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エジプト革命 - 軍とムスリム同胞団、そして若者たち (中公新書 2236) 新書 – 2013/10/22
鈴木 恵美
(著)
革命によって独裁政権を倒したエジプト。民主化プロセス第一移行期の二年半に、軍、宗教勢力、革命勢力が巻き起こした権力闘争を追う
- 本の長さ270ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2013/10/22
- ISBN-10412102236X
- ISBN-13978-4121022363
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2013/10/22)
- 発売日 : 2013/10/22
- 言語 : 日本語
- 新書 : 270ページ
- ISBN-10 : 412102236X
- ISBN-13 : 978-4121022363
- Amazon 売れ筋ランキング: - 792,328位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年6月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
エジプト革命後まったく正反対の道を歩んだ学生代表の2人にスポットを当てたNHKの報道番組をみて興味を持ったのがきっかけで読ませて貰いましたが、じつに的確に革命を描き出されており驚きました。お若いのに素晴らしい!早速立山良司さんの「イスラエルとパレスチナ」も読ませて貰いました。
2020年7月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
出版社はなぜKindleにカラー写真を使わない?内容は非常に良いが、出版社の怠慢や惰性を感じる。白黒だと分かりにくいわ。印刷ならコスト面と理解できるが。
2016年6月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
エジプトでのアラブの春以降の現状を、左派や、ムスリム同胞団、軍部などの何れの勢力にも肩入れせず、事態を詳細に分析していた。中東の情報は、ソースが限られていることもあり、偏った見方が流通していることに改めて気づかせてくれる研究である。
2014年1月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書は、2013年7月クーデター以降に出版された最初のエジプト情勢を綴る本であると思う。貴重な書である。
2013年7月3日、私はシィーシィー将軍によるムルシー大統領の追放を、カイロの自宅のテレビで観ていた。このシィーシィーの声明が出されるや否や、窓外の街のあちこちで打ち上げ花火が上がりはじめた。人々の歓喜である。しかし、その心情に納得できなかった。確かにムルシー政権下で経済低迷など問題はあった。しかし、クーデターを喜んで受け入れてよいのだろうか。ムバラク政権を倒した人々は、民主化の達成を待ち望んでいたのではなかったのか。この人々の反応をどう理解すればよいのか、この疑問を少しでも晴らしたいと思っていた。
この本は、私の疑問を晴らしてくれた。よく分かったのは、この3年ほどの間で激動したエジプトであるが、その激動の中にあってもナセルの時代よりずっと変わっていないものがあったことである。それは、軍部が国家の根幹にゆるぎなく居座っているという事実である。1952年ナセルの7月革命、2011年2月のムバラク辞任、そして2013年7月のムルシーの追放、これらが多かれ少なかれ、軍のクーデターにより時の権力者が追放されるという構図は、全く同じだということである。本書の第1章「II革命の二つの顔」という節で、2011年2月のムバラクの追放時も、それは純粋な大衆革命ではなく、軍のクーデター的側面があったという著者の指摘により、2013年7月の出来事とそれまでの流れとがつながった。これで半分納得できた。
しかし、そのように軍はなぜ大衆に受け入れられるのか?ここは残りの半分の疑問として残る。著者は、第7章で、「国民全体が脅威とするイスラエルの存在や、スエズ運河という戦略上の拠点を有するエジプトでは、軍が特権を持つことが受け入れられる土壌があるのかもしれない」と述べる。エジプト人である私の妻が、まさに同じ事を口にした。「軍がいなきゃイスラエルとかに国を奪われてしまう」と言うのである。考えてみれば、中東戦争によりシナイ半島は長い間イスラエルに占領されていた。シナイ半島がキャンプデービッド合意によりエジプトに返還されたのは1978年。妻はまだ子供だったが、そのころのエジプトの空気を吸って育ってきている。
著者は、「おわりに」で、「筆者の一方的な思いであると承知しつつもこの体制移行期をエジプトの人々と共に歩んだ思いがある」、と述べているが、一方的な思いではなく、確かに著者はエジプトの人々と共に歩まれている。
2013年7月3日、私はシィーシィー将軍によるムルシー大統領の追放を、カイロの自宅のテレビで観ていた。このシィーシィーの声明が出されるや否や、窓外の街のあちこちで打ち上げ花火が上がりはじめた。人々の歓喜である。しかし、その心情に納得できなかった。確かにムルシー政権下で経済低迷など問題はあった。しかし、クーデターを喜んで受け入れてよいのだろうか。ムバラク政権を倒した人々は、民主化の達成を待ち望んでいたのではなかったのか。この人々の反応をどう理解すればよいのか、この疑問を少しでも晴らしたいと思っていた。
この本は、私の疑問を晴らしてくれた。よく分かったのは、この3年ほどの間で激動したエジプトであるが、その激動の中にあってもナセルの時代よりずっと変わっていないものがあったことである。それは、軍部が国家の根幹にゆるぎなく居座っているという事実である。1952年ナセルの7月革命、2011年2月のムバラク辞任、そして2013年7月のムルシーの追放、これらが多かれ少なかれ、軍のクーデターにより時の権力者が追放されるという構図は、全く同じだということである。本書の第1章「II革命の二つの顔」という節で、2011年2月のムバラクの追放時も、それは純粋な大衆革命ではなく、軍のクーデター的側面があったという著者の指摘により、2013年7月の出来事とそれまでの流れとがつながった。これで半分納得できた。
しかし、そのように軍はなぜ大衆に受け入れられるのか?ここは残りの半分の疑問として残る。著者は、第7章で、「国民全体が脅威とするイスラエルの存在や、スエズ運河という戦略上の拠点を有するエジプトでは、軍が特権を持つことが受け入れられる土壌があるのかもしれない」と述べる。エジプト人である私の妻が、まさに同じ事を口にした。「軍がいなきゃイスラエルとかに国を奪われてしまう」と言うのである。考えてみれば、中東戦争によりシナイ半島は長い間イスラエルに占領されていた。シナイ半島がキャンプデービッド合意によりエジプトに返還されたのは1978年。妻はまだ子供だったが、そのころのエジプトの空気を吸って育ってきている。
著者は、「おわりに」で、「筆者の一方的な思いであると承知しつつもこの体制移行期をエジプトの人々と共に歩んだ思いがある」、と述べているが、一方的な思いではなく、確かに著者はエジプトの人々と共に歩まれている。
2017年12月23日に日本でレビュー済み
アラブの春以降のエジプトの混乱は”知ってた”感があるが
その構造をうまく描き出している一冊である
エジプトって大統領と軍とムスリム同胞団と若者の4つ巴だったんだな
軍と大統領は一枚岩に見えて、大統領が軍を牽制する状況だった
空軍出身の大統領は軍の中枢に軍の中核である陸軍出身者ではなく
自分と同じ空軍の出身者と任命したりしていた
また軍は国営企業に関わり経済の中核にもなっていた
大統領は自分の子供への禅譲を企てて軍との関係は微妙なものになる
そして軍はデモ隊に味方をすることで大統領を放逐した
構造は大統領の残党とムスリム同胞団と若者の三つどもえに
選挙では若者は仕方なくムスリム同胞団に味方をするが
ムスリム同胞団の急進的な改革に反発をして混乱が深まる
そこでまた軍が調停者としてムスリム同胞団の放逐を行う
一度ならず二度までもこのようなことが起きてしまった
混乱を厭う国民に対して巧みに調停者や救世主として振る舞った
結局、軍は大統領に成りかわりもとの体制に戻ったんだが
国家再建の道のりは長そうだと思う。革命とは何だったのか
戦争してみたら瓦解したっていう軍事政権いくつかあるよな
アルゼンチンとかギリシアとかが思い浮かぶわけだが
実戦経験があって強い軍隊でもあるエジプト軍なので
それもなさそうではある
その構造をうまく描き出している一冊である
エジプトって大統領と軍とムスリム同胞団と若者の4つ巴だったんだな
軍と大統領は一枚岩に見えて、大統領が軍を牽制する状況だった
空軍出身の大統領は軍の中枢に軍の中核である陸軍出身者ではなく
自分と同じ空軍の出身者と任命したりしていた
また軍は国営企業に関わり経済の中核にもなっていた
大統領は自分の子供への禅譲を企てて軍との関係は微妙なものになる
そして軍はデモ隊に味方をすることで大統領を放逐した
構造は大統領の残党とムスリム同胞団と若者の三つどもえに
選挙では若者は仕方なくムスリム同胞団に味方をするが
ムスリム同胞団の急進的な改革に反発をして混乱が深まる
そこでまた軍が調停者としてムスリム同胞団の放逐を行う
一度ならず二度までもこのようなことが起きてしまった
混乱を厭う国民に対して巧みに調停者や救世主として振る舞った
結局、軍は大統領に成りかわりもとの体制に戻ったんだが
国家再建の道のりは長そうだと思う。革命とは何だったのか
戦争してみたら瓦解したっていう軍事政権いくつかあるよな
アルゼンチンとかギリシアとかが思い浮かぶわけだが
実戦経験があって強い軍隊でもあるエジプト軍なので
それもなさそうではある
2013年12月7日に日本でレビュー済み
この3年でエジプトで民主化革命が2度起きた。最初はムバラクを追放し、2度目はムスリム同胞団を追放した。どちらもタハリール広場に集まったデモ隊が主導しているが、最終的には軍部の了解なしには転覆はありえなかった。青年運動、宗教勢力、そして黒幕にいる軍という三者を軸に、エジプトのこの2年の複雑な政局の解説を本書は試みている。
エジプトは過去30年、ムバラクが強固な独裁体制を敷いていた。第四次中東戦争で功績を上げて大統領への道を手繰り寄せたことから、「ムバラクが軍部を完全に掌握している」と理解していた人もいるのではないか。私もそう思い、軍部がムバラクの意に反することはないと見ていた。しかし、エジプト革命では軍部がムバラクの意に反してデモを容認し、遂には辞任を促す。空軍出身のムバラクと陸軍には、実は微妙な溝があった。ムバラクは自分の政権で諜報機関と警察を重用したことが背景にあるようだ。また、軍出身でない自身の次男に政権を禅譲しようとしたことが、王制打倒以降の大統領を輩出し、自分たちを「国家の根幹」と自負する軍の離反を招いたと著者は見ている。
エジプトにおいて、軍部は絶大な権威と権力を持つ。アラブの組織では珍しいことに縁故を排した実力主義であり、政治的にも中立を貫く。その一方で、政府系企業、県知事、省庁の次官ポストの多くは軍OBの指定席だという。文民統制や軍批判はエジプトではタブーだ。ムバラク後、選挙で政権を取った同胞団系のムルシー大統領は、長年軍トップを務めた国防相を解任し、文民統制を画策するなど軍の権力を切り崩そうとしていた。同胞団のイスラム統制色の強い新憲法に不満を爆発させて、青年たちはデモを起こした訳だが、「青年の声でやむなく」という形でムバラクや同胞団政権を排除した軍もまた、排除を望んでいた。
著者は、問題があるとはいえ、選挙で成立した合法的な政権を軍が排除し、市民もそれを望むのは、民主主義として間違っているのではないか、と懸念している。多数決に我慢できず、クーデターで熱狂のうちに、軍の意を借り政権を転覆させることが常態化し、軍に政権を託してしまうのは危うい。「ムバラク対青年」「同胞団対青年」のように見えたエジプトの政変は、実は軍が動かしている、という見立てはユニークだった。
年表があるのはいいが、聞いたことのない登場人物・団体がやたら出てくる。相関図がほしい。アラビア語の発音が難しいのは重々承知だが、日本のメディアでは、シシまたはシーシーとされる国防相が本書では「スィースィー」になっていて、まあこれも仕方ないが。ともかく、危険にもかかわらず、デモ最中のタハリール広場に赴くなど現地報告も多い。情勢を丹念に調べていることが分かる。メディアやネットコラムレベルでは、到底ここまで深い内容は追い切れないと思う。そして、エジプト情勢を読む時、軍の動向という重要な視座を与えてくれる。理解は難しいが、関心があればチャレンジする価値のある本だ。
エジプトは過去30年、ムバラクが強固な独裁体制を敷いていた。第四次中東戦争で功績を上げて大統領への道を手繰り寄せたことから、「ムバラクが軍部を完全に掌握している」と理解していた人もいるのではないか。私もそう思い、軍部がムバラクの意に反することはないと見ていた。しかし、エジプト革命では軍部がムバラクの意に反してデモを容認し、遂には辞任を促す。空軍出身のムバラクと陸軍には、実は微妙な溝があった。ムバラクは自分の政権で諜報機関と警察を重用したことが背景にあるようだ。また、軍出身でない自身の次男に政権を禅譲しようとしたことが、王制打倒以降の大統領を輩出し、自分たちを「国家の根幹」と自負する軍の離反を招いたと著者は見ている。
エジプトにおいて、軍部は絶大な権威と権力を持つ。アラブの組織では珍しいことに縁故を排した実力主義であり、政治的にも中立を貫く。その一方で、政府系企業、県知事、省庁の次官ポストの多くは軍OBの指定席だという。文民統制や軍批判はエジプトではタブーだ。ムバラク後、選挙で政権を取った同胞団系のムルシー大統領は、長年軍トップを務めた国防相を解任し、文民統制を画策するなど軍の権力を切り崩そうとしていた。同胞団のイスラム統制色の強い新憲法に不満を爆発させて、青年たちはデモを起こした訳だが、「青年の声でやむなく」という形でムバラクや同胞団政権を排除した軍もまた、排除を望んでいた。
著者は、問題があるとはいえ、選挙で成立した合法的な政権を軍が排除し、市民もそれを望むのは、民主主義として間違っているのではないか、と懸念している。多数決に我慢できず、クーデターで熱狂のうちに、軍の意を借り政権を転覆させることが常態化し、軍に政権を託してしまうのは危うい。「ムバラク対青年」「同胞団対青年」のように見えたエジプトの政変は、実は軍が動かしている、という見立てはユニークだった。
年表があるのはいいが、聞いたことのない登場人物・団体がやたら出てくる。相関図がほしい。アラビア語の発音が難しいのは重々承知だが、日本のメディアでは、シシまたはシーシーとされる国防相が本書では「スィースィー」になっていて、まあこれも仕方ないが。ともかく、危険にもかかわらず、デモ最中のタハリール広場に赴くなど現地報告も多い。情勢を丹念に調べていることが分かる。メディアやネットコラムレベルでは、到底ここまで深い内容は追い切れないと思う。そして、エジプト情勢を読む時、軍の動向という重要な視座を与えてくれる。理解は難しいが、関心があればチャレンジする価値のある本だ。
2013年12月23日に日本でレビュー済み
本書は、2011年のムバラク大統領(当時)追放劇から本年の実質的なクーデターでムスリム同胞団(イスラム政治組織)政権が崩壊するまでのエジプトの動向を紹介、ナセル革命以降のエジプト現代史やアラブの春とも持て囃された中近東他国動静も織り交ぜて、新書として極めてコスパの高い出来となっている。
日本ではムバラク追放直後に3.11があり、エジプトでの真の混乱を「それどころじゃない」と殆どフォローしていなかった。それもあって、今年の軍部介入について「民主政権や市民デモを軍部が潰した」という表層的な報道が太宗を占めていた。当たり前だが、そういうレベルの理解では、イランやイスラエルも視野に入れたエネルギーリスクという正に日本を直撃する問題は理解できないだろう。本書は、そうしたことを考える上でのテキストとしても有用。
一方で、中近東の歴史や政治・社会に興味・知識がない方にはピンと来ないし、チッとも役に立たないだろう。これは本書の価値や著者の能力を揶揄するものではない。
そもそも、日本人はイスラムへの知識を欠いているし、エジプト革命と称されるこの数年を三つ巴の抗争を展開した軍・イスラム政治組織・青年リベラル層という存在自体が日本にないため、基本的に分かりづらい話だからだ。
そうしたことの上に、日本メディア(おっさん感覚)の特性として軍部=悪、リベラル&デモ=正義、宗教勢力=怖いというデフォ設定があるため、上記のような短絡報道が横行して、私達のエジプト革命がチンプンカンプンになっていると思う。
著者は、多数決の原理である総選挙で政権を握ったムスリム同胞団による過度なイスラム化を阻止するため、青年リベラル層が軍部によるクーデターを結局は望んだことを、今後の大きなツケとして彼ら自身に跳ね返ると纏めている。しかし、著者はそれを単純に否定していない。様々な矛盾と葛藤しながらも”自分達の民主主義”を模索して行くしかないと結んでいる。エジプト現代政治の若き第一人者をしてこうした苦渋そのものの結論を書くまでの道程をキチンと読み込むことは、中近東関係者でなくとも、現代国際政治に興味がある方なら欠かせない部分と思う。
今回の政治抗争のカヤの外でむしろ悪化した経済のとばっちりを最も受けた農村・貧困層の支持はムスリム同胞団が受け皿としていた。同胞団は狂信的でも原理主義者でもないし、政教分離なんて御託を持ち出すのもお門違い、宗教と政治が近しいことがむしろ基本の中近東ではまずそこを勘違いするとどうにもならない。
また、軍は他にもそうした国がいくつもあるが(タイ、ミャンマー、トルコなど)官僚組織が未成熟で、日本より財閥や権力一門が明らかにあるところでは、優れた平民の一番のチャンスは軍幹部であった(戦前の日本もそう)守護神として国民から頼みの綱とされる軍の存在を理解していかないと、本書の結論を大きく見誤るだろう。エジプト民衆の声なき声は、宗教と軍の二者択一ではなく、疲弊し悪化した経済・治安の責任を時々の為政者にぶつけて、結局は混迷を深めさせているだけとも思う。
そして、青年リベラル層について、エジプトでは(日本でもという気もするが)実務能力を欠いてデモに群れるだけの彼ら、相対富裕層で貧困層をキチンとみられない彼らの無力さが本書では浮き彫りにされている。
実は、アラブの春を通じて民主的な政権に移行できた例は皆無に等しく、無難な線が長期政権が統制を少し緩めただけ、民衆が騒いだ果てにあるのがエジプトでありシリアであって、すなわち多くの民衆の死傷と困窮である。特にシリアやリビアなど内戦に至ったトリガーが、軍部の分裂であったことは、中近東における軍部の役割を考えるヒントとなると思う。
私個人の勝手な読み方を敷衍すれば、2011年から2013年の2年間で、エジプトと日本で起きた政治と国民の関わり方には、直接には何の関連もないが、実は新たな捉え方のきっかけがあると思う。民衆デモの行き着いた先が、民主政権崩壊と民衆によるテロだったというエジプトから我々は何を学べるだろうか?そんな妄想のマージン込みで☆1つプラスの満点星としたい。
日本ではムバラク追放直後に3.11があり、エジプトでの真の混乱を「それどころじゃない」と殆どフォローしていなかった。それもあって、今年の軍部介入について「民主政権や市民デモを軍部が潰した」という表層的な報道が太宗を占めていた。当たり前だが、そういうレベルの理解では、イランやイスラエルも視野に入れたエネルギーリスクという正に日本を直撃する問題は理解できないだろう。本書は、そうしたことを考える上でのテキストとしても有用。
一方で、中近東の歴史や政治・社会に興味・知識がない方にはピンと来ないし、チッとも役に立たないだろう。これは本書の価値や著者の能力を揶揄するものではない。
そもそも、日本人はイスラムへの知識を欠いているし、エジプト革命と称されるこの数年を三つ巴の抗争を展開した軍・イスラム政治組織・青年リベラル層という存在自体が日本にないため、基本的に分かりづらい話だからだ。
そうしたことの上に、日本メディア(おっさん感覚)の特性として軍部=悪、リベラル&デモ=正義、宗教勢力=怖いというデフォ設定があるため、上記のような短絡報道が横行して、私達のエジプト革命がチンプンカンプンになっていると思う。
著者は、多数決の原理である総選挙で政権を握ったムスリム同胞団による過度なイスラム化を阻止するため、青年リベラル層が軍部によるクーデターを結局は望んだことを、今後の大きなツケとして彼ら自身に跳ね返ると纏めている。しかし、著者はそれを単純に否定していない。様々な矛盾と葛藤しながらも”自分達の民主主義”を模索して行くしかないと結んでいる。エジプト現代政治の若き第一人者をしてこうした苦渋そのものの結論を書くまでの道程をキチンと読み込むことは、中近東関係者でなくとも、現代国際政治に興味がある方なら欠かせない部分と思う。
今回の政治抗争のカヤの外でむしろ悪化した経済のとばっちりを最も受けた農村・貧困層の支持はムスリム同胞団が受け皿としていた。同胞団は狂信的でも原理主義者でもないし、政教分離なんて御託を持ち出すのもお門違い、宗教と政治が近しいことがむしろ基本の中近東ではまずそこを勘違いするとどうにもならない。
また、軍は他にもそうした国がいくつもあるが(タイ、ミャンマー、トルコなど)官僚組織が未成熟で、日本より財閥や権力一門が明らかにあるところでは、優れた平民の一番のチャンスは軍幹部であった(戦前の日本もそう)守護神として国民から頼みの綱とされる軍の存在を理解していかないと、本書の結論を大きく見誤るだろう。エジプト民衆の声なき声は、宗教と軍の二者択一ではなく、疲弊し悪化した経済・治安の責任を時々の為政者にぶつけて、結局は混迷を深めさせているだけとも思う。
そして、青年リベラル層について、エジプトでは(日本でもという気もするが)実務能力を欠いてデモに群れるだけの彼ら、相対富裕層で貧困層をキチンとみられない彼らの無力さが本書では浮き彫りにされている。
実は、アラブの春を通じて民主的な政権に移行できた例は皆無に等しく、無難な線が長期政権が統制を少し緩めただけ、民衆が騒いだ果てにあるのがエジプトでありシリアであって、すなわち多くの民衆の死傷と困窮である。特にシリアやリビアなど内戦に至ったトリガーが、軍部の分裂であったことは、中近東における軍部の役割を考えるヒントとなると思う。
私個人の勝手な読み方を敷衍すれば、2011年から2013年の2年間で、エジプトと日本で起きた政治と国民の関わり方には、直接には何の関連もないが、実は新たな捉え方のきっかけがあると思う。民衆デモの行き着いた先が、民主政権崩壊と民衆によるテロだったというエジプトから我々は何を学べるだろうか?そんな妄想のマージン込みで☆1つプラスの満点星としたい。