- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784909646057
作品紹介・あらすじ
これまで誰も解読に成功することのなかった、北朝鮮という不可解なる暗号を解くカギとなるもの……それが外部の者が入ることが許されなかった秘境の世界、平壌という都市であるだろう。
本書は、著者の20年にわたる平壌でのフィールドワークを基に、都市の世界観を直感的に伝えるビジュアル・イメージとともに独自の理論をまとめたものである。
現代的感覚との、政治的な乖離がある北朝鮮の在り方が国際問題化して久しい。そのうえ、平壌という都市自体が無視されているのが現状である。
しかしパラダイムがシフトし、時代が変われば、平壌という都市文明とその独自文化が世界の社会人類学の対象になることは間違いない。
その先鞭をつけ、ひもとくための一助となるものがこの一冊であると確信している。
感想・レビュー・書評
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平壌は独裁者=「巨人」が意のままに作った箱庭である、というのが書名の意味。朝鮮戦争で一旦破壊されたからこそ、北京やモスクワ以上に新しい街作りができたのだという。金日成時代はまだソ連の影響が残る新古典主義建築、金正日時代は構成主義建築、金正恩時代はSF的なバロック建築、とまとめている。建築だけでなく、地図も使用した都市計画の分析ももっとあるとよかった。
他方、風呂敷を広げ過ぎで焦点がぼけ、また妙に難解な文体が読みにくいと感じる箇所もあった。平壌論は、本書の主題だろう建築や都市計画よりも、むしろ一般的な北朝鮮史や現在の市場経済化の記述の方が多い。革命ポスターや公園建造物等の写真を多用して章を立てているのは、写真を見る分には単純に面白いが、本論との繋がりがよく分からない。人物写真を10代後半の少女限定で一つの章にしているのは興味本位先行かとの感想も抱く。また、北朝鮮内部での平壌と地方の関係を華夷秩序にたとえるのは強引かとも思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示