津波の霊たち 3・11 死と生の物語 (早川書房) [Kindle]

  • 早川書房
4.50
  • (2)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 41
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (355ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ふむ

  • やはり、判決通りで何があったかは解明できていない。しかし、この本は、人に対しての記録になりうるのでは。丁寧なインタビューがみてとれる。これまでの二冊とはまた違ってよかった。読後、この本はこの震災からの日本論、日本人論がメインテーマではないか、と思った。

  • 英国のジャーナリストによって書かれた、東日本大震災についてのルポルタージュ。震災で起きたのはまさにこういうことだったのだと、私自身も被災者の端くれとして、戦慄しながら読んだ。

    まず、大川小学校で74名もの児童がなくなった事故とそれへの遺族や行政の対応。裁判と遺構保存が決まるまでの顛末。実名で登場する多くの人々への共感と違和感を冷静な筆致で描いている。

    そして、シンクロしながら語られるのは、多くの被災者に見られた心霊現象、すなわち幽霊が主題だ。「オカルト」ではない。幽霊を見、幽霊となって語ることは、依り代となった人が身に生じたトラウマを物語として吐露することに他ならない。それは嘘でもなんでもなく、震災という巨大な出来事が生み出した事実なのだから。

    両者に伏流する、もう一つの主題は「日本」である。世界を驚かせた被災者の自制心は美徳であると同時に、これほどの事態を経てもなおなんら社会変革を起こすことのできない保守性の現れでもある。そして案の定、我々は以前の生活を取り戻している。悪い部分もそのままに。

    原著は2017年8月に刊行された。6年をすぎて外国人によって書かれた本書は、東日本大震災について読むべき本の古典となることだろう。

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

英『ザ・タイムズ』紙アジア編集長および東京支局長。1969年生、英マージーサイド州出身。オックスフォード大学卒業後、1995年に『インディペンデント』紙の東京特派員として来日。2002年より『ザ・タイムズ』紙に属し、東京を拠点に日本、朝鮮半島、東南アジアを担当。アフガニスタン、イラク、コソボ、マケドニアなど27カ国・地域を取材し、イラク戦争、北朝鮮危機、タイやミャンマーの政変を報じる。著書に、『狂気の時代』(みすず書房、2021年)のほか、日本を舞台にしたノンフィクション『黒い迷宮』(2015年)、『津波の霊たち』(2018年。ともにハヤカワ・ノンフィクション文庫)がある。『津波の霊たち』で2018年ラスボーンズ・フォリオ賞、2019年度日本記者クラブ賞特別賞を受賞。

「2021年 『狂気の時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

リチャード・ロイド・パリーの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三浦 しをん
赤坂 憲雄
高野 和明
レイチェル・L....
劉 慈欣
末井 昭
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×