、膨大な参考文献を駆使しながら描写しているため、読者にとっては、非常に読み応えがあると言える。
だから、この本は下巻と共に、戦後の小売業界を席巻した、伝説のスーパー&実業家の軌跡を語り継ぐための資料として、永く読み継がれて欲しいと思う。
2009年12月9日に日本でレビュー済み
読後感は三点だ。
一点目。佐野は多作である。実際 彼の著作一覧を見ていると呆れるくらいの数をこなしている。多作ゆえ 凡作もかなりある。その中で本作は 佐野の最高傑作の一つと断言出来る。テーマのブレがなく 取材も圧倒的である。これだけの取材が出来た佐野と させた中内功の共著とすら言いたい。
二点目。佐野の著作は文学に近い。これは佐野固有の 若干情緒的でしつこい文体に起因していると僕は考えている。簡単にいうと「癖」がある文章であり それが文学性を醸し出している。
僕自身は 正直 佐野の「癖のある文章」に違和感を覚えることも多い。もう少し淡々と書けばよいのではと思うこともある。但し「癖」は時として美味なのは 納豆、チーズだけではない。この文章が好きでたまらない人もいるだろう。
三点目。本書を佐野の最高傑作の一つと考える理由は そのテーマ設定にある。ダイエーの中内という方の個人史から 日本の戦後史を浮かび上がらせるというテーマは明快である。佐野は元々 一人の傑出した人間をなめるように描く作品が多いが その中でも 中内という方への思い入れの深さをまじまじと感じる。
本作を読んでいる限り 佐野は中内への思い入れと反発という微妙なバランスに立って書いていることが良く分かる。そうして これは 想像だが 中内自身が 佐野の著作に対して 同様の気持ちを持ったのではないか?後に 中内が佐野を告発したという事実も描かれているが最終的には和解で終わったとさらりと書いている。どのような告発で そのような和解であったのかは知る由もないが 本作を読んでいる限り 佐野の中内へのアンビバレントな気持ちが伝わってくる。
一点目。佐野は多作である。実際 彼の著作一覧を見ていると呆れるくらいの数をこなしている。多作ゆえ 凡作もかなりある。その中で本作は 佐野の最高傑作の一つと断言出来る。テーマのブレがなく 取材も圧倒的である。これだけの取材が出来た佐野と させた中内功の共著とすら言いたい。
二点目。佐野の著作は文学に近い。これは佐野固有の 若干情緒的でしつこい文体に起因していると僕は考えている。簡単にいうと「癖」がある文章であり それが文学性を醸し出している。
僕自身は 正直 佐野の「癖のある文章」に違和感を覚えることも多い。もう少し淡々と書けばよいのではと思うこともある。但し「癖」は時として美味なのは 納豆、チーズだけではない。この文章が好きでたまらない人もいるだろう。
三点目。本書を佐野の最高傑作の一つと考える理由は そのテーマ設定にある。ダイエーの中内という方の個人史から 日本の戦後史を浮かび上がらせるというテーマは明快である。佐野は元々 一人の傑出した人間をなめるように描く作品が多いが その中でも 中内という方への思い入れの深さをまじまじと感じる。
本作を読んでいる限り 佐野は中内への思い入れと反発という微妙なバランスに立って書いていることが良く分かる。そうして これは 想像だが 中内自身が 佐野の著作に対して 同様の気持ちを持ったのではないか?後に 中内が佐野を告発したという事実も描かれているが最終的には和解で終わったとさらりと書いている。どのような告発で そのような和解であったのかは知る由もないが 本作を読んでいる限り 佐野の中内へのアンビバレントな気持ちが伝わってくる。
2009年11月15日に日本でレビュー済み
関東育ちの私に、ダイエーは何か得体の知れないものであり続けた。
1997年に転勤で関西暮らしを始め、そこここ身近にダイエーがあった。イトーヨーカドーに馴染んで育った私にとって、その頃のダイエーの店は暗く、品揃え・陳列にも精彩が欠けていた。
高度成長期、バブル期と勢いのある話題にあふれていたダイエーが、もがきながらも立ち枯れへの歩みを止めきれずにいる。
ダイエー1号店開店の年に私は生まれている。中内功という稀有な強烈な個性でたどる企業と社会の戦後史と私自身の時間とが重なる。
企業ドラマ・人間ドラマとして緊張感にあふれた本格ノンフィクションの快作である。
1997年に転勤で関西暮らしを始め、そこここ身近にダイエーがあった。イトーヨーカドーに馴染んで育った私にとって、その頃のダイエーの店は暗く、品揃え・陳列にも精彩が欠けていた。
高度成長期、バブル期と勢いのある話題にあふれていたダイエーが、もがきながらも立ち枯れへの歩みを止めきれずにいる。
ダイエー1号店開店の年に私は生まれている。中内功という稀有な強烈な個性でたどる企業と社会の戦後史と私自身の時間とが重なる。
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