- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784908184345
作品紹介・あらすじ
Lの運動靴を最大限修復するか。
最小限の保存処理だけですませるか。
何もせずに放っておくか。
レプリカを作るか。
何もしない修復もやはり、修復のうちに入る。分析だけして何の治療もしないことも。
1987年6月、韓国の民主抗争の最中、警察の発砲した催涙弾によって命を失った20歳の青年、大学生の「L」。28年後、彼のものだとされるボロボロの片方だけの運動靴が、修復家の元へ持ち込まれる。
「L」とは誰なのか? 運動靴の「欠けら」を修復する行為にどのような意味があるのか? 個人の「消せない記憶」とは? 人が生き、死して残す「物体」に、そしてその「修復」に、果たしてどのような意味があるのか?
主人公の美術修復家の視点を通して、静謐な時間の中で語られる「物質」と「記憶」をめぐる物語。現代アート作品の修復に関するエピソードが挿入され、修復室を訪れる寡黙な人々の人生が断片的に語られ、読者は静謐な美術修復室で繊細な思考を主人公とともに体験する。
感想・レビュー・書評
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マーク・クインのセルフの話から始まる
いつも表情が違って見えるレンブラントの自画像の模写
キロギアッパ
色々な靴 カン先輩の父親の靴 彼女が息子に左右逆に履かせた運動靴(『アンチクライスト』のシーン)
適切な線 作家の意図を把握した修復 暴力的な修復
罪悪感 麻痺詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
民主化デモ中、催涙弾を頭部に受けて亡くなった“L”。民主化の旗印となった彼の遺品を集めた記念館から、劣化が進む運動靴の修復以来が美術修復士に舞い込む。
繊細な修復士の仕事を通して伝えられるのは、記憶をいかに後世に残すかということ。
大きな記憶で言えば、時折挟まれるアウシュビッツ、慰安婦等の言及。
小さな記憶で言えば、物語に出てくる記念館の館長だったり、お子さんを施設に預ける女性修復士の過去。
うつろい行く記憶への不安さとそれでも風化させてはいけない思い、後悔がかいまみえる中で、“L”の運動靴は何も語らず物語を終える。
残された記憶に、意味を見いだすのは私たちだ。 -
記憶の曖昧さを巡る困惑や過去への後悔・トラウマからの回復が文章に現れているのかなと思う。が、うまく理解できなかった。歴史の勉強をしてリベンジしたいところ。