2018/9月に読んだ吉田修一の「国宝」は、昭和の時代、女形に憧れる極道の息子と関西歌舞伎・名家の息子の成長の物語であり、歌舞伎界を舞台にした惚れ惚れするような大衆小説でした。
今回、縁あって「江戸の夢びらき」(松井今朝子 文藝春秋)を読みました。
延宝から元禄年間、元禄歌舞伎を代表する初代市川團十郎の一代記+α(笑)が、江戸時代に起きた多くの事件、災厄、出来事を合わせ鏡のようにバックグラウンドに設え、松井今朝子の淀みない筆致と類いまれな話術によって語られていきます。傑作だと思います。
海老蔵と呼ばれる少年と出会い、長じて初代市川團十郎と名乗る歌舞伎役者の妻になる浪人の娘・恵以の視点から、「荒事」、「実事」、近松、生類憐みの令、「常にあること……」、坂田藤十郎と市川團十郎、守る無頼漢たち、かぶき芝居、播州赤穂浅野家、人心を惑わす僭上者、<一子相伝>などが、多くの歌舞伎の名演目と共に語られ(その解説は私には手が余ります(笑))、もはや間然するところがありません。名シーンもまた枚挙に暇がありません。特に、市川團十郎が四条河原町、坂田藤十郎を訪ね、「いかがご覧なされました?」に始まるワン・シーンは、緊張感に溢れ、スリリングであり、深いため息と共に「読んだ甲斐があった」ようにも感じられます。
また、1660年代からの約50年間の江戸を生き抜く民衆のエモーション、不動明王の如く振舞おうとした初代市川團十郎の生き様に一読者としてひたすら熱中したと言っていいかと思います。
恵以は、「わたしは死んだら後生が良いようにと願うばかりで、もう今生のことなぞどうでもよろしうござんすに」と言ってのけますが、それは、「今生」を生き切った市川團十郎に寄り添った妻、「ひとり梨園」を切り盛りした時代の女性のインデペンデントで、静かな心意気でもあり、懐深いパラドックスだったのかもしれません。
遠くに聳える富士、季節遅れの「俳諧」と共に無常の時を思うラストもいつまでも忘れがたい。
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江戸の夢びらき 単行本 – 2020/4/24
松井 今朝子
(著)
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【不世出の天才・初代市川團十郎、空前の一代記】
なぜ江戸の民衆は團十郎に熱狂したのか。
團十郎が命をかけた〈荒事〉とは何か。
そして、なぜ舞台上で命を落としたのか。
元禄時代から現在まで常に歌舞伎界に君臨し続けた
大名跡・市川團十郎、そのはじまりの物語。
●あらすじ
寛文7年(1667)、浪人の娘・恵以はひとりの少年と出会う。
子どもながらに柄の悪い侠客たちに囲まれ、
芝居に出れば大暴れして舞台を滅茶苦茶にする破天荒さに呆れながらも、
恵以は自然と人の注目を集める彼の素質に気づく。
少年の名は海老蔵。
長じて市川團十郎を名乗り、〈荒事〉の追求の果てに
江戸の民衆から信仰にも近い人気を集め、
劇作家としても今なお愛される名演目や斬新な演出を
次々と生み出した不世出の天才。
彼が命をかけた〈荒事〉とは何だったのか、
そして、なぜ舞台上で命を落とすこととなったのか。
謎多き初代市川團十郎の波乱万丈の生涯を、
元禄の狂乱と江戸歌舞伎の胎動とともに描く
空前の一代記がここに誕生!
なぜ江戸の民衆は團十郎に熱狂したのか。
團十郎が命をかけた〈荒事〉とは何か。
そして、なぜ舞台上で命を落としたのか。
元禄時代から現在まで常に歌舞伎界に君臨し続けた
大名跡・市川團十郎、そのはじまりの物語。
●あらすじ
寛文7年(1667)、浪人の娘・恵以はひとりの少年と出会う。
子どもながらに柄の悪い侠客たちに囲まれ、
芝居に出れば大暴れして舞台を滅茶苦茶にする破天荒さに呆れながらも、
恵以は自然と人の注目を集める彼の素質に気づく。
少年の名は海老蔵。
長じて市川團十郎を名乗り、〈荒事〉の追求の果てに
江戸の民衆から信仰にも近い人気を集め、
劇作家としても今なお愛される名演目や斬新な演出を
次々と生み出した不世出の天才。
彼が命をかけた〈荒事〉とは何だったのか、
そして、なぜ舞台上で命を落とすこととなったのか。
謎多き初代市川團十郎の波乱万丈の生涯を、
元禄の狂乱と江戸歌舞伎の胎動とともに描く
空前の一代記がここに誕生!
- 本の長さ360ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2020/4/24
- 寸法13.8 x 2.4 x 19.5 cm
- ISBN-104163911960
- ISBN-13978-4163911960
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2020/4/24)
- 発売日 : 2020/4/24
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 360ページ
- ISBN-10 : 4163911960
- ISBN-13 : 978-4163911960
- 寸法 : 13.8 x 2.4 x 19.5 cm
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- - 61,642位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1953年、京都祇園生まれ。歌舞伎の企画・制作に携わった後、故武智鉄二に師事して、歌舞伎の脚色・演出を手がける。97年『東洲しゃらくさし』で小説家としてデビュー。『吉原手引草』で第137回直木賞受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 今朝子の晩ごはん―仕事も遊びもテンコ盛り篇 (ISBN-13: 978-4591117569)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2022年1月12日に日本でレビュー済み
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この本は、江戸時代元禄の頃歌舞伎役者として「荒事」(あらごと)を導入した初代市川左團次の物語である。この事実を基に小説に仕立てた著者の眼力には恐れ入る。著者(松井今朝子)のことは今まで知らなかったが、たいした実力の持ち主である。これはまた、左団次とその女房恵以の物語でもある。小説は、二人の出会いから左團次が「荒事」の役者として大活躍をする、さらのその子である二代目左團次が活躍するまでを描く。まことに読み応えがある。あまりに多くの人物が出てきて、いささか冗長なのが、玉に瑕か。
2020年5月4日に日本でレビュー済み
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巻末に、「この物語は史実に基づくフィクションです。」、という簡単な断り書きがある。史実に縛られている部分が多いためか、本作品には物語として読む者の気持ちがぐいぐい引き込まれていくという感覚は薄い気がした。 史実に基づいているのに逆にリアリティが薄く、舞台の芝居・演技を観覧しているような感じと言うべきか。
ただ、歌舞伎の世界の時代変化の描写は詳しく、歌舞伎の独特の環境の発展と障害と復旧の歴史は興味深く読むことができた。
ただ、歌舞伎の世界の時代変化の描写は詳しく、歌舞伎の独特の環境の発展と障害と復旧の歴史は興味深く読むことができた。
2020年7月17日に日本でレビュー済み
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ホームページ記載の価格@2090円ですが、請求価格が@3135円+送付代250円となっています。なぜでしょうか?過去にない経験で、不愉快です。
2020年7月3日に日本でレビュー済み
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歌舞伎を題材に描いて右に出るものなし。謎も多い初代團十郎を、今の世に生き生きとよみがえらせてくらました。
2020年9月4日に日本でレビュー済み
著者は朝井まかて氏、奥山景布子氏と並ぶ、ここ数年お気に入りの女性作家で、どの作品を読んでも楽しめる。
本書は江戸歌舞伎の創成期を支えた「初代市川團十郎」を妻の視点から描いた作品である。芸に命を削る男の荒々しいまでのエネルギーに満ちた生き様がよく伝わってくるし、歌舞伎という伝統芸能が成長期にあった時代を垣間見ることができる、面白く読み応えのある作品であった。
本書は江戸歌舞伎の創成期を支えた「初代市川團十郎」を妻の視点から描いた作品である。芸に命を削る男の荒々しいまでのエネルギーに満ちた生き様がよく伝わってくるし、歌舞伎という伝統芸能が成長期にあった時代を垣間見ることができる、面白く読み応えのある作品であった。
2020年6月15日に日本でレビュー済み
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初代團十郎の生き様を、その妻の視点から描いた作品。松井今朝子さんの作品は好きですが、その中では平凡に感じました。團十郎襲名に合わせて書いたものだからでしょうか?もう少しパッションを感じたかったです