遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ

著者 :
  • スタンド・ブックス
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909048127

作品紹介・あらすじ

遠い場所への旅や、友達とのせわしない飲み会がまるで夢のよう。出歩けるのは近所ばかりだけど、ひとり海に行き、焚き火を見つめ、オンラインで友達とゆっくり話す。それでも元気でいれば、あと何回かぐらいは今日みたいな素晴らしい日がめぐってくるだろう。話題作『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(2019年)の続編的エッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は前作『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』に続く、超ゆる〜い体験型考現学ルポ第2弾。今回は〈近所〉〈旅〉〈調査〉〈人〉の4章立て。

    今作でも、小耳に挟んだ街ネタ、ふとひらめいたアイデアに飛びつくようにして、『あえて』『わざわざ』行動に移す。良い意味での『悪ノリ』。ただし、やる以上は真面目に。そのスピリットはきちんと受け継がれるどころか、バージョンアップしている印象すら受けた。

    本書の白眉は…表題にもあるように朝寝を貪り、寝癖がついた頭をポリポリしながら、『今日はとにかく大量の水が見たい!』気分に代表される発作的かつ無企画な〈ひとり遊び〉。電車乗り継ぐこと40分。JR須磨駅に到着。駅改札口前のコンビニで発泡酒を、向かいの水野屋でコロッケを、改札出て3分でひとり飲みセットをゲット!海辺の売店では須磨海苔も購入。眼前に広がる須磨の海を独占しカンパ〜イ!時間はまだ3時、須磨浦山上遊園へGo!

    こんな調子で、『六甲山の湧き水で焼酎飲めば美味いのでは⁈』『コロナ禍で行けないから両親の里 山形県の味を行った気分で味わえないか?』、表題にある『今日は「じゃないほう」ばかりを選ぶ!』企画では、いつものなら東梅田方面行き電車を大日方面行き電車に乗ることから始まる、ひとりアンチテーゼを敢行!

    コロナ禍の行動制限を逆手に取るかのように『ささやかだけど、感慨深い冒険』に、ひょいひょいと出かけ、ゴキゲンに過ごす様子についついニンマリ。

    ページを繰りながら、『わざわざこんなことして楽しい?』という声が著者の中に渦巻かないかな?と訝しむ僕は太宰治の『トカトントン』を想起。何かに熱中している時に、きまって『トカトントン』という金槌の様な音がどこからか聞こえてくる。その音色を聞いた途端、熱中していたことがどうでもよくなり、投げ出してしまう…。

    そんな邪念をあとがきの一文が一掃する。
    〈知らない場所を訪ねて誰かの話を聞かせていただくとき、親しい友人と一緒に些細なことで笑い合うとき、出会った人々から分け与えてもらった時間を私は本当に大切にできているだろうか、と思う。いつも軽く受け流してしまっているだけなのではないか、大抵の場合、後悔の念を抱く。まぁ、後悔の念と言いつつ、結局はそれを忘れてまた呑気に出かけていくわけだが…

    大概において日常は『なんでもない日々』の積み重ね。ハライチ岩井くんの著作『僕の人生には事件は起きない』を借りれば、ありふれた人生も視点を変えれば、面白さに溢れる。ゆえに人には自然に鼻歌のひとつも出るスパイスが必要。本書は安価で手に入るスパイスのあれこれ教えてくれる。今回もオススメです!

  • WEBライターさんが書いた小説かと思ったらじゃなかった。惹かれるタイトルは、第1章の『いつもの自分じゃないほうを選ぶ』から来ていると思われる。選択肢の中からいつも自分が選びがち、じゃない方を選ぶとして最寄り駅の地下鉄の行先からそれが始まっていく。4章全てが身近な生活の中で拡げる試みの文章で、なんの気負いもなく読めて楽しかった。大阪に住んだことはないけれど海も近いし島にも気楽に渡れるしいいなぁと思った。最後の『90歳、いや89歳の字書き職人・松井頼男さんと最後に会ったときのこと』で松井さん自身の仕事の説明話の録音データの書き起こしがあり、ルポルタージュ感があり微かに凄みを感じた。

  • とにかくお酒が呑みたくなる。

  • 盟友パリッコさんが直木賞だとしたら、スズキナオさんは芥川賞。
    分かり難い例えで申し訳無いのですが、自分の中ではそんな感じ。
    スズキナオさんは、子供の頃から自分の中に有った、もやもやした願望や希望を「あ」っと思わず言ってしまいそうなくらいさりげなく目の前に提示してくれます。
    名付け難き感情に名前を付けてくれるみたいな。なのでしみじみした気持ちで読み始めて、しみじみした気持ちで読み終わります。

  • これがスズキナオ流「生活史」
    遠い場所への旅や、友達とのせわしない飲み会がまるで夢のよう。出歩けるのは近所ばかりだけど、ひとり海に行き、焚き火を見つめ、オンラインで友達とゆっくり話す。それでも元気でいれば、あと何回かぐらいは今日みたいな素晴らしい日がめぐってくるだろう。話題作『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』待望の続編。
    (2021年)
    --- 目次 ---
    まえがき
    第1章 元気でいれば、もう数回ぐらい今日みたいな素晴らしい日がめぐってくるだろう――近所
    第2章 電車に乗った途端、さっきまで洋上にいたことがまるで嘘みたいに思える――旅
    第3章 自分がいなかった場所のこと、自分がいなかった時間のことを、どうやったら今より身近に感じられるようになるんだろうか――調査
    第4章 誰かが私に何かを話して聞かせてくれたことのありがたさと、私がそれをどれだけ聞こうとしてもひとりの人の内面には遠く及ばないという寂しさ――人
    あとがき

  • 「深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと」
    に続いて、何でもない日常を工夫次第でいかに楽し
    く過ごすことができるかのアイデアが満載です。

    標題の作品では、要は未体験の方を選んで行動する
    ということです。

    普段駅前を歩くのであれば、あえて住宅街を散歩す
    る。缶チューハイを飲むにしても未知の味を選ぶ、
    などです。

    アイデアと行動力さえあればコロナ禍で制限された
    日々さえも楽しく、おもしろおかしく過ごすことが
    出来ます。

    今回も「面白うそうだな。ちょっとやってみよう」
    と背中を押される提案がいっぱいの一冊です。

  • スズキナオさん二冊目。
    ローカルスポットがたくさん載っていて楽しい。関西に住むなら尚更。
    こういった日常の微妙なところをピックアップしてくるのがうまいなぁとおもう。心惹かれるから。
    回転レストラン、行ってみます。

  • ‪遠出をしなくても、近い日常の中に素敵なことがたくさんあるんだと信じさせてくれる本。読んでいるだけでも癒されるし、自分もそういうのを見つけにいきたいと思えた。

  • 何かの間違いでナオさんの人生と私の人生が交わってほしいと強く思う。そのくらいナオさんの視点や考え方が大好き。

  • お酒好きな人生でありたかった。
    企画がとにかく面白い。

    『優しい味ってどんな味』
    突き詰めて考えると難しいなあ。食べてるときの感想では使いがちだだけど、実際「優しい味のものをおしえてください」と聞かれたら悩む。お父さんの卵焼きとか、ぬるい

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著者プロフィール

1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』、『集英社新書プラス』、月刊誌『小説新潮』などを中心に執筆中。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、『関西酒場のろのろ日記』(ele-king books)、『遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ』(スタンド・ブックス)、『「それから」の大阪』(集英社新書)、パリッコとの共著に『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)、『のみタイム 1杯目 家飲みを楽しむ100のアイデア』(スタンド・ブックス)がある。

「2022年 『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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