アフリカの難民キャンプで暮らす: ブジュブラムでのフィールドワーク401日
- こぶな書店 (2019年6月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
- / ISBN・EAN: 9784991084201
作品紹介・あらすじ
自身の目で我々の生活をよく見てくれ。
そして我々の声を聞いてくれ。
すべては「生」の「声」からー
本書の舞台は、西アフリカのガーナにあるブジュブラム難民キャンプ。ここでは内戦によって祖国リベリアを追われた難民が20年近い歳月を過ごしてきた。
ガーナの西、国をひとつ挟んだところに位置するリベリア共和国は、1847年にアメリカ合衆国の解放奴隷を入植させるため建国された。先進国からやってきた解放奴隷たちと先住民族との間に軋轢は絶えず、1989年から始まった内戦は「現代アフリカ史上最も凄惨な紛争」と言われる。
14年間に及んだ内戦は、2003年に停戦合意が結ばれ表面上は終結する。が、ブジュブラム・キャンプには、今なお祖国に帰還できない人々が暮らしている。
彼らは「忘れられた難民たち」と呼ばれる。
難民問題は現代社会が直面する最も深刻な「グローバル・イシュー」のひとつだ。
難民についてよりよく理解するということは、私たちが生きる現代社会を考えるうえで必須の作業であるはずだ。
著者は2008年7月から2009年9月までの401日間をキャンプに暮らし、経済活動をテーマに難民たちの日常生活を追った。それにより書き上げた論文は高い評価を得るが、より鮮明に残ったものは、そこに生きる難民たちの「顔」と「声」が織りなす「物語」だった。ひとりの人間として、彼らの隣人としての筆致でそれを描く。
終盤に明かされる<ジュディスとの約束>の意味することは深い。
感想・レビュー・書評
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読書会用。
感想というより要約、メモ。
オクスフォード大学の難民研究者である著者が、ガーナ国内にある、リベリア人難民キャンプで行ったインタビューをまとめたもの。
著者は、難民と共に401日を過ごしたという内部の声と、研究者として難民キャンプ運営者の話を聞いたり援助する側の会議を拝聴したりしたための外部の声と、そして著者の個人の人間としての感想とが混じり、バランスの良いドキュメンタリーになっていると思う。
以下、感想というよりただの要約。
難民とは。
もともとの言葉の意味は「祖国を追われて避難場所を求める人達」。
1951年国連で採択されたのは「何人の地位に関する条約」では、「人種、宗教、国籍、政治的意見屋はまた特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいるとは迫害を受けるかあるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた人々」を定義している。
自国の保護を求められないので、国際社会の助けが必要な状態。
(なお、紛争などで自分の住んでいた場所を追われたけれど、国境を超えずに国内で避難生活を送る人々のことは「国難避難民」であり、難民とはまた違う扱い)
リベリア内乱について。
リベリアという国は、アメリカの解放奴隷入植地として、アメリカが土着の先着民族から一方的に土地を借り受け開放奴隷を送り込んだ、事実上のアメリカの植民地。
そこでアメリカから帰還した解放奴隷が、政治・経済を掌握し、多数国民であるリベリア先住民を弾圧した。
1980年、先住民族出身の軍人ドウが軍事クーデターを起こし、大統領の座につく。しかしドウは自分の出身のクラン民族のみ優先し、国内の不満は増す一方だった。
1989年の解放奴隷側からのクーデターで再度政権を取り戻す。
その後14年に渡る「アフリカ現代史の中で最も凄惨な紛争の一つ」と呼ばれる内乱の時代に突入した。
この内乱での死者は30万人以上と言われ、周辺国に流れ出た難民は20万人以上という。
著者の滞在した難民キャンプはガーナにあるブジュブラム難民キャンプ。
上記内乱のときに国を逃げてきた難民が多い。
難民キャンプに住んでもう10年以上になる人も多い。
難民キャンプでの生活
・自分たちの生活費は自分で稼がなければいけない。だが難民キャンプだけで生活するため稼ぐ手段も限られる。アメリカなど第三国からの援助がある者は大きな商売をはじめることもできるが、なにもない者はその日暮らしの生活となってしまう。
・教育も限られてしまう。若者は暇を持て余し、未婚で生まれる子供も多い。
・難民キャンプでも貧富の差は存在する。お互いに貧しい者同士がお互いを助けあう。自分が困窮しても他の家族に頼られたら援助せざるを得ない。そうしないと、自分が他の人達に助けを求めたときに断られてしまう。
著者の疑問として、貧しい者同士の自助協力のみで生活を成り立たせて良いのか?ということを挙げている。
・難民キャンプのなかでも、ゲリラや政府軍たちが暮らしている地域は、リベリア難民同士でも複雑な思いがあり、お互いの行き来も最小限。
国、国連からの援助
・キャンプの運営は、ガーナ、国連、先進国からの援助から成り立つが、やはりガーナとしては資金が負担になるため、資金を減らしたり、リベリアに帰国するキャンペーンを行ったりする。
・ブジュブラムキャンプでは、水道も料金がかかるため、トイレを外で済ませざるを得ない場合もある。
二世三世
・内乱時に逃れてきた世代は、リベリアに家族もいるが、その子供世代になるとリベリアという国は自分に意味がなくなっている。
難民の行く先
自分の国に戻る、難民キャンプに定住する、第三国に移住する、という3つの道がある。
圧倒的に人気なのはアメリカなどの第三国に移住すること。
たまに成功例もある。インターネットで知り合った第三国人に助けてもらったり。そのためインターネット登録が大人気。
著者のような研究者などで一時的に滞在する第三国人がいると、知り合いになりたい、アメリカ(など)への移住を手引してもらいたいという難民からのアプローチは多い。その場限りで「帰ったら努力してみるよ」などと言わずにできないものははっきり断ってほしい、という難民からの声もある。
ガーナ人との関係
・キャンプ設立時は割とうまく行っていたが、だんだんトラブルも増えてくる。
・難民キャンプに押し入る武装勢力がいたことも。
・リベリア難民も、ガーナに馴染もうとしないところがあり、ガーナ人の風習を無視したり言葉を覚えようとしないためのトラブルもある。
難民に求められるもの
・キャンプ内では政治の話はご法度。争い合う民族や政党があるため、一度闘いが始まると大事になる。
・さらに、ガーナのキャンプ支配人からも、難民は決して政治に介入しないことを望まれる。
全く別の集まりでも、政治主張に乗っ取られたりする。
すこしでも集まりを開こうとすると政治かと警戒される。
難民は大人しくしていることを望まれ、声を上げることは望まれない。
・難民は、一時的には話題になるがすぐに忘れられてしまう。
・国際会議でも、国際援助機関や難民ホスト国での話し合いとなり、難民本人たちの発言はない。 -
6冊目『アフリカの難民キャンプで暮らす ーブジュブラムでのフィールドワーク401日』(小俣直彦 著、2019年6月、こぶな書店)
ロンドン大学の博士課程を修了する為、ガーナにあるリベリア難民キャンプ「ブジュブラム・キャンプ」へ滞在した著者の経験談を通して、難民の置かれる苦境や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の問題点などが書かれている。
難民問題を自分とは関係のない事のように考えがちだが、本書を読めばその意識が多少なりとも変わると思う。
「自分自身の目で彼らの生活をよく見、そして彼らの声に耳を傾ける」-
ムッネニークさんこんにちは。
先日の読書会にいらっしゃいまいたよね。
今後もよろしくおねがいします!ムッネニークさんこんにちは。
先日の読書会にいらっしゃいまいたよね。
今後もよろしくおねがいします!2022/02/01
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私も、国の成り立ちも難民キャンプのことも、初めて知ったことが多いです。
難民キャンプ内でも、経済格...
私も、国の成り立ちも難民キャンプのことも、初めて知ったことが多いです。
難民キャンプ内でも、経済格差や、世代による考え方の違いや、インターネット登録流行りや、どこの社会でも行われていることが行われていることも感じました。
おっしゃる通り、読メの読書会に参加しておりました!
最近になってブクログにも投稿を始めましたので...
おっしゃる通り、読メの読書会に参加しておりました!
最近になってブクログにも投稿を始めましたので、こちらもよろしくお願いします!