なぜか急にこの本を読みたくなった。目次から一気に飛ばして、村上春樹「ノルウェイの森」がどう評価されているかが興味があったので最初に読んでみたが、自分の認識と、斎藤氏の認識はあまり変わりはない。その次にでてくる、吉本ばなな「キッチン」の評価も、自分の認識と、斎藤氏の認識にあまり変わりがない。
あれ、その程度の評論集なのかな（期待外れ？）・・・と思って、おとなしく、最初から読んでみると、一番最初に紹介されている小説は、住井すゑ「橋のない川」という知らない小説で、なんと被差別部落の住民に関する小説だった。こういう小説があるとは知らなかったので、自分にはかなり衝撃的だった。しかも、評価は名作度★★★ 使える度★★★。
実は自分は以前、国の職員だったのだが、若い時に属していた部署が、被差別部落問題を起こしたことがある。それは統計調査に関してなのだが、別の調査で調査員が怪我をしたとかで、そのため、この調査では（どこからの指示、許可があったのかはわかりませんが）調査員はサンダルばきはやめましょうという文言が印刷され、サンダルのイラストの上には大きなバツ印が印刷されました。
これが問題になったのです。自分は全然知らなかったのだが、この国にはいまだに被差別部落というものがあり、その人たちは生まれた地域が被差別部落だというだけで様々なことで差別され、限定された職業にしか就くことができない。サンダルを作るのもその限定された職業のひとつなのに、その仕事をも奪おうというのか。
そもそも被差別部落は、江戸幕府の「士農工商〇〇〇人」政策から始まっており、それを引き継いだのが明治時代以降の国の役所なのだから、現代でも部落差別問題は国の役所の責任であるのに、なんたることか。
そういう問題が起きたのです。自分は下っ端の人間で、この国にまだこういう問題が存在することを知らずにいた無知な人間ですが、部落差別問題の話を見聞きすると、この出来事を思い出します。
この本について、斎藤美奈子氏はこう書いています。
「特に中高生はみんな読んだほうがいいと私は思う。二〇一六年、障害者差別解消法やヘイトスピーチ対策法とともに、部落差別解消推進法が施行されたのはなぜか。今日も差別が解消されていないからである。差別への感受性が鈍っている時代にこそ効くストレートパンチ。『橋のない川』はそういう小説だ。」
斎藤美奈子氏は正しい、間違っていない。自分の選択眼も間違っていなかった。しかし、あれから何十年も経過するのに、いまだに差別が続いているのが悲しいです。
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