原節子さんのことを知りたかったので、この本を購入しました
著者の石井妙子さんは大量の資料を読み解き、取材し映画とその時代の背景も
併せて書かれていることが興味深いです
文章が丁寧で読みやく充実していて、次々とページをめくってしまいます
原さんが女優を途中で引退したことや半世紀も隠棲したこと
自体が生き方として、感銘を受けました
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原節子の真実 (新潮文庫) 文庫 – 2019/1/27
石井 妙子
(著)
第15回新潮ドキュメント賞受賞作
日本映画史上、最大の謎
彼女はいかにして「国民的女優」となり
そしてなぜ突然、消えたのか――。
永遠の聖女の生涯に迫る決定版評伝!
14歳で女優になった。
戦前、戦後の激動の時代に112本の作品に出演、日本映画界に君臨する。
しかし42歳で静かに銀幕を去り、半世紀にわたり沈黙を貫いた。
数々の神話に彩られた原節子とは何者だ ったのか。
たったひとつの恋、空白の一年、小津との関係、そして引退の真相──。
丹念な取材により、伝説を生きたひとりの勁い女性の姿を鮮やかに描き出す決定版評伝!
未公開のものも含め、貴重な写真を多数収録。
目次
まえがき 原節子と会田昌江
第一章 寡黙な少女
第二章 義兄・熊谷久虎
第三章 運命との出会い
第四章 生意気な大根女優
第五章 秘められた恋
第六章 空白の一年
第七章 屈辱
第八章 孤独なライオン
第九章 求めるもの、求められるもの
第十章 「もっといやな運命よ、きなさい」
第十一章 生きた証を
第十二章 それぞれの終焉
第十三章 つくられる神話
あとがき 会田昌江と原節子
文庫版あとがき
主要参考文献
手帖抄 原節子
解説 ヤマザキマリ
日本映画史上、最大の謎
彼女はいかにして「国民的女優」となり
そしてなぜ突然、消えたのか――。
永遠の聖女の生涯に迫る決定版評伝!
14歳で女優になった。
戦前、戦後の激動の時代に112本の作品に出演、日本映画界に君臨する。
しかし42歳で静かに銀幕を去り、半世紀にわたり沈黙を貫いた。
数々の神話に彩られた原節子とは何者だ ったのか。
たったひとつの恋、空白の一年、小津との関係、そして引退の真相──。
丹念な取材により、伝説を生きたひとりの勁い女性の姿を鮮やかに描き出す決定版評伝!
未公開のものも含め、貴重な写真を多数収録。
目次
まえがき 原節子と会田昌江
第一章 寡黙な少女
第二章 義兄・熊谷久虎
第三章 運命との出会い
第四章 生意気な大根女優
第五章 秘められた恋
第六章 空白の一年
第七章 屈辱
第八章 孤独なライオン
第九章 求めるもの、求められるもの
第十章 「もっといやな運命よ、きなさい」
第十一章 生きた証を
第十二章 それぞれの終焉
第十三章 つくられる神話
あとがき 会田昌江と原節子
文庫版あとがき
主要参考文献
手帖抄 原節子
解説 ヤマザキマリ
- 本の長さ433ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2019/1/27
- 寸法10.6 x 1.6 x 15.1 cm
- ISBN-104101372527
- ISBN-13978-4101372525
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出版社より
おそめ―伝説の銀座マダム― | 原節子の真実 | |
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カスタマーレビュー |
5つ星のうち4.3
119
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5つ星のうち4.4
195
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価格 | ¥880¥880 | — |
【新潮文庫】石井妙子 作品 | かつて夜の銀座で栄光を摑んだ一人の京女がいた。川端康成など各界の名士が集った伝説のバーと、そのマダムの華麗な半生を綴る。 | 「伝説の女優」原節子とは何者だったのか。たったひとつの恋、空白の一年、小津との関係、そして引退の真相──。決定版本格評伝!〈新潮ドキュメント賞受賞〉 |
登録情報
- 出版社 : 新潮社; 文庫版 (2019/1/27)
- 発売日 : 2019/1/27
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 433ページ
- ISBN-10 : 4101372527
- ISBN-13 : 978-4101372525
- 寸法 : 10.6 x 1.6 x 15.1 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 39,757位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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2022年12月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
映画会社が使ったからなのか「永遠の処女」という
原節子のキャッチコピーはなにかそぐわないなと思っていました。
原節子は体型からも顔つきからもバンプ女優が似合うと思います。
著者は本人に会えませんでしたが
原節子に関する資料を丁寧に紐解いて書かれており、
とてもおもしろかったです。
原節子のキャッチコピーはなにかそぐわないなと思っていました。
原節子は体型からも顔つきからもバンプ女優が似合うと思います。
著者は本人に会えませんでしたが
原節子に関する資料を丁寧に紐解いて書かれており、
とてもおもしろかったです。
2024年5月29日に日本でレビュー済み
丹念な取材に基づいて書かれた原節子の評伝である。映画に興味をもちはじめた頃にはすでに原節子が引退して久しかった。これまで演技者としての原節子には注目していたけれど、その生涯についてはたまにマスコミで取り上げられる以上のことは知らなかったし、ほとんど関心もなかったのだが、それだけにかえって、今回これを読んでみて人間原節子(本名会田昌江)に大いに興味が湧いた。
昭和10年14歳で日活に入社、小津安二郎などの作品に出演し高い評価を得ながら、昭和37年引退宣言をすることもなくひっそりと銀幕から姿を消し、以後マスコミや世間の目を避け、平成27年95歳でその生涯を閉じた。
義兄(姉の夫)である映画監督、熊谷久虎の手引きで映画界入りするも女優であることに常に違和感をもち続け、一方で真面目で誠実な性格から演技者としての向上心を失わなかった。映画仲間とはあまり交流をせず、撮影現場でもひとり静かに読書している。おとなしく誰に対しても優しいけれど、思っていることははっきりと口に出して言う。今の芸能界ではとても考えられないが、自分が出演した映画の役が気に入らなければ、たとえ公開前でも歯に衣着せずそう言ってしまう。たとえば「晩春」や「東京物語」など世評の高い小津作品の役柄についても、まったく自分の好みではなかったと述べているのは意外と言うほかない。小津とのプラトニックラブやその死に殉じての引退などの美談的エピソードも単なる噂にすぎなかったことがわかる。
東宝の看板女優となってからも、ニューフェイスに対して新人いびりしたり、張り合ったりすることなど一切なかったそうである。新人女優に「憧れの先輩は?」というアンケートを実施したところ、みんなが原節子の名前を挙げるので企画倒れになったと言う。
一番印象に残ったのは、戦前にたくさんの国威発揚映画に関わったことについて、戦後多くの映画人が薄っぺらい反省や弁解がましい言葉を連ねるなか、原はそのことに関してひとことも語っていない点である。義兄の強い影響で国粋主義的な考えも抱いていたという原節子が、戦後民主主義の世の中をどのように見ていたのかとても気になるところである。
昭和10年14歳で日活に入社、小津安二郎などの作品に出演し高い評価を得ながら、昭和37年引退宣言をすることもなくひっそりと銀幕から姿を消し、以後マスコミや世間の目を避け、平成27年95歳でその生涯を閉じた。
義兄(姉の夫)である映画監督、熊谷久虎の手引きで映画界入りするも女優であることに常に違和感をもち続け、一方で真面目で誠実な性格から演技者としての向上心を失わなかった。映画仲間とはあまり交流をせず、撮影現場でもひとり静かに読書している。おとなしく誰に対しても優しいけれど、思っていることははっきりと口に出して言う。今の芸能界ではとても考えられないが、自分が出演した映画の役が気に入らなければ、たとえ公開前でも歯に衣着せずそう言ってしまう。たとえば「晩春」や「東京物語」など世評の高い小津作品の役柄についても、まったく自分の好みではなかったと述べているのは意外と言うほかない。小津とのプラトニックラブやその死に殉じての引退などの美談的エピソードも単なる噂にすぎなかったことがわかる。
東宝の看板女優となってからも、ニューフェイスに対して新人いびりしたり、張り合ったりすることなど一切なかったそうである。新人女優に「憧れの先輩は?」というアンケートを実施したところ、みんなが原節子の名前を挙げるので企画倒れになったと言う。
一番印象に残ったのは、戦前にたくさんの国威発揚映画に関わったことについて、戦後多くの映画人が薄っぺらい反省や弁解がましい言葉を連ねるなか、原はそのことに関してひとことも語っていない点である。義兄の強い影響で国粋主義的な考えも抱いていたという原節子が、戦後民主主義の世の中をどのように見ていたのかとても気になるところである。
2023年12月19日に日本でレビュー済み
出版社から、連絡があった。僕の感想文を読んだ著者が、僕と会って、直接話がしたいのだそうだ。異例な事らしく、電話口からの、担当者の上ずった声が、それを物語っていた。待ち合わせの日時を快諾し、会う事にした。僕は、美しい物が好きで、勿論、美しい人も大好きだ。しかしながら、原節子という女優は、僕の、「美人リスト」に、入っていないのだ。何でだ?自身の審美眼に、穴があったのか?という疑惑が湧いてきたので、検証したい。本書購入時の偽らざる本意だ。
感想文には、そっけなく、本書購入時、問題は解決した。と、書いておいた。扉絵の写真は、紛れも無く美人そのもの、だったからだ。そして、自身の審美眼にも、間違いがない事を確信した。
そう、原節子は、顔が、ゴツいのだ。日本の女優の大半が、顔が平面なのに対し、彼女は、立体的なのだ。
写真からは、それが良く伺える。何で映画の中の原節子は、平面的に、撮られているんだ。
もっと、立体的に、撮ればいいものを。これじゃあ、彼女の良さを、殺しちまっている。
だから、気がつかなかったんだ。彼女の類稀な、うつくしさを。
編集者は、一つだけ、気をつけてと、注文していたっけ。著者は、時間に余裕がないので。要するに、時間に遅れるなと、いう事だ。遅刻厳禁。時間に、うるさいらしい。
約束通りに、指定された場所に行く。余分な物は食べていません、そんな感じの、スーツ着た痩せた男が、
お待ちしていました。どうぞ。と、僕を見るなり、アテンドしてくれる。
喫茶店?みたいなその場所は、L字型になっていて、一番奥が、隠れ家的な感じで、存在が分かりづらく
なっている。そこに、通された。
真っ赤なベレー帽をかぶった、キャメルのジャケットを着た、著者がいた。いや、可愛い。
どうりで、編集者の方々が、大切に扱うはずだ。
彼女の一通りの、挨拶と、丁寧な御礼を受けて、席に着く。
僕は、何故、鎌倉を安住の地に選んだのか?何故、司葉子だけが、彼女宅に、出入りを許されたのか?
を、知りたく思い、尋ねてみた。僕は、相澤英之氏との結婚を薦めたのは、原節子なのではないのか、
とか、大倉官僚からの、正確な情報に、蓄財の要素があったのではないのか?とか、不躾な質問を、著者に、聴いてみた。彼女は、一つ、一つ、丁寧に、持ち込んであった資料を見せながら、僕の、雑で、大まかな、憶測を、なぞっていく。彼女が、もし、傀儡政権なるものを実現したとして、通したと思われる当時の法案は、これと、これと。いや、細かい。実に、用意周到に、準備されている。僕の質問事項を予め予測して、用意されているみたいだ。回答に、隙がない。いや、参った。
ランチタイムだ。マスターが、昔やんちゃしてましたと言った程の輩が、menuを開きながら、見せてくれる、人差し指が、とある品物を指している。?訝しむ僕を尻目に、顎をしゃくってみせた。どうやら、著者のお気に入りだから、黙って頼めよ、という事らしい、本日のおすすめの品とあり、原節子の愛した一品
と成っている。値段も一桁違う。じゃあ、これ、2つ。承知しました。と。ウインクしながらマスターが、
menuを畳んで行く。やっぱ、ヤンチャな奴だなあ。嫌いなタイプではない。
ランチで、活力がついたのか、著者の丁寧な、解説が続く。原さんが、いつの間にか、節子さんになり、
今では、せっちゃんに、成っている。
3人居るはずだ。宗像3姉妹は、長女が、原節子。3女が、司葉子。次女は、誰なんだ?
僕の唐突な質問に、彼女が、笑い出す。面白い。松村さん、貴方って、とても、面白い。
彼女の笑いが、止まらない。松村さん、今日は、とても、楽しかったわ。
又、お会いしましょう。彼女が、右手を、差し出した。お別れの時間か。
マスターが割って、入ってくる。
お会計は、済んでおりますので。
痩せ男が、向こうで、深々と、最敬礼している。
著者を乗せた黒塗りのセダンの後ろ姿を、見送りながら、夢の様な、ひと時が、終わってしまった。
指先にも残る、著者の香水の香りが、何とも心地よい。
芳しきその香りが、思い出せずにいたが、確か、花の香りなんだが、
やっと、思い出すことができた。
夜来香、イエライシャンだ。
感想文には、そっけなく、本書購入時、問題は解決した。と、書いておいた。扉絵の写真は、紛れも無く美人そのもの、だったからだ。そして、自身の審美眼にも、間違いがない事を確信した。
そう、原節子は、顔が、ゴツいのだ。日本の女優の大半が、顔が平面なのに対し、彼女は、立体的なのだ。
写真からは、それが良く伺える。何で映画の中の原節子は、平面的に、撮られているんだ。
もっと、立体的に、撮ればいいものを。これじゃあ、彼女の良さを、殺しちまっている。
だから、気がつかなかったんだ。彼女の類稀な、うつくしさを。
編集者は、一つだけ、気をつけてと、注文していたっけ。著者は、時間に余裕がないので。要するに、時間に遅れるなと、いう事だ。遅刻厳禁。時間に、うるさいらしい。
約束通りに、指定された場所に行く。余分な物は食べていません、そんな感じの、スーツ着た痩せた男が、
お待ちしていました。どうぞ。と、僕を見るなり、アテンドしてくれる。
喫茶店?みたいなその場所は、L字型になっていて、一番奥が、隠れ家的な感じで、存在が分かりづらく
なっている。そこに、通された。
真っ赤なベレー帽をかぶった、キャメルのジャケットを着た、著者がいた。いや、可愛い。
どうりで、編集者の方々が、大切に扱うはずだ。
彼女の一通りの、挨拶と、丁寧な御礼を受けて、席に着く。
僕は、何故、鎌倉を安住の地に選んだのか?何故、司葉子だけが、彼女宅に、出入りを許されたのか?
を、知りたく思い、尋ねてみた。僕は、相澤英之氏との結婚を薦めたのは、原節子なのではないのか、
とか、大倉官僚からの、正確な情報に、蓄財の要素があったのではないのか?とか、不躾な質問を、著者に、聴いてみた。彼女は、一つ、一つ、丁寧に、持ち込んであった資料を見せながら、僕の、雑で、大まかな、憶測を、なぞっていく。彼女が、もし、傀儡政権なるものを実現したとして、通したと思われる当時の法案は、これと、これと。いや、細かい。実に、用意周到に、準備されている。僕の質問事項を予め予測して、用意されているみたいだ。回答に、隙がない。いや、参った。
ランチタイムだ。マスターが、昔やんちゃしてましたと言った程の輩が、menuを開きながら、見せてくれる、人差し指が、とある品物を指している。?訝しむ僕を尻目に、顎をしゃくってみせた。どうやら、著者のお気に入りだから、黙って頼めよ、という事らしい、本日のおすすめの品とあり、原節子の愛した一品
と成っている。値段も一桁違う。じゃあ、これ、2つ。承知しました。と。ウインクしながらマスターが、
menuを畳んで行く。やっぱ、ヤンチャな奴だなあ。嫌いなタイプではない。
ランチで、活力がついたのか、著者の丁寧な、解説が続く。原さんが、いつの間にか、節子さんになり、
今では、せっちゃんに、成っている。
3人居るはずだ。宗像3姉妹は、長女が、原節子。3女が、司葉子。次女は、誰なんだ?
僕の唐突な質問に、彼女が、笑い出す。面白い。松村さん、貴方って、とても、面白い。
彼女の笑いが、止まらない。松村さん、今日は、とても、楽しかったわ。
又、お会いしましょう。彼女が、右手を、差し出した。お別れの時間か。
マスターが割って、入ってくる。
お会計は、済んでおりますので。
痩せ男が、向こうで、深々と、最敬礼している。
著者を乗せた黒塗りのセダンの後ろ姿を、見送りながら、夢の様な、ひと時が、終わってしまった。
指先にも残る、著者の香水の香りが、何とも心地よい。
芳しきその香りが、思い出せずにいたが、確か、花の香りなんだが、
やっと、思い出すことができた。
夜来香、イエライシャンだ。
2022年1月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「最後まで自分が満足できる出演作に恵まれなかった。彼女自身がそうありたいと願った意志が強く、運命を切り拓いていく力強いヒロインは日本映画界のなかに登場しない。日本社会が、そのような女性を求めておらず、また実社会にも存在しなかったからでもあるのだろう。」という筆者の視点は面白く、それは原節子の内に秘めた想いだったのかもしれない。ただ、その1点に向けて原節子の評伝を集約していく書き方には、「原節子の真実」というよりは、「石井妙子氏が読み解いた原節子」という感じがする(まあ、そういう読み物なのでしょうが・・・)。ドキュメントというよりは、その場に居合わせたかのように、登場人物の会話を書き綴る小説のような、断定的な文体には、「真実」といわれると違和感があった。小津安二郎とその母親の関係を、息子を溺愛する母親の一言ですませてしまう乱暴さも、個人的は許容しがたい。これを読む人に、それが単純な真実と思ってほしくないように思う。たくさんの文献にあたり、熱意を込めて書き上げた評伝だとは思うが、筆者の思い入れ(思い込み?)が強くて、なんだか原節子の口を借りて、石井妙子氏が自分の思いを語っているようにも思えた。この本では、原節子が小津監督の作品に冷淡だったことが強調されているが、それが真実だったのだろうか?もし、そうだとしたら「麦秋」や「東京物語」の名演は何だったのだろう。まあ、それは意に染まない役柄でも見事に演じて見せる原節子のプロフェッショナルとしての名優の証明であるのかもしれないが・・・。
2022年6月11日に日本でレビュー済み
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近年久方ぶりに感動した列伝である。石井妙子氏は、生前の原節子についに面会がかなわなかった。しかし、膨大な資料と取材を駆使し、原節子と会田昌枝の実像に限りなく接近している。実際に90歳を越えた原節子に会えたとしても、これ以上の評伝は無理であろう。一人の偉大な魂の記録として、私たちが人生の困難に向き合う時に大きな勇気を得ることができる。そして、その退場の見事さに驚嘆する。静かに、立つ鳥、水を濁さず。実に見事な人生である。