独裁者のブーツ: イラストは抵抗する

制作 : 増田 幸弘  増田 集 
  • 共和国
4.06
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本棚登録 : 89
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784907986636

作品紹介・あらすじ

童話『こいぬとこねこのおかしな話』、あるいは『園芸家の12カ月』の挿画など弟カレルとのコラボ「チャペック兄弟」としても日本で人気の高いチェコスロヴァキアの画家でエッセイスト、ヨゼフ・チャペック(1887-1945)。彼はナチズムがヨーロッパを席捲する危機的な状況のもとで、自由と平和、そして民主主義のために、独自のユーモラスなタッチで、連作『独裁者のブーツ』をはじめ「反ファシズム」をテーマにした1コマ漫画や諷刺画を描きつづけました。
本書は当時の新聞紙に掲載された貴重な作品を集成し、強制収容所で没するまでの生涯をたどった、日本語版オリジナル編集です。

感想・レビュー・書評

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  • 戦前戦中に活躍した作家であり画家、ヨゼフ・チャペックの画集兼伝記です。
    オーストリア=ハンガリー帝国下の現チェコ西部に生まれ、ベルゲン・ベルゼン強制収容所で死亡しました。
    児童書を中心とした多くの作品に携わり、最終的にはプラハの新聞の風刺画を手掛けます。
    その風刺画の抜群な切れ味をドイツに評価され逮捕・収監、そしてこの世の地獄へ移送されてしまいました。
    プラハの大衆に向けて軍靴を履いた独裁がやってくることを知らせる仕事に取り組んだ彼の作品は、今や街だけではなく世界へ飛び立ちました。
    可愛らしい筆致で繰り出されるパンチの効いた絵を楽しむと共に、WWⅡにおける被支配者の苦しみを垣間見ることができる一冊。

  • フォローしている猫丸さんに紹介していただいた本。
    公共図書館にあったので予約して借りました。

    すごい。
    戦争の足音がひたひたと迫る中、これだけ堂々と反ナチズムを表明するとは!

    もう少しうまく立ち回っていれば、強制収容所で亡くなることはなかったのかもしれない。
    でもこれが、彼の生き様なのだろう。

    なんとなく違和感を抱きながら日々を送る人に…

  • 部分的にしか目にした事のなかった、ヨゼフの風刺画が!
    本書に挟まれている 共和国急使 第32号の檄も素晴らしい。

    イラストでファシズムに抵抗したヨゼフ・チャペック――『独裁者のブーツ』を訳して - チェコ共和国 オフィシャルブログ 見る、知る、チェコ
    https://czechrepublic.jp/czech-culturehistory/tsudoimasuda/

    独裁者のブーツ ヨゼフ・チャペック(著) - 共和国 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784907986636

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「独裁者のブーツイラストは抵抗する」ヨゼフ・チャペック著、増田幸弘、増田集編訳|日刊ゲンダイDIGITAL(2019/11/06)
      htt...
      「独裁者のブーツイラストは抵抗する」ヨゼフ・チャペック著、増田幸弘、増田集編訳|日刊ゲンダイDIGITAL(2019/11/06)
      https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/264254
      2023/12/28
  • カレル・チャペックの画家の兄、ヨゼフの50歳の
    お祝い(日本における還暦のお祝い)に合わせて
    1937年に発行された本。「指揮官の靴を
    シンボルに、独裁の本質を描く」という意図の
    もとに、白黒のとても力強い線の絵が描かれている。

    ヨゼフの絵はもちろんのことだが、チェコスロバキアの
    最大の詩人、ヨゼフ・ホラが寄せた序文を読むと
    今のこのコロナ騒動において世界の指導者が
    またこのブーツを履かないようにと願う。
    ホラが言うように独裁者のブーツはただの牛革から
    できているものだから。



    翌年の1938年に弟のカレルは亡くなり、
    ヨゼフは1939年第二次世界大戦と同時に
    ゲシュタポに逮捕され、いくつかの収容所に
    移送された後、1945年4月に亡くなる。

  • 前半は、チャペック兄弟のお兄さん・ヨゼフが1937年に出版した同名の絵本をベースに、彼の反戦・反ナチスがテーマのイラストを集めた。カレル・チャペックの挿絵でおなじみのかわいらしい描線は、一見テーマとミスマッチな分、かえって戦争の痛ましさやファシズムの恐ろしさが伝わってくる。

    ナチスドイツ支配下の強制収容所で描いた子どもの絵は胸を打つ物がある。チェコスロバキアの共和国時代に描いた「自由」のイラストの晴れがましさは、ほんとうによい。

    後半はチェコの専門家のインタビューを交えながら、彼の人生を追いつつ、歴史的・文化的バックグラウンドを追っている。ヨゼフ・チャペックのことは、カレル・チャペックの本の挿絵やブックデザインでしか知らなかったが、気骨がある人だったんだな。自由や民主主義という言葉に象徴される第一次世界大戦後のある種の時代精神を体現しているように感じた。本当にいい本だったなあ。

  • チャペック兄が収容所で死んだとは知らなかった。わたしにとって、チャペックは妙に深みのある童話作家、という印象がなかなか抜けないけど(初体験が「長い長いお医者さんの話」だったから)童話というよりは、先端的なSF作家で思想家で、戦争&ホロコースト一途の全体主義を批判し続けた作家兄弟としてのほうが活動期間はながいんだよな

  • チャペック兄が収容所で死んだとは知らなかった。わたしにとって、チャペックは妙に深みのある童話作家、という印象がなかなか抜けないけど(初体験が「長い長いお医者さんの話」だったから)童話というよりは、先端的なSF作家で思想家で、戦争&ホロコースト一途の全体主義を批判し続けた作家兄弟としてのほうが活動期間はながいんだよな

  • カレル・チャペックの兄で画家でもあったヨゼフ・チャペックの風刺画を集成した1冊。
    画風としては筆遣いの勢いを感じるハッキリとした線が特徴だろうか。元は新聞に掲載されていたものなので、白と黒のバランスも魅力。
    同時に収録されている論文も面白かった。

  • ヒトラーの弾圧にも負けず、抵抗のイラストを描き続けたヨゼフ・チャペックの風刺イラストと、ヨゼフの最期。

  • 正直、チャペック兄弟を知らなかった。

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著者プロフィール

1887年、オーストリア=ハンガリー帝国下のフルノフに生まれ、1945年、ナチス・ドイツのベルゲン・ベルゼン強制収容所に没する。プラハ工芸美術大学で学んだあと、画家、物語作家、エッセイスト、装幀家として活躍する。弟カレルとの「チャペック兄弟」としても、現在に至るまで世界各国で愛され、高い評価を受けている。
邦訳されたおもな著作に、『ヨゼフ・チャペック エッセイ集』(飯島周訳、平凡社、2018)、『こいぬとこねこのおかしな話』(木村有子訳、岩波少年文庫、2017)、『チャペックの本棚 ヨゼフ・チャペックの装丁デザイン』(千野栄一訳、ピエブックス、2003)、『園芸家12カ月』(カレルとの共著、小松太郎訳、中公文庫、1996)など多数がある。

「2019年 『独裁者のブーツ イラストは抵抗する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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