上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白

著者 :
  • ミシマ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909394033

作品紹介・あらすじ

「50で人格崩壊、60で死ぬ」。医者から宣告を受けて20年——
なぜ、オレだけが脱け出せたのか?

「その後」に待ち受けていた世界とは??
壮絶!なのに抱腹絶倒 

何かに依存しているすべての人へ

アル中は遠くにありて思うものです。
山にかかる雲と同じで、その中にいる人には、なかなか気づくことができません。
一度、雲の外に出てみないと、視界が確保できないからです。
私の告白が、雲の中で苦しんでいる仲間にとっての蜘蛛の糸みたいなものになったら良いなと思っています。
まあ、私はお釈迦さまではないわけですが。
(告白─ 「まえがき」に代えて より)

感想・レビュー・書評

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  • 「元アル中」コラムニスト・小田嶋隆さんのアルコールコラム

    ひい~そうだったのか!?
    と思うことばかり。

    よくドラマなんかで見る
    「酒を飲まないと手が震える」とか
    「毎日浴びるほど酒を飲む」とか
    「とにかくいつも酔っている」とか
    アルコール中毒はそんなわかりやすいものじゃないっていうのに目からウロコ!

    少量でもアルコール中毒にはなる
    「今週は3日ぐらい飲んでないな~」でもアルコール中毒
    アル中に理由なし
    連続飲酒発作があればアル中
    などなど…

    いや、ホントに誰でもアル中になりえる恐ろしさ…

    私の仕事の世界は本当に飲む人が多くて
    酒乱系の人が多い(断言!)
    「あの人、飲まなかったらいい人なのに…」
    (って、これって、まさに本の中で小田嶋さんが書いてる通りよ!)
    なんて言われている人が山のようにいる!
    ケンカふっかけてくる人、キス魔になる人、セクハラする人、器物損壊する人、道で寝る人…
    そんな風にアルコールで笑えない失敗をする人を山のように見てきて、仕事関係で飲む会には絶対に行かないようにしている。(なので、仕事の人からは飲み会嫌いの人と思われている)
    あのまま流されて飲んでたら私もアルコール中毒の仲間入りに違いない…。


    そして、「お酒は暇つぶしでしかない」という小田嶋さんの言葉が深い!
    飲酒人口が減っている中、今を生きる人々には新たな「暇つぶし」に縛られている。
    そう、それはスマホ。

    そうか…
    結局、人は暇つぶしで人生を生きているのか…

  • アル中時代の経験がすごくて、
    よくこの性格で酒やめたなぁと感心しました。
    私の周りで煙草やめた人はたくさんいるけど
    酒やめた人いません。
    今のところ私だけです。

    私の父なんて、さいごの入院の前日まで飲んでいたのですが
    それ以外は健診の前一週間だけ休肝していました。

    小田嶋隆さんは断酒20年
    酒についての厄介な思い込みから、ようやく距離を置くことができるようになったということ、と思っているそうです。

    〈酒の場合、身体を壊すとかみたいなことももちろんあるんだけど、働いていない時間のすべてを酒に吸い取られる、という部分が、実はもっとも大きい損害なんですね。とすると、それは実はスマホでも同じことだったりします。肝臓は壊さないでも、脳がゆっくり壊されるんだとしたら、そりゃやっぱりヤバいだろ、ってことです〉

    〈何かに依存するってことは、自分自身であり続けることの重荷から逃れようとすることで、逃避という行為自体はスマホでもお酒でもそんなに変わんないんですよね〉

    『スマホ脳』にも似たようなことが書かれてあって、うーん、気になりますね。

  • コラムニストさんのアル中体験?記
    毎日飲まなくっても依存。
    アル中進むと、アル中ではないぞって考えるようになる。要注意ですな。
    現代はネット、スマホ依存。
    そうじゃないよって思ってる人がやばいのかも?

  • コラムニストの小田嶋隆氏が元アル中であったことを公表し、その体験をつづったもの。アル中というものについて、これほど分析的に、正義ヅラせず、かつわかりやすく書いたものはないのでは。そうかそういうことか!と目から鱗がポロポロ。

    小田嶋氏の書くものには、ズバッとしたことを淡々と言う、ウケを狙わない、多勢に迎合することをしない、という印象がある。アル中であった時期、そして断酒中の現在についても、感傷を排して、しごく冷静に書かれている。第1章のタイトルは「アル中に理由なし」。最初っから、何事にも受け入れやすい「物語」をつい求めがちな世の傾向にNOを唱えているところなど、実に著者らしい。

    アル中者の世間との接点は「逸脱」にしかなく、それがドラマとしては劇的なので、アル中者の転落と死は美しく描かれがちだという指摘は、実にその通り。この実例は、作家や漫画家やミュージシャンなど、枚挙に暇がない。どういうわけか、日本社会は酒飲みに甘い(どころか、下戸には生きづらかったりする)。現実を直視すれば、まあたいていのアル中者は迷惑千万で美しくも何ともないってすぐわかりそうなものだけど。

    自身の体験に基づいて書かれているので、とても具体的で、そうかアル中ってこういうふうになるのね、とよくわかる。さらに、断酒することがいかに困難かということも、これまたすごーくよくわかる。酒を飲まないというのは、単純な「我慢」の問題なのではなくて、「酒抜きの人生」をあらたに構築し直すことだとあって、なるほどな~と思った。私は特に酒好きというわけではないが、それがいかに困難か、想像はできる。

    そしてまたよく考えれば、ことは酒に限らないわけで。自分には依存や嗜癖の対象がない!と言い切れる人はそう多くないように思う。好きなものをやめてまで何の人生か、という心情に共感するところは自分にもある。最後のあたりの一部を引用しておく。

    「年季の入った酒飲みが毎度おなじみの酩酊状態に到達すると( 中略 )架空人格みたいなのが自分に降りてきて、そいつに任せればいいみたいな状態になる。で、自分という主体を取っ払ったとこで暮らしたほうが本人にとっても楽なわけで、だからこそ彼らは酒を飲むわけです。 してみると、何かに依存するってことは、自分自身であり続けることの重荷から逃れようとすることで、逃避という行為自体はスマホでもお酒でもそんなに変わんないんですよね」

  • (こないだまで毎日4-5缶ビール飲んでたので)わたしじゃん!と思って読んでみたけど、想像の上をいく体験・生活でおののいた。。笑
    でも、確かにこんなふうに考えることはあるなとか、わたしもあの時そうゆう状態やったんかとか、言い当てられてるポイントが多くて、お酒と生活、依存について分かりやすく的確に言語化されてるから納得度も高く読み応えがあった。

    ・断酒は忍耐力があるかより、お酒がない暮らしを一から構築する企画力と計画力と実行力があるかだ
    ・アル中は考え方の病気で、自己評価が曲がってくる(肥大する)
    ・酒じゃなくても、SNSでのコミュニケーション依存や検索依存(?)は自分が考えなくても良い時間にしてるだけ
    この3つ、確かになあ、覚えとこうと思った

  • アルコール依存症の治療を継続していくための考え方の参考になります。エッセイの長さがちょうどよく読みやすかったです。

  • 「お酒をやめるとはどういうことなのか」が当事者の視点から語られているのが興味深く、「それは確かにやめるのは難しいだろうな」と思いながら読みました。

    支援する側、お酒をやめるよう伝える側もこの辛さをわかっておかないと、お酒をやめ続けることにはつながっていかないだろうな、と思います。

    お酒をやめるということは、お酒のある生活そのものを一から組み替えること。

    私たちの暮らしがいかにお酒と密接に存在しているかがわかります。私はお酒はほとんど飲まない生活をしていますが、お酒がないことで居心地が悪く感じたり寂しく感じたりする場は確かにあります。
    お酒を飲まない人も楽しめる場がもっと増えていくといいな、と思いました。

  • アル中だった時代を淡々と語られる。分かりやすい理由がなくてもアル中になりえるということは、誰にでも可能性があるということ。もちろん自分も。
    出勤途中に缶ビールや缶チューハイを飲むということを10年以上続けているが、いい加減やめるようにしようと何十度目かの決心をした。

  • アルコールの話はそれなりに、なんだが。最後のスマホ依存の話がおっそろしく本質的。検索に行ったところで検索先に脳味噌を吸い取られちゃう。情報収集している間、人は頭を使わない。スマホを眺めている人間は自発的な施策をやめてしまっている。私は原稿書く商売だから余儀なく情報遮断の時間を確保しているけど、そうじゃない人が電源を切って自分の頭で物を考えるのはこれは案外難しい試練かもしれない。酒飲みが酩酊状態に到達すると、架空人格みたいなのが自分に降りてきて、そいつに任せればいいみたいな状態になる。自分という主体を取っ払ったとこで暮らした方が本人にとっても楽なわけで、だからこそ彼らは酒を飲む。という表現の的確さよ。いろいろあるけど、コミュニケーション依存の表現で今までで一番落ちた。

  • 自身の経験も周りの事も、共感する部分が多い(良いか悪いかは別にして)。
    私はお酒がない生活は今の所考えられないから、より上手く付き合う方法を自分で模索してきたし、これからも。まだまだだけど。

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著者プロフィール

1956年東京赤羽生まれ。早稲田大学卒業。食品メーカー勤務などを経て、テクニカルライターの草分けとなる。国内では稀有となったコラムニストの一人。
著作は、『我が心はICにあらず』(BNN、1988年、のち光文社文庫)をはじめ、『パソコンゲーマーは眠らない』(朝日新聞社、1992年、のち文庫)、『地雷を踏む勇気』(技術評論社、2011年)、『小田嶋隆のコラム道』(ミシマ社、2012年)、『ポエムに万歳!』(新潮社、2014年)、『ア・ピース・オブ・警句』(日経BP社、2020年)、『日本語を、取り戻す。』(亜紀書房、2020年)、『災間の唄』(サイゾー、2020年)、『小田嶋隆のコラムの向こう側』(ミシマ社、2022年)など多数がある。
また共著に『人生2割がちょうどいい』(岡康道、講談社、2009年)などの他、『9条どうでしょう』(内田樹・平川克美・町山智浩共著、毎日新聞社、2006年)などがある。
2022年、はじめての小説『東京四次元紀行』(イースト・プレス)を刊行、6月24日病気のため死去。

「2022年 『諦念後 男の老後の大問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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