- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784909394125
作品紹介・あらすじ
「なぜだ⁉︎ 売れない文庫フェア」「中高生はこれを読め!」「ソクラテスのカフェ」……ユニークな企画を次々と生み出し、地元はもちろん、遠方からも愛された札幌・くすみ書房の店主。閉店後、病が発覚し、2017年8月末、他界。その著者の遺稿を完全収録。
生前、久住さんと親交の深かった中島岳志さん(東京工業大学教授)が解説を担当。
くすみ書房の「なぜだ!? 売れない文庫フェア」は、時代に対する痛烈なアンチテーゼだった。品切れ・絶版。本が死んでいく。そんな悪循環に、ユーモアを交えて切り込んだのが久住さんのチャレンジだった。(略)くすみ書房のフェアは、苦境に立つ人間に、常に寄り添っていた。しかし、久住さんは正義を振りかざさなかった。常に笑顔で、優しく、ちょっとした「おせっかい」を続けた。だから、くすみ書房は札幌の庶民に広く愛された。——中島岳志「解説」より
感想・レビュー・書評
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経営危機がきっかけで、ユニークな企画をおこなうようになった、札幌の〈くすみ書房〉。
志半ばにして亡くなった、実在の店主の遺稿。
個性的で、他にはない棚を作り続けた店には、行ってみたくなる魅力がある。
特に「なぜだ!? 売れない文庫フェア」は、普通のチェーン店では見られない企画でおもしろい。
講演会では、興味を持たせるような本の紹介がうまく、読んでみたくなる。
各種おすすめ本リストも、見てみたい。
友人に寄付を募るのは、もはや経営とは言わない気がした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
街角に本屋さんがあって、新しい月刊誌や美しい絵本が並んでいる。子どもでもお店の中に入って、ちょっと手に取って、中を覗き込んで、そっと棚にしまいながら、お小遣いの計算をする時代が終わり始めているのですね。
北海道の本屋さんの命がけの悪戦苦闘が、ご当人が亡くなって、初めて本になって、その奮闘のあれこれに初めて感心するという後追いの時代の空気が、やっぱり哀しい本でした。
コロナ騒ぎの中、お友達と始めた「100days100bookcovers」というフェイスブック上での気晴らしで、お友達から紹介していただいた一冊です。
紹介文をブログに転載しました。読んでいただけると嬉しい(笑)。
https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202210130000/ -
ブクログに登録する人は本が好きという意識はあると思います。自分も本好きッス。
当然本が好きならばリアル書店で本買うよねという話になると、途端に人数が減るであろうという予想は立ちます。
今はネットで何でも買える時代なのでわざわざ買いに行く必要を感じない人もいるでしょうし、そもそも近所に本屋が無いなんて地方の人もいる事でしょう。
ブックオフに行けば新古書もたくさん並んでいるし、わざわざ正価で買う必要もないという気持ちよく分かります。
しかも図書館で借りればまさにゼロ円で読み放題。本というコンテンツは消費者にとって非常に恵まれたもので有る事がどの側面から見ても分かります。
書店の苦境は散々読んで知っていますが、有名書店でお客さんが沢山来ていても利益が低すぎて倒産してしまうんですね。このくすみ書房もまさにその一つです。遠く北海道の書店なので行く事は出来ませんが、行ってみたい書店の一つでありました。2015年に閉店するまでの血を吐くような経営と本への愛がつづられています。
さらに小学生、中学生、高校生に向けてこれを読んで欲しいという選書をして、それを多くの人達と共有する。本という閉じた世界から出来るだけ多くの人とつながりたいという久住さんの人柄が伝わってきます。
売れない文庫を売るフェアというのは雑誌で読んでいて、なんと面白い事する人なんだろうかと感心した記憶があります。これだけ仕掛ける人の書店であれば黒字なんだろうなとぼんやり思っていましたが、まさかこんなに苦しい経営だったとは。
この本を読んで思い浮かぶのは、自分が好きな小さな本屋さんの姿でした。皆、何気なく書店経営しているけれど、こんなに効率悪い商売を続けていらっしゃるんですね。文化事業という側面から、仕事が大変で儲からなくても仕方が無いという風になってしまっているんでしょう。
書店員さんの給料が悪いのも分かります。だってこんな有名書店が経営成り立たなくて借金経営だったんですから、人件費が安くなるのは仕方が無いんでしょう。それでも書店で働く、書店を経営するのは本を愛していないと出来ない事です。
ちなみに図書館に非常にお世話になっているので、意識的に新刊書店で毎月¥3,000から¥5,000本を買う事にしています。ブックオフで本を買う事が多かったのですが、図書館と新刊書店に切り替える事によって、リアル書店への貢献をしたいと思っている次第です。
ちなみに街の本屋さんも色々で有りまして、これだけ色々な店を見ているとレベルの差をとっても感じます。小さい書店なのに圧倒的に中身が濃い書店もあれば、結構広い店なのに特別見るべき所が無い書店もありますが・・・。
ただ、その特別ではない書店というのは、なんとかその街に書店を存続させて来た店なんですね。万遍なく皆が読みたいであろう本を仕入れて、子供が最初に読む絵本や児童書。少年少女が買う参考書。わくわくしながら読んだ漫画なんかを提供していた店でもあります。そういう店が一番ダメージを受けているんですね。そして町から本屋が消える・・・。
がんばっている書店では敬意を表して必ず本を買います。その本をどこで買ったかという事自体も本を読む醍醐味です。本に宿る思い出も大事にしていきたいものであります。 -
良い!とても良い。
久住さんの本屋を営む情熱があふれ出している。
わたしも中学生のとき、中学生はこれを読め!読んだ1人だと思う。
琴似付近に住んでたことあったのに、一度くすみ書房に訪れてみたかった。
北海道の本屋さん、なくしたくない。遺したい。 -
札幌の西区琴似にあったくすみ書房。そこの「オヤジ」が遺したモノローグである。
不況の本屋業界において、さまざまなアイディアを駆使して事業が再び伸びていくところは痛快だけど、そのウラでは七転八倒、青息吐息、ビジネス環境が激変する中で頭を限界まで絞り、資金繰りに奔走する日々が続く。
やがて琴似を去って大谷地に移転、そしてついに破産。その後ようやく一つの方向性が見えたところで病を得、志半ばで亡くなってしまう。本書はその途中でプッツリと終わる。やりきれない。
「本屋」に未来はあるのだろうか。 -
本好きに読んでほしい本。
なぜならこの本には、町の本屋さんの危機感がひしひしと伝わってくるからだ。
前半は工夫とアイデアによって、人を集めていく話。
じょじょに、経営の面でも、生活の面でも辛いことが重なってくる。
大手の本屋にはない、地域ならではの味のある本屋がなくなっていく現状は、寂しい。
売れる本、話題の本ばかりあつかうことで、本屋さんだからこその本に対する知識見聞が鍛えられない、脆弱になっていく、という話は出版業界だけではなく、私たちの知的水準の狭さ、浅さにもつながるような話で、本屋さんの存在意義を改めて考えさせられた。
私たちと本をつなぐ本屋の役割は、ビジネスだけにとどまらない。
本書に出てくる、売れない文庫フェア、中高生はこれを読め!、朗読会など、ワクワクする企画がある本屋さんは少ない。
独自の選書をしている本屋さんはどこか洒落ていて、気軽さはない。
くすみ書房は親しみがわき、読書ってもっと気軽で楽しいもんだよと、そういう軽やかさがあるのが素敵です。
この本屋さん行ってみたいと思わせる魅力ある本屋さんが、また町中に復活してほしい。
求めている本だけではなく、意外な本との出会いをさせてくれるような本屋さんに、私も行ってみたい、そう思わせてくれる本でした。
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本屋の経営ってこんなに大変なんだ!と思い知らされました。
これからの本屋のスタイルについても考えさせられます。
昔ながらの本屋も、カフェが入っているような本屋も大好きなので、微力ながら地元にある本屋を買い支えて行きたいと思いました。 -
本が好きな人にも、そうでない人にも読んで欲しい。
こんな素適な本屋さんがあったなんて。こんな本屋さんが近くにあればいいのに。
でも、ネット書店や本離れ、大型書店の進出で、町の本屋さんはとても厳しい状況に置かれている。こんな素適な本屋さんが結局は閉店に追い込まれてしまうのだから。
ネットや大型書店は確かに便利だけど、その便利さだけを追求していたら、本当に大切なものが失われていってしまうかも。
「本屋に行って目に飛び込んでくる本というのは、今の自分にとって一番必要な本だと言える。」と久住さんは書いていますが、だからこそ、本屋さんがもっと活用されてほしい。
「本には奇跡を起こす力がある。」
「本には全ての答えがある。」
「本屋のない所で子育てはしたくない」 -
奇跡の書店に行きたい。くすみ書房こそそうだったのでは…。いろんな読みたい本が増えた!
地元のお気に入りの本屋さんが続きますように。