面白くて数日で読み切った。この犯罪史上類を見ない猟奇的事件の真相をなんとしても浮き彫りにしたいという筆者の強い思いが伝わってくる。文章が論理的なだけでなく、取材者としての葛藤・逡巡や自問自答、心情の吐露も素直に表現されていて面白い。結局、植松の本当の動機は闇に包まれたまま。優生思想や差別意識は、もしかしたら社会が一方的にラベリングしたものであり、本当はもっと深遠な、あるいはもっと浅はかなものだったかもしれない。
一般人による裁判員制度にも問題点がある。近年は、重大事件であればあるほど、裁判員制度による裁判がむしろ「死刑宣告のただの儀式」と化している。精神鑑定にしても結局は責任能力の有無を問うだけのお飾りになっているようだ。また、その鑑定もプロの精神科医をもってしても正解を出すのは困難(そもそも人の意識や行動にはグラデーションがあるため、正解がない世界)で、その責任の重圧さや、鑑定によってかえって社会の精神疾患患者への差別を助長する可能性もあるため、やりたがる医師は少ない事も頷ける。植松にしろ麻原にしろ、結審が異例の早さで進んでしまい、結局は真相や動機の解明に至れなかった。麻原裁判では、後半の公判は廃人そのもので、とてもまともな意識状態と言えないまま一方的に死刑判決が下ったという。最終的には遺族感情のバイアスが大きく作用するのが今の裁判なのだ。植松の思想と、社会に内在するタブーには共通項が多いが、彼を殺害に突き動かした直接の真の動機は結局迷宮入りのままだ。司法も、社会やメディアも臭いものに蓋をして終わり。おそらくは、我々日本国民にも植松予備軍が大勢いるはずなのに、我々はそれを認めたくないのだ。この事件こそ、日本社会の病理の縮図と言えよう。
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U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面 (講談社現代新書 2598) 新書 – 2020/12/16
森 達也
(著)
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Uは私だ。植松聖を不気味と感じる私たち一人ひとりの心に、彼と同じ「命の選別を当たり前と思う」意識が眠ってはいやしないか?
差別意識とは少し異なる、全体主義にもつながる機械的な何かが。
「A」「FAKE」「i ‐新聞記者ドキュメント-」の森達也が、精神科医やジャーナリストらと語りあい、悩み、悶えながら、「人間の本質」に迫った、渾身の論考!
差別意識とは少し異なる、全体主義にもつながる機械的な何かが。
「A」「FAKE」「i ‐新聞記者ドキュメント-」の森達也が、精神科医やジャーナリストらと語りあい、悩み、悶えながら、「人間の本質」に迫った、渾身の論考!
- 本の長さ280ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2020/12/16
- 寸法10.6 x 1.3 x 17.4 cm
- ISBN-104065208246
- ISBN-13978-4065208243
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商品の説明
著者について
1956年、広島県生まれ。映画監督、作家、明治大学特任教授。98年にオウム真理教信者達の日常を映したドキュメンタリー映画「A」を公開、ベルリン国際映画祭などに正式招待される。2001年、続編「A2」が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。16年、作曲家・佐村河内守に密着して撮影した「FAKE」が大きな話題に。19年公開の「i-新聞記者ドキュメント-」は、キネマ旬報ベストテン(文化映画)1位を獲得。作家としては、10年に刊行した『A3』で第33回講談社ノンフィクション賞を受賞。他にも『放送禁止歌』『いのちの食べかた』『ドキュメンタリーは嘘をつく』『死刑』『「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい』など注目作多数。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2020/12/16)
- 発売日 : 2020/12/16
- 言語 : 日本語
- 新書 : 280ページ
- ISBN-10 : 4065208246
- ISBN-13 : 978-4065208243
- 寸法 : 10.6 x 1.3 x 17.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 129,754位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 377位福祉の社会保障
- - 974位講談社現代新書
- - 28,650位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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広島県生まれ。映画監督、作家。1998年にドキュメンタリー映画『A』を発表。2001年、続編の『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『極私的メディア論』(ISBN-10:4904795075)が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年2月19日に日本でレビュー済み
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2024年1月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
序章で拘置所で植松聖と面会する。彼の衆院議長宛ての手紙を全文公開。いわゆる「了解不能」な箇所がある。精神的な疾患が強く疑われる。
第二章ではかつて長崎文化放送で記者とアナウンサーを兼任し、現在は発達支援教室「るりえふ」の代表郡司真子氏との対話。郡司氏の見立ては「発達障害」。自分の思い込んだ妄想を現実と思い込んでしまう。これは軽い発達障害の人によくある状況らしい。
第四章では精神科医、松本俊彦と対話する。「彼の信念の大半は、彼の内部から自発的に出てきた言葉ではなく、あらかじめ社会に漂っていたものを拾い集めて作られたものではないか。」 ALS嘱託殺人を犯した二人の医師の、「経済的な生産性でいうとマイナスでしかない認知症老人に人生からめとられて、退職を余儀なくされるとか、ほんとボケ上がった老人を長生きされることに俺は興味も関心もない」「意味などないでしょう。ゾンビを無目的に生かして、国民の皆様から診療報酬を賜るというだけ。バカらしくて新人はやめていくし、生活の糧と割りきった人だけが感情棄てて業務に当たる」「予後不良なのに治療に人生とカネを費やす意味があるんすかね?」2人の医師が過去に共著で刊行した電子書籍のタイトルは『扱いに困った高齢者を「枯らす」技術』。
あるいは判決文の記述、「職員が利用者に暴力を振るい、食事を与えるというよりも流し込むような感じで利用者を人として扱っていないように感じたことなどから、重度障害者は不幸であり、その家族や周囲も不幸にする不要な存在であると考えるようになった。」
最後に神奈川新聞記者、石川泰大氏との対話。
「障害者は不幸しか生まないとか社会にとって不要な存在だとか、彼のこれらの言葉は、口には出さないけれど多くの人が心の裡に多かれ少なかれ仄かに持っている感覚なのかもしれないと。」
植松聖は世間の、社会の隠された本音・本心を代行したということではないのか?
第二章ではかつて長崎文化放送で記者とアナウンサーを兼任し、現在は発達支援教室「るりえふ」の代表郡司真子氏との対話。郡司氏の見立ては「発達障害」。自分の思い込んだ妄想を現実と思い込んでしまう。これは軽い発達障害の人によくある状況らしい。
第四章では精神科医、松本俊彦と対話する。「彼の信念の大半は、彼の内部から自発的に出てきた言葉ではなく、あらかじめ社会に漂っていたものを拾い集めて作られたものではないか。」 ALS嘱託殺人を犯した二人の医師の、「経済的な生産性でいうとマイナスでしかない認知症老人に人生からめとられて、退職を余儀なくされるとか、ほんとボケ上がった老人を長生きされることに俺は興味も関心もない」「意味などないでしょう。ゾンビを無目的に生かして、国民の皆様から診療報酬を賜るというだけ。バカらしくて新人はやめていくし、生活の糧と割りきった人だけが感情棄てて業務に当たる」「予後不良なのに治療に人生とカネを費やす意味があるんすかね?」2人の医師が過去に共著で刊行した電子書籍のタイトルは『扱いに困った高齢者を「枯らす」技術』。
あるいは判決文の記述、「職員が利用者に暴力を振るい、食事を与えるというよりも流し込むような感じで利用者を人として扱っていないように感じたことなどから、重度障害者は不幸であり、その家族や周囲も不幸にする不要な存在であると考えるようになった。」
最後に神奈川新聞記者、石川泰大氏との対話。
「障害者は不幸しか生まないとか社会にとって不要な存在だとか、彼のこれらの言葉は、口には出さないけれど多くの人が心の裡に多かれ少なかれ仄かに持っている感覚なのかもしれないと。」
植松聖は世間の、社会の隠された本音・本心を代行したということではないのか?
2023年8月22日に日本でレビュー済み
本書を読むと色々な問題点があることが分かる。その中で、私は、裁判員制度について、興味を持った。裁判員制度は、閉鎖的な法曹の空間に、民間人の常識を反映させ、裁判を身近にするものだと思っていた。しかし、現実は、公判前に3者(裁判官、検察官、弁護士)が論点整理をする。それが裁判員の判断を誘導するのではないかという懸念である。これは戦前の予審が理想と違った、運用がされたことを想起させた。裁判員を経験した者の発言が公にないことも気にかかる。裁判員の経験が個に納まり、社会に還元していないのだ。なんのための、誰のための司法改革だったのか?
2023年8月1日に日本でレビュー済み
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相模原障害者施設殺傷事件が起きたのは2016年7月。知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」の入所者19人を刺殺したのは元職員の植松聖である。この事件について知りたかった。犯人の植松とはどういう人物なのか知りたかった。
読み終えて。森達也氏の力が存分に発揮された素晴らしい本だった。事件について、また植松についても書かれているが、メディア論、裁判員制度の問題、精神鑑定のあり方など、様々な角度からの考察が書かれている。
著者の文章は歯切れが悪い。考えながら悩みながら書かれていることがよくわかる。ゆえに、著者と一緒になって読者も考える。明確な結論を提示するわけではない。考え抜かれた自説を歯切れ良く展開するわけでもない。むしろ、疑問を投げかけ、読了後も考え続けることを促す。
読者に考えさせることができる書き手と久しぶりに出会った。稀有な作家である。
読み終えて。森達也氏の力が存分に発揮された素晴らしい本だった。事件について、また植松についても書かれているが、メディア論、裁判員制度の問題、精神鑑定のあり方など、様々な角度からの考察が書かれている。
著者の文章は歯切れが悪い。考えながら悩みながら書かれていることがよくわかる。ゆえに、著者と一緒になって読者も考える。明確な結論を提示するわけではない。考え抜かれた自説を歯切れ良く展開するわけでもない。むしろ、疑問を投げかけ、読了後も考え続けることを促す。
読者に考えさせることができる書き手と久しぶりに出会った。稀有な作家である。
2020年12月20日に日本でレビュー済み
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ネトウヨ、右側方面から評判の悪い「森達也」。
私も彼の主張には100%賛同できないが、大手マスメディアに欠けている視点をチェックするために書籍は読んでいる。
この本は相模原事件を軸に、森達也の関心がけっこう飛びまくる…
オウム真理教事件、宮崎勤、裁判員制度、重大事件の精神鑑定制度、死刑制度を論じるので、相模原事件を知る最初の一冊にはならないので注意。
この本で言われてみればと考えたのは、重大事件では「精神鑑定の結果を受けての無罪」はほぼあり得ない事。最初から有罪ありきのセレモニー的な精神鑑定と裁判に我々も気付くべきである。
論理よりも感情が勝る人間に正義はあるのだろうか?
事件をさらに深く考えたい方にはオススメできます。
私も彼の主張には100%賛同できないが、大手マスメディアに欠けている視点をチェックするために書籍は読んでいる。
この本は相模原事件を軸に、森達也の関心がけっこう飛びまくる…
オウム真理教事件、宮崎勤、裁判員制度、重大事件の精神鑑定制度、死刑制度を論じるので、相模原事件を知る最初の一冊にはならないので注意。
この本で言われてみればと考えたのは、重大事件では「精神鑑定の結果を受けての無罪」はほぼあり得ない事。最初から有罪ありきのセレモニー的な精神鑑定と裁判に我々も気付くべきである。
論理よりも感情が勝る人間に正義はあるのだろうか?
事件をさらに深く考えたい方にはオススメできます。
2021年1月11日に日本でレビュー済み
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相模原の障がい者連続殺傷事件の加害者である植松聖死刑囚を切り口に近代司法への違和感を説く一冊。標題は吉岡忍が宮崎勤を題材にした『M/世界の、憂鬱な先端』へのオマージュ。重大事件にもかかわらず公判が1ヶ月半程度で結審し死刑判決が下されたことを受け、被告人の精神鑑定は事実上添え物で警察や検察が作った調書に基づいて判決が下されること、司法を市民に身近なものにするための裁判員裁判はわかりやすさを優先するあまり熟慮の機会を取り払ったと手厳しく批判。精神科医の丁寧な鑑定記録が圧倒的な世論の前に圧殺された事実は堀川惠子著『永山則夫 封印された鑑定記録』でも明らかにされていたことでした。
森達也氏のストイックなまでにバランスを取ろうとする態度に全面的に賛同するものではありませんが、法治国家とは何かを考える題材として定期的に読んでおきたいと思わせるものがあります。
森達也氏のストイックなまでにバランスを取ろうとする態度に全面的に賛同するものではありませんが、法治国家とは何かを考える題材として定期的に読んでおきたいと思わせるものがあります。
2022年5月11日に日本でレビュー済み
他の人も書いてますが、
わたしも植松聖についての内容が知りたくて読み始めました。
それが、他の事件への脱線が多々あります。
それがまた長々と続くので飛ばして読みました。
これを読むのなら、開かれたパンドラの箱を繰り返し読んだ方が読み応えが感じられます。
わたしも植松聖についての内容が知りたくて読み始めました。
それが、他の事件への脱線が多々あります。
それがまた長々と続くので飛ばして読みました。
これを読むのなら、開かれたパンドラの箱を繰り返し読んだ方が読み応えが感じられます。
2021年1月21日に日本でレビュー済み
バランスよく考えたり行動したりすることの困難な人が、多くの人が仄かに持っていた感覚を極端な形で表現してしまった結果なのか。自分の親しい人、いや自分もその延長線上にいるのかもしれない。それにしても、死刑は廃止してほしい。が、遺族の立場になったら、そう思えないだろうということも理解できる。