脱・筋トレ思考

著者 :
  • ミシマ社
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本棚登録 : 144
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909394255

作品紹介・あらすじ

「しなやかなからだ」をとりもどす。

筋トレ思考(=勝利至上主義、過度な競争主義…)は、
心身の感覚をバラバラにする!?

元ラグビー日本代表の著者が、
自身の実感と科学的知見をもとに新時代のスポーツのあり方を記す。

現役アスリート、指導者必読!

現代スポーツには勝利至上主義や商業主義、過度な競争主義がはびこっている。勝利、カネ、優越といった、目に見えてわかりやすい目的を掲げ、それに向けてシンプルな方法で解決を図る考え方を、本書では「筋トレ主義」と呼ぶ。筋肉さえつければパフォーマンスは高まるという単純思考が、スポーツ界でまことしやかに広がりつつあることに、私は一抹の不安を感じている。(略)本書は、スポーツ界のみならずいつしか社会全体にまで広がり、知らず識らずのうちに内面化しつつある、この「筋トレ主義」を乗り越えるための思索である。――まえがきより

感想・レビュー・書評

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  • 脱筋トレ思考とは、筋トレをすればパフォーマンスが上がると考えるようなシンプルで短絡的な思考はやめようということである。
    人間の身体はそんなに簡単に理解できるものではない。
    自らの身体は勝手に多くのことを知覚するのだから感覚を研ぎ澄ましていくことが重要である。

    難しいのは、感覚は数値化できないから、自分のパフォーマンスが上がっているかどうかわかりにくいことである。
    それでも信じてやり続けていくことで、進化を遂げていく。

  • スポーツにおいて、パフォーマンスを向上させる為に、筋力をつければ速攻で結果が得られるというのは、非常にシンプルな解決方法であり、その単純な思考方法に警鐘を鳴らしています。「筋トレ主義」と名付け、それに陥る背景を紐解いていきます。

    筋トレはわかりやすい解で、可視化もしやすく、また短期間で結果も出やすいので、すぐに飛びついてしまいがちです。しかし、見落とされてしまう問題もあり、その一つに可視化されない個々が感じとる感覚やコツがあります。

    筋トレは必要ではありますが、絶対ではなくパフォーマンス向上の一要素に過ぎません。逆に、鍛えたところに負荷がかかりすぎ、全体のパフォーマンスが落ちることもあります。
    もっと大切な事は、そのスポーツ毎に要求される体幹の動きであり、全身協調性と説いています。

    第4章の「『引退後』を言葉にする」は、指導者としてコツやカンにどのようにして言葉を与えて、それを伝えていくのかについて言及されています。
    言葉を与えることで、初めて経験が経験足りうるものになるという、一つの真理を提示してくれています。記憶の中にある曖昧とした経験のカオスに、言葉を与えるとくっきりと輪郭が現れる。
    しかし、それが共通言語になり相手に伝わるかは別の問題で、著者は「論理やたとえや経験を混ぜつつ身をよじりながら伝える」とその難しさを表現しているように思いました。この姿勢は、シンプルな解決方法を示した筋トレ主義とは、正反対に位置します。難しいこと、複雑なものをそのまま引き受けて、その中でもがいていく姿勢が伺いしれます。

    まだまだ「筋トレ主義」が蔓延していると思うのですが、その中で、一度今までの常識を疑ってみませんかという異議申し立ての書だと思いました。また、Twitterでは東京オリンピックの在り方にも言及されており、その姿勢に共感を覚えます。
    著者は、日本のラグビー界で輝かしい成績をおさめたトップアスリートです。余計に説得力を持って伝わってきました。

    • やまさん
      Andy0706Andy さん
      おはようございます
      やま
      Andy0706Andy さん
      おはようございます
      やま
      2019/11/10
  • 高校時代の野球部ではベンチプレス・スクワットでより重いものを持ち上げれる人がスタメンというのが監督の方針だった。本書を読んで改めてこの方針は誤っていたと思う。

    重いものを持ち上げることが目的になり、持ち上げられるようになった結果パフォーマンスが落ちてしまうメンバーも多くいた。(自分もその1人である)


    イチローの「現在の野球は、頭を使わなくてもできてしまうものになりつつある」という言葉の意味を改めて考え直すきっかけにもなった。

  • ウチの次男はスラムダンクに憧れてバスケを始め、大学の体育会まで残ってた、まさに「筋トレ派」の輩なのですが…たまたま話していた時、かつての名門山王工業…じゃない能代工業なんかがもうみる影もなくなっている、とゆー話題になりましてん。彼奴の言うには「殴って覚えさせるやり方が通用しなくなっっちまったから、それしか知らないコーチや監督のチームはダメになるしかねーんだよな」とのこと。ただし「やってみろ、できりゃそれでいいんだよ。」というやり方もアカンのだと。
    まさに「身体知」を理解しなければ、イマドキインターハイにも残れない、ってことなのでしょうなぁ。うむ実感。

  • 練習する過程で「身につける」ことを言語化する事によって腑に落ちることがたくさんあった。

    「何となく身についた」のではなく、内面の感覚に目を向けることによって「何故身についた」かが分かるようになる気がします。

    成長する事を意識している人にはオススメです。

  • 筋トレがもてはやされる昨今にあって、「脱・筋トレ思考」がいかなるものか興味を持ちました。
    ここで「筋トレ思考」として危険視されるのは「勝利至上主義」「商業至上主義」「過度な競争主義」として現れるある種の単純思考であり、そこに対置して本書が提唱するのは「脱・筋トレ思考」です。

    筆者は、現代はものごとを解決するために一刀両断するような単純思考が知らず識らずのうちに社会全体で内面化されつつあることを危惧しており、数値化の容易さから現在もてはやされる筋トレが、ひたすら筋力を疲れさせる単純動作によって、根性論による運動と同様に繊細な身体感覚を錆び付かせてしまう危険性を指摘しています。

    単純思考から立ち返るべきは、シンプルな解決方法に頼らずに感覚世界でいかにジタバタできるかを重視し、複雑に絡み合った現象をその複雑さを損なわずに根気強く紐解いていく思考であり、これを「脱・筋トレ思考」としています。そして「脱・筋トレ思考」が主眼とするのはパフォーマンスの向上であって、勝利・競争・金はあくまで手段でしかないことを説いています。この思考の射程は決してスポーツに限定されたものではないでしょう。

    このあたりの肝となる主張は概ね第1章と終章に著されており、他の章は周縁的な内容になっています。第5・6章については「感覚世界の見取り図」として感覚を分類、言語化した「発生論的運動学」が紹介されていて、こちらは一般読者というよりは特に指導者や教育関係者を主な対象としたものと見られます。

    「脱・筋トレ思考」とともにわたしが感心を持ったのは第3章でイチローの取り組みを例として紹介された「意欲は育むもの」。本書と出会ってから、いかに意欲を育み、また意欲を損なわないかが、生きるうえで非常に重要なものであることに思い至り、日々考え続けています。

  • 筋トレと単純思考の共通点…分かりやすい

  • 安易に分かりやすいものばかりを追求するのではなく、分かりにくいことを自分なりに考えながら受け入れながら、辛抱強くやっていかないかんということ。

  • 19/10/07。
    11/9読了。

  • 筋トレと筋トレ思考の差がわかりにくかったかな。自分の体と対話する言質で良かった気が・・・

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著者プロフィール

1975年大阪府出身。神戸親和大学教育学部スポーツ教育学科教授。同志社大学、三菱自動車工業京都、神戸製鋼コベルコスティーラーズに所属し、1999年第4回ラグビーW杯日本代表に選出。2007年に現役を引退。度重なる怪我がきっかけとなって研究を始める。専門はスポーツ教育学、身体論。著書に『近くて遠いこの身体』『脱・筋トレ思考』(ミシマ社)、内田樹氏との共著に『合気道とラグビーを貫くもの――次世代の身体論』(朝日新書)、『ぼくらの身体修行論』(朝日文庫)、監修に『たのしいうんどう』(朝日新聞出版)がある。

「2023年 『スポーツ3.0』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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