- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784908028854
作品紹介・あらすじ
「恐るべき出来事」が呼び起こす場所と記憶の文化
「心霊スポット」という言葉が、雑誌・テレビのメディアに使用され始めたのは1990年代前半。その後、「神奈川ジェイソン村」「新潟ホワイトハウス」「八王子首なし地蔵」など、「恐るべき出来事」が語られる空間=訪れる場所としての「心霊スポット」は、インターネットの普及とともに隆盛を極めていく。本書では、「心霊スポット」という「語り」が成り立つ前史を概観し、テレビやネットで展開される実態を調査する。また、「将門塚」や「八王子城跡」など現代でも語りつがれる「心霊スポット」を検証する。
感想・レビュー・書評
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心霊スポットとはそもそも何か?歴史や代表地点を真面目に考察する本です。民俗学や論文を読むのが好きな方に特におすすめ。ちょっと怪談が好き、くらいの人にとってはやや難しい内容かもしれません。新潟の有名スポットが詳しくあって楽しかった。資料本としても非常に良い。
この本は心霊スポットの定義や研究の嚆矢だと思います。私も興味があり色々調べた事がありましたがやはりこのように学術寄りの本があると資料検索が進みますね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「心霊スポット」とはなんなのか、なぜ生まれるのか、そして人はなぜ心霊スポットに惹きつけられるのか、という考察の一冊。ホラー好きには興味深い点がいっぱいです。
「心霊スポット」が生まれるようになった背景や推移が面白いです。かつては心霊スポット=デートスポットとして特集組まれていたとか……衝撃でした。「幽霊デートコースマップ」って、そんな軽いノリで行ってしまっていいのか! いやむしろ祟られてしまえ、とかなりませんかね。
実際の心霊スポットを題材にした民俗学的考察も面白いです。同じように思える話にもバリエーションがあったり、それがどのように変化したのか、も興味深いし。だけどこれを読んで「よし、心霊スポットに行こう!」……とはならないんだけどな。その場所における物語性の魅力、はわかるけれどだからこそ気軽に触れてはいけない気もします。 -
2023/10/22 読了
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とても良かった。心霊スポットについて民俗学的な視点で分析する内容。
よく集めたな思うほどのデータを集め整理し考察しており、その端々にチラチラっと「ああ好きなんだな」と思わせるものがあり、しかしながら論理的かつ倫理的であろうとしているこの感じ、今の研究者という感じで私はとても好きです。
「心霊スポット」という言葉が「訪問への促し」をはらんでいるという指摘には、なるほどなーとなった。
雑誌を含む相当な量の引用に、これは…と思っていたら、「おわりに」で成城大学図書館への熱のこもった謝辞が書かれており、素晴らしい。そして最後の最後に死者への礼が尽くされている。
(あと私も、将門塚はなんというか感覚的には心霊スポットではないと思う。) -
あまり大したことないことを
論文風に書いてある。
物足りなかった。 -
私事ではあるが、昔、2chのオフ会の延長でケンちゃんハウスを探しに行った(見つからなかったが)。神奈川のジェイソン村に関する項目で全国の類似ケースが挙がっていて、ケンちゃんハウスもあった。懐かしい。
この本は心霊スポットを民俗学者が真面目に研究した本である。最初に語られる”心霊スポット”という言葉の成り立ちについて。まずここから面白い。”ミステリー”や”ゾーン”など多種多様な言葉を経て、”心霊スポット”となる。
また、心霊スポットを訪れる番組の変化も書かれている。特権的な者(霊能力者や稲川淳二)がその立場から心霊現象を読み解く番組に対し、北野誠のおまえら行くな。のように視聴者目線で驚き楽しむ旅番組に近い番組もある。昔、ニコニコ生放送で一挙番組をやっていて見た記憶がある。
この本の中では、神奈川ジェイソン村、道了堂、将門塚(将門の首塚)、八王子城跡、おむつ塚などについて、それがどういう風に語られ、どういう形を経て心霊スポットとなったのかの変遷を辿っている。膨大な調査に驚いた。それは歴史史料、過去の現地調査、テレビ番組、雑誌、Webサイト、2chやまちBBSまで。
八王子城跡の話が特に面白く、部外者だけでなく、そこを維持管理されている方の心の中にある「うしろめたさ」も心霊話に関係してしまっている。また、「三日三晩川が真っ赤に染まるほど血が流れた」という話は全国でもちらほらあり、元々は怖い話というより赤飯を炊く風習にちなんだ話であった。 -
類書が思いつかない良書。
心霊スポットを扱う民俗学の本。
学問として心霊スポットを扱う試みは大変興味深い。
心霊スポットの条件として「幽霊に会えなくとも良い」と語るのは、
単純だが鋭い指摘。
心霊スポットは殺人現場ではない。
観光地であり、またその恐怖を語る対象が「友人の友人」という指定も、
仕組みを聞けばうなづける部分が多い。
恐怖を体験した本人では信ぴょう性が問われる。
あまりに縁が遠いと切迫感に欠ける。
心霊スポットがどのように誕生するか、
あるいはどのように心霊スポットに”専門家”、
すなわち稲川淳二のような語り部や宜保愛子のような霊媒師が関与するのかの部分も面白い。
過去の心霊研究では科学を土台としてこういう「山師」の作用をうまく把握できていなかった。
しかし、現実に彼らのような「心霊の専門家」は一定の地位を得ている。
どのような仕組みか? 彼らがある種の専門性を持つという指摘は説得力がある。
そして専門性で語られることがあるなら、非専門的な語りもありうる。
心霊スポットを「ただ訪れ」「解釈しない」非専門的なカジュアルな心霊番組の立ち位置をこう読み解くのかと感心させられる。
科学読み物でもなく、単なるオカルト愛好の本でもない。
正しく民俗学の系統の本だと、心得のある人には楽しめる本だろう。
繰り返すが、類書がないのはやはり大きい。
情報源として一部旧2chを使う場面もあるが、
インターネット上の情報とマスメディアの情報を突き合わせることで、
情報の信ぴょう性を確保しているの重要。
「心霊スポットとはなにか」という問いを持つなら、
まず読むべき本だろう。 -
心霊スポット考――現代における怪異譚の実態
及川祥平 著
四六判上製/カバー装
本文312頁
2023年5月発売
定価3,300円(本体3,000円)
ISBN:978-4-908028-85-4
「恐るべき出来事」が呼び起こす場所と記憶の文化
「心霊スポット」という言葉が、雑誌・テレビのメディアに使用され始めたのは1990年代前半。その後、「神奈川ジェイソン村」「新潟ホワイトハウス」「八王子首なし地蔵」など、「恐るべき出来事」が語られる空間=訪れる場所としての「心霊スポット」は、インターネットの普及とともに隆盛を極めていく。本書では、「心霊スポット」という「語り」が成り立つ前史を概観し、テレビやネットで展開される実態を調査する。また、「将門塚」や「八王子城跡」など現代でも語りつがれる「心霊スポット」を検証する。
[http://www.webarts.co.jp/book/book_182.htm]
【簡易目次】
序章 場所と怪異の民俗学
第一部 心霊スポット考
第一章 心霊スポットとは何か
第二章 真相としての仮構
第三章 モノと感覚
第二部 心霊スポットの諸相
第一章 将門塚のこと―将門はどう祟るのか
第二章 八王子城跡のこと―怪異の変容
第三章 おむつ塚のこと―或いはたくさんのお菊
終章―誰がための心霊スポット