本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること: 沖縄・米軍基地観光ガイド

著者 :
  • 書籍情報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784915999178

感想・レビュー・書評

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  • 占領期を知るための名著 Vol.31 『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること』『沖縄・米軍基地 観光ガイド』 須田慎太郎写真 矢部宏治文 書籍情報社 | GHQ.club
    https://ghq.club/?p=4198

    『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること』:辺野古浜通信
    https://henoko.ti-da.net/e3445298.html

    本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること : 沖縄・米軍基地観光ガイド 前泊 博盛(監修) - 書籍情報社 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784915999178

  •  「国語教科書の思想」(石原千秋)によると、日本で最も使われている小学校用国語の教科書は、核兵器開発反対運動の写真に、実際に原爆を使用したアメリカの様子でも、ここ日本の様子でもなく、パキスタンの写真を使っています。きっと、何かに細やかな「配慮」を示し、こうした運動は遠い国のできごとだという印象を、子供たちに与えたかったのでしょう。以下は、ある年の千葉県高校入試、英語リスニング問題です。

     Jim : Did you have a good time in Okinawa?
     Beth : Yes, of course.
     Jim : How was the weather there?

     これに続く応答として正しいもの(It was sunny and warm.)を選ぶ問題だったのですが、アメリカ人が観光について話す他愛のない会話の舞台が、よりによって、なぜアメリカ軍基地問題に苦しむ沖縄なのでしょう。まるで東京電力の幹部が福島へ行って、喜多方ラーメンを食べながら談笑しているようです。つまりこれも、沖縄=観光地という印象を強化するべく、「選りに選って」作った会話だったのでしょう。
     この本は、体裁は写真の豊富な旅行ガイドそのものなのですが、紹介しているのは観光スポットではなく、米軍基地の様子がうかがえる場所です。基地内にはもちろん入れないし、外からであっても、撮影はすぐ止められてしまいますが、この本が載せているのは、そうした状況の中で、地元の人々が見つけて守ってきた、フェンスの向こうが合法的に確認できるポイントです。写真の解説、背景を述べる文章、関連図書の紹介、すべて充実した素晴らしい本です。

  • 4.31/311
    『 「よく知っている」つもりが、あらためて問われると実は「本当は何にも知らなかった」ことに気づくことが多々あります。
    …本書は、そんな知っているつもりの憲法、日米安保、基地、沖縄問題を、現地ルポもまじえ源流から丁寧にたどり検証することで、国民の多くが「実は何にも知らずに過ごしている危うい現実」を浮き彫りにしています。本書を手に多くの人々が沖縄を訪れ、安保・沖縄問題が一日も早く解決されることを願ってやみません。(「監修の言葉」より)』


    目次
    本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること
    1 ペリーはなぜ、最初に那覇にきたのか
    2 沖縄には、6人の帝王がいた
    3 普天間は「法律上の飛行場」ですらない
    4 占領はまだつづいている
    5 鳩山首相はなぜやめたのか
    6 続・鳩山首相はなぜやめたのか
    7 天皇に切り捨てられた島
    8 県道251号線・パイプライン道路を行く
    9 嘉手納と辺野古の弾薬庫に核はあるのか
    10 日本国憲法と日米安保条約
    11 アメリカの対日政策
    12 CIAと戦後日本
    13 日本テレビとCIA
    14 戦後体制の守護神・司馬遼太郎
    15 60年安保とは、なんだったのか
    16 沖縄返還とは、なんだったのか
    17 写真を撮るときの注意
    18 細川首相はなぜやめたのか
    19 少女暴行事件
    20 沖縄の海兵隊はグアムへ行く
    21 日米合同委員会とは何か
    22 いま、日本に何が起こっているのか
    23 小指の痛みを、全身の痛みと感じてほしいのです
    24 アメリカの2つの顔
    25 世界の希望はどこにあるのか
    26 フィリピンにできたことは、日本にも必ずできる
    27 「常時駐留なき日米安保」と「アジア共同体」
    28 そして輝ける未来へ

    沖縄・米軍基地観光ガイド
    1 那覇空港から普天間基地周辺まで
    2 嘉手納基地とその周辺
    3 与勝半島(勝連半島)と天願
    4 キャンプ・ハンセン地区
    5 キャンプ・シュワブ地区
    6 北部演習場地区
    7 本島周辺の島


    『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること―沖縄・米軍基地観光ガイド』
    著者:矢部 宏治(やべ・こうじ)
    写真:須田 慎太郎(すだ・しんたろう)
    監修:前泊 博盛(まえどまり・ひろもり)
    出版社 ‏: ‎書籍情報社
    単行本 ‏: ‎351ページ

  • 沖縄へは仕事がきっかけで足を運ぶことになり、その後何度も訪れるリピーターとなった。
    再訪する中で、軍雇用員の女性と知り合いになり、彼女のエスコートで嘉手納基地に入ったことがある。チーズケーキが有名なカフェを利用しただけだったのだが、私には記憶に残る体験となった。

    基地と観光は結びつかないと思っていたけれど、この本は複雑な問題をひとつひとつ紐解いてくれる。レジャーにせよ自然観察にせよ、仕事にせよ、沖縄をを度々訪問する人にとって、観て観ぬふりできぬ問題だ。気になった人は入門書として手にとってみるべきだ。

  •  版元・書籍情報社の代表でもある矢部が、カメラマンの須田とコンビで作った本。沖縄国際大学教授の前泊博盛が監修を務めている。

     副題のとおり、「観光ガイド本」を模した体裁で作られている。おすすめ観光スポットの紹介もあれば、有名レストランの場所を含むマップもある。しかし、メインに紹介されているのは米軍基地と関連施設ばかりなのだ。

     こうした本のつくり自体、痛烈なアイロニーになっている。米軍基地さえなければ、ハワイをしのぐ国際的リゾート地となるはずの沖縄。県内の一等景勝地が、軒並み米軍に占領されてしまっている沖縄――そんな苦い現実が、行間から浮かび上がってくるのだ。

     そして、一風変わった沖縄観光ガイドとしても、十分な実用性を具えた本である。
     米軍施設の中に入って写真を撮るわけにはいかないから、著者たちは施設がよく見える周辺スポットを探し、そこから撮影している。そして、どの場所から撮影した写真なのかが、逐一マップで示されている。それらの場所は、沖縄を旅した際に米軍基地をよく見てみたいと考えた者にとって、咎められず観察できる絶好のスポットとなるのだ。

     写真の合間に入れられた、矢部による計28本のコラム(書名の『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること』に相当するもの)も、じつによくできている。
     コラムといっても1本が4ページ程度のわりと長いもので、沖縄と米軍基地をめぐるさまざまな問題がひととおり概観できる内容だ。我々「本土の人間」にとっては目からウロコの事実も、多数盛り込まれている。

     ヴィジュアルと文章の両面から理解できる、上質の「沖縄・米軍基地問題入門」である。  

  • 旅行ガイド本っぽいレイアウトやかるい文章とは対照的に、中身はとてもシリアスでロジカルな本。他の本と組み合わせて、本当に納得行く内容でした。ペリーから入ったのが素晴らしかったです。沖縄について、知らないことがまだまだ多かったと反省しました。あと、右翼がなぜアメリカをサポートするのか、そのパラドックスもやっと謎が解けました。左翼が(アメリカが作った)憲法9条を守ろうとするのは未だによくわかりませんが。

  • オスプレイの配備を政府が容認しました。あれがヘリコプターだと言い張られて、はいわかりましたと言ってしまうとは。アメリカはジャイアン、日本は(ドラえもんのいない)のび太のようです。
    オスプレイは最近の事例ですが、蹂躙されつづけてきた沖縄のことが、ずっしりと掲載されている。危険を侵して撮ってきたんだろうと想像できる基地の写真(撮っていいところから撮った、というような注意書きはあるけど)が多く掲載されている。文章も軽妙でいて重いところをズバズバとついている。良い本です。

  • 沖縄米軍基地見学ガイドの体裁をとった、沖縄米軍基地から見た「この国のかたち」論。なんといってもつくりがうまい。そのへんの学者の本より何倍もわかりやすく、おさえるべきポイントをきっちりおさえているのには感心する。もちろん、制作者たちの議論にかならずしもすべて同意する必要はないが、議論の前提として最低限、これだけの事実はおさえておこうよ、という基本の部分はしっかりしていると思う。
    しかし、よくできている本だけに非常にがっかりしたのが、1995年の少女暴行事件についてのコラム。なんで男って、「もし俺の女がやられたら」って発想しかできないの?女と中国に対する司馬遼のトンデモ暴言にもえらく寛大だしね。そこで味噌がつきました。

  • 控え目に言って、素晴らしい書籍。

    沖縄に行った際、るるぶよりも断然役に立った。

  • 「なんとなく」日米間の中には、うまく表せない「何か」があるんだろうな、ぐらいに思っていたところを、正確な情報と言葉で表してくれた本。
    真藤順丈の「宝島」を並行して読んでいるので、沖縄について、もっと知りたい、知らなければいけない、と痛感している。

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著者プロフィール

(やべ こうじ)1960年兵庫県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。株式会社博報堂マーケティング部を経て、1987年より書籍情報社代表。著書に『知ってはいけない――隠された日本支配の構造』(講談社現代新書)、『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』『日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか』(以上、集英社インターナショナル)、『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること――沖縄・米軍基地観光ガイド』(書籍情報社)、共著書に『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』(創元社)。企画編集に「〈知の再発見〉双書」シリーズ、J・M・ロバーツ著「図説 世界の歴史」(全10巻)、「〈戦後再発見〉双書」シリーズ(以上、創元社)がある。

「2019年 『日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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