目の前が真っ白になる、神経学的にはありえない奇病が蔓延する世界を描いた「白の闇」。あれから4年後、総選挙における首都の結果は大量の「白票」だった。危機感を覚えた政治権力者たちは非常事態を宣言して首都を封鎖し、市民に対して牙をむく・・・。
「白の闇」とは理性の盲目性のことであり、「自分たちには何も見えていない」ことに気づいた首都の市民（もしかすると「白の闇」の読者）たちは、自分の目でものを見て、理性的に判断し、行動しようとする。その結果は政治権力にとって往々にして都合の悪いものとなるのだから、弾圧に対して不断の注意を払うべきであると、著者は警鐘を鳴らしているようだ。
本書も著者の他の作品と同様に、会話と地の文の区別のない、独特の叙述法で記載されている。この文体が読みにくいという読者に対して著者は、「ねぇ、声に出して１，２ページ読んでごらん。そうすれば、そのリズムを、音楽を、君が自分の頭の中で聞かなくてはならない方法がわかるだろうから。」とアドバイスをしていた。
なお、この本のエピグラフは「遠吠えをしろ、と犬が言った」である。
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