トレイルズ (「道」と歩くことの哲学)

  • エイアンドエフ
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909355027

作品紹介・あらすじ

米国東部のアパラチア山脈に沿って続くアパラチアン・トレイル。全区間スルーハイクを行った著者は、足元に伸びる道に疑問を抱く。「トレイル=道」はどのようにできたのか?発展する道とすたれてしまう道の違いとは?根源的な疑問への答えを求めて、世界各地をめぐり、はるか昔の化石や動物の行動に関する最新の研究成果を求め、ネイティヴアメリカンの生活と思想、さらに東洋哲学の「道」に至るまでを訪ねる遠い旅に出た。歩くことを通じて、人間の存在と行動の起源に迫る。2017年全米アウトドアブック賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • そっと胸に抱きたくなるような本である。歩くという行動が思弁に傾くことを抑えて、脳の深層を活性化させているのだろう。
    https://sessendo.blogspot.com/2021/06/blog-post_28.html

  • 「道」は、進化の過程そのものである。

    すでにある道を歩きながら、人は道を変えようとし、それでいて道に変化させられる。

    生き方や流儀としての「道」は、まさに先人たちが試行錯誤の末に築き上げてきた"最適"な方法である。これは、どんな場所においても様々な人が歩くことで自然に踏み固められ、不思議と一本に収斂されていく物理的な道と同じなのだ。

    「道」について、ここまで考えたことはなかった。

  • ロマンチックだがそれが過度にならないようにバランスをとる知性的で中庸な文章が心を打つ。翻訳も素晴らしい。強引にジャンル分けするなら哲学的エッセイということになるか。
    すべての章がそれぞれに面白いがやはり彼の内省が前面に展開されるトレイル歩きがメインの章が特に素晴らしいと思った。

  • これまた荒木博之さんのVoicy、マイブックカフェのコーナーで紹介されていて気になっていた本。
    こちらを紹介された方が、本当に本の説明、魅力を伝えることが巧みで、本屋さんで見かけたとしてもタイトルと表紙だけなら絶対に手に取らなかっただろうな。良いご縁。

    以前、もしかしたら聞いたことはあったのかもしれないが、アパラチアン・トレイルという単語を初めて認知した。
    アメリカ合衆国東部、アパラチア山脈に沿って、北はメイン州のガターディン山から、南はジョージア州のスプリンガー山まで伸びる、全長約3500キロの長距離自然歩道らしい。この距離に最初は全然ピンときてなかったんだけど、訳者の方のあとがきで、下関市から青森市を往復できる距離…とあり、シンプルにびっくりした。
    著者は5ヶ月かけて、このトレイルを踏破(全行程を何ヶ月もかけて歩くひとをスルーハイカーと呼ぶらしい)し、その旅の中でトレイル…道についての深遠な問い、考察などを得る。

    世界最古のトレイルの化石観察から始まり、そもそも動物はなぜ動き始めたのか?昆虫のコロニーが作るトレイルのネットワークについて。4つ足哺乳類の移動、彼らを狩猟し飼い慣らし研究することが人類の発展にどう影響したか。そして古代人類社会がいかにして道とネットワークをはりめぐらせ、それがいかにして言語から文化に昇華してきたか。さらにはアパラチアン・トレイルなどの長距離トレイルが誕生するまでの経緯、さらにメイン州からモロッコに至る世界最長のハイキングトレイルを辿り、テクノロジーが結ぶ人々の新しい繋がりを描く。

    そんなわけでプロローグの数行、わたしからは最も遠いアウトドアな話かと思っていたが、プロローグを読み終わる頃にはトレイルについての興味がものすごい勢いでわいてきた。

    正直言うと、本著の中に出てくる膨大な地名、人名、著作名はほとんどがまったく馴染みのないカタカナ表記で読み通すのに苦労したのだが、この読書自体がわたしにとってのトレイル…道、のアナロジーになっている。本当に示唆深い。
    最近自分的ホットトピックである、世界を認識する上でのキーになるであろう「信仰」にも繋がる話で、
    難しいけれど、
    全然消化しきれないけれど、
    読み通して良かったし、思い返せば全編通してとにかく面白かった。
    考えてみればこの本だけでなく、読書自体がトレイルを辿る行為とも言える。
    いや、「本」自体がそうなのかも。
    なんとなく、「読んでない本について堂々と語る方法」について思い出したりした。

    ともあれ、アパラチアントレイルのスルーハイクに比べればめちゃくちゃ低いハードルなので、何度か踏破してみよう。
    今はまだ、ぼんやりとしか言語化できないけど、再読していくうちに自分なりに世界を認識するためのわりと理想的なトレイルが出来上がるかもしれない。



  • 哺乳類が形作るトレイルの生態学的な観点の話題から、人間が作り出す社会的な「道」に至るまでの、文化生態学的なエッセイ。世界中に散らばるロングトレイルに話題が広がる。著者がアパラチアン・トレイルをスルーハイクをした話題については少な目。

    もう少し紀行的なものを想像していたが、半分くらいは哺乳類の生物の話で、期待とは異なった。東洋的なものの見方に近づいていくことは興味深い。論説ほど一貫してはおらず、エッセイほど散文的ではない、中庸な構成。

  • 著者の道についての探求の旅をまとめた本。
    原初の生物、虫、動物、人間と様々なテーマについて深掘りすべく、多くの場所に出向き、たくさんの専門家と話をしながら進めていく。かなりのボリュームがあるので、ちまちま読んでいたがようやく読み終わった。印象に残るエピソードが多かった。読後は銃病原菌鉄やサピエンス全史を読み終わった時のような、そこまでではないものの、中々の満足感がある。

    wildernessについての記述を少し。
    かつてはヨーロッパからアメリカへの入植者が用いていた。未開で野蛮であり、開拓して征すべき地帯を指す言葉として。一方で先住民族には生きているフィールドそのものでありwildernessに相当するものはない。農業や畜産をして囲いを作って家を持つ入植者しか使わない用語である。入植者はいつしか未開地がなくなると今度は逆にそれを囲ってwildernessをある種守るべき神聖なものとして使うようになった。

    エピローグにて、トレイルとwildernessについて、ある老人との会話、古代中国の賢者の詩を交えながら著者が結論はとても興味深く、読後感がかなりよかった。

  • 米国東部のアパラチア山脈沿いのアパラチアン・トレイルという約3,500kmの長い長い自然歩道を春~秋に歩き通す過酷なスルーハイクを完遂した著者の、「道」(というより、跡?)に関する様々な話。虫や動物たちが作り出し、巧みに使いこなす道や、はるか古代の原子生物の移動痕の化石の話まである。生き物が移動し、他の生き物がその後を追う(トレイル)。インディアンたちの場所に大きく依存した観念、現代のスルーハイカーたちの、余計なものを極限までそぎ落とした旅。そういう話たちがゆっくり混ざり合い、はるかな大きな道としてつながっていく感覚がある。
    生き物は人間も動物も、コンクリートでもなんでもみんな否応なしに地球にトレイルを残しているという話が良かった。こういう「つながっていく」話が安心感を与えるのは、やはりトレイルが生物の本能そのものに深くかかわっているからなのだろう。大好きな作家さんのエッセイに「そうだ、…略…つながっていたい…略…わたしたちは、本当は、みな」という言葉があって、それは子供の頃からずっと私の心にあるのだが、久々に思い出してじんときた。

  • 道、更にトレイルとは何か。

    それを深掘り考察した本。トレイルを作る事とは人間はおろか、生物の根源的な性質であり、はるか昔の海底にいた頃から現在に至るまで脈々と営まれてきた活動である。

    様々な実例を出しているが、寄り道が多すぎて、冗長的。苦労していたが、途中でやめてしまった。

  • ■メインテーマ
    人間にとって道とは何か?そこから導かれる人間という存在への根源的問い。

    ■著者の主張
    トレイルは、文明にグラス人々が失ってしまった自然の豊かさを感じる力をつなぐ場所である。

    ■感想
    経済に依存して暮らす人間が、選択に縛られ不幸になっている。トレイルにはそういったいっさいの縛りから解放してくれる大切な場所なので、1人1人がトレイルを守らなければならない。

  • トレイルに関する歴史と思想の本。
    冒険物語ではないけど、興味深く読めた。

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