ドラえもん論 ラジカルな「弱さ」の思想 (ele-king books)

著者 :
  • Pヴァイン
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909483508

感想・レビュー・書評

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  • ほとんどの人が持っている言葉にはできない共通認識としての未来への約束。
    そこにはドラえもんがいる。
    ドラえもんを渇望するのはあの世界が大きな絶望と諦念を認めた上で、あらゆる弱さを互いに肯定しているからかもしれない。
    自己肯定と自己嫌悪は常に一緒にあって、その中で葛藤して生きていく。
    そんな弱さを抱えてダメなところもそれなりに愛していいと自分で思えるのは、約束という不確かな祈りと希望があるからだと思う。
    世界に絶対的なものはない。
    何度繰り返しても同じ結末にしかならない。
    だからこそ友情という優しさに縋ってしまう。
    それを弱さをもって支えてくれるドラえもんの世界は切なくて優しい。

  • ドラえもんという作品を通じて、藤子F不二雄先生の考えや思想に深く触れられる書籍です。
    今でいうアニメ作品の短編から映画作品の長編まで、あらゆる中身を通じて藤子F不二雄先生がマンガに込めた思いを、著者の目線でとにかく深く思考を繋げています。
    私個人としては、もう少し弱さにフォーカスした内容が深掘ってあると嬉しかった(第2章と3章の作品を通じた著者の深い思考の部分が大部分を占めており、そう感じたのかもしれない)
    ただ、第1章で弱さへの言及はきちんとされており、のび太の本質的な弱さはドラえもんへの依存ということや、「ふつう」への言及は非常に共感しました。

  • 日本の国民的アニメと称されるご存知「ドラ
    えもん」の考察本です。

    国民的アニメと言われる割には、その内容を
    しっかり分析した本は無かったような気がし
    ます。

    特にアニメという土俵で、かの国のディズニ
    ー作品と比較されると非常に分が悪い。

    ディズニーはユニバーサル化を見越して、
    主人公の多様性、つまり人種や性別にこだわ
    らない設定や、最近ではLGBTQまで意識した
    かのような設定になっているそうです。

    翻って我がドラえもんは・・・

    おそらく映画はともかくとして、TVで放送
    されていたら大人は真剣には見ないでしょう。

    故に、ドラえもんに対するイメージ(特に映
    画)は「のび太をはじめとした仲間が不思議
    な国の敵と戦い、最後はドラえもんの秘密
    道具によって勝利を掴む」というざっくりの
    パターンしかないと思います。

    つまり「いつも同じ」なのです。

    米国アニメはユニバーサル化、グローバル化
    されているのに、こちらは時代劇にように
    ワンパターンが繰り返されているのかよ、と
    思ってしまいます。

    しかし違うのです。
    この本を読むと考え方、見方が変わります。

    確かに大きい括りとして5年に1回くらいは、
    似た設定が繰り返されるらしいですが、各作
    品には作者の藤子不二雄Fの思いが大きく影
    響されていて、それが時には哲学的であり、
    時には文学的なのです。

    「こんな思いがドラえもん作品に隠されてい
    たのか」と驚くこと間違い無しです。

    次回からTVでドラえもんが流されていたら、
    子どもと一緒に食い入って観てしまうこと
    請け合いの一冊です。

  • ドラえもんの分析。
    長編映画の内容が微に入り細に入り説明されるので鬱陶しくて其処はすっ飛ばした。
    ドラえもんの存在意義、のび太の人格分析、ジャイアン・スネ夫・出来杉くん、しずかちゃんの立ち位置、詳細な解説が面白かった。とにかく愛がなければ書けないよね。
    全巻読んだわけでもなく、弟がドラえもん世代かなと思う程度。
    それでも面白かった。
    長編映画見てみようかな、と思わせる力作です。

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著者プロフィール

杉田 俊介 1975年神奈川生。批評家。『宮崎駿論』(NHKブックス)、『ジョジョ論』『戦争と虚構』(作品社)、『無能力批評』『ジャパニメーションの成熟と喪失』(大月書店)、『橋川文三とその浪曼』(河出書房新社)、『神と革命の文芸批評』(法政大学出版局)ほか。

「2023年 『対抗言論 反ヘイトのための交差路 3号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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