まる ありがとう

著者 :
  • 西日本出版社
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本棚登録 : 375
感想 : 42
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784908443671

作品紹介・あらすじ

2020年12月21日、まるが天国へ旅立ちました。
養老さんは愛猫まると18年の時間を過ごし、その様子はNHKの「まいにち、養老先生、ときどき まる」でおなじみとなりました。
まるを自分自身の「ものさし」と語ってきた養老さん。まると過ごした日々、まるの死を通じて養老さんは、意識中心で頭でっかちになりがちな人間社会の危険性や、生き物にとって大切な感覚の世界について改めて思索を広げ、その視点は独自の「自足」論として本書で展開されます。
まるとの出会いと日常、生きていく術、死、ペットロス、生き物らしさなど、かけがえのない存在だったまるの死に直面して考えたことを、養老さんが語りつくしました。

まるの写真114枚掲載
まるに寄り添い、写真を撮ってインスタグラムやブログにアップしてきた、養老さんの秘書平井さんのエッセイも掲載しています。

 「ものごとを理屈にすることに長年励んできた。八十歳を十分に超えてみると、バカなことをしたものだと感じている。理屈で説明しようがするまいが、ものごとが変わるわけではない。その意味では、理屈にすることは一種の虐待であって、何に対する虐待かというなら、「生きること」に対する虐待であろう。まるは理屈なんか言わず、素直に生きて、素直に死んだ。いまでも時々しみじみ会いたいなあと思う。また別な猫を飼ったら、といわれることがあるが、それでは話が違うのである。まさに一期一会、かけがえがないとは、このことであろう」(本書 まえがきより)

「まるがいなくなって、ほぼ一年になる。まだついまるを探す癖は抜けない。まるが好んで寝転がっていた縁側に目が行く。ポンと頭を叩いて、「バカ」というと、少し迷惑そうな顔で薄目をあける。それができなくなったのが残念である。ときどき骨壺を叩いてみるが、骨壺の置き場所が、まるがふだんいたところと違うので、なんだか勝手が悪い。
「安らかに眠れ」というのが欧米の墓碑銘の紋切り型らしいが、いつも寝てばかりいたまるの墓碑銘としては、屋上屋の感がある。カントの著作『永遠平和のためにZum Ewigen Frieden 』はカントがどこかの墓碑銘から採ってきたといわれるが、このほうがいいかもしれないと感じる。みんながまる状態になれば、まさに世界は平和であろう」(本書あとがきより)

感想・レビュー・書評

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  • スコティッシュフォールドのまる。
    私はどうもこの猫種に弱い。無条件にスキスキなのである。こんなに大きくなるんだと驚きながらページをめくる。一緒にいるときの養老先生の写真はどれも笑顔。まるって、すごいな。そんなまるへの弔いの本、まるとのお別れ会の本版でもある。まるは養生先生のものさしだった。
    猫は喋らない、嫌なものは嫌、好きなものは好き。気楽で配慮も忖度もないからこそ、先生のものさし。
    養生先生は読者に何かを悟らせてくれる。
    そして養生先生の人生論、死生観の綴られた本。
    死んだら終わりとよく聞く。私もそう思っていた。でも、そう思うから生きてる間にいろいろと、がつがつしてしまうんじゃないか。今あるので、足りていると自足して暮らそうとおもえた。だって、欲しいものはまだいっぱいあり、きりがないが、家の中には、すでに物がいっぱいあるから。
    追悼本に収まらない、人生を素敵に生きる指南書です。




  • 知らないうちに20周年。初めてのベストセラーの兆し。(西日本出版社 内山正之) | 版元日誌・版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/nisshi1040

    西日本出版社 まる ありがとう 養老孟司
    http://www.jimotonohon.com/annai/a1671_maru.html

  • まると養老さんにほっこり。同じく猫を飼っている者として、猫たちからは本当にたくさんのものをもらっているなあとしみじみ感じながら読みました。4歳だから、いなくなるのはおそらくまだまだ先のことだとは思うけれど、どれだけ愛しても後悔することは出てきてしまうんだろうな。


  • 優しい笑顔の養老先生と、マイペースでお茶目なまるちゃんの数々の写真が載っていて、心の奥が優しさで満ち溢れてきます。

    養老先生は、まるちゃんを心から愛していたと同時に、まるちゃんが心のものさしであったと書いています。

    ○私たち人間は大きな部屋に人を100人集めたとして、それを見て「人」という概念で一括りにできる。でも、チンパンジーやまるは、おそらく別の個体が100人並んでいると感じるだろう。人は、そのように意識が優先するから、認識を共有して、言葉のやりとりが可能になるのである。だがそれが良いことずくめであるとは限らない。
    人間社会で暮らしていると、自然に人間社会の垢が溜まってくるので、感覚の世界を時々、確認したくなる。まるをものさし、つまりある種の基準として観察することで、私は自分の生き物としての自然な感覚を忘れないように、生身の自分を調整していたのである。…

     まるちゃんを愛玩猫として可愛がるのではなく、同じ生き物として、その生き方に尊敬の念を持ち、対等なものとして大切にされてたことが伝わってきます。

    とても素敵な一冊でした。他の本も読んでいきたいです。

  • フォトエッセイで、ジャンルとしてはエッセイ寄りなんでしょうけど写真が多くてタイトルに「まる」だから、やはり主はまるの写真でしょう。

    まるののんびりとしてふくふくとした佇まいに癒やされます。そのゆるゆるな写真に養老先生の生老病死を考えさせられるようなエッセイが一見ちぐはぐなようでまた何とも味わい深い。
    どの写真も先生の、まるを見る視線が何とも優しくてまるがどれほど大切な存在だったのか伝わってきます。
    まるが暮らした先生のお宅のお庭や自然の映り込みもとても良くて心洗われるような写真ばかり。あの座り方、スコ座りって言うのか…
    貫禄ありますよね(笑)
    先生にとって唯一無二の存在だったのですね。

  • 養老さんは、自分のすぐそばにいて完全に自足している生き物はまるしかいないという。だからまるは、養老さんにとって「ものさし」なんだと。まるはまるらしく生きてまるらしく死んだ。
    どの写真の養老さんも、まるを見ているまなざしが優しくてあたたかい。

  • 養老孟司さんの、今で飼われていた猫 まる。
    まるとの暮らしで感じた喜び、得た洞察、失った悲しみ。
    著者の、愛猫への想いが詰まった優しく温かいエッセイ。
    養老孟司さんらしい智慧もしっかり。

  • まるちゃん 本当にありがとう
    癒されました。

    猫を飼いたいけど、先を考えると決断できず。
    人の猫やグッズでも癒されますし、しばし我慢(笑)

  • 本屋でまるが並んでこちらを見ていたので、思わず「あっ」と声が出ました。
    「まいにち 養老先生、ときどき まる」2020年12月、普段通り見ていたらまさかの…。
    ウチのネコを看取って数ヶ月違いだったこともあり、読んでいると共に時が進んで来た様な感覚になります。

    代わりのきかない、かけがえのない出会い。
    解剖学で幾つもの命と向き合って来たであろう先生でさえ、まるが居ない気持ちを理屈で解決出来ないのだから。

    「今でも時々、しみじみ会いたいなあと思う」これに尽きるが、悲しみではなく「ありがとう」のタイトルが腑に落ちます。

  • 自分も まる のように自足出来る者になりたいと思いました。
    聞き書きだからか、いつもの養老先生の本ほど理屈っぽく無く読みやすかったです。まるの写真がたくさんで嬉しかったです♪

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著者プロフィール

養老 孟司(ようろう・たけし):1937年神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。医学博士(解剖学)。『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。『バカの壁』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。同書は450万部を超えるベストセラー。対談、共著、講演録を含め、著書は200冊近い。近著に『養老先生、病院へ行く』『養老先生、再び病院へ行く』(中川恵一共著、エクスナレッジ)『〈自分〉を知りたい君たちへ 読書の壁』(毎日新聞出版)、『ものがわかるということ』(祥伝社)など。

「2023年 『ヒトの幸福とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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